『推し』だった人が引退を発表されて、傷心のあまりモチベが消し飛び精神が回復するのに時間がかかってしまいました。
ロックな君とはお別れだ…。
カルデアのマスターとその護衛のサーヴァントの前でジークは語る。
自身の経緯を正直に話した。
嘘をつかずに、ありのままに、ジークは正直に話した。
ジークはムジーク家で造られたホムンクルスである事、そこでヨハンという魔術師の下に身を寄せた事、そこでの生活、ヨハンの最期、ジークのサーヴァントとなった『ジャンヌ・ダルク』。
「私が…?」
ジャンヌは衝撃を受ける。
自分ではない自分が目の前の変わり果てたジークのパートナーだった事が。
異なる世界でも絆を結ぶ存在である事をこの時ばかりは少し嬉しく思った。
「彼女は『最後の聖杯戦争』と呼ばれる戦いで、
「だが、現実は
「そして俺は世界と契約した。
ジークが守護者となったのは、その直後だ。
世界に契約を迫られて困惑する事なく、力を願った。
その力で、ジークは『最後の聖杯戦争』の主催者に挑んだ。
「その後の奴は、なにを思ったのか
このジークは、自身のパートナーを無駄死にさせてしまい、その黒幕には最後まで相手にされずに終わるというどうしようもない絶望を味わったのだ。
いっそのこと、その場で殺された方がマシだったろう。
だが、生き残ってしまった。
それから地獄の日々を生きる事を強いられた。
それからは悪夢との戦いだった。
ジークはかつてない絶望に
ジャンヌの死を延々と見続けて、誓いを果たせなかった事を後悔する。
だが、その度に決意を固める。
彼女は死んだが、彼女の魂はまだ守護者の座で存在している。
だから、
そして、会って告げよう。
「俺は必ず貴方を幸せにしてみせる」
その目的だけを頼りにジークは進み続けた。
魔術を練習した。技術を練習した。努力を重ねてひたすら己を磨く。
だが、ある日、ふと懸命に壊れた街を復興させようとする人々を見て、ジークは感動し思いついた。
「俺が
「その後の彼女は『
その結論に辿り着いた。
ジークではジャンヌ・ダルクを幸せに出来なかった。
だがジークではない『誰か』ならば可能な筈だ。
「勿論、俺は何もしない訳ではない。間接的に
それからのジークの行動は決まった。後は実践あるのみだ。
まずは自分の契約したアラヤの抑止力に
アラヤはそれを了承する。別に契約の
アラヤの意志は
おまけに使い物になりそうにない者と成り代わりを要求ならば、数が減る事はないし、妥協出来るだろう。
次は彼女の
守護者の座のジャンヌだけではなく、英霊の座のジャンヌの可能性を全て見る。
彼女の持つあらゆる可能性を観測し、彼女が幸せになれる様に導く。
その為にありとあらゆるジャンヌ・ダルクという可能性を観測しなければならない。
その可能性を全て見た上で幸福への道標を見定める。
「"いつか"ではなく、"今度こそ"あなたを幸せにする為に」
色んな彼女を見た。
喜び、悲しみ、怒り、楽しむ姿を見た。
もう1人の『
何故か『
謀略にかかり、酷い仕打ちを受ける可能性を見た。
卑しい者に嵌められて、堕ちてしまう可能性を見た。
家族と再会して幸せに過ごす可能性を見た。
聖杯大戦呼ばれる戦いでルーラーのサーヴァントとして召喚され、もう1人のジークと共に戦った可能性を見た。
ジークではない『誰か』と家庭を築き、幸せに過ごす可能性を見た。
これこそが、彼女の幸せの道だ。
俺はこれに決めた。
「そんなの…私は望んでない……ッ!」
ジャンヌからすれば、徹底的に管理された人生を歩まされる『幸福』という名の地獄だ。
そんな物を贈られたってなにも嬉しくない。
そんな自由の無い徹底管理の地獄に何の価値があるのか。
「無論、それも
ジャンヌの意見をジークはあっさり肯定する。
「彼女の性格上、俺から送られる『幸せ』など嫌がるだろう」
「『押しつけの幸せ』を享受出来るほど彼女の魂は弱くない。だが、それでも、
故に、例えジャンヌ・ダルクが嫌がろうとジークは無理矢理にでも幸せにすると誓った。
「過酷で良いんです!元より人生とはそんなモノではないですか?」
ジャンヌの意見はもっともだ。
人生には難関が付き物だ。
全くの苦労もなく、なんの刺激もなく、人生を過ごすなどそんなモノは人生とは呼べない。もっとおぞましいナニかだ。
「そうだ。人生とは過酷なモノだ。それは君だけではなく誰にでも当てはまる事だ」
「人生にイージーモードは存在しない。有ったとしてもそれは一時的な物だ」
「故に多少の苦難や悲劇もまた必要だ。だからこそ『
そこからジークは語る。
1人の人間の人生を操作するには、どうすれば良いか?
神として操作する?
駄目だ。そんな脆い存在では彼女をこれから先まで操作出来ない。
1人の人間として接触して操作する?
駄目だ。人間としてだと彼女と関わる期間がとても限定的だ。そもそもジークという存在と関わった時点で駄目だ。
人外として操作する?
駄目だ。人外では他の人間の邪魔に合うし、とても干渉する時間も作れないだろう。
ならばどうするか?
彼女に間接的に干渉し。
彼女と関わる人間を操作し。
彼女の周囲の環境を操作出来る存在になるにはどうすればいいか。
考えた末に出した答えが『人類の敵』だった。
『敵』ならば間接的に関われる。
『敵』ならば間接的に周囲の人間や環境まで操作出来る。
そして何より、
時に人類の発展を促し、衰退を促し、人類と関わり、宇宙に存在する自然すらも安定させる事が出来る。
そして何よりも、『敵』がいれば、人類の意識そのものに干渉する事も可能だ。
人類共通の『敵』がいれば、人々は協力してそれと戦おうとする。
敵がいれば、その悪意や敵意、怒りや憎しみといった、あらゆる負の感情を一身に向けさせる事が出来る。
ありとあらゆる罪の免罪符となり、人々の意思を統一し、干渉出来る存在それこそが『敵』だ。
故にジークはありとあらゆる人間の『敵』となる。
それこそが、『ジーク』が辿るべき道筋だと信じている。
彼女の周りの人間の善性を信じてる。
彼女を幸せにする『誰か』を信じてる。
恐怖や暴力、支配に屈さずに脅威に抗う人々の勇気を信じてる。
ジークは信じている。人の可能性を。人の勇気を。
その人々が歌い上げる"人間賛歌"を信じている。
「『誰か』が奏でる"人間賛歌"を…俺は信じてる」
「その人間賛歌が彼女を幸せにすると、俺は信じている」
ジークの宣言にカルデアのサーヴァント達とそのマスターは絶句する。
『誰か』の可能性を心から信じ、何処までもジャンヌ・ダルクという存在を幸福にする為に文字通り自身の"全て"を捧げるジークに衝撃を受ける。
「一つ、よろしいですか?」
絶句するカルデア一同の中で唯一ゲオルギウスだけが冷静な顔でジークに質問を投げかけた。
ジークはゲオルギウスの質問をコクリと頷いて了承する。
「その方法では『
ゲオルギウスは指摘する。
ジークの方法では、ジャンヌ・ダルクと『誰か』は幸せになるだろう。
だが、それを実行している本人が幸せになっていない。
その様な事を続ける者に訪れるのは破滅だけだ。
どんな事でも長く続けば、負の感情が出て来る。
いずれ自分が幸せにしている彼女に嫉妬してしまう事もあるだろう。
そして、いつか全てを自分で破滅させてしまう事だってあり得るだろう。
そんな当たり前の結末を招くなど、ゲオルギウスからすれば到底許せる事ではない。
「なんだ、
ゲオルギウスの危惧をジークはとても当たり前の事を聞かれた様に肩を下ろす。
「貴方達は自分が0歳の時に何をしていたか覚えているか?」
ゲオルギウスの質問に答える訳ではなく、突然のジークの質問に戸惑ってしまう。
だが、その質問が何らかの意図がある事は分かる。
だが、ジャンヌ・ダルクは
ジークの答えが、ジャンヌ・ダルクの精神を壊すに足る恐ろしいモノだという事が。
(──やめて──言わないで──)
その願いも虚しく、ジークは答えを言う。
「
「水槽の中で、自由の無い時間をただ動く事も出来ずに過ごすだけの毎日だった」
「目が見えず、耳では音も聞こえない。指が動かないのも、腕も、足も、内臓すら動かず、心臓が動く感覚しかなかった」
「まともな呼吸すらした事がなかった」
「貴方達には分かるか?呼吸が出来た事の喜びが、自分の意志で体を動かせた時の喜びが」
「俺は本来なら貴方たち人間が出来て"当たり前の事が出来なかったんだ"」
そもそもの話。ジークと人間では致命的違う所がある。
彼等は人間でジークはホムンクルスだ。
そもそもの話、ジークはホムンクルスであって、人間ではないのだ。
「絶対の忠誠を誓った騎士でも、主君に反感を覚える事もある」
「永遠の愛を誓った夫婦でも、浮気する事もある」
「皆が誰もが『こう在りたい』という初志貫徹の願いを維持する事は出来ない」
「何故ならそれは『人間』だからだ」
誰だって、理想の自分になりたい。在り続けたい。
だが、現実は甘くない。現実はそんなに簡単ではない。
現実はいつだって怪物の様に襲ってその願いを挫いてくる。
その残酷な現実に絶望して、堕ちる者もいる。
だが、それでも。
「その現実に抗う者も同時に存在している」
「それこそが人間の真の価値……人の輝きだ」
絶望的な現実の前に心が挫けても、それでも奮起して現実に立ち向かう事を選ぶ人間もいる。
空元気だろうと、ヤケクソだろうと、現実に抗う人間は確かにいる。
だが、
「
「"こう"生きて、"こう"死ぬ」
「造り者のホムンクルスには
ホムンクルスは人間によって造られた存在だ。
造られた存在故に、決められた事を成し遂げるまで生き続け進み続けることを強いられる。
一度決められた定義からは外れる事は出来ない。
定められた定義と目的から逃げる事は出来ない。
『生きる』と決めれば、どんな存在に成り果てても生き続ける。
『戦う』と決めたならば、最期まで死ぬまで戦う。
「俺が幸福になれないと言ったな?そもそもの論点がそこからズレている」
「何も出来ず、何もせず、『生きる』事すら出来なかった俺が、足で歩き、腕を動かし、今も"こう"して行動できている」
「『誰か』の為に行動出来ている。俺の今の現状が『
「俺は今もこうして幸福だ。幸福な者が他者に幸福にする事の一体何がおかしいんだ?」
ジークははっきりと告げた。
人間とホムンクルスの差を。
幸福の定義は人それぞれだ。
ある者は戦いを、ある者は誰かの不幸を、ある者は誰かを助ける事を。
そして
「貴方達の『幸福』が、俺の『幸福』ではないんだ」
『誰か』とジャンヌ・ダルクという存在の為に行動し続ける事そのものが、即ち結果に至るまでの過程こそが『幸福』と感じるジークには人間の幸福は理解は出来ても共感出来ない。
よって、このジークには平和な日常という幸福は"檻"にしか感じないのだ。
「ああ、そもそも、"彼女"は『
──やめて───
察してしまう。ジャンヌにとって恐ろしい事実が。
「何故なら」
──やめて──やめて──
ジャンヌにとっては有ってはならない可能性を。
「俺が見た英霊の座の貴方の可能性の世界では」
──やめて──やめて──やめて───
やめてやめてやめてやめてやめて
そんなおぞましい言葉を、
「貴方は『ジーク』の事など忘れて、子供を作り、家庭を築き『幸せ』に暮らしていたぞ」
「俺はソレを見て、心から安心したんだ」
「"
「貴方の持つ可能性のお陰だ。本当にありがとう。幾ら感謝しても足りないよ」
どんな罵詈雑言の言葉よりも残酷な事をジークはジャンヌに言い放つ。
ジャンヌはもはや我慢出来ずにジークに向けて聖旗を振りかざした。
「ああああああああああああああああ!」
聖旗を振るって、ジークを攻撃する。
普段の彼女からは考えられないほどに動揺するジャンヌにマシュや立香は困惑せざるを得ない。
ゲオルギウスやマルタは大凡の想像はついたので敢えて冷静にジャンヌとジークを見守った。
ジャンヌは旗を振るう。だが大剣で防がれる。
それでも彼女は攻撃を続ける。
ジークは特に何も言わずに彼女の攻撃を防ぎ続ける。
攻撃を続けるジャンヌの心は悲鳴をあげていた。
どうして、こんな事になってしまったのか。
どうして、私の可能性は他の人を愛して家庭を築いたのか。
どうして、ジーク君の事を忘れられるのか。
彼にあれだけ事をしておいて、どうしてのうのうと暮らす事が出来る。
彼を捨て鉢にして、最終的には邪竜に成り果てていた事を知った時は、迎えに行こうと決めていたのに。
それを忘れて、
目の前にいたなら今すぐに殺してやりたい。
そして、目の前の彼にそれを告げた時に見せた笑みが、『ジャンヌ・ダルク』という存在そのものが『
その別の世界の『ジャンヌ・ダルク』という存在の全てに怒りが、絶望が、ほんの少しの羨望を向けながら、彼女の心をグチャグチャにしていった。
旗を振るう度に心が軋み、絶叫してしまう。
絶叫しながら振るった聖旗は、普段の威力をカケラも発揮されるは無く、ジークに容易く防がれる。
どうしようもない自分の"可能性"という怪物がジャンヌの精神を襲っていた。
ジャンヌの旗を大剣で防ぎながらジークは続ける。
「詰まる所、ホムンクルスと人間の感性の差だな。俺は救われたい訳でも幸せになりたい訳でもない」
「何故なら
「故に、ゲオルギウス。さっき質問はお門違いもいい所だ」
ジークは答えた。
自身の幸福と答えをキッパリと言い切った。
ゲオルギウスは思う。
(
救いとは救いを求めるからこそ、救えるのだ。
だが、どんな聖人であろうと既に救われてる者を救いなど不可能に近い。
ジークの姿勢に、ゲオルギウスは初めて音を上げた。
それはマルタもジャンヌも同じだった。
どんな悪党でも、どんな悪人でも、救い難い者はいる。
だが、こんなにも善性を持ちながらも救えない者は初めてだろう。
ジャンヌは絶叫しながら更に激しく旗を振るう。しかし、どれも拙い動きだ。ジークは容易く捌いていく。
彼女が一体どれほどの激情に襲われているのかも理解しないで、ジークは淡々とジャンヌの攻撃を捌いて対談を続ける様だ。
「どうして、カルデアと戦うんだ?」
その中で立香が質問を口にする。
そもそもの話、人類の敵を目指すならば、もっと他に敵がいた筈だ。
カルデアの他にも、
「『手始め』だからだ」
ジークは続ける。
「カルデアのマスターに聞こう」
「仮にその異星の神の集団を倒して、お前達は滅んだ人類を再生させる
ジークは、カルデアの確信を突いた。
「…ッ⁉︎」
立香は答えられない。
そこまでは考えていなかった。いや、考えない様にしていた。
いつも必死に特異点に赴いて、その特異点を解決するのに必死で、『その後』の事なんてとても考える時間なんてなかった。
「やはりな。白紙化した地球で、もう一度文明を始める大掛かりなプロジェクトでも始めてるかと思っていたが、どうやら違うらしい」
立香の沈黙で、ジークは察する。
白紙化した地球をどうにかする方法なんて、今のカルデアにはそんな余裕すらないのだ。
「カルデアはあくまでも『手始め』だ。その次はその『異星の神』の集団だ。そして、次は残りのビーストだ」
「全ての障害を除いた上で、人類の歴史を取り戻す。例え原始時代や石器時代からやり直す事になろうとも発展させて歴史の奪還を成し遂げて、人類の歴史を再生させてみせる」
「そして、俺はその世界の『敵』となる」
そこでジークは漸く自身の目的の具体案を言った。
ジャンヌの旗を素手で掴む。
攻撃を防いでばかりだったジークが遂に『反撃』に出た。
その行動は意味は、その場の皆が理解した。
「俺の目的は全て話したぞ」
この奇妙な『対談』は終わったと。
「故に宣言しよう。"勝つ"のは俺だ」
ジークの宣言と共に戦いは再開された。
そして、『カルデア』と『
ジークが見たジャンヌの可能性はApocryphaの世界の出来事やFGOの世界の出来事、もっと細かく言えば、二次創作などの本来なら『有り得ない』世界の情報までも渡しています。
例えばぐたジャンの同人誌の内容などの二次創作まで幅広い彼女の可能性の情報をアラヤの意思から提供されています。
壊れにくい上に人類の為にも戦うジークの為に抑止力が頑張っちゃった結果です。
いくら別世界の存在とはいえ、『ジーク』に、それら全てを見られた挙句、ジークに至っては二次創作を『公式』と勘違いしているという状態です。
これくらいすれば、流石のジャンヌも曇りますよ。