転生者がジーク君に干渉した結果   作:クソ眼鏡3号

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お久しぶりです。
FGOの塔イベで執筆が遅れてしまいました。漸く完走したので投稿します。
割とマジでリアルが忙しくなってきたので、執筆の時間が中々取れないので次回はますます更新が遅くなりそうです。

情けない作者で本当に申し訳ない。

余談ですが、今作のジークと天草四郎時貞の容姿をイメージしづらい方もいらっしゃると思いますので、参考としてイメージに近いキャラを挙げて起きます。
個人的に今作の『人類の敵』ジークはzero Infinityのオルフィレウス。『救世主』天草四郎時貞は黒髪バージョンの獣殿でイメージしています。
勿論、読者様の好きな感じでイメージしていただいて結構です。
あくまでも参考ですので。
読む時の助けになれば幸いです。
気にしない方はこのままいつも通りにお進みください。


第六節 愚者

『ビースト』が現れれば、世界はそれに対抗すべく『カウンター』を用意する。

それは『冠位(グランド)』のサーヴァントであり、或いは全く別のクラスの者であったり様々だ。

カルデアも何度か体験しているが、今回はその別のクラスが召喚された事例だろう。

 

ただ、カルデアにとって予想外なのは、その召喚された者がよりによって『(ジーク)』と深い関係である事だろう。

 

そして、敵と対峙して喜悦を表にして戦いを繰り広げる男、『天草四郎時貞』はカルデアでも知ってる者を多い。

だが、召喚され戦っている天草四郎時貞はあまりにもカルデアの知る天草四郎とは明らかにかけ離れている。

 

容姿が違う。

黒髪の長髪に肉体も本来ならあり得ない筈の成人男性の姿になっている。

 

能力が違う。

刀を使っているが、剣術のレベルが桁違いだ。

宮本武蔵が見れば仰天するだろう。

彼は明らかに『空位』に至っている。

たまに使用する魔術も、空間転移や固有時制御などの術者のサポートに徹していながらも神代の魔術師レベルの奇跡を易々と使っている。

 

そして明らかに性格に違いがある。

普段の天草四郎はよく笑顔を浮かべるがどこか心理が読めない底知れない雰囲気を纏っていた。

だが、この救世主は笑みこそ絶やさないが、分かりやすく喜悦の表情を浮かべている。

 

どう考えても同一人物には思えない。

 

その『救世主(天草四郎時貞)』と『(ジーク)』はカルデアをほったらかしにして戦っていた。

 

「ははははははははは!」

 

天草四郎時貞は高笑いをしながら刀を使った正統派の剣術で応戦する。

剣術を扱う者が見れば驚愕するだろう。

何故なら彼の放つ斬撃は全て必殺だった。

斬撃は同時に幾つにも分裂し、佐々木小次郎の『燕返し』と同じ現象を通常攻撃として放っていた。

 

多重次元屈折現象を剣術という力技ではなく『魔法』というわけでもなく、なんらかの『奇跡』を使って使いこなしている。

それこそ使い手が、全く別の人間を憑依させているかの様だった。

 

佐々木小次郎の『中身』が生涯を通して会得した神業を天草四郎時貞は当たり前の様に振るっていた。

というより、魔術という奇跡に一切関わらずに剣術のみでその領域に到達した佐々木小次郎の方が異常なのだ。

天草四郎時貞は数々の苦難の果てに『根源』に到達し、その仲間がこの領域に到達した事で、天草はこの技を使える様になった。

 

天草四郎時貞の仲間は、全て彼と『根源』で繋がっている。

島原の農民達と冬木市大災害で死んだ者達は全て天草四郎時貞の同志であり仲間である。

 

人間には隠された才能を秘めた者が多くいる。それこそ社会で大成した者や、ひっそりと達人となった者など様々だ。

だが、その才能を発揮する事なく一生を終える者も多くいる。

ある者は一般人でありながら、死徒の序列に並ぶ者や、魔術師として大成出来る者や、人外の如き精神力を持つ者など様々だ。

その才能に気づく事なく、活躍する場も、発揮する機会も無く、一生を終える者など、人類史には腐るほど存在する。

その才能に気づくキッカケさえあれば人は誰でも特別になれるのだ。

 

島原の農民達もまた多くの才能を宿した存在だった。

剣を握らせ修行を積めば剣聖になれる者もいた。

魔術の才能があった者や軍師の才能があった者がいた。

 

天草四郎時貞はその『根源』に仲間達と繋がっている。

 

『根源』が繋がっているという事は『共有』しているという事だ。

彼等は天草四郎時貞であり、天草四郎時貞は彼等だ。

正に一心同体。

約37000以上の全能者と、特化した才を持つ者がそれぞれ天草四郎時貞一人に収束しているのだ。

彼等の目覚めた技能は全て使える。

彼等の目覚めた才能は全て使える。

彼等の目覚めた能力は全て使える。

 

天草四郎時貞は一人で軍勢なのだ。

 

先程の多重次元屈折現象も、その共有した能力によるモノだ。

 

仲間の力を借りて天草四郎時貞は突き進んでいく。

 

仲間と絆を結ぶほど強くなる。結束が力となる。

 

正に規格外。

異常どころか完全に枠の外だ。

正に最強の個人であり、最強の軍勢。

一人一人の能力が全て全能の軍勢など、どんな王でも勝ち目は無い。

 

「関係あるか」

 

だが、ジークはそんな事など知らんと言わんばかりに更に斬撃を加速させる。

 

「おおおおおぉぉぉぉ!」

 

3つの斬撃や4つの斬撃を常に浴びせられ続けたジークは傷だらけだ。

だが、ジークは全く怯まない。

顔を斬られようが、心臓を両断されようが、全く怯まない。

回避出来ない斬撃を常に浴びせられるなら、斬撃を浴びても平気になればいい。

斬断されても、魂からエネルギーを引っ張り出して瞬時に修復すれば問題はない。

ジークは斬撃の雨を浴びながら必滅の光を宿した大剣で反撃する。

 

ジークは空間を斬り裂いて全方位から必滅の斬撃を放つ。

限定的だが空間干渉による全方位攻撃を回避する術はない。

 

「また全方位攻撃か?芸がないぞ"宿敵"よ」

 

「そんな技などタネが分かれば回避は容易だ。私達を甘くみるなよ」

 

「忘れたか?私は1人ではない事を」

 

天草四郎時貞はそれを軽口と共に、指を鳴らした。

 

「『桓十郎』斬り裂いてやれ」

 

指を鳴らした瞬間に謎の偉丈夫が2人の間に出現した。

それはカルデアの英霊ではなく、ましてやジークの仲間でもない。

天草四郎時貞の仲間であり一部である島原の農民達だ。

 

「我が主の宿敵よ。お覚悟を」

 

謎の男は、その言葉を言い終わるまでに無数の斬撃をジークに浴びせた。

ジークは瞬時に肉体を硬化させて防御するが、鋼鉄を凌駕する硬さになったジークを、純粋な剣の腕のみで斬り裂いていく。

だが寸断まではさせない。ジークは気合で骨を硬質化させ鋭い刃を防ぐ。

 

「ダメ押ししてやれ『総二郎』」

 

続けて天草四郎時貞は指を鳴らす。

今度は大柄な男が出現する。

 

「親方様の命令だ。悪く思うなよ!」

 

大男は、渾身の拳をジークを殴りつける。

その拳は、一撃だけではない。一瞬の内に数千発は殴りつけていた。

その繰り出されるラッシュの雨にジークは怯んでしまう。

頭蓋が、内臓が、骨が、肉体が拳で砕かれる

 

それを見逃さない天草四郎時貞ではない。

そのまま追い討ちで、先程の『桓十郎』という男が数十に分裂した斬撃を浴びせる。

弱った体に鋭い斬撃を浴びせられて、流石のジークも寸断を避けられない。

首を斬られた。腕を斬られた。脚を斬られた。胴体を斬られた。頭部を斬られた。

 

本来ならそこで決着が着く。

 

この光景を見れば誰の目にも明らかだった。

 

この"天草四郎時貞"は『根源』に到達しているという事実が、魔術に関わる者達には嫌という程思い知る。

 

だが、それで諦める敵ではない。

ジークには不屈の意思がある。

それさえあれば、例え脳や心臓を斬られようとまだ戦える。

 

「まだだ!」

 

寸断された頭部が叫ぶ。

肉体は既にボロボロだ。修復しようにもそれを天草四郎時貞は許さないだろう。

 

「させるか!『里香』!」

 

「了解!焼却します!」

 

天草四郎時貞はその覚醒を阻止する為に『里香』という仲間を呼び出す。

『里香』は掌から炎を収束させて、核融合を発生させる。

掌の業火の塊を解放しジークに放つ。

核融合という破格のエネルギーをぶつけられたジークの肉体は跡形もなく焼却される。

 

だが肉体を失った程度で諦めるジークではない。

肉体が無くなったならば、後は魂のみで抵抗すればいい。

 

『まだだ!!』

 

魂が叫ぶ。

更に魂が覚醒する。

ジークはいつも危機に陥れば、精神力のみで魂のエネルギーを引き出していた。

ならばジークは無意識とはいえ限定的だが第三魔法に王手をかけていたのだ。

 

ならば後はそれを完成させる為の肉体という枷を捨てる機会さえあればジークは第三魔法に到達出来るのだ。

 

魂が、躍動し物質化する。

ソレは、ヒトの形をしていた。

蒼い光を放つ発光体だった。

顔に当たる部分に目と口が光の色の具合で漸く分かる程度だ。

魂が物質化しているとはいえ、やはり精神力のみという強引な手段だった弊害なのか、物質との境が曖昧になってしまっている。

所々透けている。だがそれでもその意思で存在しているという訳の分からない存在へとジークは成り果てた。

一見すると宇宙人にしか見えない異形だった。

 

ソレは正にヒトの形をしたナニカだった。

 

『まだだ!!!』

 

その手に持っていた幻想大剣が粒子化する。

物質化していた大剣が、光の粒子となり、文字通りの光の剣として生まれ変わる。

その光は、『約束された勝利の剣』の真名解放の時に出る極光の様に常に光り輝いていた。

 

「ああ、そう来ると思ったよ」

 

光の異形と化したジークを見て、天草四郎時貞は更に喜悦を露わにする。

 

それでこそだ我が宿敵よ。お前がその程度で終わる訳がない!

 

そんな彼の心の叫びが事情の知らないカルデアの面々にも分かるほど、天草四郎時貞は満面の笑顔を浮かべていた。

 

ジークが光の大剣を天草四郎時貞に向けて一振りする。

振われた光の大剣は『約束された勝利の剣』に酷似していた。だが、光の大剣と星の聖剣とは決定的な違いがあった。

それは光の放出の違いだ。

星の聖剣は使用者の意思で光を放出出来る。

だがジークの使う光の大剣は、常時極光を放っている。

つまりジークの光の大剣は連続で光の斬撃を放ち続ける事が出来るという事だ。

 

『おおおおおおおオオオオぉぉぉォォ!』

 

ジークはその一振りの内に、数千の斬撃を生み出していた。

その魂が物質化した状態の身体は、人体の限界を遥かに超えた動きを可能にした。

音速を遥かに超えて動いても肉体が崩壊する事もない。

肉体という枷から解き放たれたジークは、人間の体を動かす電気信号のプロセスを挟まなくてもすぐに動く事が出来る。

その意志の元で、ジークは光速に匹敵する速度で動く。

 

アルトリア・ペンドラゴンでは、竜の心臓があった頃の生前でも『約束された勝利の剣』の連続攻撃は、数回程度が限界だろう。

ジークの場合は剣そのものが常に極光を放っている為、一瞬の内に数千の光の斬撃を生み出す事も出来る。

故に繰り出される攻撃はどれも対城宝具級の一撃をジークは光速の速度で振るい続けた。

 

『桓十郎』や『総二郎』、『里香』もその光速の刃に斬り裂かれる。

そして、天草四郎時貞もまたミクロ単位までに斬り刻まれる。

 

「おいおい、甘くみるなよ。()()()光速の攻撃が私達に効く訳ないだろう?」

 

だが、その程度では天草四郎時貞は死なない。

ミクロ単位に斬り刻まれようと、天草四郎時貞はすぐに再生した。

仲間の中に回復や再生に特化した者がいたのだろう。

光速の攻撃でも天草四郎時貞は倒せない。

ミクロ単位に斬り刻まれた仲間達の残滓は天草四郎時貞の元に還元する。そして斬られた仲間達はまた復活する。

あの不死身の全能者集団は未だ一人も斃せていないのがジークの現状だった。

 

「お前はいつもそうだ。まだだまだだと覚醒していつも相手を力押しで捩じ伏せる」

 

「それでお前は何を成せた?生前も結局は阻止されて何もかもが中途半端なままだ」

 

天草四郎時貞は、還元した仲間達を復活させて、再度展開する。

先程斬り刻まれた四人は元通りになっていた。

 

「分かるか?お前は所詮は人類にとって『()()』でしかないのだ」

 

「敵対する事で繁栄を促す?人の悪意を自分に集中させて他人に優しい性質に人類を変える?」

 

「阿保かお前は。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

天草四郎時貞は仲間達を更に展開する。

その仲間達は次々とジークへと総攻撃を開始する。

 

「人類の本質は善でも悪でもない。その本質は()()だ。人類とは意外と馬鹿ばっかりなんだよ。どれもこれも皆がただ漠然と好き勝手生きているだけだ」

 

「どうしようもない愚か者しかいない種族。それが『人類』だ」

 

どれだけ膨大な知識や発想を持った賢い人でも、他人から見れば突拍子もない事を言い出す愚か者にしか見えない。

どれだけ実力がある人でも力に振り回されてしまう。

そうでない者もたまにいるが、それも他人から見れば愚か者に見える。

 

右を見ても左を見ても愚か者しかいない世界。

 

『愚者』こそが人類の本質と天草四郎時貞は納得し確信した。

 

「ならば救わなければならないだろう⁉︎助けなければならないだろう⁉︎知識を身につけ、経験を教え、あらゆる価値観を知る事で、人は真の『自分』という答えを知る事が出来る!」

 

「確固たる不変の『自分』を知り、人はそれぞれの己の道を歩む。それぞれが自身の信念を掲げて進む世界こそ『楽園(パライソ)』ではないか?」

 

「例えその世界で愚者がいても、それは本人が納得した上でやっているのだから、別に構わん。許せないのは無知であるが故の愚者だ!」

 

人間社会には多くいる。

人間とは基本的に無知だ。それ故に愚かな行為をする事がある。

聖人の様な善性を持ちながら悪と呼ばれた者がいる。

悪鬼の如き悪性を持ちながら正義と呼ばれた者がいた。

 

嘘をつくなよ。

正直に言え。言いたい事はちゃんと言え。

だから勘違いを生む。すれ違いを生む。

だから理解から遠のく。

頼むから理解してくれ。

拒絶するなら理解した上で拒絶しろ。

他者への無理解という不条理が天草四郎時貞には許し難かった。

 

「これが()()の掲げる理想(セカイ)だ。故に私達は人類を救済する!」

 

天草四郎時貞は仲間達を展開する。

ジークの上空に約37000以上の全能者達が現れた。

 

「お前は『迷惑』なんだよ。信念を掲げて行動するのはいい。だが、おまえは『誰か』を理解しているようで()()()()()()()()()

 

「勝手に自分の中で完結して、勝手に行動して、それによって悲しむ者の事を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

仲間達の真の総攻撃が開始された。

魂のみとはいえ、不死身となったジークを全能者達は不死殺しの概念を纏わせた攻撃で確実なダメージを与えていく。

斬られた。燃やされた。凍らされた。潰された。

ありとあらゆる破壊現象がジークに降り注いだ。

 

「まだだ!」

 

不死殺し?知るか()()()()()()()()()()()()()

肉体が斬られようが潰されようが復活してみせる。

あらゆる攻撃を()()()()()()()()()

ジークの『意思』という概念が、他の概念を塗り潰して、上書きする。

何故なら魂のエネルギーは無限だ。

ジークの精神が折れない限り、ジークに敗北の二文字は無い。

 

「お前の行動力は認めるが、お前の願いの所為で犠牲になる者がいると思うと、虫唾が走るんだよ!」

 

「人類の敵になって、お前の想い人が幸せになった所で得られるのは精々()()()()()()()()()()()()⁉︎」

 

天草四郎時貞は段々と声を荒げていく。

何故なら彼はジークの事を誰よりも理解しているから。

憧れて、助けられて、負けて、悔しくて、何処までも『誰か』の事を理解しようとしないジークに腹が立って仕方がない。

唯一無二の理解者であるが故に、天草四郎時貞はジークを許せない。

思考も分かる。理由も分かる。納得も出来た。

だが、共感だけは決して出来ない。

 

「そもそもお前は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

天草四郎時貞は指摘する。ジークの抱える矛盾に。

ジークの目的は『ジャンヌ・ダルクの幸福』だ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

いくら敵対したとしても殺しまではしてはいけない筈だ。

何故なら幸せを願うなら、その相手を殺害しては本末転倒も良い所だ。

何故ジークはジャンヌを躊躇なく敵対し殺害を決行出来るのか?

それは単純だ。

 

「どうせ『()()』あるからだろう?」

 

輪廻転生に戻ったジャンヌ・ダルクは人間として再び生を生きる。

だから例え死んでも、人間となったジャンヌは輪廻を巡り、再び人間となる。

今敵対しているサーヴァントのジャンヌは、所詮はサーヴァントだ。あくまでも本人ではなく写し身だ。

だが、ジークはそれも幸せにしようと思っているが、()()()()()()()()()()()()()()

ただそれだけなのだ。

 

あくまでも自分の障害として()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

つまりそういう事だ。何処までも上から目線で『ジャンヌ・ダルク』を道具か人形でも扱う様になってしまっている。

 

「何処まで傲慢なんだ貴様は?命を何だと思っている?」

 

「その傲慢は神の領域だ」

 

「『誰か』の為と言いながら、結局は自分の為だ。お前は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

人類の『敵』の正体はただの愚者だ。

他者を理解しようとすらせずに勝手に納得して自己完結して突き進む大馬鹿者。

 

それが『(ジーク)』という存在の正体だった。

 

 

お前の願いは、お前しか救わない

 

「文句があるなら言ってみろォ⁉︎」

 

天草四郎時貞の怒号と共に、掌に生み出した光槍をジークに向けて放つ。

 

「『真実を超越せし光槍(ロンギヌス)』!」

 

救世主を殺した槍の名を冠した魔術。

天草四郎時貞が開発したジークを殺す為に造り上げた魔術。

その光槍は、先程の大量に分裂したジーク達を殲滅した槍だ。

本来ならその意思力で復活する筈のジークを一撃で消滅させた槍は、勿論ただの槍ではない。

その槍は、天草四郎時貞の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

魂から精製し、強力な意思を込めれば、その槍は現実すら『上書き』する必殺の槍となる。

現実すら改変する槍は、当たれば問答無用で消滅したジーク達の様子も頷ける。

 

「言いたい事はそれだけか?」

 

カルナの神槍やクー・フーリンのゲイボルグよりも殺傷能力のある光槍を前にジークは更に覚醒する。

 

「『幻想大剣・超越世界(バルムンク・オーバーワールド)』!」

 

光の大剣で光槍を消滅させる。

否、正確には光槍を筆で塗り潰す様に、『上書き』したのだ。

 

ジークは先程から不死殺しの概念を纏った攻撃を()()()()塗り潰している。

つまり既にその時からジークはその領域に到達していたのだ。

 

即ちジークもまた天草四郎時貞と同じく『意思』による現実改変能力を身につけたのだ。

コツは掴んだ。

ならば後はそれを続けるだけだ。

これこそが『人類の敵』の到達点。

個人の意思で世界を塗り潰し、上書きする存在。

 

魔法の域に遂に到達したジークは天草四郎時貞に向けて返事をする様に斬りかかり、天草四郎時貞も自身の『真実を超越せし光槍』でその光剣を防ぐ。

 

強靭な意思のぶつかり合いは、時空を歪ませ世界を震わせる。

 

「俺の存在そのものが『迷惑』など、とっくの昔に自覚済みだ」

 

「だが、それで止まれるほど利口でもないんだ」

 

「俺は既にそうすると『決めた』のだ。全ては俺の意思だし、続けないと俺が幸福になれない」

 

「だからこそ、それでも進むと決めたのだ」

 

ジークは剣を更に剣を振るって宣言する。

全ては俺のエゴでしかないと。

自覚した程度で止まれるほど賢くないし、愚か者でしかない。

 

「そのお前に問おう。天草四郎時貞」

 

「貴様こそ、なにが人類の救済だ?お前のやってる事は停滞だ」

 

「未知があるから人は知ろうとする。人類の繁栄には未知が必要不可欠だ。あらゆる事を知って、人からやる気を奪うだけだ」

 

「人生もまた漫画やゲームと同じさ。先の展開をネタバレされて一喜一憂して楽しむ事が出来るか⁉︎」

 

「結果に行き着く『過程』をすっ飛ばし続けて生き続けた先にはただの感情の失った人形でしかない」

 

「その有様で、『信念』を手に入れて突き進めだと。何様のつもりだ貴様⁉︎神でもここまで傲慢ではないぞ⁉︎」

 

「お前も充分『迷惑』だ。お互い様だろう?」

 

どんどんジークの剣撃が増していく。

人には感情がある。

喜怒哀楽の感情で一喜一憂しながら人生を過ごす。

それが当たり前なのだ。

その当たり前が全知全能を与えられて保つ事が出来るか?

無論、出来る訳がない。

未来を知り、全てを知った人類が行き着くのは停滞だ。

知った上で行動をし続ける事が出来るのは少数だ。

希望を胸に進み、目的に向けて行動する。

それらは全て知らないからこそ出来る事だ。

 

「なんだそんな事か。別にいいじゃないか」

 

その事実を天草四郎時貞は当たり前の事を聞かれた様に返す。

天草四郎時貞は光槍を振るう。

 

()()()()()()()()()()()()()。例え世界が剪定されたとしても、全知全能となった彼等は生きる事が出来る」

 

「『停滞』は、確かに訪れるだろう。だが、停滞から『()()』事が出来るのも人間の本質なのだ」

 

「『停滞』は気の持ち様次第で解決する。なにせ人類は意外と図太いんだ。無駄と分かっても、無意味と分かっても、無価値と分かっても、『行動する』事が出来るのが人間なんだ」

 

天草四郎時貞の光槍だけではなく、仲間達が加勢に入り、ジークに向けて総攻撃を放つ。

全知全能の行き着く先は無気力な停滞だ。

だが、それでもその停滞を受け入れず行動する者が必ず現れる。

 

「『停滞』を打ち破る人間の可能性を信じている。何度でも言うぞ"宿敵"よ」

 

「人間の可能性を信じているからこそ、()()は人類を救うのだ!」

 

人間は全知全能になっても歩みを止めない。

天草四郎時貞はそう信じている。

全知全能の先にある更に『先の未来』を天草四郎時貞は信じている。

 

総攻撃を受けながら、天草四郎時貞の宣誓を聞いたジークは心底うんざりした雰囲気を醸し出しながら彼等の総攻撃を気合の一閃で振り払い、天草四郎時貞に返事を返す。

 

お前達の救済は、お前達しか救わない

 

()()()()()()()()()。間違いを正さなければいけないのは同感だ。でも間違い続けるのもまた人間なんだ」

 

「人類の本質は確かに愚者だろう。失望されても仕方ないさ。だがそれでも生きていいんだ。間違い、挫け、すれ違い、絶望しても人生は続く」

 

「その理不尽や不条理に抗い続けるから、人間なんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そこからジークは、光速を超えた速度で剣を振るい始める。

光の速度を超えて振われた剣は、時空を超えて、天草四郎時貞の仲間達を次々と斬り始める。

それを阻止せんと天草四郎時貞もまた光速を超えて槍を振るって迎撃する。

 

ジークもまた理不尽や不条理に振り回されて此処にいる。

だが、それでも理不尽な現実に抗い続ける事をやめるつもりはない。

現実という怪物に屈しないし屈する事を人間には許されていない。

 

「その姿こそ『美しい』と『尊い』と思う。現実という巨大な怪物に抗い続ける人間達を信じている」

 

「人間の善性を、根性を、底力を、俺は信じている」

 

別に愚かでも良いんだ。

抑止との契約で見たジャンヌ・ダルクの可能性の世界で、彼女が他の男と幸せそうに暮らす姿や堕落していく姿を見て、正直な所、悲しかった。

悲しいが悲しいだけだ。

それでも、信じたいんだ。

人間の可能性を。

誰でも間違う事はある。

 

だから次からは、改めてくれると良い。

次が駄目でも、また次頑張ればいい。

次が駄目ならまた次だ。

何度でも何度でも、見守り続けるさ。

絶対に見捨てない。

いつか良くなるまで。

不器用でも誰かに優しくしてくれれば良い。

適当に頑張るくらいが丁度いいんだ。

その頑張る姿こそ宝なのだから。

 

「愚かさも間違いすらも許容しないで、何が救済だ⁉︎何が全知全能だ⁉︎長い目で見て面倒を見る事もしないで何が救いだ⁉︎」

 

「単に()()()()()()()()()()()?現実が嫌になって、人類が完璧な存在でなければ嫌なだけだろう?」

 

「大事なのは結果ではなく、そこに至る『()()』だ!」

 

「過程を壊して、結果だけを持ってきて、その結果を貪る事の何が救済だ⁉︎その結果に至るまで頑張る事そのものが、価値がある事に何故気づかない⁉︎」

 

「その過程こそが、結果すら凌ぐ真の宝だ。それを蔑ろにしておいて救済だなんだと言うんじゃない!」

 

ある意味では、ジークもまた人類と戦う事で『停滞』している。

ジーク本人もそれで満足している。

いずれ人類はジークを打倒するだろう。

勿論、ジークはただではやられるつもりはない。

何度でも復活して、何度でも敵対しよう。

 

故に天草四郎時貞は許せない。その過程こそ忌むべき物だと思うから。

 

「その『過程』の中でどれだけの者が苦しむと思ってる⁉︎貴様から見れば美しいだろうが、本人からすればたまったもんじゃないんだ⁉︎」

 

「お前はその被害者に、『お前の犠牲には価値があった』とでも言うつもりか⁉︎ふざけるなよ⁉︎」

 

「お前のそういう所が、心底嫌いなんだよ!」

 

その敵対した景色から見る人類の姿を慈しみ、その人類の中で暮らす想い人の幸せな光景を夢想しながら、犠牲になる者の事を考えずに戦い続けるジークの姿が、天草四郎時貞には哀れで、悲しくて、納得出来ないしムカついた。

 

光速を超えた攻防の果てに、天草四郎時貞が怒号と共に覚醒した。

天草四郎時貞の光槍が、ジークの剣を弾き、光槍がジークを()()()

 

「何処までも停滞しきったお前の考えにはウンザリだ。覚醒するんだろう?さあ、しろよ粉砕してやる」

 

光槍から、『上書き』が始まる。

本来ならその時点で終わりだ。だが、ジークはそれで終わらない。

 

「言われなくとも……まだだ!」

 

槍に串刺しにされ、天草四郎時貞の『上書き』を受けて、その『上書き』をジークの意思で塗り潰そうと試みる。

 

だが、それを見過ごすほど、天草四郎時貞とその仲間達は甘くない。

 

「ッ⁉︎」

 

ジークが光槍を塗り潰そうとしていた所を、天草四郎時貞の仲間達が、光槍と同じ能力を持ったそれぞれの武器をジークに向けて放っていた。

槍、刀、剣、薙刀、棒、メリケンサック、とにかく様々な武器を魂から精製し、ジークを貫いていく。

 

「忘れたか?()()()()()()()()()

 

「1人で戦うお前と違って、オレには()()がいる。私達の絆を甘く見るな!

 

仲間達は全能の者達だ。故に天草四郎時貞の真似事など出来て当然だ。

それぞれが意思を燃やし、1人また1人と覚醒していく。

 

「故に此方も言わせてもらおう」

 

「"まだだ"!」

 

37000以上の全能者達、()()()()()()()()()

覚醒し爆発させた意思をそれぞれの武器に込めずに、天草四郎時貞という主に還元する。

仲間達は、皆承知の上だ。

例え自分が消えても人類の救済という理想は天草四郎時貞が存在する限り、終わらない。

自身の全てを天草四郎時貞に預けて、天草四郎時貞と心身共に融合する。

 

ジークを貫く武器が消えて、槍だけが残る。

仲間達の覚醒を相乗して天草四郎時貞は無数の覚醒を遂げる。

最低でも約37000以上の覚醒を重ねて、天草四郎時貞は更なる領域に足を踏み入れる。

 

ドクン、ドクンと鼓動が伝わる。槍から、空間から、天草四郎時貞から。

 

我が右は 悪を喰らう

 

我が左は 天からの恵みを齎す

 

我が両手には奇跡が宿っている

 

天草四郎時貞が詠唱を開始する。

それは、天草四郎時貞が持つ根源と接続した固有結界だ。

それを展開して、ジークの展開した固有結界を粉砕しようとしているのだ。

 

だが、()()()()()()()()()()()

固有結界の他に何かが生まれようとしている。

度重なる覚醒の元に天草四郎時貞は新生する。

神や悪魔すらも生易しいほどの存在へと新生していく。

"ソレ"は、魔法使いでもなく、根源接続者ですらない。

ジークは抗うが槍の上書きの力が強力で身動きすら取れない。

 

失い、失い、憎み、憎むこれまでの旅路は無意味で無価値だった

 

なればこそ、本当の意味と価値を生もう

 

突き進み、証を立てよう

 

"ソレ"はもう一つの『根源』。人の形をした『根源』そのものだった。

 

『根源』とは、あらゆる事象の原因。ありとあらゆる物を生み、ありとあらゆる終わりを内包している。

概念や法則を生み、世界構成するあらゆる存在を生み出す真の『根源』。

即ちありとあらゆる存在は『根源』から生まれて終わっていく。

人間も英雄も動物も道具も神も悪魔も星も、宇宙すらも例外ではない。

 

救済を。救いの恵みを今ここに

 

───さあ──救済賛歌を始めよう

 

『誰か』がこんな言葉を言った事がある。「何事にも例外は存在する」と。

その物事の中には『根源』ですら例外ではないのだ。

 

──『無限の救世(アンリミテッド・セイヴァー)』!

 

新生────根源異存在(セカンドオリジン)

 

展開した固有結界の名を叫ぶと同時に天草四郎時貞は新生する。

 

世界に初めて生まれた『根源』から生まれた第二の『根源』。

 

前代未聞の存在の誕生と共に、展開した天草四郎時貞の固有結界がジークの心象風景を塗り潰していく。

黄昏の荒野は、星々が輝く夜空と大地には草花が咲き誇る天国と言わんばかりの楽園が広がっていく。

 

幻想的な風景が広がる中で、ジークを刺す槍の『上書き』の力がジークの意思を上回り、ジークが覚醒する間もなく、救世主の『敵』は消滅した。

 

救世主によって『比較』の『獣』は討伐された。

 

『獣』を倒した『救世主』は、次の標的である『カルデア』に目を向けた。

 

『救世主』の進撃はまだ始まったばかりだ。

 

 




ジークをヘリオスみたく因果律崩壊みたいな能力に目覚めさせようと思ったら、書いている内にジョジョの「ザ・ワールド・オーバーヘヴン」みたいな感じに落ち着きました。

後、本当はもっと段階を踏んで、天草の根源化をするつもりだったのですが、休日を活かして急いで書いていたので、こんな駆け足で急ぎ気味な展開になってしまいました。
完全に作者の技量不足です。申し訳ない。
こんなウルトラ超展開ですが、漸くFGO編は折り返しです。
ジークは倒されましたが、これで完結ではありません。
まだまだ続きますので、ご安心ください。
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