「もしも、生まれ変わらなくて良いなら、この世界でずっと一緒にいれますように。」
滅びゆく金銀水晶の世界。その世界の主人公であるゴールドは一番好きで、愛しきることが出来なかったもう一人の主人公であるクリスを色違いのセレビィにじくうホールを通じてHGSSの世界を逃がし、自身はこの金銀水晶の世界に残り、静かに死の瞬間を待っていた。
「・・・・ああ、俺はあいつを愛しきれなかったな。」
今ゴールドの脳裏に蘇るのは初めてクリスがこの世界に現れた日の記憶だった。
2000年
「・・・・あれ? 何だこれ?」
ここ最近ゴールドはどんなに頑張っても無駄だ。どうせ明日にはレポートが消える世界で過ごしていた。笑顔は消え失せ、精気を失っていた。消えるレポート、また選ばさせられる御三家、何度も戦うシルバー。
「でも、何かが違うぞ。まるで新たな風が吹き始めたかのように。」
「おじゃましま~す!」
「?」
突然真っ暗な世界に響く声。
「自分以外に主人公などいないはずなのに?って思ってるんでしょ?」
「お、お前は一体何者なんだ?」
「ちょっと? 初対面の女の子に対してその態度はないんじゃない?」
「・・・・・・。」
この時俺はこの少女から新たな風が吹き始めたのだと感じた。
「・・・・ゴールド。ワカバタウンのゴールドだ。」
「貴方、ゴールドって言うのね!! とってもいい名前じゃない!!」
「・・・・・。」
「私、クリス!! ポケモンのことなら何でも知ってるよ!!」
「そうか。ま、せいぜい足手まといにならねえように頑張ることだな。」
「言うわね~。でもそう言われると燃えちゃうのよね~、何故か。」
俺とクリスの関係は言うなら戦友だった。ヒビキとコトネのようなイチャイチャではなく、適度に距離を保ちつつ離れないという関係だった。
「交互に主人公になるのか。」
「じゃあ、陰になったらお互い助け合おうね!!」
交互に主人公を勤め、選ばれなかった方が選ばれた方の手助けを陰ですることにして、共に支え合った。本編には出れなくとも、陰で支えられる、笑顔を守ることが出来るのは失意の中にあった俺には刺激的で、生き甲斐だった。
「だから、俺はクリスを逃がしたんだ。だけど・・・。」
(でも何故だろう・・・もう一度会いたい・・・会いてえよ・・・)
「クリス!!」
「ゴールド!!」
「へ?」
ゴールドの背後から自分を呼ぶ声がする。それは悪にでもなってやるという想いでこの世界から逃がした
「クリス?!」
「ゴールド! 会いたかったわ!!」
クリスは泣きながらゴールドに抱きついた。
「・・・・ば、ばかや・・・馬鹿野郎!!」
泣きながらゴールドは怒鳴った。それと同時にクリスを抱きしめる。
「なんで・・・何で帰って来やがったんだよ!! 馬鹿じゃねえのかよ!! 死にてえのかよ?!」
「違うのゴールド。私は私のいるべき世界に帰って来ただけよ。」
ゴールドにクリスはHGSSの世界の話を言って聞かせた。別次元の世界ではゴールドとよく似た姿のヒビキがいること、クリスに当たる人物はコトネになっており、自分とよく似た存在はいないこと、そして自分の存在がヒビキを苦しめてしまうことを話した。
「私はあくまでこの世界(金銀水晶)にいなきゃいけない存在なの。例えこの世界が滅ぶことが約束されていたとしても。」
「・・・・そうか。」
ゴールドは強くクリスを抱き寄せる。
「クリス・・・・俺は・・・。」
時が流れ、少しずつ景色や音楽が黒に塗りつぶされていた金銀水晶の世界。とうとう二人のいるところまで迫り、そして体をも飲み込みつつあった。
「もし、許されるなら俺はお前のことを。」
言い切る前にゴールドとクリスは黒に塗りつぶされる。そして最後の一ビットが塗りつぶされそうになった。
HGSS次元 コガネシティのポケモンセンター
「誰かは言っていた。この世界は奇跡で出来ているってね。」
「どうしたのヒビキ君? 急にロマンティックになって。」
「いや、俺は思うんだ。もし許されるなら、クリスさんともう一人の俺のゴールドさんが幸せに生きられる世界があっても良いんじゃないかって。」
「・・・そういう世界があれば確かにクリスさんもゴールドさんも報われるわね。」
「俺とコトネがこうして幸せに生きているなら、もう一人の俺達だって幸せになって欲しいし、なるべきなんだ。」
その時、奇跡は起きた。
「・・・・・・あれ? ここは?」
「もう! 何してるのよゴールド!!」
「・・・・あれ? クリス? どうして俺達は生き残っているんだ?」
「何言ってるのよゴールド? 私達はVCの世界を生きてるのよ? ちょっと疲れてるんじゃないの? まあ、せいぜい足手纏いにならないように頑張ことね。」
「・・・・・。」
誰かが言っていた。この世界は奇跡で出来ていると。
「・・・・そうだな。それじゃ、行くとするか!」
「俺の!」
「私の!」
「「ジョウト地方を駆けまわる冒険へ!!」」
勢いよく二人は黒く塗りつぶされた待機場所から表舞台へ飛び出す。
「・・・・ふっ。」
(今度こそ、俺はお前を愛しつくしてやる。もう一度、今度こそ、俺はお前を愛して見せる。)
(完)