まだエピローグまで書き切っていないのですが、とりあえず出来た分だけ投稿しておきます。
嘘つきな作者で本当に申し訳ない。
「ああ、やはり戻って来たか…」
「それでこそだ!我が唯一無二の"宿敵"よ!」
天草四郎時貞の固有結界の影響で、緑が咲き誇る幻想的な大地と星々が輝く満天の星空とったオルレアンの上空で、救世主は驚愕よりも喜悦を露わにして喜び叫ぶ。
それでこそだ。そうでなくては。だからこそ負けられない。
「さあ、"続き"を始めようか」
天草四郎時貞はその手に『
本来なら宇宙のあらゆる可能性を自由自在に操る事が可能な救世主が戦う姿勢を取ったのだ。
それは、相手が『ジーク』だからだ。
他の者ならどんな英霊や神であろうとアッサリと排除出来る出鱈目な存在の筈の天草四郎時貞がだ。
絶対無敵の存在が唯一隙を見せる相手。
心から求めているからこそ、生まれてしまう。
完全な存在を不完全にしてしまう致命の要素。
それが天草四郎時貞にとっての『ジーク』なのだ。
剣の英霊として帰還を果たしたジークは、第二根源となった天草四郎時貞に向き合う。
「世界を救った人間達の動機を知っているか?」
ジークの唐突な質問に天草四郎時貞は驚く事なく返事を返す。
「様々あるが、その大半は早く帰りたいから、どうでもいいから、なんとなくなどの
「マンガやアニメの様に、世界を救おうと思って救った奴は誰一人としていないな」
現代になって、文明の発達によって世界の危機は常に発生している。
例えば会社で働いて無茶な行動をしようとする人間を説得して思いとどまらせるだけで世界は救われる。
ある時は、落とし物を拾うだけで。
ある時は、事故を起こさない様に安全運転しただけで。
ある時は、人と深く関わらず無視しただけで。
ある時は、自分の大切な人を守っただけで。
抑止力の介入によって、人々は自覚もなく世界を救い続けている。
世界はいつの間にかとても脆い存在へと成り下がってしまった。
故に現代では
藤丸立香が人理修復を果たしても、英霊にならないのもそれが理由だ。
藤丸立香が行動せずとも、違う世界ではレフ・ライノールの自殺によって人理焼却を未然に防いでいる。
あるいはまた別の理由で人理焼却は未然に防がれるだろう。
仮に藤丸立香が途中で死んだとしても、ゲーティアの創った世界が世界の基準を満たしていなければ、その世界は剪定事象として処理されるだろう。
世界とは非情で理不尽で不完全で不条理で残酷だ。
如何に高尚な目標を掲げようも世界はそれを許さない。
達成したとしても長続きしないのが大半だ。
だからなのか、ありふれた願いがいつも世界を救っている。
「そうだ。世界を救うのはいつだって『
「世界を支配する?世界を破壊する?世界を平和にする?どれも叶えられた実績は無い。叶えたとしても長続きはしない」
「大層な願いを掲げた時点で駄目なんだ。詰まる所、『不合格者』だな」
「貴様は『不合格者』だ。そして此方のマスターは『合格者』だ」
「分かるか?『ありふれた願い』こそが人間の真の本質であり良い所なんだ。小さな事でも良い。行動する事そのものが世界を救い続けてくれる」
「全知全能も必要無いさ」
「まあ、つまり、だ」
ジークは不敵な笑みを浮かべて、天草四郎時貞へと幻想大剣を向けて宣言する。
「『不合格者』が『合格者』に当たるなよ。迷惑だぞ?」
要は分かりやすい挑発だった。
「ハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇえええ!!」
呵呵大笑の笑い声と共に、特大の殺意を込めて『
天草四郎時貞はジークが彼にとって特別な存在であるが故に、彼の事となると異様に沸点が低くなる所がある。
他の者なら軽く流す挑発も流す事が出来ずに全力で乗っかってしまう。
まともに喰らえば地球すら消滅するエネルギーを持った光槍をジークは避けようともしない。
光速で迫る槍を防いだのは、全能となった
素手で光槍を掴み取り、天草四郎時貞の意思が練り込まれた光槍を立香はまともに喰らう事となる。
だが、立香に大した変化無い。
何故なら立香は、既に天草四郎時貞の『救いの光』を受けているからだ。
第二根源の影響を受けている限り、天草四郎時貞の攻撃は通じない代わりに此方の攻撃も通じない。
何故なら
その気になれば、立香の全能すら取り上げる事も出来る。
それをしないのは単純に天草四郎時貞があくまでもその目的が全人類の全知全能化だ。
1人でもそれを解除したらその目的が揺らいでしまう。
救世主は
故にその救いたがりが最大の隙となった。
「今だ、マスター!」
「分かってる!そっちこそ合わせてよ!」
天草四郎時貞の放った全身全霊の意思の宿った槍。それこそが彼等の狙いだった。
藤丸立香は手に掴んだ光槍をあろう事か自分自身に突き刺す。
突然の自殺に天草四郎時貞も少しだけ驚くが、すぐにその意図に気づく。
「なるほど、その為の挑発か」
光槍は立香に吸収され、そのエネルギーは彼の力となった。
第二根源から直々に放たれたエネルギーを受け止めるなど、本来なら出来ない事だ。
だが、今の藤丸立香はその第二根源によって全知全能になった。
エネルギーを過剰に摂取した程度で、今の彼は死なない。
わざわざジークが挑発し、光槍をわざわざ立香に掴ませた意味。
それは第二根源の力そのものだ。
天草四郎時貞のとびっきりの殺意を込めた攻撃ならそのエネルギーは絶大だ。
彼等はそのエネルギーを用いて何かをしようとしている事を天草四郎時貞は悟った。
そして、その『何か』もすぐに予想がついた。
それは
天草四郎時貞が島原の民達や冬木市大災害の被災者達とやった様に彼等は心身共に融合を試みようとしている。
天草四郎時貞は敢えてその様子見に徹した。
自分が出来たのなら宿敵もまた出来るだろう。
故に可能な限り自らの救った者達を周囲に展開し配置する。
何が来ても対策出来る様に入念に準備しておく。
覚醒と同時に特大の一斉攻撃を選択する。
そして何よりも見てみたい。
"宿敵"の可能性を。
自らの手を離れた藤丸立香の可能性を。
まるで新しいゲームのPVを見る時の様にとっておきの未知を天草四郎時貞は興奮気味になりながら楽しみに待っていた。
彼等の覚醒を心から熱望して。
「転生せよ、我が世界。世界を再び生きる為に」
ジークと藤丸立香が同調し、ジークの詠唱が始まると同時に膨大なエネルギーの力場が彼等の周囲を覆った。
「邪竜は討たれ、皮膚も鱗も剥がされて、新たな世界の苗床となる」
「そして世界は平和になった。その様は正に理想郷。その姿に人は安堵する」
救世主の世界を見て心から安堵して幸福を覚えたのは事実だ。
ジークのみを全知全能化させなかったのは、天草四郎時貞の意図なのだろう。
ジークは別に全知全能になりたい訳でもない。ただ他人の幸せを願うジークに観測能力のみを与えたのは、そうすればジークは満足すると理解していたからだ。
彼はジークの事を誰よりも理解している。
憎いからこそ。
羨ましいからこそ。
憧れだからこそ。
そして誰よりも自分を理解してくれるからこそ。
ジークは全知全能にはならなかった。
「邪竜は倒れ、人に触れて人に転生する」
「その果てに人は英雄となる」
だからこそ、それに応えたい。
誰よりも自分を理解し、一度でも確かな幸福を教えてくれた救世主に。
立香の助けを借りて、ジークは本来の『根源』に接続を試みる。
「英雄とは即ち、"人"である」
立香の補助により接続に成功。
僅かな感謝と宿敵への対抗心を糧にジークは覚醒する。
「神は零落し、人も堕落した。だが、それでも只人は抗い続ける」
「凡百の願いを持つが故に、愚か故に人は続けていく」
立香もまた詠唱を紡ぐ。
『根源』に接続したジークに同調して、自らが接続している第二根源をフルに活動させていく。
「抵抗こそが、人の本質。世界よ、見て笑い喝采しろ」
「正解し間違い続ける矛盾を孕んだ生き物と失笑して笑うがいい」
立香は思う。
彼等には敵わないと。
自分はこんな風には生きられない。
無理だ。そんな風には生きられない。
でも、憧れたのは確かだから。
手が届かないからこそ手を伸ばす。
笑い合い、互いに秘密を言い合った"友達"が隣にいるから。
手が届かなくても、一緒に居てもいいんだ。
友達として一緒に笑い合ってもいいんだ。
負い目は確かにある。嫉妬もある。
だけど、"友達"はこんな自分の前で笑ってくれてる。
「恐怖すらも支配して、勇気を出して笑わせよう」
自分こそが、彼の癒しになっている事が心から嬉しい。
だから立香は手を伸ばす。
隣の"友達"に応えたいから。
「「間違いも、正しさも、共に抱えて生きていこう」」
それが2人の見つけた勝利。
どんなに辛い戦いを終えたとしても、人生は続く。
どんなに劇的な試練を超えたとしても、人生は続いていく。
人生という名の難関に比べれば、この程度の戦いは楽だ。
だからこそ共に越えよう。
また"生きる"為に。
「"
本来の『根源』と『第二根源』の力が混ざり合う。
異なる発生源が混ざり合い、激しい混沌が生まれる。
ジークと藤丸立香の肉体と精神は、ミキサーにかけられた様にぐちゃぐちゃになる。
光と闇、明と暗、ありとあらゆる概念がそこに激しくこだまして、絶え間なく発生し続ける。
ジークと立香の肉体と精神は既に崩壊している。
だが、それでも"魂"は繋がっていた。
繋がった魂は、溶け合い、一つになる。
その機を狙って、天草四郎時貞は一斉攻撃を開始する。
確かな危機感も感じない。胸騒ぎもしない。
だが、敵はジークだ。それだけで攻撃する理由には十分すぎる。
拳が槍が剣が炎が冷気が、ありとあらゆる法則と概念がジークと藤丸立香を襲った。
攻撃が一通り撃ち終わった後"ソレ“は天草四郎時貞の前に姿を現した。
ソレはたった1人の"人間"だった。
容姿はジークそのものだった。
銅混じりの長い銀髪に黒いコートを羽織り、白いスーツを着たジークがいた。
立香の姿は見えない。おそらく"一つ"になったのだろう。
天草四郎時貞の一斉攻撃を受けて無傷な様子の"ジーク"を見ても、天草四郎時貞は特に気にせずに尋ねる。
「なんと呼べばいい?」
それと同時に先程と同じく『
その光槍を"ジーク"は避けずに、
天草四郎時貞の意思を乗せた光槍はまるで硬い壁にぶつかった時の様に砕け散った。
天草四郎時貞の仲間達もすかさず一斉攻撃を"ジーク"に向けて放つ。
だが、"ジーク"は一切の傷を負わない。
大剣で迎撃している訳でも、回避している訳でもない。
あらゆる攻撃も概念も法則も彼には通じなかった。
存在感は人間のそれと変わらず、感覚が脅威と感じない。
だが、紛れもない人間が、天変地異の如き攻撃の嵐を悠々と歩いて進んでいる。
そして、その場の全員が理解する。
目の前の"人間"には一切の攻撃が通じない事を。
否、攻撃どころか一切の理すらも通じない。
同時に戦慄する。
アレはもはや全知全能すら滅ぼす何かだと。
戦慄する仲間達を他所に、天草四郎時貞の質問に答えるべく"人間"は口を開いた。
「俺は藤丸立香でありジークでもあり、そのどちらでもない。敢えて呼ぶなら『セイバー』と呼べ」
「俺はそう呼ばれて来たのだからな」
不敵な笑みを浮かべて、"セイバー"は大剣を構えて天草四郎時貞を見据える。
セイバーの能力を救世主は把握する。
簡単に言えば干渉無効化能力だ。
ありとあらゆる現象・事象の干渉そのものを無効化して霧散させる。
例え肉体に当たろうとも効果は無いだろう。
あらゆる奇跡を、異能を、超常を。
遍く奇跡を否定して、今を生きる。
奇跡に頼ってばかりで生き抜けるほど人生は甘くない。
そんな思想が、セイバーを守った。
奇跡を信じない人間が組む様な思考と論理だ。
意味が分からない、なんだ
それだけではない。無効化能力だけではない。
彼等は根源と第二根源を混ぜ合わせ、一つの混沌を作った。
その混沌とは、光と闇も、矛盾も後悔も、成功も失敗も、ありとあらゆる物事を許容して生きる"人間"だ。
宇宙を滅する力も、時空を砕く力も必要無い。
地に足つけた1人の完全なる"人間"。
それが彼等の辿り着いた答えだった。
ありとあらゆる法則、概念に惑わせる事なく自由に生きる"人間"。
それが今のセイバーだ。
全知全能に対抗するには全知全能では駄目だ。
全てを否定する"無能"にならなければ、全知全能には勝てない。
あらゆる理不尽に抗い、自然に抗い、今を生きる人間。
第二根源の影響を受けた者にはセイバーは倒せない。
何故ならアレは、もはや第二根源の影響を脱している完全なる異分子。
即ち、"完全なる人間"に他ならない。
「だから、オレは今からお前を殺す。1人の人間としてお前を殺そう」
その言葉と共にセイバーは、その手に持つ大剣を構える。
次の瞬間、光速を超える速度で剣を振るい、それに反応出来なかった天草四郎時貞の仲間達を斬り刻んでいく。
次元や空間そのものを防御壁にしてセイバーの猛攻を防ごうとする者達もいるが、そんな防御などセイバーが触れるとアッサリと突破されてしまう。
その光景は正に蹂躙だった。
斬られた者達は後で天草四郎時貞の手によって幾らでも蘇るが、精神的には完全に向こう側が明らかに優勢だ。
皆が全知全能になった為に、後の優劣は精神力のみだ。
仲間達が全知全能を真っ向から虐殺出来てしまう存在に戦慄してしまう。
その中で天草四郎時貞は確信した。
セイバーの能力は
本来の『根源』から引っ張ってきた『人類の情報』を元にセイバーは行動する。
そして合点がいく。
いつの間にか持っていたあの大剣は、幻想大剣なのではなく、『魔剣』だ。
遥か未来に人類が生み出す新人類『人間種』の『騎士』。
ジンと呼ばれる人体に有害な粒子が包む絶望の環境下で適応した人間種の攻性種。
魔剣という体外機関を武器として戦う人類。
セイバーはその騎士種の能力を持っている。否、それだけではない。
先程の超光速の移動速度も、また別の未来もしくは過去に存在した人類の能力を引き出したのだろう。
第二根源の影響を無効にして、人の可能性を引き出す力。
宝具でも、魔術でも、魔法でもない。ましてや根源でもない。
彼らだけの新境地。
抗い続ける事を
それが『
言うなれば、人間賛歌を歌い続ける『
「さあ、人間賛歌を始めよう」
人間賛歌という『
オマケ 用語解説
『真実を超越せし光槍』
天草四郎時貞が咄嗟の思いつきで創り出した魔術。
本物のロンギヌスの槍ではない。ただそれっぽいから名付けただけ。
イメージは某獣殿の聖槍。
天草四郎時貞の意思と魂によって形成された槍な為、当たれば某世界オーバーべヴンみたいに『上書き』される。
要は現実改変能力を持った槍という事。
天草四郎時貞は気に入ったのか、以降は刀ではなく主にコレを得物としている。
『運命』
運命と書いてフェイトと読む。
宝具でも魔術でも魔法でもない新概念。
作者の考えた型月における『極晃星』っぽい物。
根源接続者が、他の根源接続者と同じ思いや願いを共有し、イチャコラすると誕生する超凄いウルトラ能力。
文字通り運命そのものであり、その人が掲げる思想そのものを能力として発現する。
権能すらも凌駕する絶対の因果律操作であり、その気になれば宇宙すらも気軽に滅ぼせる危険極まりない代物。
名前の由来は原作のFateシリーズのタイトル名から。
セイバーの『運命』の詳細は次回のオマケにて載せておきます。
次回は明日の23時に投稿しようと思っています。