作者のリアルの事情もあって以降から更新速度はがっくり落ちると思いますが、どうか気長にお待ちください。
皆様の暇潰しになれば幸いです。
「ああああああああああッ!!!」
両腕を切断された藤丸立香は、突然の激痛にのたうち回る。
仕方ないだろう。何故なら彼は、普通の人間なのだから。
いくら人理修復の経験があるとしても、経験はあっても実力や精神はまるで釣り合っていない。
両腕を切り落とされて平気なほど超人ではないのだ。
「意外だな。人理修復を成し遂げたマスターは精神力が強い人間だと思って攻撃してみたら…なんて事はない」
「……これでは
ジークは意外そうに吐き捨てる様に言うが、激痛のせいで彼の言葉を聞く余裕は立香にはない。
「これでは話にならん…」と呟いて、ジークは立香に近づき、自分が切り落とした立香の両腕を拾った。
「出来るだけ痛くしない様に治療する。動くなとは言わん。痛かったら思い切り叫べ」
ジークは立香の腕の切断面に切り落とした腕の切断面を勢いよく押し付けて、断面には綺麗に合わせて、何らかの魔術を施してくっつけた。
「錬金術でくっつけた。まだ痛みはあるだろう。落ち着くまで待つ」
立香には激痛のせいで状況がうまく理解できないが、ジークが切り落とた腕をまたもジークが治すというよく分からない状況に立香は混乱する。
「………なんで?」
しばらくして激痛が普通の痛みに変わる頃に、立香はジークに質問する。
「此処でお前を殺しては、公平ではないからだ」
藤丸立香の疑問を解消する為に、ジークは真摯に答える。
「ここでお前を殺せば、それでカルデアは全滅だろう。だがそんな事をしては『敵』として戦えなくなってしまう」
「俺はお前達と『敵』として戦いたいのであって、別にお前を殺したい訳ではないよ」
ジークの答えに些か納得しかねるが、助けてもらった手前、何も言えない。何よりもその場では生殺与奪の権利は彼にある。興奮して彼を責めた所で良い事は無いだろう。
「腕を治療してくれたのは?」
立香は苦し紛れに出た質問をする。
「決まっている。人理修復を成し遂げたマスターであるお前と話をする為だ」
「お前に戦闘能力が無い事は先程の一撃で分かった。ならばこの場では戦いではなく対話をすべきと判断しただけだ」
ジークはそれをする事が当然と言わんばかりに断言する。
(この人は、良い人とかじゃなくて……)
(何処までも真摯な人なんだ……)
立香は、ジークに対する認識を改めた。
そして、立香の腕の痛みが治った後、それを見計らってジークが話を始めた。
「腕を斬った事は謝ろう。本当にすまない」
「別に許してほしいとは言わん。むしろ存分に恨んでくれ」
「そうすれば俺とも戦いやすいだろう」
ジークはそう言って、立香に向けて『何か』を差し出す。
その『何か』は『銃』だった。
「それは……?」
ジークは立香の手を掴み、銃を握らせる。
「『
「武器を持っていれば、俺と一緒でも多少は安心するだろう」
正直な所、ジークの武器がジーク本人に効くかどうかは確証は無い。
だが、立香の今の状況は生殺与奪の権を握られた状況では、武器を持つと持っていないとは安心の度合いは違う。
ジークはただ単に立香と話をしたいだけだ。
「話って…一体何を話せば……」
立香も話をしろと言われても話題に困る。
「そうだな……ではまずは話しやすい話題としてお前は愚痴とかは無いのか?」
「カルデアに対する不満とか、過労死しそう…とか」
ジークは当たり障りのない話題で、立香に話をさせようとするが、どう考えても敵の内情を探ろうとしている様に聞こえて、立香も返答に困ってしまう。
「そもそも、カルデアはもう少しお前の警備をもっと万全にすべきだ」
「先程、お前を守っていたサーヴァントがいたが1人だけだったぞ。最低でも10人以上は配置しておくべきだったな」
「巌窟王…だったか。流石はカルデアのサーヴァントだ。非常に手強かった」
「カルデアのサーヴァントには神霊クラスのサーヴァントもいるのだろう?なぜヤツだけしかいなかったんだ?」
立香は驚愕する。
巌窟王エドモン・ダンテス。
藤丸立香にとって、彼はマシュと同じくらいに因縁が深く絆を育んだサーヴァントだ。
「……そんな……」
立香の危機には必ずと言ってもいいほど、駆けつけていた彼が、既にジークに敗れている。
その事実が立香に重くのしかかり、改めて追い詰められた現実に押し潰されそうになる。
「彼は……無事なんですか?」
立香はつい心配になってジークに問いかけてしまう。
「無事だ。断言できる。奴は致命傷を負った程度で諦める精神をしていないだろう」
「良いサーヴァントと出会ったな。藤丸立香……」
そのか細い質問をジークは力強く返答する。
ジークは何処か微笑ましいモノを見たような顔で立香を見つめる。
立香は自分のサーヴァントであるエドモン・ダンテスの事を褒めている様な感じがして少しだけ照れ臭くなる。
立香の束の間の安堵の顔を見たジークは、いきなり質問を投げかける。
「さて……俺も君に一つ質問だ。君はカルデアのマスターとして初めて赴いた特異点は何処だ?」
ジークの突然の質問に立香は困惑してしまう。
ジークの質問の意図が分からない。
なぜ、敵であるジークがそんな事を聞くのかが分からない。
なぜ、先程の様に襲ってこないのか。
そもそも、なぜ敵と話そうとしているのか。
分からない事だらけだ。
混乱し困惑する頭で必死に考えるが全く答えがでない。
そして、立香はやや反射的に答えてしまった。
「…えっ…と……確か…オルレアンです」
立香の答えにジークは少し目を見開く。
「…そうか…それはもしかしてジャンヌ・ダルクと関係がある感じか?」
「はい…そうです 」
ジークの質問に立香は普通に答える。
オルレアンと聞いて真っ先に思いつくのオルレアンの聖女ジャンヌ・ダルクが有名だ。
「そうか……ならばそこに決めるか」
そう呟いてジークは改めて立香と向き合う。
ジークが何かを言う前に、横槍が入った。
突然、黒い魔力光がジークに向けて襲いかかった。
その魔力光を大剣で切り裂き、現れた敵と対峙する。
「……
復讐の化身、巌窟王エドモン・ダンテスが、藤丸立香の危機を察知して現実世界から脱獄して精神世界に出現した。
なぜジークとの戦いで致命傷を負わされ敗れたエドモン・ダンテスがすぐに復活したのかは簡単だ。
エドモン・ダンテスの宝具の一つ『
『
その回復力を持ってすれば例え瀕死の状態でも完全回復出来る。
「絶望の中の希望」はその絶望の分だけ恩恵をもたらすのだろう。
現に今のエドモン・ダンテスのステータスは一時的とはいえパワーアップした状態にある。
超高速で移動して、魔力光を放つエドモン・ダンテスをジークは大剣で捌きながら観察し解析する。
数瞬の攻防の後、ジークが口を開く。
「なるほど。精神力そのものの宝具化か。その在り方を限定する事で、常に最強の自分を発揮出来る寸法か」
「それならば、先程の時空の突破も納得がいく。なにせ第三魔法に片足を突っ込んでいる様なモノだからな」
『
この宝具はシャトー・ディフで培われた鋼の精神力が宝具と化したものだ。
エドモン・ダンテスの宝具を魔術師としての観点から見れば、彼の人間としての逸話からかけ離れた戦闘能力にも納得だ。
しかも先程の回復宝具『
ジークが何度エドモン・ダンテスの身体を斬りつけてもすぐに回復されてしまう。
このままではジークの方はジリ貧だ。
そして、すぐに決着の時が訪れる。
エドモン・ダンテスが、真っ向からジークに超高速で突進を開始した。
それを避けもせずに真っ向から受けて立つ姿勢を見せたジークに巌窟王をニヤリとやや邪悪な笑顔を浮かべた。
「ッ⁉︎」
ジークがその意図に気づいた時には既に遅い。
ジークの背後からもう1人のエドモン・ダンテスが現れて、漆黒の魔力光がジークの心臓を貫いた。
心臓を貫かれ、怯んだジークの隙を突き、エドモン・ダンテスは本命の攻撃をお見舞いする。
ジークの周囲に本来なら十数人の分身を今回は数百人にまで『分身』したエドモン・ダンテスの分身が現れる。
精神力を具現化し、時空を脱獄し、時間すらも置き去りにした動きで放たれる宝具の名は……
「『
無数の魔力光がジークに降り注いだ。
彼の全身を余す所なく魔力光が包み込んで、彼を消滅させる。
流石のエドモン・ダンテスも数百人の分身はキツかったのか、満身創痍の様子だ。
サーヴァントとして強力な力を持っているとエドモン・ダンテスにジークは討伐されたと思ったその時だった。
「いいや、
その声と共に魔力光が消し飛んだ。
ジークはあれほどの魔力光を浴びて、尚も生存していた。
流石に無傷ではない。全身の所々に深い致命傷を負っているが、その傷そのものがどんどん再生していく。
数秒後には完全に完治し、何事も無かった様に立香達に歩みを進める。
「ッ!おおおおおオオオオオオッ!」
それを見たエドモン・ダンテスは、自分のありったけの魔力を一つに収束し、放射する。
放射された魔力光は、まともに喰らえば跡形も無く消滅するだろう。
だが、それを許すほどジークは甘くない。
ジークは自分の得物である大剣『幻想大剣』を構える。
「『
真名解放した大剣から黄昏の魔力が溢れ出る。
その魔力をあろう事が、ジークは極限なまでに圧縮し収束させる。
圧縮と収束をしてもまだ溢れ出る魔力に更に圧縮と収束を繰り返し行う。
圧縮・収束・圧縮・収束・圧縮・収束・圧縮・収束・圧縮・収束。
収束・収束・収束。
収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束。
圧縮と収束を繰り返し、次第に収束しか行われずになり、想像を絶するエネルギーが幻想大剣に宿った。
ジークは超収束された黄昏の魔力を解放せずに剣として振るう。
するとどうなるか。
エドモン・ダンテスが放った極太の魔力光をあっさりと斬断された。
大剣の振われた余波で、直線上にいたエドモン・ダンテスは、まるで嵐に襲われた様に身体を捻り曲げながら吹き飛ばされた。
エドモン・ダンテスがここまでダメージを受けたのは、ジークの固有結界に入り込んだ事で竜属性が付与されていた事。
その状況で竜殺しの特性を持つ幻想大剣を余波とはいえ喰らってしまった事などの様々な要因があるが、何よりもジークの固有結界は結界内にいる人物をジークの意志で変容させてしまう。
『復讐者』としての在り方が強さの原動力とするエドモン・ダンテスにとってそれは弱体化して当然だ。
それでも限界を超えて本来の数十倍の分身を生み出したり、極太の魔力光を放った彼の精神力は流石と言うべきだろう。
「手加減はした。カルデアに帰って治療すれば助かるだろう」
ジークに言われて、立香はなけなしの魔力と身につけていた魔術礼装を使ってエドモン・ダンテスに治療魔術を施す。
本場の魔術師には及ばないが、立香の着ている魔術礼装の性能が良かった事もあって、気休め程度にはなっただろう。
「俺はこれからオルレアンで特異点を発生させる」
立香の耳にジークの声が響く。
「勿論、これは脅しでも冗談などではない。宣戦布告だ」
ジークは鋭い眼光で立香を見る。
「人類の『敵』として、お前達に挑戦しよう」
「1人残らず全員でかかって来い『カルデア』」
ジークの宣戦布告に藤丸立香は唖然としてしまう。
それを見て申し訳ないと思ったのか、ふと立香に持たせた銃竜に目が止まる。
「その銃は餞別だ。君の武装として役立ててくれ」
「出来れば…君とゲームでもしたかったな…」
そう言い捨てて、ジークは先程の超収束した幻想大剣を振るい、ジークと立香の『繋がり』即ち『夢』を斬る。
『繋がり』を斬られた藤丸立香はエドモン・ダンテスと共にジークの精神世界から追い出された。
今作のジーク君は割とゲーマーです。
本当なら今回の話は立香とジークで、リング○ィットやら桃○やらアソ○大全とかファイナル○ードとかを遊ぶ予定でした。何故か書いてたらこんな展開になってしまいました。
藤丸立香にとってSwitchってまさに次世代機ですので、遊んで欲しかったです。