転生者がジーク君に干渉した結果   作:クソ眼鏡3号

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今回の話は、個人的にずっと書きたかった回です。
ちょっと、無理ある展開かもしれないけど、書きたかった展開なので後悔はありません。


第十話

レティシアに拳を叩き込んでいた莉亜に突然襲いかかったのは、彼女が戦闘不能したと思っていたジークだった。

ジークはその手に小さな西洋剣を投影する。

投影した剣を握りしめて、莉亜に向けて振り下ろす。

 

「何だ気がついたのか」

 

ジークの攻撃を察知した莉亜は即座にレティシアへの攻撃をやめて、ジークの迎撃に移る。

ジークの剣を、強化した右腕で受け止める。

 

「迎撃しろ」

 

莉亜の指示に反応した使用人達が一斉にジークに襲いかかる。

ある者は徒手空拳で、ある者は隠し持っていた武器で、息のあった連携でジークを追い詰めようとする。 

 

「演算完了。実行」

 

そうジークが言うと、ジークの周囲に轟音と共に電撃が迸った。

何故電撃が起きたのかは簡単だ。

電撃そのものを錬金術で造り出したのだ。

万物・物質の流転をテーマとしている錬金術は本来なら戦闘に使える代物ではない。

錬金術の中でも戦闘に使える魔術は少ない。

だが、使える術がない訳ではない。それにジークはヨハンが造り出した『魔血の魔術師(ブラッド・ウィザード)』だ。

魔血の魔術師の術式細胞は術者の使うあらゆる機能を増幅させる。

それが魔術であり、身体機能であり、脳の演算機能も例外ではない。

錬金術師の真の強みは錬金術ではなく、術者の脳なのだ。

一見すると全く別の魔術に見える程の現象を錬金術で造る事も可能なのだ。

しかもジークの手には小振りとはいえ魔力結晶がある。それを使えば、瞬時に錬成は可能だろう。

そして、ソレを造るには材料は空気さえあれば十分だ。

材料も魔力も揃っている。ならば後は実行するだけだ。

そして造り出された電撃を喰らうのは佐藤莉亜とその使用人達だ。

 

「「「あああああああああああぁァァァ!!」」」

 

ジークの放った雷撃はその場の敵を一掃した。

その電撃は電圧からして数千万ボルト。

人を倒すには十分な威力だ。しかもそれを全身に流されたとあっては気絶は逃れられない。

電撃の余波で辺り一体が停電してしまったが、それを間近で喰らった使用人達は全員気絶していった。

幸い命に別状はなかった。だが、所々肉が焼けて重傷を負って戦闘不能になっていた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

電撃の威力もギリギリ命を繋げれる程度に加減もした。

『誰か』を殺す覚悟はまだジークには無かった。

 

そして、その配慮を流れてきた電撃から感じ取った者が1人いた。

 

「なんだ。その中途半端な電撃は?」

 

「やるならもっと殺意を込めんか!未熟者め!」

 

そう、電撃を耐え切り、激昂しながらジークに拳を振るう佐藤莉亜が残っていた。

振われた拳は、先程とは打って変わり音速を超えていない普通のパンチだったがそれでも人間1人を吹き飛ばすには十分な威力だった。

拳はジークの顔面を捉えてジークの体が宙に浮いて地面に転がった。

拳を喰らったジークは、激痛と目の前の魔術師の強さに心が折れそうになる。

 

「まだだ!」

 

だが、ヨハンの遺した『魔法の言葉』で折れそうになる心に喝を入れて、すぐに立ち上がる。

だが、戦闘中に見せた隙を見過ごすほど佐藤莉亜は甘くない。

 

「調子に乗るなよ。ホムンクルス」

 

「お前が兄の最高傑作であろうと、私が躊躇すると思ったか。阿呆めが」

 

「お前の存在が兄と関連している時点で、お前の命に価値は無い。今お前が生きているのは私が魔術師として利用できる価値があると判断したからだ!」

 

先程のジークの電撃で、取るに足らない筈のホムンクルスに一矢報いられた事に腹を立てた莉亜は怒りを振るう。

立ち上がったジークの両足を強化した蹴りで砕く。

 

(アイツ)の自分勝手で、私がどれだけ被害を被ったと思っている!」

 

次に両腕を拳で砕く。

 

「私よりも才能がある癖に魔術師は辞めるわ、突然復帰したと思ったら、新しい魔術を生み出して、その内容は狂気の沙汰!」

 

次に胴体を踏みつけて肋骨を砕く。

 

「そのせいで私までも風評被害が被るわ、それだけでなく父や母にも周りの魔術師から侮蔑され、アイツが襲撃したムジーク家からは賠償金を払わされる始末!」

 

次にジークの頭を掴み、腕力だけで持ち上げる。握力で頭蓋を砕かない様に加減して軋ませる。

 

「挙げ句の果てに、突然帰ってきたと思ったら、家の魔術工房を使ってサーヴァントの受肉⁉︎」

 

次に片耳を掴み引きちぎる。

 

「最終的にはいつの間にか死んで御退場だ!なんなんだアイツは⁉︎自分勝手にも程があるだろうが⁉︎」

 

次に左目を指で潰す。

 

「兄に振り回されるだけだった私のこれまでの人生はなんだったんだ⁉︎」

 

ジークの頭部を両手で掴み、答えなど返ってこない問いをジークに投げかける。

 

「兄の目には一体何が写っていたんだ?」

 

佐藤莉亜は限界だった。

彼女はずっとヨハンに振り回されてきた。ヨハンの自分勝手な行動の皺寄せが彼女に向かって来て、その尻拭いをされる羽目になり、今もなおその兄が育てたホムンクルスに電撃を喰らい、兄の呪縛から逃れられない事実に辟易していた。

昔から彼女もこうだった訳では無い。

昔はヨハンの才能を羨望し尊敬し憧れていた。だが、その魔術の失敗で見せたヨハンの醜態を見て一時は失望し、復帰して魔血の魔術師を開発したヨハンを見直して誇りに思う事もあった。

だが、時計塔に行った後のヨハンの行動が良くなかった。

ヨハンの行ったムジーク家の襲撃を皮切りに、自分勝手なヨハンの振る舞いに腹を立てた時計塔の一部の魔術師達から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

魔術師というのは陰湿だ。時計塔で腹黒く潰し合う百戦錬磨の魔術師達に佐藤家はいとも簡単に蹂躙された。

直接手を下さずに、築き上げたコネを使って、間接的に佐藤家を嫌がらせしていた。

ある時はありもしない噂を流布し、ある時は事故を装って襲撃したりなど嫌がらせの手段は様々だった。

ヨハンのせいで佐藤家が築いてきた魔術師としての地位も価値も失墜し、それでも何とか家と魔術刻印を遺す為に好きでもない男に抱かれた。

徹頭徹尾、(ヨハン)という存在に振り回され続けて莉亜は限界だった。

故にその怒りはヨハンの遺したジークに向けられる。

 

その怒りはジークからしたら知った事ではない。

ジークからしてみれば、レティシアに暴力を振るい、自分と最後の家族を葬ろうとする『敵』にか見えない。

 

目も耳も一つしかない。

聞こえづらいし見えにくい。

 

だがまだ戦える。体が動く限り終わりはないし、終わるつもりもない。

 

故にジークの取る行動は一つしかない。

 

「まだだ」

 

ジークは意志を燃やして『魔法の言葉』を口にした。

 

気合と根性で砕かれた腕を動かし、莉亜の右腕を掴む。

 

理導/開通(シュトラセ・ゲーエン)

 

ジークの得意とする魔術。

理導/開通(シュトラセ・ゲーエン)』は触れた物質を解析し、魔力を通して最適な破壊を行う魔術だ。

それが人体に使われれば、当然致命傷は避けられない。

だが、満身創痍な状態で使った事が影響したのか、通した魔力は莉亜の全身まで通す事が出来ず、莉亜の右腕だけを破壊するだけで留まった。

 

「あああああああああああッ⁉︎」

 

ジークを掴んでいた右腕を失った莉亜は、突然襲ってきた激痛に混乱する。

異変はそれだけに終わらない。

莉亜の目の前には、折れてひしゃげた手足でなおも立ち上がるジークがいた。

顔は半分潰れてる。耳はちぎってある。

片目は潰してある。胴体もボロボロだ。

なのに…。

なのにこのホムンクルスの目は一切の光を失わずに、鋭い眼差しで莉亜を睨みつける。

その眼光に、風が吹けば倒れそうな程にボロボロな目の前のホムンクルスが、莉亜はやけに恐ろしく感じた。

 

「まだだ」

 

そう唱えると、ジークは折れた右手を自分の前にかざす。

 

すると、その手の平に魔力結晶が生み出された。

 

莉亜は驚愕する。

周囲のマナを集めて結晶化させる技術は現代では至難の技だ。

だが神代の魔術師達はその術を当然の様に扱えていたと聞く。

現代の魔術師と神代の魔術師の違いは、周囲のマナを認識出来る感知能力の差だ。

ジークフリートの血液と邪竜の因子、それらが合わさった事で、ジークはマナを認識出来る感知能力を手に入れたのだ。

そして、魔力結晶という魔力電池をいつでも何処でも精製出来るなど、現代の魔術師からすればデタラメもいい所だ。

そして莉亜は更に驚く事になる。

 

「まだだ!」

 

ジークが魔力結晶を用いて、錬金術を発動させた。

 

ジークが錬成するのは先程の電撃ではなく武器でもない。

自らの肉体の錬成を試みているのだ。

当然、肉体を錬金術で治すには体組織の代用物を錬成する必要がある。その為、それを補う何かが必要だった。

等価交換の原則だ。

だが、ジークには肉体を補う代償は持っていない。

魔力結晶はあくまでも魔術を起動する為の電池の様な物なので肉体を補う事は出来ない。

よって本来ならこの魔術は自動的に失敗する。

 

筈だった。

 

「なッ⁉︎どういう事だ⁉︎何故再生している⁉︎」

 

莉亜は目の前の光景が信じられなかった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

砕けた手足は元に戻り、潰れた目は戻り、千切れた耳は元に戻り、肉体に負った負傷を全て完治していた。

 

「貴方の言い分は理解できた」

 

ジークの言葉が莉亜には全く耳に入らない。

いくら錬金術でも体が再生したからには何なかの代償を払っている筈だ。

 

「貴方が、俺達を襲うのも仕方がないと思う」

 

なのに、目の前のホムンクルスには何か代償を払っている様子が全く無い。

 

「だが、それでも」

 

魔術礼装も身につけていない。臓腑も代償に使った様子もない。

全く持って理解不能だ。

 

「俺に残された唯一の家族を傷つけた貴方を」

 

理解不能 解析不能 何だコイツは?

頭が混乱する中、必死に考えを巡らせる。

 

「俺は許さない」

 

ジークの言葉を他所に莉亜は考えを巡らせる。

兄はムジーク家からホムンクルスを奪取した。

ムジーク家といえば、錬金術の名門アインツベルンが関わっている事で有名だ。

そして、アインツベルンが関わる事で真っ先に思いついたのは……

 

「第三………魔法………?」

 

その答えに辿り着いて戦慄する。

第三魔法は未だに多くの魔術師が到達しようと目指している魔法の一つだ。

だが、その成功例はアインツベルンが偶然造り上げたユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルンが有名だが、あの個体と同じホムンクルスはいまだに確認されていない。

ジークは、その域にはまだ達していないだろう。

だが、それでも。

()()()()()()()()()()()()

ジークは自分がしている事の重大さに気づいていない様だ。恐らく無意識で行ったのだろう。

ジークは先程から「まだだ」と言う度に『()()』とも呼べる急成長を遂げている。

ジークの肉体再生もその産物の一つだろう。

そして、その原理はあまりにも出鱈目だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

魂は星幽界という物質界より高位の次元に属しており、エーテル体に宿り、人間などの生物として活動したり、霊などの幽体として行動するモノもいる。

肉体と魂を繋げるのは精神だ。

魔血の魔術師は全身の細胞に増幅の術式を刻まれている。

魔術回路を通してジークの意志そのものを細胞の数だけ増幅させていけば、ジークの意志は常軌を超えた意志を手に入れるだろう。

つまり結論を言ってしまえば、ジークは精神力のみで魂のエネルギーを高位次元から無理矢理引き出して肉体を再生させたのだ。

 

理屈を言えば「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」という出鱈目極まりないモノだった。

 

ジークが何故そんな出鱈目な現象を起こせたのかは莉亜には分からない。

だが、あえて理由を挙げるとするなら『()()()()()()()()()()()()()』事だろう。

不完全な人間と比べて、ホムンクルスは最初から『完成された生命』だ。

ホムンクルスは基本的に自我が薄く、意思も弱い。

よって必然的に精神力に安定した個体はいても、強力な自我を持つホムンクルスはまず存在しない。

 

だが、例外は常に存在する。

 

魔血の魔術師。

ヨハンの遺言。

ジークフリートとの邂逅。

レティシアの危機。

様々な要素が重なり、強力な自我を手に入れた例外が生まれた。

強力な自我を持つホムンクルスへと成長したジークは、本家本元の第三魔法の使い手には及ばすとも、その片鱗ならば扱える

 

「貴方を殺す」

 

「俺は今、覚悟を決めた」

 

殺人をする覚悟を決めて、莉亜への殺意を滾らせたジークは莉亜に宣言した。

 




第三魔法の片鱗は、カルナさんやUBWの終盤のアーチャーの記述の見て思いついた展開です。ちなみにジークの肉体が再生したのは第三魔法のおかげではなく、その魂から引き出したエネルギーを錬金術で変換して肉体を治したのです。
再生しているのではなく再生している様に見えているだけです。
紛らわしくてすいません。
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