フルメタルWパニック!!   作:K-15

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東京でかなめが必死になってる間の宗介やミスリルの部分はかなり省いてます。
丁寧に書いてると時間が掛かり過ぎると判断したからです。
自分の勝手で申し訳ありません。


第31話 宿敵の最後

夜の香港の街は炎に包まれて居た。

ラムダドライバを搭載したコダールタイプが1機、両手にライフルを握り闊歩する。

銃声を響かせ手当たり次第に住居を破壊して行く。

今の中国は北と南に分かれて対立しており、極度の緊張状態をギリギリの所で維持して居た。

それがこの騒動で一気に崩壊する。

コダールを両陣営が互いに敵の新型だと思い、戦争への引き金が引かれてしまう。

 

(今頃はマオとクルツが前線に向かって居る頃か? 俺は……俺は無力だ)

 

瞬く間に戦火が広がる中、宗介は放心状態で街を歩く。

それはこの地に因縁の相手が居るから。

 

(ここにガウルンが……あの男がまだ生きて居た)

 

見上げた先の建物の窓ガラスは割れており、壁面も酸性雨で黒く汚れて居る。

人が住んで居る気配はなく、物音すらしないビルへ宗介は足を踏み入れた。

明かりも付いておらず薄暗い通路、四隅には埃が積もっており少しでも揺れると瞬く間に充満する。

宗介は右手に銃も持たずに階段を登って行く。

その先もまた薄暗く汚れた通路。

 

(何処に居る、ガウルン)

 

警戒心すら手放し歩いた先の部屋から電子音が聞こえた。

宗介は半開きのドアのノブを掴み中へ入ると、そこにはベッドが1つ。

心拍数を計測する医療機器。

輸血と栄養補給の為の点滴の管が伸びて居る。

部屋の不潔感とは対称的に真っ白なシーツと布団に寝てるのは忘れもしないあの男。

 

「ガウルン!!」

 

「ようやく来たか、カシム」

 

その姿は酷いモノだった。

宗介がゲリラ時代に対峙し今もASで戦闘して居た頃の強さは見る影もない。

顔の半分は包帯でグルグル巻きにされており右腕はもうない。

右足も根本から切断され左膝から先も失くなってしまって居る。

 

「あの時、ガンダムにやられたと思ったが……」

 

「ガンダムぅ? そうか、あの羽の付いた白い奴か。アイツは強いなぁ、カシム。ラムダドライバがなかったら今ごろ髪の毛1本残ってなかっただろうよ」

 

「ラムダドライバ? それで生き延びたのか」

 

「そうさ、ラムダドライバは攻撃だけに使うもんじゃない。俺を守るようにして使ったがそれでもこの有り様だ。もうすぐに俺は死ぬ」

 

迫りつつある死のカウントダウン、それでもガウルンは不敵にほくそ笑む。

宗介は目の前で息絶える寸前のかつての強敵に対して何も思えない。

ただ虚ろな目で見るだけだ。

 

「何故俺を呼んだ?」

 

「今までの仲じゃねぇか。どうせ死ぬならお前に殺されるのが1番だと思ってたが、何だその腑抜けた面は? 昔の獣の様なお前は何処へ行った?」

 

「うるさい!! 貴様などに何かを言われる筋合いはない!!」

 

声を荒げる宗介。

それでもガウルンは不敵な笑みを崩さない。

 

「いいや、言うね。お前は変わっちまった。今のお前には何もない。敵を殺す覇気、瞳の奥にある眩しいくらいの光。あれは獣の目だ。生も死も肯定した先にある生きる為の本能から来る光。だがその光ももうない。何処へ行っちまったんだよ、あの時のお前は?」

 

「黙れ!!」

 

「うん? 自分がどうしてそうなっちまったのかわからないのか? 簡単な事だ、甘ったれたせいさ。あのミスリルの連中と甘い蜜を吸い合ってたからそうもなる。お前は元々誰かと息を合わせて動くような人間じゃぁない。そのせいでこんな腑抜けた男になっちまった」

 

「黙れと言って居る!!」

 

業を煮やした宗介は懐から銃を取り出し、その銃口をガウルンへ向けた。

怒りに燃える眼差しをガウルンへ向けるが、それでもまだヘラヘラ笑うだけで気にも留めない。

 

「へへへへへっ、どうしたぁ、怒ったのか? そんなモン使わなくても俺はもうすぐくたばる。それよりお前に言っておくべき事がある。あのガンダムの事だ」

 

「何?」

 

思わぬ一言に動揺する宗介。

だがガウルンはそこから口を開かない。

意図を理解した宗介は銃口を下げ攻撃の意思をなくした。

 

「あのガンダムって奴、何処から来たか知ってるか?」

 

「いいや」

 

「だろうなぁ。いきなり現れて基地1つを一瞬で壊滅させるあのパワー、普通じゃねぇぜ。ラムダドライバとは違う強さだ。どうやって作ったんだろうなぁ?」

 

「千鳥と同じウィスパードが他にも居るのか?」

 

「お前達ミスリルにも、俺が居たアマルガムにも、確かにウィスパードは居る」

 

「お前の組織にもウィスパードが居るなら、もう千鳥を狙う必要はないはずだ!!」

 

「おいおい、話を反らすんじゃねぇ。今はそんな事は話してない。そうだろ?」

 

「くっ!?」

 

苦虫を噛み潰した表情になる宗介。

動く事すらままならない、呼吸すら機械がなければ困難な男の手の平で転がされて居る。

苛立ちを覚えながらもガウルンの言う事に従うしかなかった。

 

「確かにそうだ。ガンダムの設計はヒイロ・ユイと一緒に居たドクターJと言う老人がした。だが設計は1人で出来ても開発は1人で出来ない」

 

「そうなんだよ。お前の言うジジィがウィスパードかもしれない。だがそこまでだ。あの機体はどうしてこの世に存在する? 米軍も、アマルガムも、お前達ミスリルの目を掻い潜ってアレを作ったのか?」

 

「それは……考えにくい」

 

「そうだろ。アレだけのモノを作るのに誰にもバレずにするなんて無理だ。素人にもわかる。ならどうしたのか。それは――」

 

息を呑む宗介。

周囲の音がより一層静まり返る。

言葉の1つすら聞き逃さないように神経を集中させて、目の前の男を見据えた。

だが次にガウルンが言った言葉に耳を疑う。

 

「未来から持って来たんだよ」

 

「何を……何を馬鹿な事を」

 

想像すらしなかった言葉に何を言って良いのかわからなった。

そんな事はありえないと脳がそれを受け付けない。

しかしガウルンは今まで通りに話し続ける。

 

「だってそうとしか考えられないだろ? アレだけのオーバーテクノロジーが寄せ集まった機体を誰にも見つからずに作るにはこうするしかない」

 

「そんな与太話を信じると思うのか!!」

 

「だったらどうしたって言うんだぁ?」

 

「それは!! それは……」

 

ガウルンの言う事は誰が聞いたとしても信じれるモノではない。

だからと言って宗介には何が真実なのかは知り用がなかった。

未来などと非現実的な事を信用する気はなかったし、否定する材料だっていくらでもある。

それでも真実には辿り着けない。

故に宗介は押し黙ってしまった。

 

「答えられないか。だろうな。俺だってすぐには信じられなかったさ」

 

「ガウルン、貴様は何故そう思う?」

 

「うん? 何だカシム。俺に頼み事か? おいおい、どうしちまったんだ? やっぱりお前は甘い蜜の吸い過ぎでどうかしちまったようだな」

 

見下す様に笑うガウルン。

宗介は不愉快に思いながらも、歯を力強く噛み締めて頭を垂れる。

 

「頼む……」

 

「やれやれ、やれやれだぜカシムぅ。そこまでしてあのガンダムの情報が欲しいか?」

 

「奴はいずれ敵になるかもしれない相手だ。今のままでは勝てない」

 

「そうだろうよ、勝てる訳がない。そんな目をした奴に」

 

血に飢えた獣の様な目で睨むガウルン、宗介は小動物よりも非力な存在。

戦う意思も、逃げる意思すら持ちあわせてない。

抜け殻寸前の生気のない瞳。

宗介の心の中には大きな穴が空いてしまって居る。

 

(今の俺ではヒイロ・ユイに勝てない? ……そうだな、アーバレストとラムダドライバも使いこなせず、クルーゾー中尉にも負けてしまった。命令に抗う意思もなく、千鳥とも離れてしまった。俺にはもう彼女の傍に居る資格はない。千鳥の隣には……)

 

心に思い浮かぶのは彼女の表情。

怒った顔、悲しんだ顔、驚いた顔。

もう思い出の中でしか見る事は叶わない。

彼女の隣に居るのは宗介ではなく、敵かもしれないヒイロ・ユイ。

胸が締め付けられる。

心が黒く染まって行く。

 

(千鳥にはアイツが居る!! もう俺は必要ないんだ!! 必要なくなったんだ!!)

 

ぶつけようのない怒りと悲しみに心が荒む。

自然と宗介の体がワナワナと震えた。

でも弱々しい宗介の姿を見てガウルンは面白くなかった。

 

「何だよそりゃ? そこまで落ちぶれたのか? カシム、死ぬ前の最後のプレゼントだ」

 

「プレゼント?」

 

「そうだ、お前の為に3つ用意してやった。ありがたく思え。まず1つ、アマルガムが動く」

 

「アマルガム、お前が所属して居た組織か」

 

「そうだ。レナードって幹部の1人が準備を進めてるよ。次は2つ目」

 

「待て!! 俺はまだ――」

 

詳しい事は何も言わずに次へ進もうとするガウルンに宗介は急いで呼び止めた。

アレだけの情報では少なすぎる。

より細かな情報があれば対策は準備期間にどれだけ要するのかもわかり動きやすい。

でもガウルンは宗介の考えなど見透かしており話を聞くつもりはない。

 

「いいや、ダメだね。2つ目はお前のガールフレンドの事さ」

 

「千鳥が!?」

 

「そうそう、千鳥かなめちゃんって名前。お前をこんな腑抜けに仕立てあげた張本人さ」

 

「彼女はもう無関係の筈だ!!」

 

「あるある、大ありだ。女なんかに引かれたお前はぁ、何も出来ない只のガキに成り下がっちまった。だからよぉ」

 

勿体ぶりながら話すガウルンに宗介の背中には嫌な汗が流れる。

東京に居る筈の彼女の姿を想像してしまう。

だがそれ以上の事を考えるのがたまらなく怖い。

 

(やめろ……それ以上言うなぁぁぁ!!)

 

叫んだ、心の中で。

宗介に出来る唯一の抵抗は、もうこんな事しか出来ない。

 

「俺が育てたユイランって女が居てよ。昔のお前みたいな奴さ。ユイランに言った、東京に行ってこの女を殺して来いってな。お前が来る1時間前に連絡が来たぜぇ。何の連絡かわかるよな? 彼女、ASの37ミリライフルで1発だとよ。」

 

「ウソだ……そんな筈が……」

 

「お前だって人殺しのプロだろ? 訓練した戦闘員が只の女学生を仕留めそこねると思うか? まぁ認めたくないならそれでも良いさ。逃げながら必死に『そうすけ~』って叫んでたみたいだ。誰の事だろうな、『そうすけ』って?」

 

「ガウルン!!」

 

悲しみは露と消え、怒りのリミットが振り切った。

握っていた銃を包帯の巻かれた頭部に突き付ける。

怒りに満ち溢れ頭がどうにかなりそうだった。

それでも最後、トリガーに掛けた指を引くのは躊躇してしまう。

だがガウルンはこの時を待ってたと言わんばかりに宗介をはやし立てる。

 

「そうだ、その目だ!! この瞬間のお前に殺される為に俺は呼んだんだ!! さぁ撃て!! 屍同然の俺を!! 俺を殺すのは今しかねぇぞ!!」

 

「うわあああぁァァァァァ!!」

 

宗介は大声を上げがむしゃらにトリガーを引いた。

銃声と共に弾丸が発射され、身動き出来ないガウルンの体を貫いて行く。

どす黒い血が吹き上がり、真っ白なシーツを染め上げる。

マガジンの弾がなくなるまで引き続け、部屋には血と硝煙の匂いが混ざり合う。

ガウルンはうめき声すら上げず、不気味に笑ったまま絶命した。

宗介は宿敵の最後を見る気にもなれず、口で大きく、何度も息を吸う。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。死んだ……死んだな。はぁ、はぁ、はぁ。待て……3つ目は……」

 

ガウルンが言って居た3つ目のプレゼント。

だがそれも宗介が撃ち殺してしまったせいてもう聞く事はない。

しかし散々苦しめられて来たガウルンがこの程度で終わるのは余りにもあっけなかった。

冷静になった頭で宗介はガウルンの考えを読み取る。

 

(アイツがプレゼント? それがそもそもおかしい。俺の苦しむ姿を見たいだけとも思えない。ヤツが殺されてでも送りたかったモノ。まさか!?)

 

気が付いた宗介は全力で外に続く窓目掛けて走った。

瞬間、巨大な爆発がビルを揺らす。

衝撃波に体を吹き飛ばされるがバランスだけは何とか保ち、窓ガラスを体でぶち破って外へ出た。

下は幸いにも車が駐車されており、屋根の鉄板を大きく凹ませてクッション代わりにする。

 

「クソ!! ガウルン!!」

 

見上げるビルは炎の赤い光に飲み込まれて行く。

 

///

 

トゥアハー・デ・ダナンの艦長シートの上でテッサは決断を迫られて居た。

コダールタイプによる奇襲。

これにより南北両軍が戦闘態勢に入ってしまった。

上層部であるボーダ提督と音声回線を繋げ何とか戦争になるのを防げないか交渉する。

 

『もう限界だ、テッサ。いつ戦争に発展してもおかしくない。覚悟を決めろ』

 

「ですがラムダドライバを搭載したベノムタイプが1機居ます。部下達はまだラムダドライバの対策が万全ではありません」

 

『それでもだ。被害を少しでも食い止めたいならやるしかない。今はまだ互いに牽制程度だが民間人にも被害が出てる。M9を全機発進させろ。但し、アーバレストは使うな。アレを失う訳にはいかん』

 

「ならせめて1時間貰えませんか?」

 

『無理だ、被害がさらに広がるぞ。キミにだってわからない筈はないだろ? こうして居る間にも関係ない民間人まで死ぬかもしれんのだぞ』

 

テッサの隣に立つマデューカスはチラリと横目で表情を覗く。

だが助言をする事はなくそこまでだ。

シートの肘置きを強く掴んだテッサは決断する。

 

「その通りです。速やかに作戦を遂行します」

 

『よし、現場の指揮はテッサに任せてある。ベノムタイプを迅速に撃破するんだ。後の事はこちらに任せてくれ。頼んだぞ』

 

通信は途切れ、テッサは静かに背もたれへ体重を乗せた。

この作戦の目的は両軍が戦争状態にまで発展するのを食い止める事。

その為には街で暴れるコダールを止める必要がある。

戦闘後の政治事情等は言われた通りに上層部へ任せるしかない。

軽くため息を吐いた所で思考を切り替え、マデューカスに指示を伝える。

 

「マデューカスさん、上昇3分の1。SRT要員を予定地点へ配備」

 

「アイ、マム!! 上昇3分の1」

 

手短に伝えるテッサ。

マデューカスはその言葉を一言も聞き逃す事なく、復唱して操縦士へ伝える。

巨大なトゥアハー・デ・ダナンは各員の匠な連携により深海を泳いで行く。

これから作戦を開始する寸前と言う所で、緊急回線が繋がって来た。

回線を傍受した通信兵がテッサへそれを伝える。

 

「艦長、情報部のレイスから通信です。繋げますか?」

 

「情報部から? こんなタイミングで何を……」

 

情報部から通信で直接情報提供する事などまずあり得ない。

テッサは顎に手を当てて少し考えるが、迫る作戦開始時刻に余計な事をする暇はなく通信兵にアイコンタクトを送る。

パネルを数回タッチした後に巨大ディスプレイに『SOUND ONLY』の文字が浮かび上がった。

だが聞こえて来たのは聞き慣れた彼女の声。

 

『あ~、もしもし聞こえる?』

 

「その声!? かなめさんですか!! どうしてこの回線を?」

 

『うん、レイスに通信機貸して貰ったの。それで聞きたいんだけど宗介は何処に行ったの?』

 

「相良さんですか? それなら今香港に行って貰ってますが」

 

余りの驚きに普通に答えてしまったテッサ。

宗介の居場所を聞いたかなめの声がヒソヒソと聞こえて来る。

 

『中国の香港。うん……大丈夫……うん……テッサ聞こえる?』

 

「はい、どうしましたか?」

 

『10分もあれば香港に行けるわ。だから詳しい位置を教えて』

 

「10分!? どうしたらそんなに早く」

 

『詳しい事はまた話すから』

 

疑問が残るテッサだがかなめの質問に答えようと手元のパネルを指で触った。

調子が良くない宗介をテッサが心配して発信機を付けさせおり、何処に居ても場所は把握出来る。

今宗介は市街地から少しずつ離れた場所へ歩いて移動して居た。

 

「確認出来ました。かなめさん、これだけは聞かせて下さい。どうしてこんな事を?」

 

『どうしてって……アタシも上手く説明出来ないけど、友達だからって思う事にした。期末テストだってアイツだけ受けてないし、このままじゃ進級出来ないし』

 

「それだけですか?」

 

『う、うん。多分そう』

 

歯切れの悪いかなめの返事。

テッサが望んだ応えではなかったが、心が少しだけ楽になった。

自分もかなめも思ってる事は同じな事くらい簡単に理解出来る。

口元を緩めたテッサは通信越しにかなめへ思いを託した。

 

「かなめさん、今だけは相良さんの事をお願いします」

 

『任せときなさいって』

 

聞こえて来るかなめの笑い声。

しばらくして通信は途切れた。

海中の静けさがブリッジに再び戻り、マデューカスは平常心で落ち着いたままテッサに話し掛ける。

 

「艦長、M9全機発進準備が整いました。宜しいでしょうか?」

 

「お願いします。それとアーバレストの発進準備も進めて下さい」

 

「お言葉ですが艦長。ボーダ提督の指示をお忘れですか?」

 

「そんな事はありません。相良さんにはアーバレストに乗って貰います」

 

テッサの言葉を聞いてマデューカスの右眉がピクリと動いた。

静けさとは違うピリピリした空気が形成される。

 

「相良軍曹は明らかに任務放棄してます。そのような下士官を信用するなど考えられません。普通ならすぐにでも切り捨てるべきです」

 

「マデューカスさんの言いたい事はわかります。ですが私はそんな事はしません」

 

「作戦に私情を挟むつもりですか?」

 

「私は彼を信頼して居ます。必ず力になってくれると」

 

「それが私情だと言うのです!!」

 

「私は部下の誰1人として死なせたりしません!! この作戦ではアーバレストの存在が不可欠です。私が何とかして見せます!! これ以上の発言は許しません、艦長命令です!!」

 

いつもからは考えられない激しい口調。

テッサは有無を言わさずにマデューカスを黙らせ自分の主張を強引に通す。

こんな声を荒げるテッサを見るのは他の乗組員も初めてで誰も口を挟んだりしない。

マデューカスは口をギュッと閉じ、テッサの言葉を胸にしまう。

 

(お強くなられましたな)

 

傍で見て来たマデューカスだからこそテッサの変化が良くわかった。

強い眼差しで前を見据え、艦長からの命令を復唱する。

 

「アイ、マム!! 注水が完了したM9から順次発進!!」

 

///

 

戦火が広がる香港市内。

ユイファンが搭乗するコダールは弾薬がある限りトリガーを引き、街を蹂躙して行く。

南北に別れた中国両軍も集まり始め、本格的な戦闘が始まろうとして居る。

 

「先生の最後の命令。後もう少し」

 

死ぬつもりで居るユイファンの動きには一切の迷いがない。

確認したレーダーには中国軍以外にも新たな反応が5機。

トゥアハー・デ・ダナンから発進したミスリルのM9。

ラムダドライバを搭載したコダールなら物の数に入らない相手。

 

「いいえ、まだ来る」

 

東側からユイファンに迫りつつあるミスリルの軍勢。

だがそれとは別に西側からもASの反応が8機確認出来た。

それはユイファンが搭乗するコダールと同じ識別番号。

 

『見つけたよぉ、ユイファンちゃ~ん!!』

 

外部通信でわざと目立つようにして話し掛けて来る男。

馴れ馴れしく喋る相手の言葉は酷く不愉快だ。

 

「アナタが自分から前線に来るなんてね」

 

『だって仮にも僕ちんの部下なんだからさぁ。落とし前は付けないとねぇ?』

 

「そう、良かったわ」

 

『うん? どう言う事?』

 

「アナタは私が殺すから。ミスターK、ゲイツとも呼ばれてたわね」

 

『僕はその生意気な口の聞き方がひじょ~にムカつくんだよ!!』

 

操縦桿を握り直し戦闘態勢に入るユイファン。

戦闘の火蓋が切って落とされる寸前で、クルーゾーが戦闘隊長を務める部隊がようやく追い付いた。

目の前の光景を見て、百戦錬磨のクルーゾーも息を呑む。

 

「ウルズ1よりTDDへ、状況が変わった。レーダーがイカれてなければベノムタイプが9機居るぞ」

 

たった1機でも手を焼くラムダドライバ搭載機が9機にまで増えた。

この状況で戦えば損害は免れない。

作戦が失敗するどころが死傷者まで出る可能性は充分にある。

 

『あの~、俺の目が腐ってなかったらヤバイ奴が後ろから来てるんだけど』

 

クルツは緊張状態でもいつもの口調を崩さずに言う。

レーダーにはまた新たに敵反応が表示されて居た。

だが識別番号はなく『UNKNOWN』としかわからない。

恐る恐る後ろに振り向いたクルツの前には巨大な両翼を広げた機体。

 

「データで見た、いつぞやの羽付きか!? こんな時に!!」

 

『ベン、どうする?」

 

ウルズ2のマオからも通信が入る。

最悪な状況が連続し顔を歪めるクルーゾー。

大空から飛んで来た羽付きは一瞬で人型へと姿を変え、青白い炎を翼から吹かせゆっくりとアスファルトへ着地し右手に巨大なライフルを握らせる。

逃げ場のない状況で決断を迫られるクルーゾーに、またも外部通信で声が聞こえた。

 

『死にたくなければ離れろ』

 

「子供の声か?」

 

『マジでヤベェぞ!!』

 

『アレを撃つ気!?』

 

考えてる暇はもうない。

5機のM9は一斉にライフルの射線上から一目散に逃げ出した。

 

『ターゲット、ロックオン。最大出力で破壊する!!』

 

瞬間。

一筋の閃光がほとばしる。




次回、アーバレストをアニメや原作とは違った形で登場させます。
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