プラズマフリゲート艦内
「おらおらどけどけえ!!」
ラクツらに構わず進撃を続けているヒュウ。彼の思いはただ一つ。
「俺の妹のチョロネコを、返しやがれええええ!!」
自らの不手際で奪われた妹の手持ちポケモンを取り返す。その想いが彼を突き動かしていた。
「ここが、プラズマフリゲートの中枢区画か。」
指令室に入るヒュウ。
「おや? 見慣れない顔ですね? サガミ部長から貴方が味方するとは聞いていないのですが。」
「サガミだが何だか知らねえがチョロネコを返しやがれ!!」
「チョロネコ・・・ああ、それでしたらあちらに。」
男が指さした先にはチョロネコの進化形のレパルダスが昼寝をしていた。
「申し遅れましたが、私は国際警察より内偵として送り込まれましたアツギです。決して貴方の敵ではございません。」
「・・・・そうか。アツギ、本当にこいつが。」
「ええ、間違いなく貴方の妹さんの、ヒオウギで奪われたチョロネコです。既にダークトリニティは拘束済みな上、裏も取れています。後は本部に輸送するだけです。」
見てみれば、動きを封じられ、完全に戦意を喪失したダークトリニティが転がっていた。周囲をカイロスとルージュラが監視している。もし抵抗しようとすれば直ぐに行動を起こせるように準備しているようだった。
「心中お察しします。ずっと探し続けていた大切なポケモンがこのような形となって。」
「いや、良いんだ。」
「・・・・。」
「姿が変わっていようが、こいつは間違いなくあの時のチョロネコだ。」
レパルダスの顎を優しく撫でるヒュウ。
「ようやく、俺の闘いは終わった。」
安心し、笑顔を見せるヒュウ。
「いいえ、どうもそうはいかないようです。こちらをご覧ください。」
モニターにジャイアントホール最奥部の映像が映し出される。
「な、何だあれは!?」
ジャイアントホール最奥部
「実に素晴らしい!! まさかレシラムとゼクロムを同時に融合してみせるとは!!」
ゲーチスの目の前には対となる二匹のドラゴンを吸収したキュレム最終形態が鎮座していた。
「さあ、キュレム! まずはあの裏切り者から始末するのです!!」
「ヒュララララララ!!!!」
「ここが最奥部か。一層冷え込んできたな。」
「でも、ここが。」
「ああ。ここが最後の決戦の地だ。それとファイツ。」
「?」
「決して僕から離れるんじゃないぞ。凍え死ぬぞ。」
今にも凍り付いてしまいそうな極低温の冷気を生み出し続けるキュレム。それぞれが単身で踏み込んで行けばまともに訓練を受けていないファイツは確実に命を落としていた。それどころか、ラクツさえ危険な状況である。
「よし、行くぞ!!」
「ええ!!」
最奥部に突入する二人。
「ら、ラクツ君! あれ!!」
プラズマフリゲート艦内
「おそらくあれはキュレム、レシラム、ゼクロムが融合した真の姿。」
「ど、どういうことだ!?」
「とあるドラゴンポケモンがレシラムとゼクロムに分離した際に余りとして排出された「虚無」を司るドラゴンであるそうです。しかし、そのとあるドラゴンポケモンはあまりにも強すぎたが故に現在の三つにとある神によって切り離されたとも。」
「とある神って、一体何なんだ!!」
「おそらく、警視の六匹目、それこそがとあるドラゴンを三つに切り離した神であり、そして我々の切り札だ。」
ファイツの指さした先には一体のドラゴンが立っていた。
「お、教えてラクツ君。このポケモンは一体何なの?」
「ヒュララララララ!!」
キュレムはこちらに気づいたのか、極低温の冷気を飛ばしてくる。
「!!」
とてつもない冷気がファイツの方に向かっているのにラクツが気が付いた。
「ファイツ! 危ない!!」
「え?」
とっさにラクツの体はファイツを守らんと反射的に動いていた。
「ら、ラクツ君!!」
「だ、大丈夫かいファイツ・・・。」
ファイツをかばい、体の半分以上が凍り付いてしまったラクツ。
「大丈夫って、こっちのセリフよラクツ君!!」
「はははは、それもそうだな。」
「何笑っちゃってんのよ!! 貴方は今!」
「それより。」
ゲノセクトをボールに戻し、ピンク色に輝くボールを取り出した。
(あ、あのボールは!!)
ファイツは海底遺跡での出来事を思い出していた。
(あの時ダイビングで脱出した時に使っていた・・・)
「これが僕の六匹目だ。どうやら他のボールは全て凍り付いてしまい使えないようだ。ゲノセマルは先の闘いでもう限界だ。君のタマゲタケも寒さにもう限界に見える。」
見てみると、寒さに完全に動きが鈍っているタマゲタケがいた。
「だが、このポケモンが全てを解決してくれるだろう。だからこそここまで凍り付くことなく来ることが出来た。」
「ラクツ君・・・。」
「それと、・・・・こ、・・・・これ、これも。」
薄いピンク色の小さな板を手渡す
「そのプレートが、新たな姿を、作り出す、だ、だろう。はあ、はあ、ニックネームは・・・・・。」
気を失い、力なくその場に倒れるラクツ。彼の手からボールが落ち、ファイツの方へと転がって来た。
「ラクツ君・・・。」
彼の六匹目のポケモンを入れたボールを拾い上げるファイツ。
(どうしてだろう。このポケモンから、力を感じる。それも、とても大きな。そして、何でだろう。とても、温かい。)
彼女がそのボールを手にした瞬間、寒さに震えていたタマゲタケが元気になった。
「とにかく、行かなくちゃ。ラクツ君の想いを、無駄にしない為に!!」
奥へと向かうファイツ。
「・・・・ファイツちゃん。あとは・・・・頼む・・・よ。」
ラクツは完全に意識を手放した。
「まさか、こんなことになるとは。想定外ですね~。」
ヒートロトムを抱え、寒さから何とか逃れているアクロマが隅からキュレムを見つめていた。
「しかし、あれではキュレムの真の力を発揮できないでしょうに。さて、どうなることやら。良いデータが取れそうなのは確かですがね~。」
プラズマフリゲート艦内
「何か俺たちに出来ることはねえのか!!」
「無理だ! これ以上は我々も危険だ!!」
「じゃああいつらを見殺しにしろって言うのかよ!!」
「・・・・彼らなら、何とかしてくれると信じるしかありません。とにかく我々はこれよりジャイアントホールより離脱致します。」
「そうだ。彼らなら何とかしてくれると思うよ。」
「俺もそう思うぞ。なあ社長!」
「ええ。きっと、彼らなら。」
「・・・・やはり艦内に収容されていましたか。理想の英雄、真実の英雄、そして社長。」
アツギがN、ブラック、ホワイトに視線を向ける。
「ヒュウ、お前にも思うところはあるだろう。だが、ここは耐えるしかねえんだ。」
「・・・・・・・・・くっ!」
「俺だって、あいつらを助けてやりてえ。だが、今は!!」
プラズマフリゲートはジャイアントホールより緊急離脱を開始。
「こちらプラズマフリゲート! これより本艦は、タチワキ港に向け、脱出する!!」
「こちらナルセ。こちらはそなた等を出迎える手はずは出来ている。大至急離脱されたし。」
様々な思いを抱え、フリゲートはジャイアントホールより完全に離脱した。
ジャイアントホール最奥部
「ここが、最奥部の中の更に奥。そして。」
「ヒュララララ!」
「キュレムさん、急に力を取り戻し、そして悪い人に利用されそうになって怒っているんですね?」
「ヒュララララララ!!!」
「でも、今から解放して。」
「それはどうですかな?」
「!!」
「君は確か、裏切り者ロッドの元で活動していた団員ですね?」
「ゲーチス!」
「どうですか? もう一度ポケモンの真の解放を勝ち取る為に共に闘おうではありませんか?」
「ふざけないで!! あんたはそう言って皆をだましてたくせに!!」
「はて? 何のことでしょうかね?」
「とぼけないで!!」
「まあ、良いでしょう。そう言えば、彼はどうしたのですか? 警視ラクツとやらは。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「そう言えば貴方はボールを使っていないはず。そのボールは彼の物ですか?」
ゲーチスは彼女の右手に握られたピンクのボールに目をやる。
「ええ、これはラクツ君の最後のポケモンを納めたボールよ。そして、ゲーチス。貴方の野望を止める最後の希望よ!!」
「ふん! どんなポケモンであろうとこの究極完全体とも言うべき存在となったキュレムの前には無意味! 恐らく彼は今氷漬けにでもなったのでしょう。ならば直ぐにでも貴方を彼の元に送って楽にしてあげましょう。行くのです!! キュレム!!」
「ヒュララララララ!!!!!!!」
「ラクツ君、貴方の力を私に貸して!」
ファイツはラクツの最後のポケモンを繰り出した。
決着の時間は近い。
(続く)