こちらIS学園“きらら”行き   作:きらきら星協奏曲

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第8話 白銀、舞う!

「──そ、それでもぉっ!」

 

 またもやレーザーが飛んでいく、今度はライフルからの射撃だけでなく、その後方に浮遊している四つの砲口からも、レーザーが一斉に飛び出した。

 

 勿論先の光景のように、その攻撃はまかり通らぬ。

 

 今度のバリアーは、まるで甲羅のように見えるのではなく、ひらひらとはためく布のレースのよう。

 

 だからか、その光線は防がれたとか弾かれたというより、まるで()()()()()ように見える。

 

「そんなのありって……っ」

 

 そしてレースで体を覆うとともに、持ち直した杖を大きく振り上げる。

 

「言わないん……」

 

 さらに光が収縮して、異常な光度を発露させる。

 

 そのせいで一瞬、アリーナ内部が暗くなったように感じられるが、全くもってその通りであり、彼女らの気のせいではない。

 

 それだけのエネルギー量があるのだ──大きく横に振りかぶった杖の先端、あの圧縮された“劫火”には! 

 

「だっ」

 

 杖を振り抜くとゆっくりと進んでいく光、その内部には、すさまじいエネルギーが凝縮されている。

 

 しかもだんだんと加速を駆けていくそれ。

 

 流石に慄いたセシリアは、だが少し軌道をずらせば、易々と回避できることはすぐにわかる。

 

 だからこそ思った、もしかしたらと、一瞬思ってしまう。

 

「こちらから仕掛けますわ!」

 

 左に避けつつもライフル──『スターライトMark3』を構え、セシリアは()()()()()()()()を見据えて照準を絞る。

 

 さらに一斉に向かわせたブルーティアーズ、上空を切り裂いて駆けていく。

 

「さあ、踊りなさい──可憐に、舞ってみせなさい!!」

 

 

 

 

 

(“ほのお”は予想通り! よし、後は……)

 

 ふわりと宙を飛ぶ白い衣装、何と夏海はその時──()()()()()()

 

 その光景を見た人は、きっと信じられない事をしていると思うだろう。

 

 だがしかし、よく見るとその杖の色んなところから、ブスブスと()()()()()()()()に気が付けば。

 

(やっぱり“ほのお”は焼き切れちゃうなぁ……)

 

 また白い杖が何処からか飛び出て、夏海の右手の収まると同時に、彼女の体はその場で宙返り。

 

 迫るビームを回避したのだ、更にその身を回転させて、一番火力のあるだろうビームを回避。

 

 夏海から見て顔を上げた先にいる、未だライフルを構えて狙い澄ましているセシリアを、彼女もその視線を外さないよう努力する。

 

 

 

『いいか? まず相手と戦う────つまり一対一になった時に、一番大事なのは、相手を見るという事だ。 それは他のスポーツ、或いは他の対象になったとしても、大事なことだとわかるだろう。 ……まあ正直お前にそんな技能が必要じゃないだろうが……

(そう、相手をよく見る。 一番大事!)

 

 

 

 小声で願ったその言葉、残念無念届かない。

 

 いやある意味通じているのか、姉である千冬の教えはしっかりと、彼女の中に受け継がれている。

 

 そして彼女は、まあ、それなりに強くなった──と、彼女自身は思っている。

 

(バズーカ、いや、ロケット!)

 

 空気を蹴って踊る小さなお姫様、その後方で自動で爆発する弾頭の破片が、彼女のシールドに若干当たる。

 

 正直見てくれは非常に悪い、アリーナの片隅から押し殺した悲鳴が上がる。

 

 一々そう思う間もないので、どちらも気にしてはいないのだが。

 

「システム……」

 

 夏海は呟く。

 

 視線の片隅には、文字が浮かび上がる、それはあのセシリアのホログラフィックと同じもの。

 

 だがそこに表示されている文字は、SFとは少しかけ離れているワードなのだ。

 

 

 

 曰く──『エーテル・フォトン制御システム:残存燃料88%』

 曰く──『疑似魔導法式機関:正常』

 曰く──『智慧の樹:グリーン』

 曰く──『システム・クリフォト:作動』

 曰く──『白銀の弾丸:使用可能』

 

 

 

 どれもこれもがファンタジック、無意味な単語が並んでいるのか、まさか中二病か何かと思われよう。

 

 だが彼女の恰好は伊達ではない、魔法に似た物を放っているのも事実。

 

 いっそ嘘だと笑わば笑え。

 

 きっと彼女にとって、それが清々するだろうから。

 

 

 

(来た、ライフル! その時にセシリアさんは……)

 

 だが勿論そちらに注視していられない、別方向から、遠くから来るレーザー。

 

 縦横無尽に駆け回るドローン、いやファンネルと言ってしかるべきもの。

 

 それを一瞥、姿勢を真っすぐ地面に向けて直す。

 

 

 

 そう見せかけて──。

 

 

 

止まり、固まる──“こおり”よ! 

 

 

 

 下から上へと振り上げた杖から、氷柱が空を迸った。

 

 ビームを遮るどころか、その先にあるドローンすら割いていったので、セシリアも思わず銃口を降ろしかける。

 

「はいぃ!?」

 

 それはそうだろう、今度こそ魔法と言ってしかるべき、超常現象的事象が巻き起こったのだ。

 

「い、いやいやっ、そんな事では……」

 

 しかも慌てる彼女の眼前に一気に近づいて、彼女は杖を振りかぶった。

 

 その杖に青い光が迸り、何かの攻撃にも思えたが──。

 

瞬け、“せんこう”!! 

 

 先程よりもさらに眩しい光が、ほんの一瞬だけ閃く。

 

 いいや、それでもただの光なのだ。

 

 それに似たようなものは、他の誰かもとっくに使用している。

 

 音もなければ、少し範囲が広いだけの、ただの劣化閃光手榴弾(フラッシュバン)

 

 しかもハイパーセンサーが相手だ、遮光機能はオートで発動するし、攻撃される警告アラートも鳴り響く。

 

 

 

 だからこそセシリアは、咄嗟に歯噛みしつつも、そのライフルを警告された方向に向ける──。

 

 

 

 だが、夏海にはそれでよかったのだ。

 

 一気に接近して立ち止まると──両手で杖を握りしめた。

 

 

 

(その一瞬で、全然十分!)

 

 

 

 高らかに両手で掲げた、その杖の先端に、また光が生まれたのかと思われたが──。

 

 

 

(らーい)!! 

 

 

 

 違う。

 

 稲光だ、まさにサンダーボルト、それが刃となって。

 

 雲もないのに生み出された電気は、あの光は────天へと劈く! 

 

 

 

(めーい)!! 

 

 

 

 セシリアは感じる──()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それがすぐにバリアーだと気づくも遅い、そう、彼女は()()()()()()()()()()()! 

 

(いつのま──)

 

 そして、またも彼女は、叫んだ。

 

 

 

飛んでいけーっ!! 

 

 

 

 ────セシリアは閃光に包まれた。

 

 この光は脅しでも何でもないから、スーツが破れて、美しい身肌が見える彼女が墜落していく。

 

「あ、ああ……そんな」

 

 ──彼女が、多分行き過ぎた努力をした、その結実した実力である。

 

 そういう事を分かってしまった時、セシリアは何て自分は間抜けなのだろうと、自分を蔑んでしまうから。

 

(……私が、負けた。 いや、これは……違う?)

 

 あんまりにも遅い後悔は、そして勝負に負けたという悔しさは、他の者からは髪で覆い隠されていたが──。

 

「あっ」

 

 落ちていく彼女に急いで向って行ったのは、他の誰でもない──織斑夏海、その人だった。

 

「……どうして」

「何言ってるんですかっ!」

 

 そう言って、悲しい目で見る彼女の顔。

 

 冠は眩くて、あまりにも見ていられない。

 

「勝負ですから、勝ったも負けたもあります。 なのに、何勝手に、絶望しているん……ですか、です! 

「ですが……」

「……」

 

 たどたどしい強さに負けた夏海は、だが確かに真剣にこちらに向いていたものだが。

 

 彼女がそう己を責めてしまうのも解る。

 

 元々が、言いがかりの様なものだから。

 

 こんな弱い人間が、何故こんな真似をするのかという──まさに自分が弱いと言っているものではないか。

 

 それが、こんなふうにやられて。

 

 だが。

 

 彼女は強さを証明したのだ。

 

「……そんなの、もう」

 

 そう──。

 

 

 

「そんなのもう、過ぎた話なんですから」

 

 

 

 満面の笑みをうかべる夏海、しかし得意げな顔ではないという事は、全くもってセシリアにはわかる。

 

 こんなにも小さな同い年が、こんなにも強いなのだと。

 

 強いとは、こうなのだと。

 

「ただ、とっても強かったですっ、いい勝負でしたっ」

「────」

 

 セシリアにはわかってしまった。

 

 お姫様抱っこで抱きかかえられてしまった恰好から、ゆっくりと降ろされる彼女は、まだ何とか立てる気力はあった。

 

 もしくは、夏海の純粋さというか、潔さに助けられたと言えるのか。

 

 

 

「ありがとう、ございましたっ!」

 

 

 

 対する夏海は一歩下がって、装備を解除すると大きく礼。

 

 すぐに頭を上げるとともに、小さな右手を差し出してくれた。

 

「……」

 

 それをじっと見つめていたが、すぐにその思いに返すしかない。

 

 或いは、その邪気を絆されてしまったか。

 

 その右手を差し出し返して、握手を交わす。

 

「……ありがとう、ございましたわ」

 

 心のどこかに度し難さを覚えていても、だがそこに付け込まれるようなことはならないだろう。

 

 そうだとしたら、誰がためになろうかとも信じたし、それに────。

 

「?」

 

 こうしてじっと見つめるその人は、持てる力を持って、本気で立ち会ってくれたのだから。

 

 それには、素直に感謝しか無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 お疲れ様、織斑夏海ちゃん。

 

 今はただ、ゆっくりその身を休めて──。

 




本当はもう少し戦うつもりだったけど、女の子を曇らせる作品ではないので。

こんなのでもよろしければ、感想評価、お願い致します。
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