国際警察本部
「長官、そこを動かないで頂きますよ。」
「ヴィス警視総監・・・何故?」
「全てはポケモンの解放の為、ですよ長官。」
「くっ・・・・・。」
国際警察公安部棟部長室
「ナルセは無事ハンサムらと接触し、こちら側に付かせることに成功。その上メモリーの回収も達成か。これでアクロママシーンを完全に無効化させることが可能となるわね。オウメ、いよいよ特別作戦発動よ。」
サザナミに派遣している職員に指示を出すサガミ。
「了解です。既にサザナミで待機を完了し、ラクツ警視らの到着を待っております。」
「それじゃあ、あとは任せたわよ。」
通信を切ったサガミ。
「さて、此方も、作戦発動と行きますか。ヨコスカ隊長?」
「・・・・・御意。」
サザナミタウン
「うう・・・・。」
「目は覚めたか?」
「あ、はい。あれ? ここは。」
「ここはサザナミタウン。海底遺跡から僕らは脱出したんだよ。」
「・・・・・・海底遺跡。」
ファイツは海底遺跡であったことを振り返る。
(確か、ラクツ君は水中活動可能なポケモンはいなかったはず・・・もしかして、あの時の)
「僕が起きるまで見ていた夢の中に登場したポケモン。あれが噂に言うハイリンクの森というのだろうか。ともあれ、今の僕には水中から脱出可能なポケモンはこれしかない。何の意図があってかは分からないが、よろしく頼むぞ。」
(そしてあの聞いたことのない鳴き声。)
「ファイツ君!! 大丈夫か!!」
「あ、うん。大丈夫だから。そんなに心配しないで。」
起き上がるファイツ。見渡すとラクツの隣に見知らぬ男性が立っていた。おそらく、国際警察関係の者なのだろうとファイツは思った。
「初めましてファイツ殿。私は国際警察公安部のオウメと申します。この度は不意にプラズマ団との戦闘に巻き込んでしまいましたこと、誠に申し訳ございません。」
「いえ、彼と共にキュレムを助ける為に闘うと決めたのは自分ですから。」
「そうでしたか。では、今後も事件解決までは共に彼と闘う、でよろしいでしょうか?」
今後の行動を尋ねるオウメ。背後ではラクツが目をつぶって腕を組んで立っている。
「・・・もし、嫌だと言った場合は。」
「変わりません。我々は貴女の身柄を無事ヒオウギに届けるように言われておりますから。」
「そうですか。」
「でも。」
オウメがファイツに耳打ちをする。
「ここだけの話、サガミ部長は君を国際警察に迎え入れる用意があると言っているのです。あの魔女が何を考えているのか、あるいは別の人間の差し金なのか分かりませんが、どうも君を彼と共に行動させたいようなのです。」
ラクツに聞こえないように小声で話しオウメ。
「どうか、御検討願いたい。私は部長からそう言われておりますので。では。」
オウメはそう言ってその場を去った。
「で、どうするの?」
「へ?」
「この後のことさ。僕は決して君を無理に同行させようだなんて微塵も思っていない。おそらく君を僕と同行させろとかという話をしていたんだと思うけど。」
「・・・聞いてたの?」
「いいや、君の表情から推定しただけだ。」
いや、絶対聞いてたでしょ、と思うファイツ。
「正直言うと君を同行させろと言っているのは僕の上司、ナンブ警視監だと思う。」
「ナンブ警視監?」
「彼は僕に物心がついた時から指導してくれたお方なんだ。そして気づけば僕は国際警察になっていた。」
「・・・・・・・。」
「だけど、彼は事あるごとに感情がないと僕に言ってきた。でも僕には分からない。怖いとか、可哀そうとか。」
「分からないんじゃないだと思います。」
「何?」
怪訝そうな顔を浮かべるラクツ。一瞬ひるみそうになったファイツだが、怖いという感情を押し殺して言った。
「ラクツ君、貴方には感情があるはずなんです。でも、それを意図的に封じられているだけだと私は思います。」
「・・・ナンブ警視監も、君と同じことを言っていたな。となれば、僕は一体何者ななんだろうな。」
窓から外を見るラクツ。
「なあ、ファイツ。」
「どうしたんですかラクツ君。」
「今僕らが見ている景色は実に美しい。」
「そうですね。」
目の前には奇麗な海が広がっている。時折水ポケモンが水面から姿を現す。
「君は、どう思うのかい? もし、この景色が、今日で終わってしまうとしたら。」
「・・・・・・・・。」
答えに詰まるファイツ。
「僕には分からないんだ。ただ、与えられた任務を忠実に実行するだけの人間だ。自分の感情で動いたことがない。」
「・・・・・・・・。」
「でも、君もナンブ警視監もこう言った。感情はあるはずなんだと。」
「・・・・・・・ラクツ君?」
ファイツに抱きつくラクツ。
「教えて欲しい。僕は一体何なんだ。そして、君を見るたびに締め付けられるこの想いは一体何だ。」
「・・・ラクツ君。」
そっと髪を撫でるファイツ。
「ラクツ君はラクツ君ですよ。そして、貴方を締めつけている物、それこそが感情ですよ。」
「これが、感情?」
「はい。でも、続きは任務を達成した後にしましょう。」
「・・・・ああ。」
ファイツから離れるラクツ。バイザーをかぶり直し、身の回りを整えた。
「ファイツ、君は僕に付いてきてくれるのかい?」
「はい。」
「もしかしたら、僕はこの闘いで散るのかもしれないのだぞ。」
「それでも結構です。なぜなら貴方は。」
「話が済んだか?」
二人の会話をぶち壊しにでも来たのかというタイミングでオウメが戻って来た。
「どうやらラクツ警視とファイツ殿は共に行動されるようですな。」
「聞いていたのか?」
「公安部ですから。」
「そうか。で、どこに向かえとか指示はあったのか?」
「ありましたけど、それよりも先に此方かと。」
オウメが三つのモンスターボールを手渡す。
「フタチマル、カブトプス、グライオンの三体が入ったモンスターボールだ。ランドロスらと交戦していたのを発見し、回収した。回復は済ませてある。直ぐの戦線への投入は可能だそうだ。」
「そうか。で、ランドロス、トルネロス、ボルトロスはどうした?」
「3おっさんは我々公安部の手にあります。」
「・・・どんな手を使った。」
「さあ? 私からは何とも。では、こちらを。」
特別作戦と書かれた茶封筒を手渡す。
「こちらに今後の行き先が記されております。では、私はこれで。」
エアームドをボールから出し、すぐにオウメは去って行った。
「一体何だったんでしょうか?」
「さあな。さて、これを開けるとしよう。」
中には行き先を示した地図が入っていた。そして、記された行き先は
「ジャイアントホール」
と記されていた。
「ジャイアントホール。キュレムがいたあの洞窟か。あそこで一体何を・・・!!」
ゲノセマルをボールから出すラクツ。
「ファイツ、しっかりと掴まっていてくれ。」
「え、ええ。」
「どうも胸騒ぎがする。急ぐぞ! ゲノセマル!!」
ラクツとファイツは全速力でジャイアントホールへと向かった。
巡視船内
「では、我々もジャイアントホールに向かえということですかな?」
「その通りだハンサム。君はヒュウと共にジャイアントホールへ向かえ。私とマジシャンは彼らの安全を確保する。」
「でも、どうやってそのジャイアントホールに行けって言うんだよ。」
「それについてはこちらのポケモンをお貸しします。」
ボールの中にはフーディンが入っていた。
「フーディンのテレポートでカゴメタウンに向かえるようにしております。どうかお役立てくださいませ。」
プラズマフリゲート艦橋
「進路をジャイアントホールに取るのです。」
「いよいよ、キュレムの真の力を発揮させる、ですね盟友(ゲーチス)?」
「ええ。その為に既に吸収先は確保済みですからねえ。」
彼らの目線にはライトストーンとダークストーン、そしてゴッドストーンがあった。
「我々の目論見通りハイリンクの森に現れてくれましたねえ。」
「お陰様で無駄な手間が省けた、と言いたいんですね?」
「ええ。では、私はこれで。」
ゲーチスは艦橋を後にする。
「・・・・キュレムとレシラム、ゼクロムの合体。実に興味深いですね~!!」
はしゃぐアクロマ。
「ですが、こちらも興味深いと言わざるを得ませんね~!!」
その文書の差出人は、Sと書かれていた。様々な思惑が絡みながら、決戦の時が近づいていた。
(続く)