こちらIS学園“きらら”行き   作:きらきら星協奏曲

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第2話 気になるあの子

「で、あるからして、現在のISの基本的運用に関て、全て国家の承認が必要となることは……」

 

 スラスラと綺麗な声で教科書の内容を教えてくれる教師、山田真耶はちらりと見てみると、相変わらずソワソワしているような姿の、特に一際小さな少女を見て尋ねる。

 

「織斑さん、何かわからないところは……」

「あっ、え、えっと、大丈夫です!」

 

 いいや、夏海は別に山田先生に驚いたわけでも恐怖したわけでもない。

 

 寧ろどこか安心感すら覚えているから、それに関しては問題ない。

 

 またIS基礎講座に関しても同じく、授業の内容もISとはずいぶん懇ろだった彼女は、ちゃんと理解できている。

 

「……分からないところがあったら、遠慮なく聞いて大丈夫ですよ?」

「あ、はい! ありがとうございますっ!」

 

 だが彼女が問題としているのは──相変わらず収まらない、いろんなところからの熱視線である。

 

 最早ここまで来ると、夏海は視線の中有る思考すらある程度読んでしまって、ますます縮こまってしまうのであった。

 

(はぁ~かわいいな~!)

 

 しかもおおよそあっているというのが、更に不幸を加速させる。

 

 それを簡単に予測し怯えている様子を、更にそこに萌えを見出す女子生徒の、いよいよもって暑すぎる視線が突き刺さり、更にその身を小さくして──。

 

 見ている分にはほほえましいことこの上ないが、ある意味ストレスを与えていると言っても過言ではないだろう。

 

(はう~お持ち帰り~!)

 

 しかしこんなことを考えていると──。

 

「……」

(グハッ……!)

(ウボアアァァ!)

(そんなひどい……)

(た わ ば)

 

 そう言う不埒な輩に対して、殺気を込めた視線を惜しまないのが、大分離れて座っている篠ノ之箒だった。

 

 そうしてくれるのは夏海にとって、正直なところありがたい。

 

 だがそうしてくれた後──どうして彼女は決まってこちらに向いて、まるでご褒美をねだる犬のような目線を送ってくるのだろうと、若干身を引きながらもそれを気にしてしまう。

 

 ──で、実際の所どうだったのかというと。

 

 

 

 

 

(ふふ……こうしていれば、もう実質夏海と二人きりのようではないか……! いや、もしかしたら感謝のしるしに、今度は太もも辺りを……!? ああいかんそのようなことは! ……だが、その、もしそうだとしたら……私、どうなってしまうのだ……っ!?)

 

 

 

 

 これである。

 

 脳内お花畑或いはピンク一色に染まり切っているため、見た目や修めている道とは裏腹な、煩悩一直線娘が爆誕していた。

 

 どれもこれも全部、二人を離れ離れにした篠ノ之束って奴が悪いんだ。

 

 たが悲しいかな、そんな心には気が付かず、まあ変なこと考えてそうだなーと流してしまった夏海。

 

 残念ながら、先程屋上で起きてしまったほほえましい情事以上の事を考えられない、君のピュアな心を恨むんだな。

 

 しかも結局彼女はこの授業の間は、()()()()()()()にすら気が付かなかったのだから──。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー、終わったー……」

 

 チャイムが鳴って授業が終わると、皆それぞれの用意とかたずけをし始める。

 

 彼女もそれに倣いつつも、始業式から中々本格的な授業を受けるのは、ちょっとばかり気疲れが起きてしまうものである。

 

 多分変な目線が大分部であるが、まあそれがなくとも、疲れてしまうのは仕方なくてうんと背伸びをしていた。

 

 思えばその位この学園に、結構すぐ慣れてしまったのであるなあと、自分事ながら夏海はしばしば思う事であった。

 

 因みに制服越しの脇にやられた隣の席の女子生徒が、ヘッドショットでも決められたかのようにやられて、鼻血を流して机に突っ伏していたのを知らない。

 

 或いは知らなくていい。

 

「夏海っ」

「うひゃっ! ほ、箒ちゃん……教室ではちょっと……」

「何を言っているんだ~ほれほれ」

 

 飛んでくるように近寄ってきたのは箒、また頬をつつかれて困ってしまう夏海。

 

 しかも幼馴染に突き刺さってくる、クラスメイトの怒りの目線に気が付いてしまって、何ともいえない心境に陥ってしまった。

 

 ただその程度で負けるはずではないだろうと、その方に関しては箒に一定の信頼を置いている彼女だったが。

 

「自販機があっただろう、私がジュースをおごっておこうと思うのだが」

「えっ、悪いよそんな事! それにちゃんと、持ち合わせは……」

「良いのだそんな事、ほら、先程の……な?」

 

 どうも現金な人間だと思われるのは、色々あって仕方ないとは思うものの。

 

 結局あの後色んな所を撫でられ、可愛がられたのだから──しかも自身よりはるかにある胸を、後頭部に無理矢理押し付けられたのだから。

 

 夏海は何だか少しいら立った。

 

 ぷうと頬を膨らませて、じっとしかめっ面で彼女を見つめるも──果たしてライオンや狼が兎に睨まれて怯えるだろうか、というより多分飢えていたらしっかり胃の中に収めているだろう。

 

 だが彼女は久しぶりに、それも十分に彼女を堪能していたのでそんな心配はない。

 

 しかも結局人間同士、箒を少し困らせるには十分だった。

 

「こ、困ったな……!」

「ぷぅっ、真面目に怒ってるんです!」

「そ、そうか……」

「ぷー……」

「……し、仕方ない……というより当然、だな。 久しぶりに会ったというのに、あんまりつっけんどんにされるというのも……な」

 

 どうにかこうにか二人の時間を作りたい必死な箒。

 

 だがやりすぎて──今更間すごいが──嫌われてしまうのも、やはり嫌だろう。

 

「そっ、そうだ、今日は昼で終わりだから学食」

「お弁当(べんと)、あるもん」

「うぅ……じゃ、じゃあ。 お菓子とかはどうだ?」

 

 そんな不埒な交渉をする篠ノ之箒。

 

 それに彼女も割と本気で落ち込んでいたのだから、夏海はそれを放っておけなかったのだ。

 

「──お団子」

「?」

「お団子、一緒に食べに行きましょう。 行きたいお店に、一人じゃ入りずらかったから……」

「……わかった、じゃあ終わったらすぐに行こう!」

 

 そう言って箒は小さな手を優しく包むように握ると、彼女も不機嫌な顔を止めてフフフと笑っている。

 

 真っ赤な頬が急に戻っていって、ニコッと素敵に笑う表情を受けて、彼女は突発性心不全と若干の痛みに襲われる。

 

(はうっ!)

 

 要因は勿論不埒な考えから来る尊さにやられた物だ、そのまま浄化されればいいが──かなわぬ願いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふふーん♪」

(ああかわいいなあかわいい……)

 

 というわけで。

 

 彼女は約束通り休憩時間に好きな飲み物を買ってあげるべく、二人おてて繋いで歩いていると、向こうから誰かがやってきて。

 

「────ちょっと、お待ちになられても?」

「む……」

「えっ?」

 

 また出たぞ、トラブルの大元が向こうから。

 

 それは青い瞳をしていて、ブロンドの長い髪をふわっとしたカールで巻いて、青いカチューシャを付けた少女が突然突っかかる。

 

「やぁっと気が付いてくれましたのね? 織斑夏海さん」

「……わ、私に何か用です──」

 

 しかも巨大な胸を持った少女が現れたのだ、そのサイズはもう箒も目ではないレベルだ。

 

 夏海の表情が一瞬で“皺くちゃ”になった、どっかの相当作品の出来の良い実写版の黄色いネズミのように。

 

「えっ、何ですのその表情」

「その胸の半分でもいいから、私に分けてください……!」

 

 必死の懇願だった。

 

 同情の念を隠せない涙を流すクラスメイトが、実は柱の陰で泣いているのは誰も知らなくていい。

 

「な、何を言い出すのです?!」

「ふむ、どうやらできないようだな。 では世話になった」

「お待ちなさいと言ってるでしょう! というか篠ノ之箒さん、貴方に関係はありませんでしょう!?」

 

 おっと、どうやら夏海の本名だけではなく篠ノ之箒の名前も知っているようだ、二人は立ちどまって振り返った。

 

 どうやら話を聞いてくれるそうになった彼女らに、なんだか得意げな顔をしてふふんと鼻息荒く、大きな胸を強調するように張り出してきた。

 

 また夏海の顔が度し難い顔になった。

 

「私の名前はセシリア・オルコット……イギリスの代表候補生なのですよ?」

「……代表候補生?」

「え、えっと、箒ちゃん。 代表候補生っていうのは──」

 

 代表候補生。

 

 随分な二つ名を名乗っているようだが、これはちゃんとした公的な肩書。

 

 まあ簡単に言ってしまえば、オリンピック選手の様な立場ではあるが、確かな実力を持っているという事であるが、雲の上にいるような存在がいったい何の様なのか。

 

 

 

「この、エリートでもあるべき私を差し置いて、随分と目立ってくれましたわね? 貴方……!」

 

 

 

 そう言われてしまい、別に目立とうとしていない彼女は、驚いて固まってしまったのであった。

 

「……へっ?」

「……何を言い出すんだお前?」

「当たり前でしょう! 私たちのような人間は、特に面子と言うものを重要視するのに、そのスタートダッシュを一撃で打ち壊してくださいましたわね、ええ?」

 

 所謂、セシリアという人のやっかみである。

 

 それなり以上の説得力はあるが、それ以上の事は無いだろうことはわかった。

 

 だが言葉の一つ一つが事実として突き刺さってくるのだから、そこまで強い意志を持っていない夏海には良く効く。

 

 結局この新しい空気にも慣れてきたはずの彼女も、強く出られてしまってまた怯えてしまう──。

 

「特に! 貴方の様な、碌にISを動かしていなさそうな人が、堂々としているなどとは……」

「そ、そんなつもり……」

 

 

 

「──貴様、先程から無力な人間に対して、随分な言いがかりばかりではないか?」

 

 

 

 だが颯爽と二人の間に割り込む篠ノ之箒。

 

 幼馴染の貫禄、流石の高貴な気配を醸し出していたセシリアを、高圧的に挑んできた態度を言葉一つで崩してく。

 

 正論で殴りつけたのもあるが、その立ち振る舞いは流石の一言。

 

「うっ、そ、それは……」

「夏海とて、目立とうとして目立っているわけでは無いのだ。 それを責めるなど……貴様も高貴な生まれだとみるが、その身分で弱い者いじめなど!」

「で、ですがっ」

 

 ────だが言い合いへと発展していく前に、学校の四点チャイムが鳴り始める。

 

 唇をキュッときつくして、二人をキッと睨みつけると。

 

「おっ、覚えておいてくださいましっ!!」

 

 そう捨て台詞を吐いて、とっとと教室へと戻っていってしまうのだが、彼女も問題は一つある。

 

「……同じ教室なのだが」

 

 ぶっちゃけ覚えておいてもなにもないのである。

 

 因みに殺意の籠められた目線は大量に、それも色んな送られていたのだが、それに気が付かないセシリアは、随分な精神の持ち主かただの馬鹿か。

 

 さておき不安げな心持をしていた夏海は、先の事も忘れて心強い彼女が素敵に映らないわけが無い。

 

 いつの間にか箒の服の裾を掴んでしまっていて、ウルウルとした大きな瞳で────彼女にとって、即死級の言葉を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの! とってもカッコよかったよ、箒()()()()()!」

 

 

 

 

 

 

 

 空耳かと思って咄嗟に振り向いたが、何かを言い間違えたかのように、顔を真っ赤にしてすぐにあっと声を上げた彼女を見て、気のせいでは無いと知ったその時──。

 

「あ、ほ、箒ちゃん! 今の、忘れてっ!」

「……ああ、忘れよう。 私は何も聞かなかった、な?」

「う、うん!」

 

 

 

「──────だがいつでも呼んでいいのだぞ、()()()()()とな」

 

 

 

 妖しい笑顔に赤い顔を向けて、艶っぽい目を止めれない。

 

 瞬間、夏海は息をのんで、ついさらにその服の裾をパッと放した。

 

 ただ時すでに遅し、何かにすっかり目覚めてしまった瞳を、震えて見るしかないのでした。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 はてさてこれからどうなるか、ともかく頑張れ、夏海ちゃん! 

 

 ただ間違いなくめんどくさいことは目に見えているから、機会さえあれば、またなけなしの勇気を使ってアクションを起こしたほうがいいぞ!




――――続いた、マジか。

でもなんか読まれているという事なので、百合は正義なんだなって……。

とにかく、感想評価、もしよければよろしくお願いします!

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