転生者がジーク君に干渉した結果   作:クソ眼鏡3号

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お久しぶりです。
リアルで色々あって鬱状態になりマジで自害の一歩手前まで行ってしまいましたが、なんとか生きてる私です。
落ち込んだ時に、私の書いた小説に書いてもらえた感想を見ると生きる気力に繋がりました。
いつも感想を書いてくれる読者の方々、本当にありがとうございます。
いやあ、ホント小説書いててよかった。

一応注意換気、今回は少々メタ発言があるので、そういった所が嫌いな人は注意です。


最終節 逆襲の弾丸

全知全能の者達が行う戦争とはどんなモノか想像出来るだろうか。

答えはなんでもありだ。

 

「ジーク!弾を造ります。発射を頼みますよ」

 

天草のその台詞を聞いたジークは、すぐにその意図を理解し邪竜ファヴニールの姿に転身する。

転身したジークの側に天草は瞬間移動して超重力の暗黒天体を精製する。

 

天草は暗黒天体に更に核融合を行う。

縮退圧と重力を操り、絶妙な状態を維持して邪竜となったジークの口元に配置する。

 

「巻き込まれるなよ!手加減出来ないからな!」

 

ジークはその縮退星を邪竜のブレスで竜属性を付与させて、意思を持った必中の弾となり、その縮退星そのものを竜として発射する。

 

「「縮退星・全焼却砲(ディジェネレイト・ブレイズバースト)」」

 

発射された光年範囲で万物を消滅させる放射能の極光の竜は白い人影達を一度に呑み込みながらメサイアに直撃した。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

メサイアは放射能に焼かれながら、笑い続ける。

肉体を跡形もなく焼かれる痛みよりも、目の前で起こる"宿敵"とジークともう1人の天草四郎時貞が手を組んで戦う光景が痛快で仕方なかった。

 

「面白い!ああ、我が宿敵よ。お前との戦いでこれほどまでに心が躍るのはかつて無かったぞ!」

 

メサイアは笑う。

目の前の光景が尊いと思えるし、面白かったから。

時よ止まれと心から思ってしまう程に。

 

「故に負けん。"勝つ"のは私だ!」

 

メサイアはその魂の波動で放射能を『上書き』して消し飛ばす。

その手に持つ槍を構えて、槍を振るう。

メサイアの振るう槍は、メサイアの望む現実へと改変してしまう。

一閃するだけで、万を超える軍勢などあっさりと撃退出来る。

 

メサイアの槍の一閃で、1000万を超える竜とセイバーを撃墜する。

更にメサイアは超光速で槍を振るう。

槍が一閃される度にその衝撃波が竜とセイバーの分身体が億単位で撃墜されていく。

無論、放っておけばすぐに勝敗が決まってしまうのでセイバーが止めに入る。

 

「ぬかせよ。死ねよ貴様。気癇に障るんだよ。喋るな黙れ!」

 

それをセイバーが鍔迫り合いになる事でメサイアの虐殺を防ぐ。

その後も2人の攻防は続く。

その2人の軌跡は流星の如く移動しながら、幾何学模様を宇宙空間で描き出す。

 

「ジーク!お前も“弾“を創れ!一気に決めるぞ!」

 

メサイアと戦いながらセイバーはジークに指示を飛ばす。

ジークは「分かった!」とその指示通りに集中して“弾“を創造しようとする。

無論、それを防ぐべくメサイアの軍勢はジークに集中していく。

それこそセイバーは狙っていた。

敵が一点に纏まってくれたなら一々振るう必要が省ける。

 

「『放たれし信力の一矢(アプフェル・シーセン)』『王の財宝(ゲートオブバビロン)』!『流星一条(ステラ)』!『絶対王の流星群(キングオブステラ)』!」

 

英雄王の蔵の財宝全て大英雄の全身全霊の一矢に組み合わせて因果律干渉による絶対必中の能力を宿した途絶える事のない無限の流星一条が放たれる。

無論、その軍勢はその無数の流星一条に反応して迎撃してくるだろう。

その迎撃を意識させる事こそが彼らの狙いだった。

 

「極光放射線・創造(ガンマレイ・バースト)!」

 

その迎撃する隙を突いて、天草四郎が横槍を入れる。

ガンマレイバーストという、宇宙すら消し飛ばす宇宙現象を更に無効化の力を加えて放つ。

しかも、放つだけでは終わらない。放たれたガンマレイバーストは永続的にそのままの状態を固定させる。

敵は全知全能の集団だ。生半可な攻撃では意味がない。

だからこそ、攻撃し続けてそのまま状態を維持して動きを止めるのが最も有効だ。

それに如何に全知全能でも核分裂という壮絶な痛みと苦しみは全知全能の軍勢を押し留める事は可能だろう。

それを常に浴びつつげてもらえばなんとか足止めは可能だ。

 

無論、それではジークも巻き添えになる。だがそんな事は承知の上だ。

 

そのままジークは放射能を浴び続ける状態で本命の“弾“を作ってもらう事にする。

後は、その時間を稼ぐまで、天草と共にメサイアと戦うだけだ。

 

「いくぞ。援護を頼む」

 

「マスターも入っているのはいえ貴方が私に命令しないでもらえます?ちょっとムカっときますので」

 

セイバーの指示にやや複雑な感情を吐き捨てながら天草は援護を開始する。

 

「理想魔術、開始(セット)。惑星轟、改め銀河轟」

 

「銀河聖十字架(グランドクロス)」

 

天草の使用した理想魔術により、グランドクロスを発生させる。

グランドクロスとは星の配置だ。

本来なら星がそこにあるだけで大したエネルギーも発生したりはしない。

だが、そこに理想魔術が加われば話は別だ。

 

理想魔術は人々の理想を形にする魔術。

宇宙から魔力を授かり惑星を操る最高峰の魔術の一つだ。

グランドクロスは惑星で配置するのが普通だ。

だが、天草はそれを銀河規模で行う。

無数の銀河を十字の形に配置して、大規模な銀河の魔力暴走(オーバーロード)を引き起こす。

 

無理矢理十字に配置させられた銀河系の持つ魔力を暴走させて銀河規模の暗黒天体(ブラックホール)を発生させるのが天草の狙いだ。

そんな事をすれば、銀河系の全ての生命体が消滅してしまう。

よって、メサイアの軍勢は、天草のグランドクロスを食い止める為に、その全知全能の力をフルに使って天草の理想魔術を食い止める。

 

「さあ、我慢比べと洒落込みますか」

 

天草の真の狙いはその軍勢達を食い止める事だ。

これで天草の意識がある限り、メサイアの軍勢は足止めされる。

無論、天草1人の力では文字通り多勢に無勢だ。

拮抗する時間は僅かしかないだろう。

だが、その僅かな時間こそが、セイバーの狙い。

その僅かな時間の間、メサイアは1人だ。

 

必然的に行われるのは一対一の一騎討ち。

よって、その僅かな時間がこの戦争の雌雄を決するのだ。

 

「望む所だ…!」

 

セイバー達の狙いに気づいたメサイアは喜色を露わにして槍を構えて突貫するセイバーを迎え撃つ。

 

「これで最後だ!」

 

この僅かな瞬間に勝負を決めなければ、セイバー達の敗北は必至だ。

セイバーは全てをかけてメサイアに挑む。

 

 

 

メサイアに挑もうとセイバーが突貫すると先程の笑顔から一転してメサイアは問いかける。

 

「そもそもお前達はちゃんと分かっているのか?」

 

「根源に触れてお前達も理解しただろう?」

 

「我々だけではなく、この世の全て、森羅万象のあらゆるモノ全てが、誰(・)か(・)の(・)創(・)作(・)物(・)で(・)あ(・)る(・)と(・)い(・)う(・)事(・)を(・)」

 

始まりの『根源』に触れた事で知った真実。

 

それは『根源』から生まれた全てが『誰かの創作物』でしかないという事実だった。

 

「この世もあの世も全てが誰かの創作物。生物も無機物も人も、その意思さえも、創作物なんだ」

 

「こんな酷い真実はあんまりだろう。過去も未来も、優しさも怒りも、人生すらも誰(・)か(・)が(・)作(・)っ(・)た(・)創(・)作(・)物(・)な(・)ん(・)だ(・)」

 

「なんだこの理不尽は!なんだこの不条理は!なんなんだこの世界は!自分の人生が誰かの妄想の産物によるモノだという事実を気持ち悪いと思わないのか⁉︎」

 

「決意も誓いも、悲しみも喜びも、誰かの創作なんだ。こんなふざけた事はないぞ⁉︎」

 

メサイアは怒りながら悲しんでいた。

自分はおろか仲間から敵まで、ありとあらゆる存在が誰かの創作物など耐えられなかった。

美しいと感動しても、それは誰かの創作で。

笑顔を浮かべて笑っても、それは誰かの創作で。

悲しんでも哀しんでも、それは誰かの創作で。

怒りさえも、それは誰かの創作物で。

 

ありとあらゆる意思が操られて無価値と無意味になる。

メサイアはそれが許せなかった。

 

人の意思を、人間の価値を、意味を、存在を。

何処までバカにすれば気が済むのか。

違うのは演じる『役割』くらいだ。

王になる様に望まれると王になる。

神になる様に望まれると神になる。

只人と望まれると只人になる。

正に『運命の奴隷』だ。

与えられた役割を演じて、そして役割を終えるとすぐに出番は終わる。

そこに自由などない。

運命を変えようと抗っても、変えた気になっているだけでそういった役割を演じているだけだ。

正に茶番だ。

可笑しくて仕方ない。

その真実を知った途端に自分の見える景色が色褪せた事を覚えている。

 

「その真実を知りながら、なぜ戦う⁉︎。なぜオレ達と戦う⁉︎」

 

「自由が欲しくないのか?誰かの創作物ではなく、自分の手で新しいモノを生み出したいと思わないのか⁉︎」

 

自分の意思が『誰か』の想像による産物なのがメサイアには耐えられなかった。

あらゆる存在が誰かの創作物なら、自分の経験した事の全てが、茶番になってしまう。

意味が無くなってしまう。価値が無くなってしまう。

そんな事は耐えられない。

自分の過去を裏切りたくないから進んできたのに、その過去も未来さえも無価値で無意味なモノに堕とされるなんてあんまりだ。

だからメサイアは第二根源となり、新たな根源を生み出し続ける存在となった。

人類が、生物が、意思を持ったありとあらゆる存在の真の価値と意味を生む為に。

真の意味で前に進む為に。

誰かの創作物ではなく、自分の意思で進んでもらう為にメサイアは戦っている。

人々の生み出す沢山の物語を救世主は望んでいた。

おそらく救世主の仲間達もそう望んでいるのだろう。

カルデアの英霊達が救世主に協力するのも、それが原因だろう。

彼等は支配されていたのではなく、真の自由を求めて行動していたのだ。

王も神も『根源』から生まれた。だから救世主の考えに同調して当然だ。

 

「誰かに操られて存在するのではなく、自分の意思で生きていたいと思うのが普通だろう!」

 

「抗う事を人間賛歌とするならば、何故お前達は停滞を受け入れている⁉︎創作物から脱却しようと普通だろう⁉︎」

 

「理由があるなら言ってみろぉ!」

 

だからこそ“彼“は宿敵に執着した。

天草四郎時貞という存在に人間性を引っ張り出してくれる唯一の存在。

それこそがジークだった。

根源に到達した事で“彼“はその人間性を失った。

“彼“に残っていた唯一の人間性。それこそがジークへの執着心だった。

だから、“彼“はジークと触れ合うと心からの笑顔を浮かべられる。心から怒る事が出来る。

だから、“彼“は許せなかった。

ジークが停滞している事が。

『ジーク』という存在を取り巻く運命そのものが。

 

『ジーク』という存在ははっきり言って流されやすい。

 

『誰か』がジークに言えば疑う事もせずにあっさりと信じてしまう。逆らう事なく言われた事を全うしてしまう。

だからこそ動かしやすい。操作しやすい。

元がホムンクルスという事もあるのか正に道具だ。

誰よりも『運命』に縛られている。

だからその『誰か』に影響され利用される。

聖杯大戦では結局の所、ジャンヌ・ダルクに利用されただけ。

英霊ジークもまた、転生者の意思の影響を受けて、英雄となった。

すぐに誰かの思惑に翻弄されるジークが心から気に入らない。

何も知らないままならまだ理解出来る。だが目の前“セイバー“は違う。

セイバーは『根源』に触れた上でこの場に立っている。

真(・)実(・)を(・)知(・)っ(・)た(・)上(・)で(・)救(・)世(・)主(・)と(・)敵(・)対(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。

 

それが救世主には理解出来ず、腹立たしかった。

 

救世主の怒りを受けて、セイバーは答える。

 

「納(・)得(・)し(・)た(・)か(・)ら(・)な(・)」

 

返ってきた答えに救世主は唖然とする。

 

「考えてもみろ。意思一つで限界を突破して覚醒するヤツなど、それこそ創作物の中にしか存在しないだろう?」

 

「そんな破綻者が存在していいのは物(・)語(・)の(・)中(・)だ(・)け(・)だ(・)。そういう存在として創られたと知れば納得だよ」

 

唖然とする救世主を余所にセイバーはなんて事の内容に答えた。

 

「藤丸立香に対してもそうだ。今まで普通の一般人として暮らしていたのに、幾つもの特異点を乗り越え、人理修復を成し遂げられる訳ないだろう?」

 

藤丸立香も心の底では思っていた。

普通の一般人である彼が、人理修復など仲間の協力があっても到底不可能な事だ。

何故なら相手は、その為に何年も準備をしていたのだから。

 

「現実的に考えてみろ?普通ならカルデアの事を最初から脅威と判断して殲滅出来た筈だ。なぜ魔神柱達は生き残ったカルデアの事を最初からあまり警戒せずにやられるんだ?あり得んだろう」

 

本来なら生き残ったカルデアのスタッフ達がいる事を認識された時点で既に終わっている。

生き残りと侮らず、潰しにかかる筈だ。

マスターを狙わずとも、そもそもカルデアの本拠地に乗り込んだり、もしくはスタッフの一人でも拐うなり洗脳なりすれば良いだろう。

魔神柱ならばそれくらいの事は出来た筈だ。

なのにそれをしなかった。

不穏分子は普通に潰すに限る。

 

なのにそれをしなかった事が、立香には少し気がかりだった。

まるで操られているかの様に。それをしたらいけないかの様に。

何年もかけて準備していた計画を台無しになるならば普通は警戒して対処するだろう。

そもそも、第四特異点のロンドンの時に現れた時に魔神柱に頼らず直接殺せば良いだろう。

例え警戒したとしても全く行動に移さない辺りに作為的な何かを感じずにはいられなかった。

 

「まだあるぞ。聖杯大戦でもそうだ。たまたまホムンクルスが自我に目覚めて脱出を図り、たまたま気の良い英雄と出会い、たまたま大英雄の心臓を授かるなどあり得んだろ」

 

「しかもその先の戦いでも奇跡の連続だ。どう考えても作為的な何かがあるだろう?不思議に思うなと言う方が無理がある」

 

セイバーの言う通り、ジークや藤丸立香の戦いには明らか作為的な因果が働いていた。

それこそ正に『運命』の様に。

 

「だから創作物と知れば納得だよ。俺達の存在と人生は奇跡でもなんでもない『運命』によって定められていたんだと」

 

残酷な真実だった。

自分の今までの軌跡が全て定められたレールの上を走っていただけなんて絶望するに決まっている。

だが、それでも。

 

「だからこそ、受(・)け(・)入(・)れ(・)て(・)尚(・)も(・)抗(・)う(・)事(・)が大切なんだ。受け入れずに抗うのでもなく、真実を受け入れた上で抗う事が重要なんだ」

 

その真実を受け入れてほしい。

『運命の奴隷』である事を受け入れて進んでほしい。

 

「諦めて良い。凹んでも良い。それでもまずは受(・)け(・)入(・)れ(・)る(・)事(・)か(・)ら(・)始(・)め(・)た(・)ら(・)良(・)い(・)。受け入れたら、後は気(・)の(・)持(・)ち(・)様(・)だ(・)」

 

どんな抗っても結果が変わらないという真実に打ちのめされるだろう。でも、その絶望は意外と簡単に吹き飛ばせるんだ。

辛くても頑張っていればいい。それだけで凄い事なのだから。

落ち込んだ時にこそ面白い事を思い浮かべて笑えばいい。そうすれば沈んだ気持ちもすぐに復活するさ。

『運命の奴隷』であろうとも人は輝ける。

 

「言っただろう。大切なのは結果ではなくその『道筋』だと。辛いなら辛いと口にして、笑えるなら笑えばいい」

 

「行動し続ける意思さえ有れば、人の価値は無くなったりしない。人の意味は無くなったりしない」

 

立香と話して、立香と遊んで、改めて自分を見つめ直して自覚した。

日常の尊さと素晴らしさを。

そして人生の難しさを。

多くの不幸に見舞われても、幸せが訪れる事もある。

幸せな環境を築いても小さな不幸であっさりと崩壊する事もある。

あまりにも理不尽だ。でもだからこそ生きていかねばならない。

特別な力に頼ってばかりでは、やる気を無くして生きる気力すら失われてしまう。

ゲームと同じだ。強力なアイテムを手にして無双しても、最初は痛快だろうが最終的にはつまらないだけだ。

だからこそ限られた自由を受け入れて楽しんでいけばいい。

面白いと笑いながら生きるのが一番だ。

 

「無価値だとしても無意味じゃない」

 

抗って何も変えられなくても、その意思には価値がある。

 

「無意味だとしても無価値じゃない」

 

無価値な存在が行動した事で意味を生む事もある。

 

「無意味で無価値だとしても」

 

落ち込んで自棄になるより、いっそ楽しんでしまえばいい。

理不尽すらも、その結末すらも楽しんで生きていけば、それはきっとかっこいい事なんだ。

 

「其処には確かな意義がある」

 

無価値なモノ、無意味なモノそれらは全て存在しない。

生きている事。

人は生きているだけで幸せになれる。

人は生きているだけで不幸にもなれる。

誰もが持っている『生きようとする意思』こそが人間賛歌の正体だ。

 

「足掻いていればいい」

 

どんなにかっこ悪くても、その生き方は凄い事なんだ。普通という生き方は神や悪魔にも出来ない事なのだから。

 

「抗い続ければいい」

 

神の如き力も必要ない。

全知全能も必要ない。

人間という生き物の中で生きていこう。

 

「世界は在るがままで良いのさ」

 

誰かに少し尊重して話をするだけで世界は変わる。

自分の意思を信じる事で世界に色が映るんだ。

 

「『生きて』みろよ。意外と痛快だぞ?」

 

それが“彼“の出した答えだった

 

その答えに、メサイアは黙り込み、自身の槍を握りしめてセイバーへと向けて構えた。

 

それは、真の意味で“敵“を倒す意思表示だ。

次の一合で全てを終わらせるという救世主の決意だった。

 

 

天草の作った僅かな隙は長くは保たない。もうすでに天草は消滅寸前だ。

ゆえに勝負は一撃。

互いに全ての力を乗せた最大最強の一撃が勝敗を決める。

 

 

メサイアはその手に持つ槍に全身全霊の意思を込めて投擲する。

 

「『真実を超越せし光槍(ロンギヌス)』!」

 

理屈など一切無いただの槍の投擲。ただしメサイアの強靭な意思が、その槍を必滅の槍へと増大させ、セイバーに迫る。

 

セイバーは立香の記憶を借りて、カルデアのサーヴァント達の全ての宝具を再現・展開し自らの魔剣に全ての宝具を収束・増幅させる。

固有結界から技や武具のリソースを一つの剣に集中させて結晶化。

膨大な数の宝具を宝具化させる離れ業をセイバーは行った。

本来なら人々の幻想の結晶である宝具を、更に宝具化させて、その密度を極限に高めて一つの剣へと構成させる。

セイバーはその剣の名を高らかに謳いあげる。

 

「『人間賛歌・人理の礎(ロード・カルデアス)』!」

 

セイバーの握る魔剣は姿を変えて巨大な美しい剣の形をした結晶の剣へと変貌を遂げる。

その内にはセイバーの能力によって絶大なエネルギーが収束されていた。

それこそ目の前の救世主を屠る威力は十分にある程に。

 

「「おおおおおおおおオオオオオオオォォォォォォ!!!」」

 

剣と槍が激突する。

 

メサイアの意思とセイバーの意思がぶつかり合い拮抗する。

 

この時、メサイアに読み違えた。

槍にはメサイアの意思しか込めていない。

対して剣にはセイバーの意思だけではなく、立香の意思も他のカルデアにいたサーヴァントの意思もまた込められている。

宝具とは人々の意思の結晶だ。

不特定多数の意思と英雄達の意思。それらを束ねた結晶剣が、たかが1人の救世主の意思に負けない筈がない。

 

拮抗を崩れ、剣が槍を押していく。

次第に槍にヒビが入り、やがて砕ける。

 

「俺の────“勝ち“だ!!」

 

メサイアが驚く隙も与えずに、天草が消滅したと同時にセイバーはその剣を救世主へと振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいや、まだだ」

 

「感動したよ。集いし願いが生む力に」

 

「ならば、此方も集いし絆で迎え撃とう。忘れたか?オレは一人ではないという事を!」

 

セイバーの結晶剣を受けながら、メサイアは更に覚醒する。

 

セイバーが強ければ強いほどメサイアもまた負けられないと更に覚醒する。

メサイアと融合した島原の民達、そして冬木の被災者達との『絆』を武器に救世主は再び覚醒する。

『運命の奴隷』という残酷な運命から脱却する為に、真の意味で前に進む為に。

確かな人の意思を。人間賛歌を。数多の物語を生む為に。

救世主は諦めない。

 

「おおお、おおおおおおおおおおおオオオオオオォォォ!」

 

メサイアの取った行動は、武器を取る訳でも創る訳でもない。

人間が原始の時代から持つ武器。

ソレはただの拳だった。

 

「まだだ!」

 

だが、メサイアの身体に変化があった。

メサイアの中に居る者達が、その魂を収束させてメサイアの拳に乗せている。

願いと絆を拳に乗せて、救世主はただひたすらに殴る。

拳の速度が超光速を超えて更に速くなる。

速さという概念を超えて動く拳は、もはや概念どころか因果すらも破壊する。

 

「まだだ!まだだ!まだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだマダダマダダマダダマダダマダダマダダマダダマダダマダダマダダマダダマダダマダダ!」

 

土壇場の覚醒で、因果律崩壊能力を新たに獲得したメサイアに倒せない敵はない。

全力の拳打をセイバーに浴びさせて、因果破壊の拳は防ぐ事も回復する事も叶わずセイバーは反撃出来ずにメサイアのラッシュに蹂躙される。

 

「オレ達(・)の────“勝ち“だ!!」

 

メサイアの全身全霊の拳が叩き込まれ、この瞬間に『セイバー』の“敗北“が確定した。

 

救世主と剣士の戦いは、救世主の勝利に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ───おまえの“勝ち“だよ。ただし“逆襲“だけは受けてもらう」

 

因果を破壊し尽くして消滅した筈のセイバーの声が聞こえた。

 

 

 

 

メサイアは目を見開いた。

先程、自分が殴って消滅した筈のセイバーがその手に拳銃を構えて目の前に復活しているのだから。

否、そもそも傷すら負った様子はない。

まさか、自分達と同じく覚醒したのかと思ったが、どうにも覚醒した様子ではない。

明らかにさっきと比べてセイバーの意思が落ち着いている。先程の燃える様な怒りの意思をぶつけていたセイバーとは一線を介している。

 

「言っただろう?俺は『ジーク』に弾(・)を(・)創(・)れ(・)と…。その意味をお前に勘(・)違(・)い(・)さ(・)せ(・)る(・)事が俺達の真の狙いだったんだ」

 

「俺と天草はその『弾丸』の為に『時間稼ぎ』をしていたに過ぎないんだ」

 

セイバーのその発言に愕然としながら、メサイアはガンマレイバーストの中にいるジークを見る。

 

「…頑張った。少し休む。今度は俺もゲームに誘ってくれ…」

 

ジークの手には一発の弾丸があった。

 

その弾丸をセイバーの元へと転送し、ジークは消滅する。

 

「ゲームの誘いは報酬としては十分ですね。私もそれが報酬という事でお願いしますよ。それではマスター、また後で遊びましょう」

 

ジークの消滅と同時に天草も限界が来たのか消滅する。

 

この時既にセイバーの敗北は確定した。

味方はもう誰もいない。

その筈なのに。

 

セイバーへ向けて因果律すら破壊する拳を幾ら叩き込んでも全く壊れない。

 

な(・)ぜ(・)だ(・)?(・)

 

全知全能の存在となった救世主に初めての影が落ちた瞬間だった。

 

「分からないか?」

 

困惑するメサイアへセイバーはその疑問の答えを教える。

 

「お前は確かに新しい『根源』になった。だがそれはあくまでも『原初の根源』の模倣でしかない」

 

少し考えれば分かる事だ。

メサイアの根源創造は、オリジナルである『原初の根源』を元にして創造されたモノだ。

根源を創ったからといって根源から逃れた訳では決してない。

勿論、それはセイバー達も同じだ。

彼等は第二根源こそ脱したが原初の根源の影響を脱した訳ではないのだ。

 

「幾ら『根源』を無数に創っても、他ならぬお前自身が『原初の根源』から脱していないんだ。だったら後は簡単だ」

 

ならば、そ(・)の(・)因(・)果(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)を(・)壊(・)せ(・)ば(・)い(・)い(・)

 

セイバーはその手に拳銃を握っていた。

その拳銃は、立香が持っていた銃。

M1911 通称コルトガバメントと呼ばれる自動拳銃を模した銃の形をした竜『銃竜(ガンリュウ)』だった。

 

「『原初の根源』から引(・)っ(・)張(・)り(・)出(・)し(・)て(・)き(・)た(・)モ(・)ノ(・)な(・)ら(・)お(・)前(・)を(・)倒(・)せ(・)る(・)可(・)能(・)性(・)が(・)あ(・)る(・)と(・)い(・)う(・)事(・)だ(・)」

 

ジークから受け取った弾丸を、銃に込める。

弾を弾装(マガジン)に入れる。

 

「結局の所、お前のやっている事は二(・)次(・)創(・)作(・)で(・)し(・)か(・)な(・)い(・)ん(・)だ(・)よ(・)。二次創作は所詮は二次創作でしかない」

 

遊底(スライド)を引いて、薬室に弾が無いので手動で弾を装填する。

 

「二次創作は『根源(公式)』には絶対に敵わない。だからこの手段は当然だろう?」

 

銃を構え、標準を合わせ狙いを定める。

 

「さあ、逆襲の弾丸は用意出来た」

 

後はもう引き金(トリガー)を引くだけだ。

 

 

 

「まさか……あり得ん……その弾(・)丸(・)は……ッ⁉︎」

 

 

セイバー達が用意した弾丸はただの弾丸ではない。

概念を付与しているわけでもない。

なんならの特性を持っているわけでもない。

 

「『ジーク』の根源情報を弾の形にして、消費するつもりかッ⁉︎何をしているんだお前はッ⁉︎」

 

その弾丸は『ジーク』という根(・)源(・)に(・)存(・)在(・)す(・)る(・)情(・)報(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)を(・)弾(・)の(・)形(・)に(・)し(・)た(・)モ(・)ノ(・)。

セイバーが因果律を破壊されても消滅しないのも納得だ。

何故ならその存在の『根源(はっせいげん)』がすぐ近くにあるのだから。

幾ら因果律を破壊しようとも、その根源を破壊しない限り『ジーク』は何度でも復活する。

 

救世主は焦る。

セイバーの…否、『ジーク』のやっている事は狂人でもやらない事だ。

『原初の根源』にある『ジーク』という存在の情報全てを弾として使い潰す。

そんな事は思いついても誰もやらない。

弾の威力が問題なのではない。弾として消費するという行為そのものが厄介極まるのだ。

 

何故ならそんな事をすれば、自身に関わる全ての者から忘れ去られ、最初からいなかった事になるからだ

 

かつてカルデアにDr.ロマンと呼ばれる者がやった消滅とは訳が違う。

何故なら彼の事を覚えている者がまだ存在している。

覚えている者がいるのならばまだ復活する可能性はある。

だが『ジーク』の場合は別だ。

自分が完全に消滅するだけじゃない。覚えている者があらゆる世界から消え失せてしまう。

 

英霊の座どころか『根源』そのものからいなくなるのだ。

 

根源から消え去る事はそ(・)の(・)存(・)在(・)の(・)影(・)響(・)が(・)全(・)て(・)消(・)え(・)る(・)事(・)を(・)意(・)味(・)す(・)る(・)。

『ジーク』が今までやって来た事が全て無になり、彼がやってきた事全てが無かった事になる。

 

守護者のジャンヌ・ダルクは元の世界の奴隷に戻り、エミヤシロウとの戦いもその騒動も無かった事になる。

 

そして、第三次聖杯戦争での天草四郎時貞との出会いも無かった事になる。

 

つまり『ジーク』がいなければ『救世主』は存在出来ないのだ。

 

この英霊『ジーク』がいてこそ天草四郎時貞は『救世主』になれた。

そのキッカケとなった存在が消滅すれば、今の『救世主』は消える事だろう。

 

その弾丸は『救世主』を倒す事が出来る唯一の手段だ。

 

救世主は自身の軍勢は無かった事になり、今まで救った者達とも別れる事になる。

また彼は、天草四郎時貞の頃からやり直す事になる。

だがそんな事はどうでもいい。

それよりも救世主は宿敵の行方が気掛かりだ。

 

「やめろ…ッ!」

 

最初からやり直しでもまた始めればいい。

だが、目の前の宿敵は?

掛け替えの無い存在であり、自分を唯一理解し憧れた英雄が、消えた世界など耐えられない。

心底憎み、心底嫌い、心底想い続けた英雄が消えるなんて耐えられない。

彼がいないと救世主は人間になれなくなる。心から笑えなくなる。

人間に戻れなくなる。ただの救世主という名の機械になるだけだ。

彼がいない世界など面白いなんて思えない。

ふざけるな考えたくもない。

 

「頼む…ッ!お願いだッ!やめてくれッ!!」

 

復活の可能性すら消し去る狂気すら生温い悍ましい手段だ。

邪神ですらこんな事はしない。

いるとしたらそれはとんでもない大馬鹿者だ。

 

その大馬鹿者が救世主の目の前にいた。

 

「藤丸立香!お前はそれでいいのか⁉︎友の消滅を止めようと思わないのか⁉︎」

 

「何故だ、Dr.ロマンの二の舞だぞ⁉︎いや、それすら生温く思えるような事をお前の相棒はしようとしているんだぞ!」

 

「何故止めない⁉︎それともお前そんな犠牲を許容出来るヤツだったのか!」

 

救世主はジークの中にいる藤丸立香に問いかける。

ロマンの件があったなら、今ジークがしようとする事を止める筈だ。

何があっても止める筈だ。

付き合いなど殆どないが、人理焼却の記録を根源を通して知ってる救世主には不思議で仕方ない。

 

「説(・)得(・)し(・)た(・)に(・)決(・)ま(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)だ(・)ろ(・)う(・)」

 

彼(ジーク)はそれを当然の様に答える。

 

「さっきのジークも天草四郎も、全員こ(・)の(・)事(・)を(・)話(・)し(・)た(・)上(・)で(・)一(・)緒(・)に(・)戦(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)ん(・)だ(・)」

 

カルデアの方のジークと天草を協力者に選んだのはそういう事だ。

二人が最も説得しやすく、その方法に納得してくれるからだ。

ジークは流されやすく強く主張すれば割と受け入れてくれる。しかも提案者は別世界の自分だ。自分だからこそ共感できる。

英雄(ジーク)の言葉と決意に邪竜(ジーク)は共感してしまった。何故なら彼もまた『ジーク』なのだから。

 

『英雄(ジーク)』も彼には影響は無いように配慮した。

消滅するのはあくまでも『英霊ジーク』の方だ。

別世界の存在である彼を巻き込む訳にはいかない。

英雄となった自分の固い決意に押された彼は、渋々納得した。

 

天草はかなり不服そうで不愉快そうだったが、救世主となった自分の野望を挫く為に協力してくれた。

 

問題だった立香の説得も、『運命(Fate)』を共に発動させる前に話していたが最初はかなり反対されたが他に方法が無い事もあって、更に揉めたが最後はゲーム対決に勝利してなんとか説得した。

 

だから、今の『ジーク』には引き金を引く事には躊躇はない。

 

(…怖くないの?)

 

怖いさ

 

(…辛くないの?)

 

辛いよ

 

(…ならどうして消えようとするの?)

 

消えるんじゃない 活かすんだ

 

セイバーの内にいる立香が『ジーク』に問いかける。

一度説得されたとはいえ、彼もまた『ジーク』には消えてほしくないのだ。友達だから。また共に遊びたいから。

それを『ジーク』は一つ一つ答えて、それと同時に己の迷いを消していく。

 

(…お願いだから消えないでよ…)

 

最後の立香の問いかけは、質問というより懇願だった。

 

「それは出来ない相談だ」

 

『ジーク』は銃の引き金(トリガー)に指をかける。

 

「お前はそれでいいのか⁉︎ジャンヌ・ダルクの幸福こそ目的ではなかったのか⁉︎人類の輝きを見たいんじゃなかったのか⁉︎」

 

「『彼女(ジャンヌ・ダルク)』の幸せには『お前(ジーク)』が必要だと何故分からない⁉︎

 

「お前が消えたんじゃ、その『彼女(ジャンヌ・ダルク)』も…『お前(ジーク)』も…誰も幸せになれないじゃないか…ッ⁉︎」

 

救世主はまた懇願する。

『ジーク』の選択では誰も得をしない。誰も幸せにならない。

常に誰かの為に戦い続けた彼が絶対にしない選択な筈なのに。

『ジーク』は微笑みながらその質問に答えた。

 

「お前も言った通り、人類は意外と図太いんだ。オレがいなくても『彼女(ジャンヌ・ダルク)』は幸せになれるさ…」

 

だから大丈夫。

立香と遊んで思い出せた。『面白い』って本当は大切な事なんだと。

くだらないと笑う奴もいるが、それは違う。

どんな状況でも、どんな環境でも、面白さを見出す事はとても大切な事なんだ。

例えそれがなんであろうと。面白ければそれで良いのさ。

面白くないと、人生はただつまらないだけだ。

面白いと、ただそれだけで人は幸せになれる。

世界は気づかないだけで幸福に満ちている。

ただそれに気づいていないだけなんだ。

面白さに気づく事が出来れば、人は簡単に幸せになれる。

 

「『彼女(ジャンヌ・ダルク)』に『俺(ジーク)』は必要無い。ただそれだけだ」

 

ジャンヌ・ダルクにジークという存在がなくとも、彼女は幸せになれる。

ジーク以外に恋をする事もある。夫婦になる事もある。幸せな家庭を築く事が出来る。

 

「『俺』がいなくても『彼女』は幸せになれる。俺はそれでいい」

 

その事実に寂しくて、辛くて、泣きそうだ。でもそれでいい。

 

彼女が幸せなら俺はそれでいい

 

「待て……頼む!…消えないでくれ……!」

 

『救世主』は自分が消える事よりも『ジーク』が消える事の方が耐えられない様だ。

何故かその様子を見て、何処か嬉しく思いながら、『ジーク』は語る。

 

「俺は本来なら存在しない筈だった。だが『転生者』の干渉によって生まれた『異分子(イレギュラー)』だ」

 

やめろ やめろ やめろやめろやめろ

 

「『異分子(イレギュラー)』が『根源(公式)』に混ざる訳にはいかないからな。一時でも舞台に上がれただけで俺は満足さ」

 

頼む!消えないでくれ!

 

「英雄譚は終わりだ。俺がいなくても面白い物語は沢山あるさ。だから寂しそうにするなよ」

 

───消えないで……くれ……俺の『英雄』よ───

 

「『世界』は案外面白いぞ。楽しんでこい」

 

───世界を生きる人間の物語は、きっと素晴らしいモノで溢れてるんだから───

 

そう言って、英雄は引き金を引いた。

 

放たれた弾丸は救世主を貫き、救世主が何か言う間もなく消滅した。

 

その消滅の同時に『根源』の事象の収束が始まった。

 

まず救世主の創った第二根源から派生した根源は消滅し、元に戻っていく。

同胞達も次々と本来あるべき場所に戻っていく。

『救世主』は天草四郎時貞となり、英霊の座に再び落とされる。

 

レティシアとなったジャンヌ・ダルクは守護者に戻り、輪廻に戻る事なく抑止力の奴隷として使われ続ける

 

エミヤシロウの英雄の軌跡に『人類の敵(ジーク)』は存在せず、ただの大量虐殺者として

 

天草四郎時貞は『救世主』になる事なく、第三次聖杯戦争に普通に脱落した

 

『英雄』の物語は幕を下ろすまでもない。

誰からも忘れ去られたのだから。

存在していない物語を幕を下ろす必要はない。

 

 

 

 

転生者が『ジーク』という存在に干渉した結果生まれた物語は終わったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤丸立香が目を覚ますと、そこはいつもと同じ自分の部屋のベットにいた。

 

ベットから起き上がり、今日もカルデアのマスターとしての役目を果たすべくいつもの制服に着替えようとしたら、部屋の扉を開けていつもの恒例となっている後輩がマスターである立香を起こしにやってきた。

 

「先輩、おはようございます」

 

いつものようにマシュは立香に挨拶をする。

 

「うん、おはよう。マシュ」

 

立香がマシュに顔を向けて挨拶すると、マシュは驚いた顔をする。

 

「先輩…何かあったんですか?」

 

とても心配そうにマシュは立香の顔を覗き込む。

 

「どうかしたの、マシュ?」

 

立香は気づいていないようだ。

 

「先輩…泣いてますよ?」

 

マシュに指摘された立香は気づく。

 

「あ」

 

いつの間にか大粒の涙が出ていた。

表情は平気そうなのに涙が止まらない。

拭っても、拭っても涙が溢れてくる。

 

「一体、何があったんですか?また夢経由で何処かにレイシフトを?」

 

カルデアでは立香が夢によってどこかにレイシフトする事が何度かあった。

今回もまたその事例なのかとマシュは思った。

 

「違う、そうじゃない。そうじゃ……ないんだ…」

 

すると、立香の涙がどんどん酷くなっていき次第に嗚咽が漏れ始める。

ただならぬ様子にマシュは心配して駆け寄る。

 

「友達が…いたんだ…。なのに何も思い出せないんだ…」

 

なんとか絞り出た言葉には深い悲しみが宿っていた。

本人にも分からない事情があったのだろう。

カルデアで様々な事を体験したマシュが出た行動は立香を抱きしめる事だった。

マシュは若干恥ずかしながらも立香を抱きしめて彼を包み込んだ。

 

「何があったかは分かりません。詳しく教えてもらわなくても結構です。先輩の立場ならむしろもっと泣いていい筈です。だからコレだけ言わせてください」

 

「先輩が帰って来て良かった…」

 

マシュは立香の体験した事は分からないでも、何か辛い事があったならどんな形でも寄り添う事が大切だとマシュはこれまでの旅から学んだ。

マシュの抱擁に立香は決壊したダムの様に更に泣き崩れる。

嗚咽を漏らして、力の限り叫んで、マシュの胸の中で立香は泣いた。

 

立香は泣いた。

何が悲しくて泣くのかは分からない。

でも心が渇いて仕方がない。胸の内に穴が空いた様な感覚と喪失感に潰されそうになる。

ただ、友達の名前が思い出せないのが辛くてしょうがない。

一緒にゲームをした筈なのに。

一緒に物語を観た筈なのに。

一緒に遊んだ筈なのに。

顔も名前も、肉体すらも思い出せない。

 

その事実が、悲しくて。

ただただ悲しくて。

涙が止まらない。

 

そこから一時間ほど立香は泣き続けた。

結局の所、何故立香が泣いていたのかは分からずじまいだった。

 

一体何が、藤丸立香を悲しませたのかは誰にも分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、泣いている途中でそ(・)の(・)光(・)景(・)を(・)見(・)て(・)い(・)た(・)何(・)者(・)か(・)が(・)パチパチと拍手をする音を立香は聞こえた気がした。

 

 




根源に繋がる=私達の住む現実世界を知るというのが私の根源の解釈です。
現実世界に干渉してもらえば、創作の世界において全能になれますからね。
元ネタはFate/prototypeの豪華客船のドラマCDにあった、愛歌が「創造神⁉︎創造神⁉︎ダークなソウルはもうやめて早く仕事を⁉︎」みたいな事を言っていた所から思いつきました。
次回はエピローグです。短いですが読んでくれたら幸いです。
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