今回は前日譚兼ダイジャスト回。
前回はいきなり救世主とか出てきたので、訳の分からない方の為の話。
『最後の聖杯戦争』の時の事を少しだけ描写しています。かなり大幅に大雑把にカットしていますが…。
昔、第三次聖杯戦争と呼ばれる戦いがあった。
その戦いで、天草四郎時貞はキャスターとして召喚された。
その時の天草は、まだ普通の状態だった。
肉体も少年であり、憎しみを内に秘めた普通の天草四郎時貞だった。
マスターと契約し、聖杯によって徳川への報復を願いとして戦いに臨んだ。
だが第三次聖杯戦争の"セイバー"に出会うまでの彼はまだ普通だった。
最初に"セイバー"に会った時に天草四郎は屈辱を受けた。
別に辱められた訳でもない。戦いに負けた訳でもない。
寧ろ助けられた方だ。
聖杯戦争の最中で、"ランサー"に襲撃され窮地にいた時に、"セイバー"に天草は助けられた。
『まさか"普通の"天草四郎時貞に会うとはな。これも因果か…』
『無駄だと思うが、人類をどうこうするつもりならやめておけ。"普通の"天草四郎時貞が出来る事ではない』
『それこそ、お前の中に潜む
『なに、
ただ見逃されただけだ。
何処までも興味を持たれず、ただの一般人程度の存在として認識され弱者として扱われた。
本来なら屈辱とは思わない。
生前はもっと辛い目にあって、悲惨な光景も見た。
本来ならこの程度で天草四郎の心が乱れる筈などなかった。
だが、他人ならばともかく"ジーク"ならば話が別だ。
なぜだかは天草も分からないが、天草はどういう訳か"ジーク"が認められなかった。
心の底から目障りで疎ましくて仕方がない。
気に入らない他人と同じく無視も出来ない。
危機の際には心一つで覚醒し、ランサーを討ち破るその在り方に密かな憧れを抱きながら。
天草も出来れば、
生前の頃に"奇跡"を扱えながらも、戦いの才能も無く、英雄の様にも知将の様にも振る舞えず、あくまでも『指導者』『救世主』として扱われ、特になにも出来ずに終わった生涯だった。
だから聖杯戦争に参加したら、『徳川』をこの世から跡形も無く抹消しようと、思っていたのに。
天草の中で、憎しみの感情よりも、セイバーへの対抗心が勝ってしまった。
「"アイツ"にだけは負けたくない」
天草にとって初めての我侭が生まれた。
そして、時が進み。第三次聖杯戦争はナチスドイツや魔術師、日本政府などの様々な思惑が交差し、混乱を極めた。
だが、その混乱を勝ち抜く強者がいた。
それこそが"セイバー"だった。
真名も分からず、戦法も独特で、宝具も一級品だが、何より意志一つで限界を踏破し急激に強くなる彼を誰も止める事は出来なかった。
そして、誰にも真名が分からない彼を、魔術師達は『未来の英霊』ではないかと言われはじめた。
最初は誰も信じなかったが、あまりにも正体不明で、歴史の誰にも該当する者がいない事から、その時代の魔術師は、後の聖杯戦争の資料に『冬木市の英霊召喚は未来の英霊も呼び寄せる事もある』と付け加えた。
セイバーである『ジーク』は初めて確認された未来の英霊の実例となった。
もっともそれは記録には残らなかった。
何故ならセイバーは敵対者を全て皆殺しにした為、『冬木の英霊召喚は未来の英霊を呼び寄せる事もある』というメモ書きにしか残らず、その発見は当時者が死んだ為、他の魔術師の目に留まる事なく歴史の闇に消えていった。
順当に勝ち進むセイバーを"キャスター"である天草四郎時貞は、遠目から見ているしか出来なかった。
そして第三次聖杯戦争の最終局面。
最後の戦いのカードはセイバーとキャスター。
天草四郎時貞は色々な罠や仕掛けを準備してセイバーに挑んだ。
挑む前に天草はセイバーに質問する。
「お前は…何が目的なんだ。一体どんな願いを抱いてこの聖杯戦争に挑んでいるんだ?」
初めて会ってからずっと抱いていた疑問。
あれほどの意思力を持ちながらも、更に前へ、前へと進み続けるその尽きない欲望が万能の聖杯になにを願うのか不思議で仕方がなかった。
「人類の『敵』」
それだけ答えて、セイバーは天草の準備した罠や魔術を当然のように踏破され、天草四郎時貞はあっさりと敗北した。
倒れ伏し、完敗した天草は大剣で斬られてゆっくりと死を待つ事となる。
その時は天草は初めて悔しさに泣いた。
敵に負けて悔しいと思うのは初めてだった。
生前は仲間の島原の農民達を救えなかった時は、悔しさと怒りで血の涙を流したが、今この時ばかりは、
幼い頃から誰かの為に尽くしていた彼が、初めて自分の為に泣いた。
その時は悔しさと同時に何処か晴れやかだったのを覚えている。
このまま初めての悔しさと共に消滅すると思った。その時だった。
第三次聖杯戦争の"聖杯"が出現したのだ。
"それ"は汚染されていた。
アインツベルンが反則行為によって召喚されたサーヴァント『アンリマユ』。
"それ"は、英霊でもましてや神でもない。
ただの『悪であれ』と願われ、生贄に捧げられた只の村人だった。
"それ"を取り込んだ事で、純粋な聖杯を汚染された。
万能の聖杯は、殺人でしか願いを叶えられない欠陥品に成り下がっていた。
"それ"を朦朧とする意識の中で見た天草四郎時貞は思った。
この聖杯こそ俺の求めたモノだ!
これがあれば、徳川を滅ぼす事が出来る。皆を殺した徳川に報復が出来る。
天草は気力を振り絞り、なんとか立ち上がる。
天草の目の前には汚染された聖杯を破壊しようとするセイバーがいた。
「待てえぇぇぇ!頼む、壊すな!"
天草の嘆願を聞いてセイバーは答えた。
「そうか。ではこちらも言わせてくれ」
「知ったことか」
セイバーは大剣を振り下ろし、汚染聖杯を破壊しようとする。
天草は感情のままに聖杯とセイバーの間に飛び込んだ。
セイバーは躊躇なく天草ごと聖杯を叩き斬った。
そして、第三次聖杯戦争に出現した汚染聖杯は破壊され、天草四郎時貞もそれに巻き込まれ、消滅した筈だった。
だが、たまたま天草が消滅したのが聖杯の近くだった事があってか、天草の魂は汚染聖杯に取り込まれた。
次に天草が気がつくと、そこは呪詛が蠢く、通常ならば発狂する様な呪いの地獄だった。
だが、天草はそこにいても平気だった。
何故なら天草の心の内には常に憎悪があった。徳川に対しての憎しみがあった。皮肉にもそのおかげで天草は助かっていた。
その呪詛地獄の中で天草はこの呪詛地獄からの脱出に向けて思考を続け、思いついた。
天草はこのまま
本来、聖杯とはこの為に作られたのだ。
皮肉にも聖杯ごと斬られた天草は座に還る事はなく汚染聖杯に存在を取り込まれており、座への入口が固定されている。
この時の天草は『根源』に最も近い存在だった。
天草が根源に至ろうとする理由は他にもある。
それは『力』を求めての事だった。
今度こそ、あの"セイバー"に勝つ為に。
天草四郎時貞は、座へと還る入口を通って、『世界の外』に出る。
天草四郎時貞は、サーヴァントでありながら『根源』へと到達した。
その根源の渦で、天草は
世界の未来を知った。世界の過去を知った。世界を知った。世界の真実を知った。
自分を斬った"セイバー"の正体を知った。
ありとあらゆる情報が叩き込まれた。
情報の中には、別の自分の姿を見た。
憎しみを捨ててまで人類を救済しようとする自分を見た。
憎しみに支配され、徳川を歴史ごと葬ろうとする妖術師となった自分を見た。
カルデアと呼ばれる組織で、楽しそうにする自分を見た。
そこで天草はある光景に目が止まる。
それは天草四郎時貞がジークというホムンクルスと戦っている光景だった。
あまりにも拙い戦いだった。
サーヴァントには到底及ばない戦いだった。
だが、その戦いは互いに感情をぶつけていた。
「「お前にだけは負けるものか!」」
そう叫んで2人は戦っていた。
この天草四郎はなにかと理由を付けてジークを嫌っていたが、根源に到達した天草四郎時貞は思う。
違う。
心の底から気に食わない。魂から受け入れられない。
なのに、どこか
彼なら天草四郎時貞という存在を理解してくれるだろう。共感も、納得もして、肯定してくれるだろう。
妙な確信があった。
己の『全て』を見つめて、天草は自覚する。
勉強の傍らでやる農作業が好きだった。
他の人達が農作業でもやりながら、談笑する光景が好きだった。
だが、特別な力が自分にあったせいで、皆が天草の事を"特別"だと認識してしまった。
指導者なんてやりたくなかった。
救世主と言われるのが重荷だった。
そんな重い責任は背負えない。でも背負うしかないから頑張って背負い続けた。
天草四郎時貞という男の真実は、『負け犬』だ。
身の丈に合わない事柄を無理矢理背負って進んで破滅したただのありふれた農民だ。
そして、ありふれた自分を自覚した天草が最初に思った事が、"セイバー"の事だった。
奴は『人類の敵』になると言った。
ならば、人類には『味方』が必要だ。
『敵』と戦う人類の味方が必要だ。
セイバーこと"ジーク"は、人類の敵となる事で人類の繁栄と発展を促すつもりだ。最もそれは副産物だ。
ジークの真の目的は、ジャンヌ・ダルクの転生体の幸福だ。
たった1人の人間を幸せにする為に、随分と大掛かりな事だと思う。
だが、同時に彼らしいと思う。
「どうやら俺は"
認めたくないが、天草四郎時貞は自覚した。
英雄の様に覚醒し、強大な敵に立ち向かう事が出来るジークに天草は憧れていた。
生前の頃、指導者として、見ている事しか出来なかった自分と比べて、彼の様に生きてみたかった。
だからこそ思う。
人類を救いたい。
いつか"ヤツ"が敵として立ちはだかる人類に何か出来ることはないのかと思う。
このヤキモキした気持ちは生前で何度も味わった。
この様な思いをするのは自分1人で十分だ。
だが人類の現実は、悲惨だ。
様々な理不尽な事が横行して、自身の身の丈に合った仕事を成すことも出来ない。
この現実を打破する力が人間には必要だ。
人類の数だけの考えがあり、すれ違いや勘違いが横行する現実の厳しさに寒気がする。
だから、その現実を変えたい。
現実を生きる人々には楽をしてほしい。
身の丈に合った仕事をして、満足するくらいが人間にはちょうどいい筈だ。
だが、悲しい事に人間の欲望は無限だ。
与えれば「もっと」「もっと」と要求して、満足する事はない。
ならばどうすればいい?
天草は考えて、考えて、考えて、ある事を思いついた。
「人類全てが、
悪とは、恐怖とは、『知らない』事だ。
他人の考えが分からない。言葉の意味が分からない。
言葉だけじゃ伝わらない。察してほしいが、察する事が出来ない。
何がどうしてと分からず、知らないまま人は奔走してしまう。
『知らない』から人は過ちを犯す。誤ってしまう。
人も頑張ってはいるが、どうしても分からない事が生じてしまう。
組織の末端までに情報が行き届かず、混乱し、やがて争いを生む。
知らないから、人は思い込み、判断し、行動する。
人類の負にして罪そのもの、それは『無知』だ。
そう天草は結論した。
一度結論を出せば、後は簡単だ。
「全ての人類に全知全能を与えよう」
「そうすれば、世界は、人類は平和になる。これこそ私の人類救済だ」
全てを知っていれば、誰でも誰かの考えを理解出来る。また全能になれば不便はなくなり、争いの原因も無くなる。
全ての人間を1人残らず自身の『根源』に繋いで、根源接続者にする事。
それが天草の目標になり、天草は邁進を開始した。
聖杯の泥の中で、天草四郎時貞は思考を続けて、人類救済への具体的なプランを練る。
様々な案を組み合わせて、試行錯誤して結論を出す。
だが、その中で、どうしても『
何度も排除しても、何度も現れてくるだろう。
故に天草は認識する。
「ヤツこそがオレだけの『敵』だ」
他の誰にも渡したくない。渡さない。
ジークを倒すのは天草四郎時貞ではなくてはならない。
ジークを殺すのは天草四郎時貞の役割だ。
それを自覚した天草四郎時貞は力を手に入れる。
その力の名は、魔法
第二魔法に該当する魔法。
キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグと同じ領域に天草四郎時貞は到達した。
「いいや、
天草は魔術師達が生涯を懸けて欲した根源からの報酬をあっさりと捨てた。
魔法など使わずとも、根源で得た知識で十分だ。
根源に接続する方法も分かった。一番知りたい事も知れた。
『力』はこれで十分だ。
そして、根源から得た知識で天草は真っ先に行ったのは、
生前に天草四郎時貞が率いた島原の農民達。
その"全て"と交信する。
ある者は転生し、ある者は亡霊となり、ある者は別の生き物になっている者も含めて、"全て"と話し合った。
こちらもジークへの感情や目的も含めて隠し事をせずに正直に話した。
責められた。心配された。罵倒された。励まされた。笑われた。怒られた。止められた。
それでも天草は話し合い続けた。
例え殴られ罵倒されようとも対話を試み続ける。
天草が最も救いたいのは自分を信じて死んでいった島原の農民達だ。
だから、何度でも話し続ける。
話して。話して。話して。話して。話し続ける。
次第に天草に反発した者も天草に同調し、共に歩む道を選び初めた。
『島原の乱』で死んだ全ての人間と交信し、天草の目的を全て話して了承を得た上で自らが繋いだ根源に繋ぐ。
1人、また1人と次々と交信し、1人残らず『救って』いく。
1人救う度に、全知全能の者が増えていく。
それぞれが根源へ繋いだ事で、皆が超常の力を手に入れる。
1人残らず叡智を持ち、全能となり、中でも特化した才能と能力をそれぞれで開花する。
総勢約37000人の人々が根源に接続し超越者となった。
島原の人々と確かな絆を結び、天草四郎時貞は『絆』という『力』を手に入れた。
天草が頼めば、皆快く協力してくれる。
凡人だった皆が、今や英霊すらも超えた能力を持つ超人となり、天草四郎時貞に付き従う。
その共通の目的は『人類の全知全能化』。それを果たすまで皆は協力し一致団結してくれる。
心強い『味方』を手にした天草四郎時貞は時を待った。
汚染された聖杯の中に戻り、ただひたすらに天草四郎時貞は時を待った。
その時とは第四次聖杯戦争にて、聖杯が再び破壊された時。
聖杯の泥が街を覆い尽くし、大規模な火災を引き起こした災害。
「冬木市大災害」と呼ばれる運命の瞬間を天草四郎時貞は聖杯の中で待っていた。
そして、その時は来る。
衛宮切嗣とセイバーにより、聖杯は破壊され、泥は溢れ出た。
街に災厄が襲う。
人々が絶叫と絶望する。
その絶望の中で、天草は聖杯の泥によって受肉する自分の肉体を構成する。
肉体は以前のモノでは不足だ。
用意した肉体を成長させ、生前では迎える事が出来なかった全盛期の自身を肉体とする。
本来なら有り得ない筈の天草四郎時貞の全盛期、即ち成人した自分の肉体の調子を確かめてから、天草四郎時貞は前へ進む。
この時、天草四郎時貞は復活を遂げた。
復活した天草が行った事は、まず降りた世界がどんな未来を辿るのか観測する。
その世界はエミヤという英霊が生まれる世界だった。
何か足りない世界で、衛宮士郎がアルトリア・ペンドラゴンを救えなかった世界。
そして、転生者と呼ばれる異界の者が干渉した世界だった。
「……いるのか?」
その転生者がその生涯の懸けて干渉し続けた存在を観測する。
『ジーク』がいた。
「……フッ」
いたぞ。見つけたぞ。我が"宿敵"よ。
「はははははははははははははははははッ!」
災害に巻き込まれた人々の絶望の声を聞きながら、天草四郎時貞は笑う。
"宿敵"の存在を心から祝福する。
周りの死者達を見る。
彼等も聖杯戦争の被害者だ。実に哀れだ。
故に救わなければならない。
「時間はかかるが、"ヤツ"が成長するまで時間はある」
「『被害者』達よ。1人残らず救ってみせるさ」
天草四郎時貞は、冬木市大災害で死んだ者達を1人残らず救う為に対話を開始する。
勿論、一人一人と話し合っていれば、膨大な時間がかかるだろう。だが、それでも天草にはちょうどよかった。
ジークが成長するまで、時間はかかる。
これからの第五次聖杯戦争にも興味はない。
ならちょうどいい。『暇つぶし』を兼ねて地道に人を救っていくのもいいだろう。
「さあ、話をしよう」
死者と対話を行う為に、この世から天草四郎時貞は再び消えた。
そして、数十年後。
死者を全て説得して根源へと繋ぎ終えた天草四郎時貞は、現世に帰還し行動を開始する。
それこそが『最後の聖杯戦争』。
ジークの運命を変えた出来事だった。つまりターニングポイントという訳だ。
最後の聖杯戦争とは、天草四郎時貞がその『
彼は四方八方の魔術師達に魔法の存在をチラつかせて参加を促す。
沢山の魔術師が冬木市に来た。
英霊召喚に成功した魔術師が殺し合いを始める。
その殺し合いに巻き込まれて、立ち上がる者もいた。
それがまた新たな殺し合いを生んだ。
「醜い争いだ」
その光景を心から侮蔑する。
欲望のままに暴走する魔術師達を嫌悪する。
だが、その中で光を放つ者もいる。
尊い事だ。守りたいと切に願う。
だからこそ人類には救済が必要だ。
聖杯戦争は更に激化する。
その激化した戦場の中を勝ち進む者がいた。
それこそがジークだった。
受肉した守護者側のジャンヌ・ダルクことレティシアと共に魔術師達を倒して進んでいく。
そして彼等は最後の聖杯戦争の主催者に辿り着いた。
ジークとレティシアは聖杯戦争の黒幕である天草四郎時貞に挑んだ。
戦う前に天草はちゃんと自分の目的を話したが、彼等には許容出来なかったらしい。
「そんなの人の住む世界じゃない」
彼等はそう否定した。
人類全てが全知全能になれば、その力を振るう者が当然出てくるだろう。
いくら全てを知っていても、知った上で行動する者もまた存在するのだ。
人類には知っていても理解出来ないバカもいるのだ。
理解しようとしないバカもいるのだ。
そんな混沌とした世界は許容出来ない。
そんな世界が救済とは思えない。
レティシアとジークは何としても天草を止めるべく挑んだ。
「まあ、そう来ると思ったよ」
だが、現実は彼等は圧倒されて終わった。
それはそうだろう。
天草四郎時貞の中には、約37000以上のの根源接続者がいるのだ。それに加えて冬木市大災害の死者達を残らず取り込んで、更に強くなった天草四郎時貞に、たかが英霊のジャンヌ・ダルクとたかが特殊程度のホムンクルスでは勝ち目など存在しない。
故に敗北は必定だ。当たり前に彼等は負けた。
「まだだ!」
それでもジークは気力を振り絞り覚醒して、挑み続ける。
挑む。負ける。立ち上がる。
挑む。負ける。立ち上がる。
そんな事を何度も何度も続けるジークを見て、レティシアは我慢できずにジークの手足を聖旗で砕いてジークの動きを止めた。
「……え?」
手足を砕かれたジークは手足の痛みよりもレティシアに攻撃されたという事実に呆然してしまう。
「どうか、貴方は生きてください」
「貴方と出会えて、共に過ごせて本当に良かった…」
レティシアはそう言って切り札を使用する。
「"主よ、この身を委ねます"―――」
紅蓮の炎が、彼女を包み込む。
その宝具は、彼女の最期が由来だ。
火刑によって火炙りにされた彼女の逸話が、彼女の唯一にして最大の武器だ。
彼女の剣は固有結界が結晶化したものだ。
故にセイバーとしての適性もあったのだ。
それを解放すれば、炎は彼女の意思で自在に操る事が出来る。
そして、彼女がこの場で選んだ戦法は特攻だ。
全ての炎を天草四郎時貞に向けて放ち、特攻する。
「『
対象を灰燼に帰すまで燃え続ける彼女の炎を、天草四郎時貞は真っ正面から受けて立つ。
「『清三』『文』迎撃を頼む」
指を鳴らして、自身の根源に繋がる仲間を呼ぶ。
そして、2人の男女が突如として天草四郎時貞の前に現れた。
「「仰せのままに」」
2人の男女は、島原の民。
共に島原の乱で死に、死後に亡霊として現世を彷徨っていたが、天草四郎時貞との対話により、天草の考えに同調し力を与えられた仲間だ。
即ち、根源接続者でもある彼等にレティシアの特攻を止める術はあるという事だ。
2人は共にジャンヌ・ダルクの宝具と特性を同じくする氷を出現させた。
天草四郎時貞が呼び出した2人は、『紅蓮の聖女』と特性が同じで術者の意思で敵を凍らせる。
つまり、『紅蓮の聖女』を
天草四郎時貞がした事といえば、同志の中でそれを使える者を見つけて頼んだだけだ。
天草四郎時貞の仲間であり同志である2人はそれを快く承諾したのだ。
2人の冷気によって『紅蓮の聖女』の炎はどんどん相殺されていく。
単純な数の差によって、炎は押されていき、レティシアの放った『紅蓮の聖女』は敗北する。
「介錯だ。痛みは無いから安心しろ」
そして炎を剥がされ無防備になったレティシアを、天草四郎時貞はその手に持つ刀で、
「ああああああああああああああああああ!」
宙を舞ったレティシアの首を見たジークは絶叫する。
するとジークの頭上に光の球体が出現した。
ジークの仕業ではない。天草にはソレが何なのか分かった。
『
この絶望と怒りに呑まれた時を好機と言わんばかりに、ジークに契約を持ちかけたのだろう。
「力を寄越せ!アイツを殺す、力を寄越せぇぇぇ!」
その契約をジークは怒りのままに応じて、力を要求した。
抑止力はそれに応じる。目の前の天草を殺す力を与えて、用済みと言わんばかりに光球は消えていった。
この時に天草四郎時貞の死は確定した。
抑止力は『根源』に近づく者を許さない。
そもそも『根源』とは人間が触れていいモノではないのだ。
更に言えば、天草の目的は人類の進歩を止めるモノだ。
天草四郎時貞を始末する理由が十分すぎるほどある。
故に天草四郎時貞は思う。
せめて人間としての最期は、『ジーク』で飾ろうと。
そして、改めて自身の
別にこれで殺されても、根源に到達した『天草四郎時貞』は、根源に到達した影響で、その魂がかつての頃と違って別次元の域のモノになっている。
更に彼の中には、約37000人以上の根源接続者が存在しているのだ。
英霊の座に還ろうものなら、『座』そのものが彼に乗っ取られかねない。
故にこの『天草四郎時貞』は本来の座には還らずに、ファラオの座の様に高次元の存在として英霊の座より高位の『座』に
故に天草四郎時貞はここでジークに殺される事を是とする。
天草四郎時貞は『人類の敵』となったジークとの戦いを夢見て、今は殺される為に愛用の刀を握った。
いずれ行われる『
そして、天草四郎時貞はジークの剣に貫かれてその最期を遂げた。
これがこれまでの『
そして、カルデアと戦う為にジークは『獣』として現界した。
その『
『
つまり今作の天草が救世主になる元凶は英霊となったジークです。更にジークが人類の敵を目指す元凶は救世主の天草です。
お互いがお互いにトラウマとなって影響し合っていたんです。
「あんなヤツに人類を好きにさせてたまるか!」「つーかアイツに負けたくない!」というのがお互いの一番の動機です。ラブラブですね。
最近はリアルの方が忙しくなってきたので、これからは更に投稿が遅くなると思います。
この作品を楽しみに見てくれている読者の皆様。私の実力不足で申し訳ありません。
週一で投稿する事になるかもしれませんが、頑張って書くので、どうかまた読んでもらえたら幸いです。