転生者がジーク君に干渉した結果   作:クソ眼鏡3号

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そろそろ転生者編は終わります。


第十二話

佐藤莉亜を殺害したジークは、疲労感に襲われる。

倒れそうになる体を気力で踏み止まり、立ち続ける。

 

(今、倒れるわけにはいかない!)

 

ジークが倒れれば、支配魔術から解放された住民に見つかって、混乱した殺人現場にいる者として、色々な容疑がかかってしまう。

ジークは急いでレティシアの元に向かおうとする。

だが、思うように体が動かない。

強烈な疲労感が邪魔をしてうまく立てない。

 

「まだ……だ……」

 

気力を振り絞り、フラフラになりながら、ジークは唯一の家族のもとに向かう。

 

一方、レティシアはただ寝ていた訳ではない。

全身のあちこちに莉亜の拳を叩き込まれたが、全身が動かないだけで意識は保っていた。

その意識で魔術回路を起動させ、ヨハンから教わった強化魔術を使って肉体の治癒速度を極限に高めて、自身の傷ついた体を治療していた。

だが、治療に集中するあまり周囲の状況をレティシアは理解できていなかった。

彼女が目覚めるにはもう一押し必要だ。

 

まずはレティシアの壊れている部分を観察する。

両手両足が複雑骨折。

肋骨が何本も砕けているが、内臓は幸い無事だ。

背骨は無事だが、尾骶骨も損傷が酷い。

所々酷いが、内臓などの重要な機関にはダメージが入らないように殴った莉亜が手加減していた様だ。

 

ジークはレティシアに近き、その体に錬金術による治療を施す。

再び気力を振り絞って、治療を始めるが、疲労の為か先程の様にうまくいかない。

本来の錬金術の治療は『体組織の代用品を錬成して』行うものであり、臓器移植の様な物で、術者に負担がかかる。

だが、先程のジークは『魂』から引っ張りだしたエネルギーを消費して体を治療していた。

勿論、そんな現象を引き起こすには尋常ではない『気合と根性』を引き出す必要がある。

故に、いまだに家族を救えていないジークには『気合と根性』を捻り出す理由は十分ある。

 

「ま…だ……だ…!」

 

『魔法の言葉』と共に、錬金術を使用する。

流石に消耗していた事もあってか、魂からエネルギーを少ししか引き出せず、全然足りない。

だが、それでも少しは引き出せたのだ。

そこでジークは先程の全快した自分の肉体を使う事にした。

ジークは、自分の肉体を材料にレティシアの損傷を治す事にした。

体の骨を治す為に、自分の骨を消費して再生させる。

するとレティシアの骨はより強固な骨となって再生された。

その為、ジークの体内の骨はレティシアと同じ所が消費され欠けてしまう。

だが、それを魂から引き出したエネルギーを使って、先程と同じように自分を錬金術で治療する。

エネルギーが足りなかったせいか、腕と肋骨の骨が折れたままだが、尾骶骨や脚の骨などの重要な骨は治す事に成功したので、そのまま放置する事にした。

 

そして、暫くすると、レティシアの体はほぼ完治していた。

そこまで回復したのは単純に彼女の素養だろう。

 

「ジーク……君……?」

 

レティシアが勢いよく立ち上がると、フラフラの足取りで歩くジークを見つけた。

 

「よかった…気がついた…」

 

レティシアの見たジークは、正に満身創痍の様子で、目立った外傷は見当たらないが、相当無理をしている事が見て取れる。

 

「大丈夫ですか⁉︎私が動けない間に何があったのですか⁉︎」

 

よく見れば、近くには使用人達が気絶して転がっている。

そして、ジークが歩いて来た所には、首無しの死体が転がっていた。

 

「ジーク君…あの魔術師は…どうなりました?」

 

レティシアにはおおよそ見当が付いたが、確認の為にジークに問いかける。

 

「……()()()

 

ジークは少し躊躇しながらも正直に答えた。

ジークも人殺しはいけない事だと理解している。

だが、理解した上で彼女を殺した。

人ひとりの命を奪って、罪悪感に押し潰されそうになる。

それでも、家族を守る為に殺したのだ。

ジークに後悔は無い。

だが、殺した人間の関係者には恨まれるだろう。

 

「彼女の使用人達に、恨まれるかもしれない。だが、それでも彼女の命を背負うと決めたからにはその恨みも背負う事に決めた」

 

そういうとジークは、佐藤家の使用人達にも治療を施すべく、ジークの錬成した電撃で気絶した使用人達に向かって歩いていった。

 

「だから、彼等は助けるべきだ。後で恨まれたとしても、それが俺の義務なんだから」

 

「安心して、貴方はこのまま休んでてくれ」

 

自分がボロボロになりながらも尚も、将来的に自分を恨み襲いかかって来るかもしれない人をジークは救うつもりだ。

その恨みや憎しみも全部受け止めるつもりだ。

何故なら『背負う』とはそういう事なんだとジークはそう学習していた。

その姿を見て、レティシアは確信した。

 

(この人を1人にしては駄目だ……)

 

ジークは純粋で無垢だ。それ故に、あらゆる物事に真剣に向き合おうとする。

だから、どんな命とも真剣に向き合う。

 

例え、どんなに小さな人でも、どんなに悪い人であろうと彼には同じ価値に見えるのだろう。

自分という存在が『特別』だと教えられ、自覚してしまったから。

転生者(ヨハン)』という異分子がジークを変えてしまった。

 

「ごめんなさい…ジーク君……」

 

私は貴方を守れなかった。

その言葉を言う前に、ジークはレティシアを所謂お姫様抱っこで抱き抱える。

突然の事に驚くレティシアは戸惑ってしまう。

 

「時間が無い。まず家に帰ろう。そして安静に休んでくれ」

 

そう言って、ジークは先程のレティシアの傷を殆ど引き受けた様なモノだ。そんな傷で女性を持ち上げて走るなど無理な話だ。

持ち上げた瞬間に両手両手の骨が悲鳴を上げた。

 

「…ッ⁉︎…まだだ!」

 

だが、それをジークは気合と根性で捩じ伏せる。

骨は使わなくても筋肉がある。

人間の筋肉には無意識にリミッターがかかっているという。

ジークは今、そのリミッターを外してレティシアを持ち上げて走っている。

決して彼女が重いという訳ではない。

 

レティシアは自分がジークを持って運んだ方が速い事に気づいていたが、必死に自分を運んでくれるジークの姿を見て、水を差す様な事を言わず大人しく運ばれる事にした。

 

そして、この波乱に満ちた出来事を終えて、改めて2人の共同生活が始まった。

 

そこから2人は新たな日常を送る事となる。

 

2人は共に同じ学園に通う事になった。ヨハンがその様に手続きをしていたのだ。

レティシアは初めての学校に戸惑いながらもその容姿とサーヴァントとしてのカリスマのスキルもあって次第に馴染んでいき、クラスどころか学園の中心的存在にまでなった。

彼女は人々の中心として、人々と笑い合う。

ジークはその姿を見て、()()()()()()()()()()

その寂しさをヨハンの喪失を改めて自覚したジークをレティシアは懸命に慰めた。

 

「私はずっとジーク君と一緒にいますよ。私がジーク君を守ります」

 

そう言って、家族として、ジークを癒す。

ジークは自分が情けないと思いながら、レティシアに甘えてしまう。何故なら彼女がジークの最後の家族だから。

いつしかジークは『孤独(ひとり)』を恐れる様になる。

レティシアを失ったら今度こそジークは『孤独』になってしまう。

 

独りになったら、どうすればいい?なにをすればいい?

 

そんな考えばかりが頭を過ぎる。

孤独を恐れるあまりレティシアに迷惑をかける訳にはいかない。

 

「……まだだ……まだだ……まだだ……」

 

そう思ったジークはヨハンの『魔法の言葉』で懸命に勇気を捻り出して、孤独感を埋めるように解決を選んでしまった。

『魔法の言葉』を呟いて、無理矢理勇気を出した所で、何も変わらない。ただの独り言で終わってしまう。

 

孤独というのは『他者(誰か)』がいて初めて抜け出せるのだ。

 

どんな超人であろうと、どんな怪物であろうと、『他者』がいなければ『孤独』からは抜け出せない。

 

それは神ですら例外は無い。

 

独り言が多くなったジークは、次第に周囲から気持ちがわれてしまい、次第に孤立していき、学園の浮いた存在になってしまった。

 

そんなジークをレティシアは見過ごさなかった。

 

レティシアは学園の人々と馴染める様に出来るだけ周囲の人にお願いして出来るだけ彼に危害が及ばない様にする。

勿論、ジークとの対話も忘れない。

懸命にジークを励ますレティシアを見て、ジークはますます自責の念を強くしてしまう。

 

そんな事が日常化しつつあった時、ジークは夢を見た。

 

レティシアの英霊としての記憶。ジャンヌ・ダルクの生涯を夢として見た。

 

彼女の生涯は壮絶だった。

あまりにも惨い拷問と処刑を見たジークは思った。

 

(彼女こそ幸せになるべきだ…!)

 

世界と運命の理不尽に憤り、決意する。

 

ここまでの不幸をその身に受けたのならば、それを帳消しにする位の幸せを手に入れて良い筈だ。

女性としての尊厳を踏み躙られ、信じた人からは裏切られ、民衆や兵隊からは一時は『聖女』として祭り上げられ、最期には死を望まれた。

そんな仕打ちを受けて、この世に再び生を受けたならば、彼女は『幸せ』になるべきだ。

 

世界や周りの人が彼女を『幸せ』にしないならば、俺がしよう。

 

例え、彼女から嫌われ、侮蔑されてしまう事になったとしても、『幸せ』にして見せる。

 

そして、いつか彼女が『誰か』と手を繋いで、幸せにしてみせる。

 

夢から目覚めたジークは、すぐにレティシアの寝室に向かう。

夜中である事を差し引いても迷惑と思うだろうが構う物か。

そう判断してレティシアの部屋に乗り込み、物音で起きてジークが来ている事に驚くレティシアにジークは告げる。

 

「俺は必ず貴方を『幸せ』にしてみせる。絶対だ!」

 

「……はいッ⁉︎」

 

ジークはそれを伝えて、レティシアの部屋を去った。

突然にプロポーズの様な言葉を言ったジークに驚き唖然とした。

突然の事態にパニックになるが、一つだけ確かな事をレティシアは自覚した。

 

どうやら自分はとんでもない人に()()()()()()()()()()

 

()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ジークはレティシアと『誰か』と共に幸せになる事を思って言ったのに対して、レティシアはジーク()レティシアを幸せにすると解釈してしまった。

 

このすれ違いが、後のレティシアにとっての悲劇を生むとは、彼女は思わなかった。

 

 

 

 

それからジークは積極的にレティシアの世話をする様になった。

勉強・家事・炊事など家の事やレティシアの負担にならない様に普段の学園生活も改善して、友人はいないが知り合いが妙に多いというよく分からない立ち位置に落ち着いた。

 

レティシアもその突然のジークの変化に驚きつつも、良い変化だと思う事にした。

彼への好意を自覚した今、ジークに接する事が恥ずかしくなってしまいまともに会話すら出来ない事もあったが、ジークはそれを構わずに彼女の世話を焼く。

 

そんな生活が日常となり、学園を卒業しても、その奇妙な関係は続いた。

 

そして月日が流れ、()()()()()()()()()

 

 

ジークは世界と契約し、レティシアは命を落とす事となる出来事……『最後の聖杯戦争』が始まってしまった。

 

 




ここで一つ報告があります。
『最後の聖杯戦争』については書かない事にしました。
出るサーヴァントとか決めてたんですけど、このままだらだらと長くするくらいならいっそ没にして、「書きたい物を書けばいいじゃない」と改めて思い書かない事にしました。
完全に私の怠慢ですが、個人的にFGO編を早く描いてみたいので、真に勝手なお願いですが、どうかご了承ください。
あくまでも「そういう戦いがあった」と認識して頂ければ幸いです。

次回はいきなりエピローグに入りますので、それをご了承の上でご覧下さい。

ちなみに第五次聖杯戦争の際、ジークとレティシアは普通の生活を送っていました。
ジークはレティシアに手足を折られて第五次聖杯戦争が終わるまで監禁されていましたが、自分を巻き込まない為の行動と理解していたので、特に何も思いませんでした。
レティシアは罪悪感でちょっと病みかけました。
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