こちらIS学園“きらら”行き 作:きらきら星協奏曲
「──そ、それでもぉっ!」
またもやレーザーが飛んでいく、今度はライフルからの射撃だけでなく、その後方に浮遊している四つの砲口からも、レーザーが一斉に飛び出した。
勿論先の光景のように、その攻撃はまかり通らぬ。
今度のバリアーは、まるで甲羅のように見えるのではなく、ひらひらとはためく布のレースのよう。
だからか、その光線は防がれたとか弾かれたというより、まるで
「そんなのありって……っ」
そしてレースで体を覆うとともに、持ち直した杖を大きく振り上げる。
「言わないん……」
さらに光が収縮して、異常な光度を発露させる。
そのせいで一瞬、アリーナ内部が暗くなったように感じられるが、全くもってその通りであり、彼女らの気のせいではない。
それだけのエネルギー量があるのだ──大きく横に振りかぶった杖の先端、あの圧縮された“劫火”には!
「だっ」
杖を振り抜くとゆっくりと進んでいく光、その内部には、すさまじいエネルギーが凝縮されている。
しかもだんだんと加速を駆けていくそれ。
流石に慄いたセシリアは、だが少し軌道をずらせば、易々と回避できることはすぐにわかる。
だからこそ思った、もしかしたらと、一瞬思ってしまう。
「こちらから仕掛けますわ!」
左に避けつつもライフル──『スターライトMark3』を構え、セシリアは
さらに一斉に向かわせたブルーティアーズ、上空を切り裂いて駆けていく。
「さあ、踊りなさい──可憐に、舞ってみせなさい!!」
(“ほのお”は予想通り! よし、後は……)
ふわりと宙を飛ぶ白い衣装、何と夏海はその時──
その光景を見た人は、きっと信じられない事をしていると思うだろう。
だがしかし、よく見るとその杖の色んなところから、ブスブスと
(やっぱり“ほのお”は焼き切れちゃうなぁ……)
また白い杖が何処からか飛び出て、夏海の右手の収まると同時に、彼女の体はその場で宙返り。
迫るビームを回避したのだ、更にその身を回転させて、一番火力のあるだろうビームを回避。
夏海から見て顔を上げた先にいる、未だライフルを構えて狙い澄ましているセシリアを、彼女もその視線を外さないよう努力する。
『いいか? まず相手と戦う────つまり一対一になった時に、一番大事なのは、相手を見るという事だ。 それは他のスポーツ、或いは他の対象になったとしても、大事なことだとわかるだろう。 ……まあ正直お前にそんな技能が必要じゃないだろうが……』
(そう、相手をよく見る。 一番大事!)
小声で願ったその言葉、残念無念届かない。
いやある意味通じているのか、姉である千冬の教えはしっかりと、彼女の中に受け継がれている。
そして彼女は、まあ、それなりに強くなった──と、彼女自身は思っている。
(バズーカ、いや、ロケット!)
空気を蹴って踊る小さなお姫様、その後方で自動で爆発する弾頭の破片が、彼女のシールドに若干当たる。
正直見てくれは非常に悪い、アリーナの片隅から押し殺した悲鳴が上がる。
一々そう思う間もないので、どちらも気にしてはいないのだが。
「システム……」
夏海は呟く。
視線の片隅には、文字が浮かび上がる、それはあのセシリアのホログラフィックと同じもの。
だがそこに表示されている文字は、SFとは少しかけ離れているワードなのだ。
曰く──『エーテル・フォトン制御システム:残存燃料88%』
曰く──『疑似魔導法式機関:正常』
曰く──『智慧の樹:グリーン』
曰く──『システム・クリフォト:作動』
曰く──『白銀の弾丸:使用可能』
どれもこれもがファンタジック、無意味な単語が並んでいるのか、まさか中二病か何かと思われよう。
だが彼女の恰好は伊達ではない、魔法に似た物を放っているのも事実。
いっそ嘘だと笑わば笑え。
きっと彼女にとって、それが清々するだろうから。
(来た、ライフル! その時にセシリアさんは……)
だが勿論そちらに注視していられない、別方向から、遠くから来るレーザー。
縦横無尽に駆け回るドローン、いやファンネルと言ってしかるべきもの。
それを一瞥、姿勢を真っすぐ地面に向けて直す。
そう見せかけて──。
「止まり、固まる──“こおり”よ! 」
下から上へと振り上げた杖から、氷柱が空を迸った。
ビームを遮るどころか、その先にあるドローンすら割いていったので、セシリアも思わず銃口を降ろしかける。
「はいぃ!?」
それはそうだろう、今度こそ魔法と言ってしかるべき、超常現象的事象が巻き起こったのだ。
「い、いやいやっ、そんな事では……」
しかも慌てる彼女の眼前に一気に近づいて、彼女は杖を振りかぶった。
その杖に青い光が迸り、何かの攻撃にも思えたが──。
「瞬け、“せんこう”!! 」
先程よりもさらに眩しい光が、ほんの一瞬だけ閃く。
いいや、それでもただの光なのだ。
それに似たようなものは、他の誰かもとっくに使用している。
音もなければ、少し範囲が広いだけの、ただの劣化
しかもハイパーセンサーが相手だ、遮光機能はオートで発動するし、攻撃される警告アラートも鳴り響く。
だからこそセシリアは、咄嗟に歯噛みしつつも、そのライフルを警告された方向に向ける──。
だが、夏海にはそれでよかったのだ。
一気に接近して立ち止まると──両手で杖を握りしめた。
(その一瞬で、全然十分!)
高らかに両手で掲げた、その杖の先端に、また光が生まれたのかと思われたが──。
「
違う。
稲光だ、まさにサンダーボルト、それが刃となって。
雲もないのに生み出された電気は、あの光は────天へと劈く!
「
セシリアは感じる──
それがすぐにバリアーだと気づくも遅い、そう、彼女は
(いつのま──)
そして、またも彼女は、叫んだ。
「飛んでいけーっ!! 」
────セシリアは閃光に包まれた。
この光は脅しでも何でもないから、スーツが破れて、美しい身肌が見える彼女が墜落していく。
「あ、ああ……そんな」
──彼女が、多分行き過ぎた努力をした、その結実した実力である。
そういう事を分かってしまった時、セシリアは何て自分は間抜けなのだろうと、自分を蔑んでしまうから。
(……私が、負けた。 いや、これは……違う?)
あんまりにも遅い後悔は、そして勝負に負けたという悔しさは、他の者からは髪で覆い隠されていたが──。
「あっ」
落ちていく彼女に急いで向って行ったのは、他の誰でもない──織斑夏海、その人だった。
「……どうして」
「何言ってるんですかっ!」
そう言って、悲しい目で見る彼女の顔。
冠は眩くて、あまりにも見ていられない。
「勝負ですから、勝ったも負けたもあります。 なのに、何勝手に、絶望しているん……ですか、です!
「ですが……」
「……」
たどたどしい強さに負けた夏海は、だが確かに真剣にこちらに向いていたものだが。
彼女がそう己を責めてしまうのも解る。
元々が、言いがかりの様なものだから。
こんな弱い人間が、何故こんな真似をするのかという──まさに自分が弱いと言っているものではないか。
それが、こんなふうにやられて。
だが。
彼女は強さを証明したのだ。
「……そんなの、もう」
そう──。
「そんなのもう、過ぎた話なんですから」
満面の笑みをうかべる夏海、しかし得意げな顔ではないという事は、全くもってセシリアにはわかる。
こんなにも小さな同い年が、こんなにも強いなのだと。
強いとは、こうなのだと。
「ただ、とっても強かったですっ、いい勝負でしたっ」
「────」
セシリアにはわかってしまった。
お姫様抱っこで抱きかかえられてしまった恰好から、ゆっくりと降ろされる彼女は、まだ何とか立てる気力はあった。
もしくは、夏海の純粋さというか、潔さに助けられたと言えるのか。
「ありがとう、ございましたっ!」
対する夏海は一歩下がって、装備を解除すると大きく礼。
すぐに頭を上げるとともに、小さな右手を差し出してくれた。
「……」
それをじっと見つめていたが、すぐにその思いに返すしかない。
或いは、その邪気を絆されてしまったか。
その右手を差し出し返して、握手を交わす。
「……ありがとう、ございましたわ」
心のどこかに度し難さを覚えていても、だがそこに付け込まれるようなことはならないだろう。
そうだとしたら、誰がためになろうかとも信じたし、それに────。
「?」
こうしてじっと見つめるその人は、持てる力を持って、本気で立ち会ってくれたのだから。
それには、素直に感謝しか無いのだ。
◆
お疲れ様、織斑夏海ちゃん。
今はただ、ゆっくりその身を休めて──。
本当はもう少し戦うつもりだったけど、女の子を曇らせる作品ではないので。
こんなのでもよろしければ、感想評価、お願い致します。