ジャイアントホール最奥部
「いよいよ始めるとしましょう。」
「ええ。ここ、ジャイアントホールの最奥部。キュレムのパワースポットだからこそ成せる、キュレムと、レシラム・ゼクロムの融合、ですね?」
「ええ。用意はもちろん済んでますよね? 盟友(アクロマ)。」
「もちろんですとも。」
アクロマはいでんしのくさびをゲーチスに手渡す。その間に団員が三つの石を並べる。
「今こそ、キュレムの真の力を発揮する時なのです!! アクロマ、全世界にこの映像を流すのです。そして、我々に歯向かうものがどんな末路を迎えるのか。思い知らせてやるのです。」
「ええ、分かっていますよ盟友(ゲーチス)。」
放送の用意を整えるアクロマと団員達。
(まあ、せいぜい私のデータ集めに協力してくれれば良いのですよ。貴方の運命は既に決しているのですから。)
「準備が整った。と、言いたいところなんですが。」
アクロマがカゴメタウンの方を向く。
「どうやら、貴方の邪魔をしようとする者が来てしまったようですね。」
「アクロマさん、大変だ!! ラクツ警視らがフリゲートに乗り込んで来やがった!! その上我々に与した国際警察の連中が陣取る国際警察本部も間もなく陥落しそうとのことだ!!」
フリゲートに残っているアクロマの御側役が通信を入れる。
「そうですか。では、予定通りということですね。」
通信を切るアクロマ。
「予定通り、とはどういうことですか? アクロマ。」
笑みを浮かべているが、その内では怒りを覚えている老人をアクロマは見下したような表情で語り掛ける。
「予定も何も、もうそっちの人間ではないのですからね!! ロトム、オーバーヒートです!!」
ヒートロトムを繰り出し、ゲーチスに攻撃を食らわせるアクロマ。
「何故ですアクロマ。」
とっさに繰り出したサザンドラで攻撃を受けるゲーチス。
「何故って、もうそっちの人間ではないと言ったではありませんか。」
「おおおおおおのおおおおおれえええええええ!!!」
いでんしのくさびを振り上げるゲーチス。
「こうなっては仕方ありません。まずは裏切り者となった貴方から始末して差し上げましょう。この、キュレムの真の力を持って!!」
「それで良いのですよ。私に必要なのはそのデータなのですからね。」
「ふ、果たしてそんなことが出来る余裕があるのかどうか、ですがね。」
ジャイアントホール
「あれだ!」
ラクツ達はジャイアントホールの中央付近に停泊?しているプラズマフリゲートは視認。
「突入するぞ! ゲノセマル!!」
ゲノセクトで強引に突破口を作り、内部へ侵入を開始した。
プラズマフリゲート艦内
ドーン!!
「な、何事だ!?」
「し、侵入者だ!! 総員第一種戦闘配置!! 総員第一種戦闘配置!!」
団員達は慌てながらも、それぞれの役目を果たさんと配置につき、ラクツ達を迎撃する。
(何かがおかしい。)
艦内を進撃するラクツは異変に気が付いた。
(まるでこの団員達、こちらを本気で倒そうなどという意思が感じられない。まるで時間稼ぎをしているかのようだ。)
「おらおら!! どけどけえ!!」
並みいる団員を蹴散らしながら艦内をヒュウが突き進んでいく。
「ヒュウ! この先にはプラズマフリゲートの指令室がある!! 君はそこへ向かえ!!」
「おらあああああ!!」
(言われなくともやってしまいそうだな。)
「ハンサム!」
「はっ! ここにおりますぞ警視殿!」
「一つ試してみたいことがある。どうも奴らの様子がおかしい。まるで囮でもしているかのようだ。」
「何と!」
「ファイツ、例のあれは用意できているかい?」
「ええ、準備OKよ!」
ファイツはライブキャスターの画面を切り替える。画面には、
「アクロママシーン:ムコウカ」
と表示されていた。これこそ、キュレムを開放する鍵であるアクロママシーンを無効化する電波を発するプログラムだ。
「これを今から発信する。もしこのジャイアントホールの何処かににキュレムがいれば何らかの反応を返すはずだ。」
(幸い今団員の注意は完全にヒュウに向かっている。今なら妨害を受けることなく発信できる!)
「ファイツ!!」
「ええ!!」
「「アクロママシーン無効電波、発信!!」」
ジャイアントホール最奥部
「むむっ、どうしたのですキュレム!!」
ゲーチスの持っていたアクロママシーンからの指示を無視し始めたキュレム。突如としてゼクロムとの融合を解除してしまう。
「どうやら、私の開発したアクロママシーンの指令を無効化する電波が発信されたようですね。」
ブラックキュレムの攻撃によりボロボロになっていたアクロマがそう語る。
「何?」
「どうやら、貴方の野望もここで終わりのようですよ。ゲーチス。」
「・・・・ふふふ、それはどうですかな?」
「?」
「貴方は私がここで終わる人間だと、本気で思っているのですかあああああ!!!」
ゲーチスは懐からマスターボールを取り出す。
「ま、マスターボール!」
「このマシンが使い物にならないのなら、こうすれば良いのです!!」
マスターボールを投げつけるゲーチス。
「ふふふ、これでキュレムは完全に私のポケモンとなりました。出て来なさいキュレム!!」
「ヒュララ!!」
「今こそ、キュレムの真の力を取り戻すのです!!」
「ヒュララララララ!!!!!」
プラズマフリゲート艦内
「一体どうなっているのですか警視殿!! 冷気が艦内にも入って来ましたぞ!!」
「おかしいです! アクロママシーンは完全に無効化されたはずです!!」
「・・・・となればキュレムは・・・・あそこか!!」
ゲノセクトを繰り出すラクツ。
「警視殿! 一体どこへ!!」
「君たちはヒュウの援護に回ってくれ。僕はジャイアントホールの最奥部に向かう。」
「ひ、一人ででありますか!?」
「ああ。君たちを巻き込みたくない。おそらく最奥部ではとんでもないことが起きている。もしかすれば、生死に関わるかもしれない。そんなところに君たちを送り込みたくない。」
ゲノセクトに乗り、単身殴りこもうとするラクツ。
「駄目!!」
「・・・ファイツ?」
「どうして、どうして貴方は、自分だけで解決しようとするの?」
「何故って、僕は君たちを巻き込まない為に。」
「私が足手まといだからですか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「それとも、何か思うところがあるんですか? 感情のない貴方の心に。」
「・・・・・・・・・・・君を。」
「君を?」
「愛する君を、僕が初めて心を動かされた君を、死なせたくないんだ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「分かっていると思うがキュレムは今とてつもない冷気を発している。艦内であるここにもその余波が届いている。となれば発信源は更に寒いだろう。最悪、死に至る可能性さえある。だからこそだ。」
彼の眼には涙が浮かんでいた。
「今まで生きてきて、初めて僕は誰かを守りたいと思った。そして、それが傷つくは耐えられないとも思った。出来ることならサザナミタウンで別れておきたかった。でも、それでも君は僕の力になる為に付いてきてくれた。どうして、君はそこまでしてくれるのか。理解できないんだ。」
「け、警視殿。」
「ラクツ君。」
彼の涙を拭うファイツ。
「私はプラズマ団の団員として、お母さんと一緒に活動してきました。上の人達は悪いことを考えていたかもしれないけど、私はただ、かわいそうなポケモンを救いたい。それだけだった。そして今、目の前には今にも背負った任務を前に圧し潰されちゃいそうな人がいる。それを救いたい。そして。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「ラクツ君、よく聞いて。」
「ああ。」
「私は、貴方の事が。」
「ヒュララララララ!!!!!」
「な、何だ!!」
キュレムの鳴き声と共に電撃と炎がジャイアントホールに降り注ぐ。
「どうやら時間はないようだ。付いてきてくれるかい? ファイツ。」
「もちろんよラクツ君。」
「ありがとう。すっきりしたよ。それじゃ、しっかり掴まっててくれ。」
「ええ!!」
「ゲノセマル!! 最奥部に向けて進め!!」
ゲノセクトの背中に二人はまたがり、二人は艦内を飛び出していった。最終決戦へと闘いの歯車は動き出していた。
(続く)