華と日の刃を護る五行の刃   作:アマゾンズ

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上弦の弐との戦い。

完全な死亡フラグ。


第七話 五行の刃、砕ける

時間は戻り、二人が真次の墓に話しかけている時間。カナヲはいつか言わなければならないと決めていた事を真次の墓参りに来た時、炭治郎へ話す決心をしていた。

 

「炭治郎」

 

「何?」

 

「怒らないで聞いて欲しい、私・・真次に恋人になって欲しいと言われた事があったの」

 

「!」

 

炭治郎は目を見開く。自分の妻であるカナヲが親友であった真次から告白を受けていたなど初耳だったからだ。自分の中で暗い感情が出てくるのが分かる。

 

「そう・・だったんだ」

 

「その時は意味が分からなかった。だけど・・・炭治郎と夫婦になってようやく分かったの、彼の言葉はこういう意味だったんだ・・って」

 

「・・・」

 

「最初に旅立つ前に私は『必ず好きな人と幸せになれる』って・・・言われた」

 

「!」

 

「それと同時に彼は寂しそうな笑顔を向けて去っていった。何かを知ってしまったような・・そんな様子で」

 

カナヲの言葉に炭治郎は生前、彼が『勘』が鋭いという事を思い出した。それも、誰かが死ぬ時に対してよく働いてしまうとも。

 

「真次・・・」

 

恐らくは自分がカナヲと結ばれる事はなく、炭治郎とカナヲが結ばれる事を『なんとなく』知ってしまったのだろう。

 

「だから・・・あの時、カナヲを頼むだなんて・・言ってたんだ」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

それは煉獄が死に激闘による傷を癒す為、蝶屋敷にいた時であった。その時の真次は異国語(英語)を覚えようとしているのか、そういった関連の本を読みふけっていることが多くなった。周りから何故と尋ねられても『なんとなく』で返されてしまった。

 

そしてある日、満月の夜。深夜帯に近い時刻に炭治郎は真次に呼び出されていた。とても大事な話があると。

 

「来たよ、真次」

 

「ああ、炭治郎。来てくれてありがとう。隣に座りなよ。お茶くらいは用意したから」

 

「うん、それで大事な話って何?」

 

「・・・炭治郎、単刀直入に言う。カナヲを頼みたい」

 

「え?」

 

「俺は恐らく、死ぬかもしれない『なんとなく』だけど『勘』が働いたんだ。何かと戦って俺がそこに血まみれで立っているのを・・さ。俺は自分の事は分からないけど、何かと一緒に居る自分を知る事は出来るんだ」

 

「それって!」

 

「未来を見通してる訳じゃない『なんとなく』分かるだけに過ぎないんだ」

 

「だけど、それがカナヲと何の関係があるの?」

 

「炭治郎、これは男と男の約束だ。カナヲを幸せにしてやって欲しい」

 

「!それなら真次自身が!!」

 

「いや、俺じゃないんだ。カナヲを幸せに出来る相手は炭治郎、お前なんだよ」

 

「・・・っ!?」

 

真次の横顔を見ると彼から哀愁の匂いが濃く出ていた。それと同時に何も隠していない本心から頼むと言っている事を炭治郎は匂いを通じて感じた。

 

「俺の『勘』が、炭治郎とカナヲが手を繋いで笑顔で道を歩いている姿が見えたんだ。そこに俺は入れない、入っちゃいけない・・・だからだ」

 

「真次、なんで・・なんでそんな事を言うんだ!自分が死ぬかも知れないなんて!絶対に死なせるもんか!」

 

「・・・ありがとう、な」

 

真次は自分の日輪刀と炭治郎の日輪刀を持ち出していた。炭治郎へ日輪刀を手渡し、自分の日輪刀を突き出し見せるような仕草をした後、刀を立てた状態にした。真次は正座しており炭治郎はその意図を理解し、炭治郎も正座し手渡された自分の日輪刀を手に柄を握って刀を立てる。

 

「改めて、親友の誓いを立てよう。俺が死んだとしても・・炭治郎、カナヲを幸せにしてやってくれ」

 

「うん・・・!」

 

真次は僅かに刀身を抜き、炭治郎も合わせるように僅かに刀身を抜いた。二人は同時に鍔鳴りを響かせた。

 

「金打(きんちょう)」

 

これが江戸時代などから、固い約束を誓い合う時に行われた金打と呼ばれる儀である。この会話を最後に炭治郎と真次は二人だけで会話することは少なくなった。

 

 

 

 

 

 

「そんな事が・・・あったんだ。炭治郎と真次に」

 

「うん・・」

 

カナヲも知らなかった二人だけの誓いの会話。だが、炭治郎はまっすぐにカナヲ見つめる。

 

「でも、頼まれたからじゃない。俺は本心からカナヲを好きになったんだ。傍に居て欲しいと思ったんだ」

 

「うん・・・信じる」

 

カナヲはあの日を思い出す。最終決戦とも言うべきあの戦いを、そして二人の姉の仇と真次が戦い、炭治郎のもとへ向かわせてくれたあの時を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは伊之助とカナヲが激昂し、上弦の弐である童磨との戦いの最中であった。

 

「テメェには地獄を見せてやる!!」

 

「その怒り、俺に引き継がせてくれないか?伊之助、カナヲ」

 

「テメェ・・・っ!?」

 

「真次・・・っ!?」

 

「しのぶを殺したのはお前か?上弦の」

 

「そうさ。でも殺しただなんて人聞きの悪い、辛い事から開放してあげたんだよ。それに僕の中へ取り込んであげたんだ。彼女は永遠に僕の中で生き続け・・あれ?」

 

「Shut up(黙ってろ)・・・!クズ野郎」

 

真次は刀を抜き純粋な斬撃で真空を引き起こし、童磨の口を縦に切り裂いた。伊之助とカナヲは真次から恐怖を感じていた。味方であるはずなのに、濃厚な怒気が感じ取れるほどの凄まじい闘気だ。『柱』との稽古により真次はあの時以上に格段に強くなった。もはや『柱』と呼んでも差し支えないレベルに達していた。だが、それでも鍛錬をやめようとしなかった。

 

真次は二人を守るように立った。その目には怒りと冷静な考えを併せ持つ男の眼があった。

 

「二人共、此処から離れて炭治郎のところへ急げ」

 

「何言ってやがんだ!アイツに地獄を見せねえと気が済まねえんだよ!」

 

「私だってそう・・!」

 

「頼む、炭治郎の所へ行ってやってくれ。それまでの時間は俺が稼ぐ」

 

「「!?」」

 

伊之助とカナヲは真次の目が本気かつ、寂しさを持っている事に気付いた。それ以上に伊之助は真次の真意に気づき、カナヲの手を引っ張り出入り口へ素早く向かった。

 

「ああ!ご馳走が!む!?」

 

「行かせねえよ・・・」

 

童磨が二人を攻撃しようとするがそれを真次自身が許さない。

 

「真次!」

 

 

※推奨BGM[Fate/Grand Orderより EMIYA 千子村正ver]

 

 

「カナヲ、伊之助・・・確認しておく。時間を稼ぐのは良いが、別に(・・)アレの(・・・)頚を斬り落としても(・・・・・・・・・)構わないんだろう(・・・・・・・)?」

 

「「!?」」

 

その瞬間、伊之助とカナヲの二人は背を向けている真次が確かに強いと感じるが、それと同時にもう二度と会えなくなるのではという予感めいたものあった。

 

「カッコつけやがったんだぞ!必ず戻ってきやがれ!!これは命令だぞ!!」

 

「真次、思う存分やって!!そして、姉さん達の仇を取って!!」

 

「了解した・・・行け!二人共!」

 

二人は急いで撤退した。だが、伊之助とカナヲの目からは涙が溢れていた。真次が死ぬつもりはなくても、もう絶対に会えない。その予感が涙として出て来ているのだ。

 

 

 

 

 

 

「あーあ、行っちゃった。残ったのは不味そうな男か・・・でも、優しく殺してあげるからね」

 

「・・・・」

 

「ん?」

 

真次が刀を抜き、構えを取る。その瞬間、彼の刀身を見て童磨は首を傾げた。

 

「んん?へぇ・・・君、陰陽師の血を引いてるんだね?懐かしいなぁ」

 

「・・・何が言いたい?」

 

「陰陽師の女の子は極上だったんだ。それはそれはもう、踊りたくなる程にね。でも残念だなぁ、君が女なら遠慮なく食べてあげたのに」

 

「・・・・!」

 

瞬間、真次の闘気が形を成していく。五行の色が現れ、呼応している色から聖獣の姿となって童磨へ咆哮する。

 

青龍、白虎、朱雀、玄武、麒麟、その全ての聖獣が童磨へ圧倒的な怒りを見せつけているが、彼は愉快そうに笑うだけだ。

 

「聖獣かぁ・・・ホントにすごいね君、陰陽道の思想を『呼吸』にするなんて今まで見た事がなかったよ」

 

真次が踏み込んだ瞬間、童磨も鉄扇で迎撃する。その力の強さに童磨は感心した素振りを見せている。間合いを外し、真次は呼吸を一瞬で整えると刀身が炎のように赤くなっていき、それを鞘に収める。

 

「(煉獄さん・・・俺は俺の心のままに為すべき事をします!)」

 

『五行の呼吸 火(炎)の型・二之巻・赤竜爪(せきりゅうそう)!』

 

『五行の呼吸 火(炎)の型・二之巻・赤竜爪(せきりゅうそう)』とは己自身の属性を完全に『炎』とする事で刀身に高温とも言える熱を帯びさせ、それを居合で切り裂く技だ。更にこの状態は全身を高熱化させており、僅かな水分であれば蒸発させてしまう。

 

『凍て曇』

 

童磨が繰り出してきたのは血鬼術による氷の欠片の波だ。これを吸い込めば呼吸ができなくなる。それを『勘』で察知した真次は己の属性を『火』に変え、蒸発させているのだ。居合は届かずとも相手の繰り出してきた氷を蒸発させてしまった。だが、それでも、左腕の上腕部は損傷している。

 

「へぇ・・・君、陰陽道を知らないはずなのに使いこなせているんだ。俺が使う血鬼術は氷、即ち水だ。けれど君は相侮させる事で対抗している。賞賛に値するよ」

 

「あれから俺も気になったからな、わずかに残った文献から言葉の意味だけを理解したのさ」

 

「(ふむ・・ふむ、この子、五感で俺の血鬼術を分かっている訳じゃない、かと言って予想している訳でもない・・・厄介だね。五感なら潰せば済むけど)」

 

童磨は冷静に真次の力を見極めていた。だが、見極めようとしても見極めきれない。何故なら真次は第六感が優れているために、肉体という概念には存在しない感覚だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(しのぶ・・・『柱』の皆さんにも止められていた禁忌を今、破る!)此処からは生真面目に戦うのを止める。俺が楽しませてもらう」

 

『五行の呼吸 極ノ型・一之巻・外伝 相生×比和』

 

これこそが『柱』達が使用を禁じ、最も『柱』に近いと称された真次の所以であり『あの呼吸』と言われていた『五行の呼吸 極ノ型・一之巻・外伝 相生×比和』だ。呼吸で強化した体内において脳内麻薬を過剰分泌させ、肉体そのものをドーピング状態にする。これによって恐怖心の克服、戦意高揚なども容易く行える。更には肉体の限界を超えられるという利点もある。

 

だが、その代償として肉体を薬物で強化する物と同義であり、長時間使い続ければ肉体が薬物中毒なり、この呼吸に依存傾向が強くなってしまう。つまり、戦うにはこの呼吸を常にし続けなければならなくなるのだ。しのぶがそれを治療する事が出来たがもう、彼女はこの世にいない。

 

「ん?なんだ?傷としては深めのハズなんだけどな」

 

「俺は、今ここで倒れられねえんだ・・・!」

 

「Come on!(来いよ!)It's not over yet!!(まだ終わらねえ!!)

 

※推奨BGM[戦国BASARA2より、伊達政宗のテーマ]

 

真次の闘気として現れている五行の聖獣達が一つとなり、真次は童磨へ瞬間的に迫る。その刃を童磨は鉄扇で受け止めるが凄まじい剣力となっている真次の刃を押し込まれていく。

 

「異国の言葉を使うなんて伊達男のつもりかい?ん・・んんんっ!?人間ではありえない力だ!」

 

「はっ!ありえない事を起こせるのが人間なんだよ!」

 

真次は自分の中である予感がしていた。『勘』ではなく閃きに近い何かだ。この鬼に対してはとにかく身体を動かさせる事が重要だと。

 

「(これはマズイね。コイツの相手をしてたら俺が持たない)悪いけど君のような危険な相手はこの子にしてもらうよ」

 

『結晶の御子』

 

「結晶で作った分身か!っ!?」

 

真次は分身が出された瞬間に飛び退いた。それと同時に氷の虚像から血鬼術が放たれた。

 

『血鬼術 散り蓮華』

 

『五行の呼吸 火(炎)の型・二之巻・赤竜爪(せきりゅうそう)・極』

 

「この子、俺と同じくらいの強さの技、出せるんだ。後は任せるね」

 

「野郎・・・!」

 

『蓮葉氷』

 

「ぐううっ!く・・ふふふ!」

 

「?何がそんなに可笑しいのかな?」

 

「今の俺は最高に高揚しててな、気分が良いんだよ」

 

真次の言葉は半分が事実で、半分が嘘である。今の彼は脳内麻薬によって高揚状態であり更には感覚で言うゾーン状態にもなっている。だが、それ以上にも目の前の奴だけは許せないのだが、圧倒的な力を繰り出してくる事に対して苛立ちを隠せない。

 

「ふーん・・でもね。男の相手は趣味じゃないんだよね」

 

そう言いながら更に三体の虚像を作り出し、三体に違う攻撃をさせてきた。

 

『寒烈の白姫』

 

『蔓蓮華』

 

『血鬼術 冬ざれ氷柱』

 

『五行の呼吸 水の型・三の巻・玄武甲(げんぶこう)・極』

 

亀の甲羅を模した闘気が真次を守っているが、それは真次自身が速さでなぎ払っているに過ぎない。

 

「(まだか・・・!まだなのか!何か起こる予感があるのに!)ぐはっ!」

 

『真次君』

 

「っ!?」

 

真次は童磨の虚像の攻撃を傷を受けながらもなぎ払い続けている中、しのぶの声が聞こえたような気がした。それと同時に藤の花の香りが、ほんの一瞬だけ真次の鼻腔をくすぐる。更には童磨の身体に異変が起こった。

 

「え?あれ?何だこれ」

 

「奴の身体が・・・溶けている!?あれは・・・まさか、しのぶの毒の症状!」

 

「(あの子の毒、だけど毒が回っていくような感覚もなかった)」

 

次々に童磨の虚像達が砕けていき、真次は決心を固めた。此処で奴を仕留める為に使うべき最後の『呼吸』がある。だが、それを使えば『死』は免れない。だが、それでいい。炭治郎(親友)カナヲ(初恋の人)の未来を守れるならばこの命、賭けるに値する。

 

『五行の呼吸 極の型・終の終 相生・相剋・相乗・相侮・比和・陰陽和合!』

 

『五行の呼吸 極の型・終の終 相生・相剋・相乗・相侮・比和・陰陽和合』とは全ての呼吸と共に属性を一つとし、聖獣・四神と麒麟の全てを一体化させ敵へと特攻する捨て身の技であり、故に目的の鬼を滅ぼした所で己の命も尽きるという究極にして禁断の技だ。

 

「さぁ!一緒に地獄へ行こうぜ!上弦のぉ!」

 

「!!」

 

『血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩』

 

真次の刀は童磨の氷の菩薩像を突き抜け、頚へと刃を突き刺した。それを横向きにし、断ち切ろうとする。毒の影響で幾分か刃が進むが、相手も抵抗を止めてはいない。

 

「ぐ・・ぐおおおおおお!!」

 

「嫌だ、男と一緒に死ぬなんて真っ平だ!!」

 

「逃がさねえよ、クズ野郎がああああ!!」

 

その咆吼と共に童磨へと食い込んでいた刃はその頚を断ち斬った。それと同時に真次の身体は刀を握ったまま、水の中へと落下した。

 

 

 

 

 

 

「死ぬんだ、俺。結局何も感じない・・・人間の感情は他所の夢幻だったなぁ」

 

「あ、やっと死にました?良かった。これで私も安心して成仏できます」

 

童磨は走馬灯を見たのか、暗闇の中しのぶと出会い。様々な会話をした後、彼女にこういった。

 

「ねぇ、しのぶちゃん、ねぇ俺と一緒に地獄へ行かない?」

 

それは童磨からの初めての異性への告白であった。だが、しのぶは笑みを深くして返答した。

 

「とっととくたばれ、糞野郎」

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・ぐ・・が」

 

水から立ち上がった真次は心臓の位置を抑えていた。自身が究極とする技を使った影響で心臓は破裂、横隔膜は破れており呼吸が上手く出来ない。

 

「(そこに・・・そこに・・あった!)」

 

真次が水の中から探していたもの、それはしのぶの髪飾りであった。それを手にして自ら出てくると同時に真次はその場に仰向けに倒れた。

 

「はぁ・・ゴブッ!」

 

吐血が始まる。呼吸が上手く出来ないため止血も不可能だ。真次は自分の鴉に合図として教えておいた床を数回たたき合図した。

 

「鴉・・・全てが終わったら・・・伝えて・・くれ。神威真次・・・は戦って死んだ・・・って」

 

鴉は了承した返事をするとそのまま外へと飛び立った。真次は次第に痛みを感じなくなってきていた。

 

「ああ・・・なんだか穏やかだ。心地いい」

 

彼はまるで眠るかのように目を閉じた。しばらくして花が咲く神社のような場所に立っていた。

 

「此処は?」

 

誰かが手を差し伸べており、その手を握るとその柔らかさに覚えがあった。自分を最後まで治療してくれた大恩人だ。その人は色艶やかな着物を着ている。

 

「俺、頑張ったよ・・・貴女の仇を射ちました」

 

その人は優しく微笑むと彼の手を握り、一緒に行こうと促した。その先には厳しかった両親が謝りながら抱きしめてくれた。

 

走馬灯を見終えた真次は嬉し涙を流しながら、謝罪とお礼の言葉を言うと静かに事切れた。

 

彼の日輪刀は砕け、残ったのは鍔元までの刃であった。その手には蝶の髪飾りをしっかりと握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

真次が死んだ後、最後の最後で無残は炭治郎を鬼とさせた。だが、皆の奮闘で人間に戻る事が出来た。

 

「無残、お前は俺が連れて行く。親友をお前の理想にしてたまるか!」

 

「黙れ、亡者が!ぬぐ!?」

 

「炭治郎、俺との誓いを忘れたのか!俺はお前に託したんだ!だから戻れ!カナヲだけじゃない、みんながお前の帰りを待っている!お前の左腕は俺の一部を持って使えるようにしてやるからな」

 

『真次、ありがとう・・・最後の最後まで助けてくれて・・・』

 

真次の魂は無残を羽交い締めにして、身動きを取れなくしている。そこには無残の体に巻きつく青龍、その利き腕に噛み付く白虎、炭治郎を爪で引っ張り上げようとする朱雀、それを手助けする玄武と麒麟。炭治郎は仲間達の思いによって帰っていく。

 

「行くな、わたしを置いていくなァァァ!!」

 

「もういいだろう、無残・・・俺もお前も、もう死んだんだ。後は来世にかけよう」

 

「ふざけるな!貴様が邪魔をしなければ私は!」

 

「永遠なんてないんだよ、無いからこそ必死になって生きて、それが刹那だとしても尊くなるんだ」

 

「貴様ァ!」

 

「俺達は生まれる時代を間違えただけなんだよ、行こう次の来世へ」

 

 

 

 

 

 

炭治郎の意識が戻り、人間に戻った事を確認した鬼殺隊の皆が歓喜の声を上げた。

 

「っ!?左腕が・・・動く?」

 

『お前の左腕は俺の一部を持って使えるようにしてやるからな』

 

「真・・・次?皆、真次は?」

 

「え・・まだ戻ってきてないよ?」

 

「アイツ、戻って来いと俺が命令したのに!」

 

「まさか・・な」

 

それと同時に四人の元に鴉がやって来た。五行を示す星の形の札を持っているのでこれが真次の鴉だとわかる。

 

「カアアア―――!伝達!竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助、栗花落カナヲ、竈門禰豆子二伝達・・・!死亡!!神威真次、死亡!!上弦ノ弐ト格闘ノ末、相討チ!死亡―――ッ!」

 

「え・・・」

 

「ぇ・・・?」

 

「っぁ・・・!!」

 

「な・・・・」

 

「そんな・・・」

 

周りが歓喜している中、五人は一瞬にして凍りついた。男にとっては親友が、カナヲにとっては自分に好意を向けてくれた異性が、禰豆子にとっては鬼であった時に自分を守ってくれた人が死んだという、残酷な現実を突きつけられたのだ。

 

五人は肩を貸しあって、伊之助とカナヲが最後に真次と出会った場所である上弦の弐が居た部屋へと向かう。歩みはゆっくりでも確実に向かうことが出来た。

 

扉を開くとそこには、砕けた日輪刀を手にし、まるで眠っているかのように穏やか表情を浮かべた真次が、蝶の髪飾りを持って横たわっていた。

 

「真・・・次?」

 

「真次・・さん?」

 

「真次・・・?」

 

「おい、何寝てやがる?」

 

「・・・冗談だろ?」

 

全員が横たわっている真次の近くまで行き、伊之助が痛みが走る腕を動かし、真次を揺さぶった。

 

「おい!起きろ!!命令を無視してんじゃねえ!!起きろって言ってんだよ!」

 

「伊之助・・・」

 

「お兄ちゃん?」

 

「感じないんだ・・・真次の匂いが・・・呼吸をしてないんだ」

 

「・・・どうして」

 

「本当だよ・・・今の真次から心音も何も聞こえない」

 

嗅覚に優れている炭治郎、聴力に優れている善逸、この二人から真次が死んでいるのは現実だと口にする。

 

「そんな・・・私達は仲間をまた失っていたの?」

 

「あの時、助けに来てくれたのは・・・こういう事だったんだ」

 

「嘘だろ・・・あんなに強くなってたのに・・・真次が死ぬなんて」

 

「馬鹿野郎!なんで命令無視をしやがったんだ!!」

 

伊之助はまた涙声になっていく。その影響で全員が涙を流し始めた。

 

「君が・・・君が左腕を使えるようにしてくれたんだよね?真次・・・君との誓いを破りそうになったのに、君はまた・・・助けてくれた」

 

「私が鬼だった時も・・・必死に守ってくれたんですよね・・・?」

 

「しのぶ姉さんの髪飾りを・・・取り返してくれたんだね・・・真次」

 

「ぐぐ・・・お前が土に還ってどうすんだ!俺と勝負するって言ったじゃねえか!!」

 

「俺だって・・・全然、謝ってない事がたくさんあったのに・・・こんな、こんなの・・って」

 

五人が全員涙を流す。助けられた者、守られていた者、好意を向けられていた者、約束をしていた者、謝れなかった者、それぞれが真次に向けての涙を流し続けた。

 

真次の遺体は回収され、竈門家で葬ることになった。小さな丘を見つけそこに墓を建てた。生前、自分が死んだら見晴らしが良い居場所に埋葬してくれとあったからだ。

 

その後、お館様から渡された真次の遺書を炭治郎の実家において皆で読む事になった。

 

『みんなへ。これを読んでいるという事は俺は死んでいるんだろうな。けど、気にする事はない。俺は俺の意思で初めて親友を、好きになった人を守れたんだ。だから、俺は後悔はしていない。

 

善逸、露骨な好意は控えめにしな、逆に引かれるぞ?

 

伊之助、キノコ取りの勝負が出来なくて悪い。これからも二人を支えてやってくれ、お前なら簡単だろう?

 

禰豆子、もし人間に戻っていたらお兄さんと仲良くな?お義姉さんになる人も大切にしなよ、君に幸多からん事を。

 

カナヲ、君にはいっぱい言いたい事があった。けどそれは墓まで持っていく、俺は君が好きだった。それだけは事実だ、君はきっと幸せになれる。それだけは間違いないからさ。

 

炭治郎、カナヲを幸せにしてやって欲しいという誓い、忘れないでくれよ?もし忘れたり幸せに出来なかったら枕元に立つからな?

 

長くなったけどこれで終わりだ。来世があれば、その時にまた会おう。俺の最高の親友達と大切な人達へ。    神威真次』

 

 

真次の遺書を読み終えると皆が皆、笑いながら涙を流していた。悲しくあるのに笑ってしまうそんな不思議な状態だからだ。

 

「露骨な好意ってなんだよ、それぇぇ!!」

 

「簡単に決まってんだろうが!死んでからも俺を舐めんじゃねえ!!」

 

「ありがとう・・・ございました・・・真次さん。でも、本当に不器用な人です」

 

「私もありがとう、応える事は出来なかったけど、嬉しかった・・・」

 

「相変わらずだなぁ・・真次は・・・最後の最後までカナヲの事なんだから・・・」

 

遺書を読み終えたその夜、竈門家において蝶屋敷の面々も集め、盛大な宴が開かれた。

 

夜まで騒ぎ、喋り、食べて楽しんだ。真次の席も設けて疲れて眠るまで宴は続いたのだった。




真次はここで退場です。

次回は時間が戻ります。最終回です。

最終回を書いたら異聞外伝として、真次としのぶのカップリング話を書きます

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