こちらIS学園“きらら”行き 作:きらきら星協奏曲
志染さん、1話から5話にかけての誤字報告、大変ありがとうございます!
毎回気を付けておりますが、どうしてもミスしてしまうようで……これからも、こちらでもキチンと推敲していきますが、もしも間違えているとか、何か設定の齟齬があると思われたなら、是非ご一報お願いいたします。
長々と失礼しました、それでは続きをどうぞ。
はてさてかのセシリアという、高飛車ぶったお嬢様の研究は、負けないためにも続きます。
その中で夏海は、ある動画を見つけてしまったのである。
イギリス公式の、BBCから出ている──それはセシリアのISを動かしている動画であった。
そこに説明されているものはIS、確かにIS、名前は『ブルー・ティアーズ』。
所謂専用機と言うものだ。
だがそこに見たのは、夏海が想像してもいなかったすさまじい動きを見せる世界だった。
「すごい……」
周囲を囲むファンネルの様な兵器が飛ぶ。
それが四つ程あるのだが、そこから発射されたビームが、標的を次々に撃ち抜いていく。
しかもその標的は、ただそこに突っ立っているだけなのではない。
それは浮いている、それは泳いでいる、それは滑空している、それは潜っている、それは埋まっている。
それは軌道を変える、それは大きい、それは小さい、それは隠れていた。
人型もいた、本当に昆虫を模したものも、勿論その中には板をただ置いただけの物もあった。
────だが、セシリア・オルコットは例外なく全て撃ち抜いた。
四基のビットを操り、手に持った大きなライフルで狙い、ロケットランチャーで吹き飛ばし。
全てが一撃、まさに百発百中の技術を見せつけられてしまったのだった。
「……」
ノートパソコンの前で茫然としている夏海、残りの時間は後4日。
いやすでに夜の時間になってしまったので、後ほぼ3日と言ったところか。
今の技術を見て、少なくとも彼女はまだ余裕だなと思えるほど、そんなに阿保でも間抜けでもない。
「どーしよ……」
「どうかしたか?」
ベッドの上でぐったりとしている箒は、まるで他人事のように語りかけてくるが、彼女はわかっている。
今の彼女の状況が、冗談で済まされない事を。
そしてそんなふうにしたのは、確かに夏海自身
「勝てそうにないよう……!」
素直に感情を露わにして、降参の意を示してしまった。
しかもその体を、中々に震わせる有様で。
ただそれを見ても箒は、ただ今それをどうにかする術はあまりにも少ない。
「全く……」
「ね、どうしよう……?」
「ある程度は面倒見てやれるし、そこで呆れ目そうにない言葉ばかりが自然に出てくるのは、やっぱり偉いとは思うがな」
そう言うと掛布団を大きく退かせて、まるで隣に誘うかのように、空けられた場所のスーツを軽く二度叩いた。
「……!!」
「全く……胸くらい貸してやろうじゃないか」
こうして箒は小さな体と柔い白磁の肌を堪能しつつも、やっぱりなと思ってしまうのだった。
妙に強くなったかと思えば、結局こうして歪な強さであるのだとわかってしまう。
その正体は何かという事は、別に彼女自身に問いたださなくとも分かる。
「無茶しすぎだ」
「ごめんね……」
弱弱しく謝ってくれるだけ、きっとまだ彼女らしい。
やはりまだ弱いままなのだなと、箒は少し溜息をつくとともに、何処か安心してしまったことに気が付かなかった。
だが更に強く彼女を抱きしめたくなったというのは、行動の裏腹にはそんなことを考えているという証左にはなろう。
暫く面倒は見ていた物の、確かに体力はあったものの、その力が揮えるかはまた別の話であるから。
(心配だ……)
またまた夜は更けていく、だが今日は、月も星も見えない雲がかった空模様だった。
◆
さて日は明けて、アリーナに彼女ら二人はいる。
それは当然、当日に合わせるためのISを見てもらうためである、その時初期設定すら終えていなかったのならば、その面倒も見るつもりだったのだが──。
「持っている? 専用機をだと?」
早速篠ノ之箒の目論見は崩れた。
いやそもそも、何気に役立っているかもどうかわからないような立場だ。
更にこれ以上活躍の場所がなくなると、彼女は今更気付いてさらに慌てる。
「あ、そ、そうだな。 つけ方」
「分かりますよ」
「……スーツの着方」
「もう来てます」
「…………準備、運動」
「そんなに、心配?」
だんだんと落ち込んでいっている箒に、些細ではあるが、自分はちゃんとやっていけると、夏海ははっきりと押しておく。
「でも、このくらい、一人で出来ないとね」
だが──それが予想外の一撃となって、箒の膝がとうとう折れてしまった。
ギャップに負ける剣道女子概念と一体、ジャングルの奥地にも秘めてい無さそうだ。
「そんなぁ……昨日あんな泣いていたのに」
「あっ! 言わない約束だもん……それは」
「もっと頼ってほしいのだがぁ……」
そんなことはならない、残念だったな!
さておき彼女らはするべきことをしはじめる。
例えばISの調子を見なければならないし、そもそも展開のテストに挙動のテスト。
暫く動かしていなかったのだから、そもそも激しい行動に耐えられるかを、二人共々見ておかなければならないが。
「私のでは参考にならないかもしれないな。 『
「上の人、認めてくれなかったの!?」
彼女は肉親がISの製作者という立場にあって、その重要参考人として、大分重要視されてしまっていたのだが、どうやらそこまでの面倒を見てもらえなかったようなのだ。
その理不尽に関しては、夏海も少し怒りを覚えて、かなり真剣な表情になる。
「そんなの……!」
「政治的判断だろうな、おおよそ想像がつく」
「それで……いいの?」
「良いも悪いも、結局私個人でどうにかできる物なら、したいが……」
「……」
つまりあの時セシリアの提案に対して、夏海が何も言えなかったら、ほんの少しの蛮勇を出せなかったら、相当苦しい戦いを強いられていたという事も解る。
第二世代の量産機と──恐らくあの『ブルー・ティアーズ』というISは第三世代ISだから、それこそ性能さというのも生まれてくるはずだ。
それは今やどうにもならないはずだ、当然あの人は知らなかっただろうが──。
夏海はそんな事を知らなかったのだと、やはり暗い顔を浮かばせてしまう。
「暗い顔をするな。 結局私が、実力を見せればいいだけの話だろう」
しかもそうフォローが入ってくるし、本当に何とも無さそうな顔を浮かばせられてしまうから。
だんだんと夏海の顔の影は濃くなっていくし、箒もやらかしたとわかってすぐ焦り始める。
「……そんな話かなあ」
「そ、それに、だな……私もいきなり、ほら専用機だくれてやろうと言われても、正直困る話なのだよ」
そう言うと、最新鋭でもあるISたちの、その欠点を並べたてていく箒である。
「あまりにも独自性が強いから、合う合わないは聞いてくれないものだよ。 第三世代の武装と言うものは、そうだと聞いたから。 そもそもISコアそのものの解明も進んでいない、完全に技術面のブラックボックスだから替えも効かない」
486──それが現在面に出ているISコアの数である、それぞれがその希少さゆえに企業或いは国家機関の管轄下にあるというのは、彼女らも知っている。
「それならいっそ、第二世代で済ましたほうが、十二分なのだ……それに夏海がそれに準じた物をを見るとなれば、それで参考になるだろうからな」
「そ、そうなんだね……」
だとしたならば、夏海がその例にならなければならない。
責任重大であると、改めて思わせられたが──夏海とてIS乗りだ。
親友の、箒の思いに答えられなくて何とする。
そのくらいの気概はキチンと備え付けられていた。
「……それで、何でジッと目線を後ろの方に向けてるの」
「いやあ、早く展開しないのだろうかと思ってな」
「だからってお尻を見る必要はないんじゃない!?」
ぴっちりと張り出した慎ましい肌に、隠し切れないお尻のライン。
だが慎ましいものだった──それこそ隣で並んでいる、箒のその
「相変わらず男子には見せられんことはわかるな、これは……」
「もー、分かりました。 とっとと着ましょう────」
そう言って意識を集中させると、彼女の周囲から立ち上る様、白い光が浮かび上がり、そしてプログラムが浮かび上がる。
座標固定、生体承認、システムチェック、それらすべてをクリアーして。
彼女の体に纏いて現れるのは────。
「『
白い装甲にまとった彼女が、放出された煙の中から現れる。
「────」
箒は一瞬言葉を本当に失ってしまったのは、想像よりもさらに豪華なものが現れた事。
そして何より、そのISが、夏海にとても似合っていたことだ。
「……どう?」
上からそう聞いてくる彼女の、その外見の印象は本当に簡単に、だが実感を持って言い表せられる。
箒は感想を聞いてきた夏海に、一言だけ返すだけで十分だった。
「……お姫様?」
「やっぱり、そんな感じなんだねー……」
くるりと回ると、白い布地のスカートも揺れる。
片側に結ばれた髪を揺らせば、同じように冠も揺れる。
今この瞬間、彼女は本当は、高貴な身分なのではないのか。
自分たちが話しかけてはならない、まさにやんごとなきお方なのではと、そのアリーナを使っている他の者にも思わせるには、十分な装いであった。
「えへへ……これも、倉持さんの所で作ってもらったんだ……。 まあ、あのお姉ちゃんが、心配性だから。 もう持てるコネ全てを使ったんだろうけども……」
何かを言っているが、その全てが箒の耳に入っていって、記憶には残らず通り過ぎて行っている。
「聞いてる?」
そんなわけないだろう。
小さなお姫様に、そう問いかけられていても。
「素敵だ……」
「はい?」
「──お嬢様」
「はい? え?」
昔から彼女は、男よりも男らしいと言われ続けていたのを、ふと思い出す。
それは夏海には、当然のように言っていない事なのだが──勿論それは、全部自分に対する冷やかしなのだと分かっていたのだが、今はそれが誉め言葉にも受け止められるし、或いはそうで良かったのだと感謝し始める。
こうして自分が騎士になれたような、そんな感覚を持てるのならば。
「御手を……」
「ちょ、ちょっとー?」
まあ残念ながら、そんなものに夢中になってしまった彼女は、少なくとも冷静にはなれなかったものだと、自分自身でわからなかったので。
そこからはもう練習だとか、そんな事情じゃなくなっていた。
一応勝機に戻してはみたものの、そして練習自体も、なぜか彼女に許可を取る形になってしまっていた物の。
「はぁ……」
(……)
一挙一動の度に、こうして夏海に対する視線が熱くなっていって、しかもそれがだんだんと集まってきているのだから、彼女は全く集中できない。
しかも決まって、円舞擬きなんかをすると──。
「きゃー!」
「素敵ー!」
「あっ、こっち見た! こっち見たよ絶対に私に向けて!」
「違うわよ、私に向けてきたんだから」
「どうして……どうして小生にバラを持たせてくれなかったのだ……!!」
こんなふうに面倒になるばかりであり。
結果としてISを動かすという目的ならともかく、しっかりとその動きを確認できるかどうか、そして準備運動が出来たかどうかすらわからなかったのだった。
それに加えて────。
「えっ、もう見せてくれないのか……?」
「もうまともに使えないでしょ!? みんな夢中になっちゃって……」
「そんなぁ……」
結果として、早々に衆目に──少なくとも、クラスの代表が決まるまでは──見せられることは無くなり、ある意味練習不足のまま、当日を迎えてしまうのであった。
◆
はてさて大変だ、織斑夏海ちゃん!
練習不足でしたーは、どうにも通用しない相手だと思うぞ!
ISとは短くない付き合いだと思うけども、油断は絶対、禁物だ。
うわあ、大変なことになっちゃったぞ。(夏海感)
少なくとも、彼女はそう考えているだけ、マシだろう。
ともかく、感想評価、もしよろしければお願いいたします。