コミュ障を治す為にも極振りで頑張ります! 作:Negima -{}@{}@{}-
一月もあと数日になったある日。
ランは最近来ていなかったという理由で三層に来ていた。
特にあてもなくフィールドを歩き、目に付いたモンスターを倒している。
フィールドの端をしばらく歩いていると岩場の影に1人の人を見つけた。
プレイヤーかと思って後ろから近づいてみるが、全く反応がない。
前に回ってみるとその女の人はいきなり反応しだした。
この反応でこの人がプレイヤーではなくNPCだということがわかったランは、何かしらのクエストが発生するのかと思い、しばらく話を聞いてみる。
「ああ、やっとアーチャーの方に出会えました!
私は街の外れで農家を営んでいるものです。
そこであるモンスターの毒に悩まされていて、ぜひ退治していただいたく…こんな所まで」
ランは話とその神話の知識を照らし合わせ、これから退治するモンスターの予想が着いた。
スティムパーリデスと言われる群体毒鳥。
田畑に毒性の排出物を撒き散らし、人間に毒霧で攻撃する危険な鳥。
ギリシア神話でヘラクレスが試練としで弓で絶滅させたとされる鳥。
予想通り女性の以来はスティムパーリデスの退治だった。
女性が指さす先に現れた魔法陣に乗ると毒鳥の住処に転移するそうだ。
それは特に問題ではなく、倒しやすくなるという意味ではありがたい。
しかし、その数が問題だった。
300体という大軍が瞬間的に襲ってくるという情報を前に毒耐性のないランは困り果てた。
そもそも、アーチャーのようでアーチャーでは無いランなので攻撃が聞くのすらも分からないという根本的な問題があることもわかった。
そのため、とりあえず挑戦してみることにした。
つい先日買い貯めたポーションなども確認して、魔法陣に乗った。
光が収まり、目を開けると空を青銅の翼を持つ鳥が覆っていた。
それによって少し暗くなった地面には毒性の排出物が所々に散らばっていた。
まずは一番端にいた一体を撃ってみる。
弾はその鳥を仕留めたが、それに呼応して周りにいた数体が毒霧を吐き出してくる。
今はまだ上空にある霧も暫くすれば地面にも蔓延していくだろう事が予測できたランは第2プランに移る。
「えっと…。【慈雨】」
まず数少ない毒耐性のポーションを使った。
その後に【慈雨】で霧と鳥達を落としにかかる。
鳥は翼が濡れれば飛べなくなるし、霧も雨が降れば収まることが多い。
とはいえ、それは現実世界での話。
スティムパーリデスの翼は青銅でできていて水を吸収しないし、毒霧は影響を受けずに蔓延している。
元々あまり期待していなかったランはすぐに気持ちを切り替えて次のプランに移行する。
第3プランは弓以外の攻撃。
色々試してみるとランのスキルからの攻撃なら、弓は関係ないようだ。
ただし極夜達の攻撃は効かない。
とはいえ【白鬼夜行】の物量が使えるかというと、相手は空にいるのでほとんど戦力にならない。
ランは自らの獲物と【電獣を統べるもの】から召喚したコロモリ、エレザード、エレクトリックリザードで300体弱を相手にすることに決めた。
コロモリは空を飛んでスティムパーリデスの上にいるから良いとしても他は誰も毒耐性がない状態なので先手必勝で攻撃を仕掛ける。
エレザードの広範囲攻撃やエレクトリックリザードの高密度射撃によってどんどん数が減っていくが、毒霧でこちらも減り続けている。
数分で味方はポーションを使い続けたランとコロモリだけになってしまった。
しかし、猛攻のおかげでスティムパーリデス達も70体ほどになっている。
(ポーションが…なくなりそう。)
初めの頃は【泡輪】を使ってみたりもしたが、回復スピードがダメージスピードに追いつかないのでポーションを使うしかない。
それを数分続けていれば、元々スナイパーというあまり攻撃を受けないランの数少ないポーションは簡単に底をつく。
(でも、70体なら行ける…かも)
「【パワースナイプ】【黒稲妻】」
弱点に当たれば1700以上のダメージを与える弾が70体全てに飛んでいく。
とはいえ、相手も空を飛んでかわしているので当たらない弾も多い。
(あと…13体)
「コロモリ、攻撃」
コロモリたちが10体を引き付けている間にランは3体を撃ち抜いてポーションを使う。
ポーションの残りもあと一本。
コロモリたちは毒霧の範囲に入ってしまい倒れてしまった。
相手はあと7体。
ランは周りの星をスティムパーリデス達に向かわせダメージを与えていく。
その傍からどんどん撃っていく。
HPが2割になったのを見て最後のポーションを使う。
この猛毒の霧は耐性がつく事無く常にダメージを与えてくる。
それがランを苦しめる。
回復した傍から毒によるダメージが入っているのでランは焦りを感じる。
【速射】で弾の間隔は短くしていても毒の強さが勝る。
HPバーは二割を切り、相手は一体。
(これで…ラスト)
レールガンの弾はしっかり最後の一体の頭を貫いた。
スティムパーリデスを全てドットにした瞬間に蔓延していた毒霧は嘘のように晴れ、転移の魔法陣が現れた。
ランはこの後何があるか分からないので【泡輪】で回復をしていく。
HPが満タンになったのを確認して魔法陣に乗ると目の前には最初の女性が立っていた。
「アーチャー様、ありがとうございます。
スティムパーリデス達はもう被害を出すことは無くなりました。これは一重にあなた様のおかげです。ぜひお礼がしたく、この子を託します。」
『群体精霊ラプラスの悪魔を従属させました。』
精霊というこれまでと一風変わったモンスターが従属した。
群体精霊と言うだけあって数が多いので名前はつけずにまとめてラプラスと呼ぶことにした。
ラプラスの悪魔と言えば作用している全て力を把握・解析できる、未来視に最も近いとされる超越存在。
そのゲーム内では補足した敵のステータスを知ることが出来るだけで、未来視も戦闘も出来ないらしい。
しかし、それでも強力なことに変わりはない。
相手のステータスは本人以上に得手不得手を表す。
レベル差やステータスの振り方はもちろんスキルも見られるのだから、見られる側はたまったもんじゃない。
そんな解析の権化を仲間にしてランはその場を離れようとした。
ふと1歩踏み出したところで地面が暗いのがわかった。
ついさっきも同じようなことがあったようなと思い空を見上げるとスティムパーリデス達20体が飛んでいた。
反射的にレールガンを構えたランだが、スティムパーリデス達が攻撃してこないことを不思議に思いレールガンを下ろす。
するとスティムパーリデス達は影分身でもしていたように一体に集合した。
その一体は地上に降りてきて、ランに頭を垂れた。
「あなたも…仲間に?」
コクコクと首を縦に振る一体のスティムパーリデスには天河(てんが)という名前をつけた。
彼は分身することができるらしく、分身するとHPは等分されるが使えるスキルは全員同じになるそうだ。
「ラプラスと天河もアンクレットに入って…」
そうして、また1人軍隊の形成に拍車をかけたランはギルドホームに帰っていった。
そろそろ始まるイベントに向けて楓の木の面々は
各々の思うままにフィールドを駆けるのだった。