今の所、世界の命運は俺にかかっている続   作:流石ユユシタ

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三話 約束

「ふんふーん、フフフーん」

 

 

私は気分よく鼻歌を歌いながらバッグに衣類を詰めていく。

 

 

なんと、なんと……十六夜が私との旅行を計画してくれたいたからだ。以前に約束した旅行。しっかりと覚えていてくれた十六夜。流石としか言いようがないわ。

 

しかも、今回は二人きり。独占、独り占めである!!

 

一泊二日、で近くには温水プールも完備。そこで私の泳ぎの練習もすると言うテンプレを詰め込んだ旅行。

 

ああ、楽しみ……

 

水着や着替えタオル色々入れて、歯磨きとか必要な物全部入れるとバッグがパンパンになる。それを持ってみると結構重かった。バッグの中には私の期待とかドキドキまで入っているんじゃないかと思う位だ。

 

ふと、視線が私の背中に注がれていることに気づく。振り向くと……私が居た。ショートヘアーでほんのりと私より胸がある。

 

そして、鏡を見ているようなのだ。さらに、何だか気まずい。

 

「……な、なに?」

「十六夜と旅行?」

「あ、そう……だけど……」

「二人きり?」

「う、うん……」

 

 

何で、そんなこと聞くんだろう。同じ私なのにイマイチ考えが分からないんのよね。

 

 

「それ……私も行っていい?」

「え? それは、遠慮してほしい…‥」

「邪魔はしないわ。遠くで見てるから……ね?」

「……まぁ、それなら」

「ありがと……このことは十六夜にも内緒でいいから…‥」

 

 

彼女はそのまま歩いて行った。何を考えているんだろう……本当に分からない。自分のはずなのに……分からない。

 

 

未来の自分の事を考えていると再び視線を背中に感じる。振り返るとコハクが居た。目を細めて嫉妬の視線を送る。

 

「旅行……ずるい……です」

「いつか、連れてってくれるわよ」

「まぁ、そうですけど……はぁ、いいなぁ。絶対連れてってもらいます……」

 

彼女はそのまま私の元を通り過ぎた。

 

 

十六夜の事だからコハクもアオイもクロコも萌黄も計画してると思うけどね。彼女もそれは分かっていると思ったのでわざわざ言わなかった。

 

 

「そろそろ、ご飯らしいですよ」

 

 

彼女が再び戻り、私に夕飯の連絡を言った。私はそこから立ち上がり、リビングに向かう。以前より騒がしくなったリビングに。

 

旅行を考えると幸せで頬が吊り上がるので、それを抑えるが大変だった。

 

 

◆◆

 

 

 

 私は過去の私と十六夜の旅行を見学することにした。理由は……ただ、見たかったから。振り返りたかった、過去に浸りたかったからだと思う。

 

 何も考えず、ただ幸せだったあの時を見たいだけ。私が入ると不要な事態を招いたり、ごちゃごちゃすると感じたから遠くで見ると言うのが一番いいと思う。

 

 

 

 私も十六夜とは二人きりで旅行に行ったことがある。本当に楽しかったし、嬉しかった。ちゃんと私の幸せを考えてくれて、二人の時間も大事にしてくれて、手を引いてくれて本当に幸せな時間。

 

 これがずっと続くと思っていた。でも、それは無かった。幸せは途中で消えた。

 

「じゃ、じゃあ、水着に着替えてくるから」

「は、はい」

 

 

二人が旅館に荷物を置いた後、近くにある温水プールでひと泳ぎするようで脱衣所で別れる。ああ、この初々しい感じも懐かしい。

 

私もサングラスをかけて水着に着替えて、ちょっと遠くから二人を見守る。

 

「じゃあ、泳ぎの練習しましょうか……」

「そ、そうね」

 

私もやったなぁ、二人で練習。泳ぐときに手を引いてくれたのよね、十六夜。

 

「あ、その手を、持ってバタ足の練習をすると良いって動画サイトで言ってました……」

「あ、そそう、じゃあ、その手を握って貰っていい……?」

 

いや、初々しいわね。本当に。彼は過去の私の水着姿に見惚れつつ少し恥ずかしさもあるようで目線を合わせたり逸らしたり。

 

逆に彼女は彼が意識しているが嬉しいのと、実はパット入れてるのがバレたんじゃないかと思いながら二重でドキドキしている。私がそうだったから彼女の今の微妙な心境は手を取るように分かる。

 

 

「も、勿論です」

 

いや、本当に照れ屋ね。十六夜。まぁ、彼女がしている水着は結構良い感じのだし。赤めの奴でコハク程じゃないけど谷間も無くはない。足と尻は良い感じに引き締まってるし。いつもと違うツインテールにしてない長髪。

 

「じゃあ、に、握るわよっ……」

「ど、どうぞ」

 

二人で旅行なんて初めてだし緊張するのは良く分かる。手を握り合って互いに赤面している二人を見るとちょっと羨ましくなり、同時に過去を思い出して楽しくもなった。

 

 

十六夜の手、ゴツゴツしてる……とか、思ってるでしょうね。

 

 

「バタ足やってみて貰っていいですか……」

「う、うん」

 

 

温水プールだから生ぬるい温度。彼女は手を握ったままバタバタと足を動かす。水飛沫が沢山彼女から起こる。

 

彼女が進むのに合わせて彼は後ろ歩きで進んでいく。

 

「ど、どう?」

「上手です! コツを掴んでるんじゃ……」

「いや、もうちょっと! ま、まだ掴んでない! 水怖いから!」

 

 

 

彼女はずっとバタ足。それを何度も繰り返しているうちにコツを掴んでいるんだけど手を握っていたいから嘘をついている。

 

暫く、練習するとここでビート版使おうとか言うのよね。私が泳げるように本気で頑張ってくれるのは嬉しいんだけど。それが欲しいんじゃないのよ。

 

ああ、ここで私がかなり恥ずかしいことを言ったのを思い出した。本当に恥ずかしい。

 

「じゃあ、ビート版借りてきます! それで出来ればもう、泳ぎなんて」

「十六夜の手が良い……」

「ッ!」

「ダメ、かなっ?」

 

見てると本当に恥ずかしい。実はこれ、限界まで上目遣いして前かがみして、若干の谷間をアピールして声音を可愛い子にしてる。

 

「もうッ、いくらでもやりましょう!」

「じゃあ、お願いしてもいいっ?」

「どんだけ、可愛いんですか! 良いに決まってます!」

「ありがとうっ」

 

 

女々しい、メスね、ここまでメスメスしてたかしら? コハクのこととやかく言えないくらいのぶりっ子ね……

 

二人は再び手を握る。そのまま泳ぎの練習を再開。

 

ずっと練習していると彼女は美人と言う事もあり、男女問わずに周りから視線を向けられる。

 

「火蓮先輩が美人だから視線が凄いですね……」

「美人かァ……こほん、まぁ、そうなのかしら?」

 

美人と言われたことにちょっと嬉しくなって表情が緩むが直ぐに年上の威厳を保ちたいと思って気を入れなおす。

 

彼女は彼が少し、面白くない顔をしているのに気付く。

 

「どう、したの? えっと、何か嫌な事でもあった?」

「いや、なんでもないです……」

「……もしかして、私が他の人に見られるのが……嫌とか?」

「……はい」

「……ば、馬鹿! それしきのことで、不機嫌に何かなるんじゃないわよ! もう……(えへへ、そっかぁ……そうなのね……独占欲が前より強くなってるじゃあない!)」

 

内と外で思ってることが違うというは凄い分かる。あの時の私も超絶嬉しかったと覚えているからだ。

 

 

その流れでかなりの爆弾発言をしたのも覚えている。

 

「すいません……なんか、こういうのを言うのってキモイって思うんですけど……なんか、その……」

 

 

十六夜が今までないくらい不機嫌な感情をあらわにする。それにちょっと嬉しくなって調子に乗った。

 

「バカ……もう、しょうがないわね。そんなことで不機嫌になるなんて」

「すいません……」

「……今日の夜は、全部、見せてあげるから、機嫌直してよ……」

「――ッ!!???」

 

 

十六夜は鈍感じゃないし、鋭い。それに期待もする。だから、この旅行でそう言ったことがあるんじゃないかと絶対に思っていた。

それを彼女は分かっている。だから、その彼の期待と意識をより一層強めたのだ。

 

ママ感を出して大人の雰囲気を醸し出す。自分良い女だなと思いながら彼女は完全に調子に乗っている。あの異世界のベンチを同じなのだ。

 

彼女は自分がどんな発言したか理解しているのだろうか。あとで思い出してとんでもなく悶えるのを覚悟しているのだろうか。

 

我ながら本当に馬鹿だなと思う。この旅行で今まで以上の特別な関係なろうと思っているから言っても良いとか思ったんでしょうけど……あなたはご飯を食べて、温泉で入浴してブレスケアと歯磨きをして勝負下着を付けたまでは良いけど、泳ぎ疲れて爆睡すんのよ…‥翌朝、赤面で起床。

 

十六夜は全然気にしてない感じで寧ろ可愛いと真面目に言うけど、どこか笑っていて……まるで年下を見るような慈愛の目を向けられるのがさらに恥ずかしくて。それからしばらくは年下扱いな感じなのよ……

 

 

まぁ、それを含めて良い思い出なんだけどね……私は馬鹿な私を見ながら思わず笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

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