とりあえずこれが今年最後の投稿です。どうか良いお年を。
第一話
バタフライエフェクトという言葉がある。
小さな蝶の羽ばたきが大きな嵐を呼ぶという意味の言葉だ。
これは型月の世界に転生してしまった流れ者が起こした小さなキッカケがバタフライエフェクトにより世界に影響を与えるほどの英雄を生んだ物語である。
男は所謂、転生者と呼ばれる者だ。
よくあるオタクで陰キャでコミュ障のありふれた男だったが、何の因果かこの世界に前世の記憶を持って生まれ落ちた。
男は最初はその事実に歓喜したが、すぐに世界は自分に甘くない事を後になって思い知る。
男の生まれた家は日本の魔術師の家系だった。
男が型月の世界に転生した事を知ったのも、その魔術の仕組みがあまりにも型月の魔術と酷似している事がキッカケだった。
歓喜しながらも親に魔術のやり方を教わり、強化魔術という初歩の魔術を行使した瞬間、
激しい激痛が男を襲った。
その原因は単純だ。
魔術に失敗した。その反動が術者の男に襲い掛かっただけだ。
あまりの激痛に男は情けなくも泣き喚いた。
当時は男がただの少年という事と初めてという事もあって、親からは男を見捨てたりはしなかった。
男は自分の思い描いていた理想と実際の現実に打ちのめされた。
「こんなにも痛い思いをするなら魔術師になんかやりたくない」と男は思った。
男は魔術師にならずに普通に生きる事を決意した。
親は男の情けない言葉を発する姿を見て、魔術師として育てる事を見切り、男を見限った。
魔術刻印は、魔術師としての才能が溢れていた男の妹に渡る事になった。
男はちっとも悔しくもなく、むしろ男は魔術師となる事が確定してしまった妹を哀れんでいた。
それからの男の家庭環境は冷え切ってしまい男は孤立したが、それでも男の親は不遇な扱いはせずに親としての役目は果たしていた。
男は大学生になる事には魔術とは関係の無い一般人として過ごす為に家を出ていた。
親からは特に何も言われず、挨拶を終えた後、男は家を出た。
男は普通の大学生としての日常を送っていく内に、前世をなぞる様に型月世界のアニメや漫画などのサブカルチャーにハマっていく。
そんな平和な日常を過ごしていく内にある疑問が浮かぶ。
(前世で押しキャラだった「ジーク」はこの世界に存在しているのだろうか?)
その疑問が男に再び魔術への好奇心を刺激した。
男はまず自分の居る世界をどの作品の世界かを調べる事から始めた。
男はネットを使って冬木市を調べた結果、冬木市に起こった大火災が記事がなかった。
年代を調べてみると、今が西暦1990年だった。つまり第四次聖杯戦争の直前もしくはその最中だろうと予想出来た。
男は実家に帰り、家の倉庫から親の資料を読み漁る。その資料の中には第三次聖杯戦争の記述があった。
詳しく見てみると、そこに参加したサーヴァント「アヴェンジャー」について考察した男の祖父の資料があった。
それを見てこの世界がstay nightの世界だという事が判明し、男は絶望した。
この世界には「ジーク」は存在していない。
「ジーク」という存在はApocryphaの様な様々な要素が重なり合わせた事で誕生した奇跡の様な存在だ。
例え存在したとしてもそれはただのホムンクルスだ。ジークの様な数奇な運命など持ち合わせていない。ただのジークと似た容姿のホムンクルスだ。
男はそこまで考えて天啓に様に妙案を思いついた。
「そうだ、いないのならば造ってしまえばいい」
その発想に辿り着いた瞬間、男は再び魔術の世界に足を踏み入れる事を決意した。
男は幼少期に親に叩き込まれた魔術の基礎を改めて学び直した。
苦手だった痛みも「ジークに会ってみたい」という意思が
魔術の基礎を得た男は、まずはジークを造る為の土台が必要と判断した。
前世のサブカルチャーの知識やネットで得た知識を駆使して、前世の作品にあった物を参考にした魔術を開発しようと思いついた。
男には魔術の術式を作る才能があったのかあっさり独自の魔術術式を開発してしまった。
男は、まず自分の血液を少しだけ取り出し、その取り出した血液にある赤血球・血小板・白血球細胞などの細胞そのものに直接強化魔術の術式を刻み込む。
本来ならばとても難しい作業だが、男の魔術属性である「水」と一家の魔術系統である支配魔術の応用により、何とか可能にした。
その刻まれた
その過程で注入直後は、激痛と拒絶反応により癌細胞の発生はまだ優しい方で、最悪なのは魔術回路が暴走して、眼球と内臓の破裂や骨の劣化、血液の沸騰といった凄まじい激痛が襲ったが、事前に術式細胞に治癒魔術を施していた為、内臓が破裂しては修復し、骨が砕けては修復しを繰り返し、男は文字通り生き地獄を味わった。
だがそれら全て
もっともその意思はひたすらに「ジーク君に会って自分好みに育ててみたい」というやや不純な意思だったが。
「魔血の魔術師」は、男の魔術属性である「水」の魔術を一工程で使用可能になり、細胞レベルで術式が刻まれている為、魔術を使用すると驚異的なブーストがかかる様になる。
そのブーストによってナノサイズまでの水の操作が可能になり、支配魔術の応用で居るだけでその場のあらゆる水分を支配する規格外の魔術師となった。
強化魔術を使用すれば超音速で動く事も可能と死徒とすら渡り合える事すら可能になる。全身の細胞に術式が刻まれている為、呼吸さえしていれば大気中のマナを取り込む事で身体中の術式が効率良くエネルギーに変える。食事の必要は無く、食べる事さえ出来れば腐った肉やカビだらけのパンであろうと消化して効率良くエネルギーに変えて不純物すらもエネルギーに変える為、よほどの事がなければ排泄行為すらも必要無くなった。
男は正に超人と化していた。
男はその超人的な戦闘力の代償として生殖能力と味覚・嗅覚が完全に消失し、痛覚も鈍くなるという人間らしい機能を失うという魔術師としても人間としても致命傷を負ってしまったが、男は対して気に留めなかった。
男にとって重要なのは戦闘力ではなく、術式の肉体の改造こそが重要だった。
脆弱なホムンクルスの肉体を改造すればジークは人並みの生活が可能になるし不自由な事に合う事はないだろうと信じていた。
実験は成功したがその過程で血管や内臓はおろか眼球や股間の逸物は破裂してしまった。血管や内臓は治癒魔術によって修復可能だったが右目の眼球は治らず、腎臓や股間の逸物が破裂したのは致命的だった。もはや子孫を残す事は出来ず、性行為すらも不可能となった。
更に身体の中の細胞が活発になった事で、
治癒魔術で何とか治療は可能だが、そんな異常が何度続けば寿命はどんどん縮んでいき、男の寿命は中年期に入る頃には死ぬ事が確定していた。
だが男には
男は自分の全てを自分が造り出す「ジーク」に託すつもりだった。
男の開発した魔血の魔術師は親は最初は褒めていたが、男の有様を見て男に失望した。
魔術師として子孫を残す手段が絶たれた男を魔術師としての価値は無いと判断したが、男の才能は破格なモノだとも判断した。
「もしかしたら根源に辿り着けるかもしれない」という可能性がよぎり、男に時計塔に渡るように薦めた。
男は親の提案に喜んだ。
時計塔に行けば魔術を本格的に学べる上にジークを造り出したムジーク家とコンタクトが取れるのではないかと淡い期待をしていた。
男は親の提案に乗り、ロンドンの時計塔に行く。
時計塔に行った男は魔術を学ぶ事に没頭した。
周囲の者は男を「気味が悪い」「人形の様だ」と言われ講師の者からは「魔術師の鑑」と呼ばれ気に入られていた。
だが、彼が魔血の魔術師の論文を書いて提出した際に
「君はどうかしている」
「頭がおかしい。蛆でも沸いたか」
と言われ始め、一時期は魔血の魔術師の異常さとそれを開発した才能を理由に封印指定されそうになる。
一度は派遣された執行者に襲われるがそれらを魔血の魔術師としての初めての実戦を兼ねて応戦し、見事に返り討ちにした後、魔血の魔術師の術式から自らを実験台とした資料を魔術協会に提出する事で封印指定を回避した。
そしてその実力を魔術協会に派遣された執行者の殺害の償いとしてその穴埋めが見つかるまで執行者の手伝いをやる事になった。
男はそれで稼いだ金を全てジークに注ぎ込む為に、喜んで仕事をこなしていた。
そんな異色な経歴を持ってしまった男は時計塔でも浮いた存在になってしまった。
魔血の魔術師としての戦闘力は現役の執行者達からも一目置かれ、正式に執行者として働かないかとスカウトが来たが、男はあくまで金稼ぎの為にやっているので断った。
便利なアルバイトとして活躍し、代わりの穴埋めとしてバゼット・フラガ・マクレミッツが採用された。アルバイトの契約終了後には少なくとも中年期に入るまでは遊んで暮らせる程の膨大な金を男は手に入れた。
男はそのまま時計塔に留まり続けた。
男は周囲の視線には気にも留めず、魔術と錬金術の基礎を学び続けた。
ある日、男が錬金術の講義を聞いている時にムジーク家の者が臨時講師として講義に出ていた。
「今日から二週間、錬金術の講義を行う様に頼まれた臨時講師のゴルド・ムジークだ!」
ゴルド・ムジークが尊大な態度で生徒達に挨拶をする。
あまりの尊大な態度に生徒達は眉を潜めるがゴルドの語る錬金術の講義は意外とちゃんとした者であり、生徒達は徐々にゴルドを優秀な錬金術師だと認め、ゴルドの講義に耳を傾けていった。
ある日、ゴルドがホムンクルスを連れて教壇に立って講義をした。
「これが我が家に代々伝わる錬金術の技術で造られたホムンクルスだ。どうだ、見事なモノだろう。これほどの完成度を実現出来るのは我がムジーク家かアインツベルン家くらいのモノだろう」
ゴルドが自分が造り出したホムンクルスを生徒達に自慢する様を生徒達は苦笑いしながら講義を聞いていたが、男だけはゴルドが連れてきたホムンクルスに釘付けになっていた。
男にとってはゴルドの、というよりムジーク家のホムンクルスは「ジーク」に繋がる手懸りだ。
男はゴルドの講義を聞きながら、どうにかしてムジーク家のホムンクルス技術を手に入れないか考えていた。
だが何事も期限がある。講義につい夢中になってしまい、あっという間にゴルドの期間が終わったのだ。
男はゴルドからホムンクルス技術を教えてもらう方法を考えた。
ゴルドに弟子入りしようとしたが、一度試した際にあまりにも必死に頼み込む姿と異色な経歴を包み隠さず答えた為にゴルドをドン引きさせてしまい流されてしまった。
男は仕方なくゴルドの家に侵入してホムンクルスの技術を堂々と盗む事にした。
男はゴルドの帰国の際に、後の時計塔の講義には無断で欠席し、時計塔から追放されても良いくらいの覚悟でゴルドの後を追った。
ゴルドの後を追跡していき、ゴルドの実家であるムジーク家に辿り着くと、男は速攻でムジーク家に忍び込んだ。
男は魔血の魔術師の能力をフル活用してムジーク家を動き回る。
時には匍匐前進しながら狭い屋根裏を動き回り、身体強化による俊足や男の魔術属性である「水」を活用しステルス迷彩の様に周囲の空間に溶け込む。
見回りをしているホムンクルスを潜入中に観察しているとその完成度の高さに感銘を受けつつもそれぞれのホムンクルスの精神面の特徴に男の気づいた。
例えばあるホムンクルスは掃除をサボる者がいたり、またある者は隅々まで掃除しないと気が済まないホムンクルスがいる。
その些細な違いに何処か人間性を感じ、ムジーク家のホムンクルスには通常のホムンクルスには無い「個性」と確かな「意思」があった。
前世の知識でのアインツベルンのホムンクルスとはあまり違いを感じられないが、アインツベルンとムジークを改めて比べてみると、アインツベルンには確固たる意思と個性と何より『感情』を持っているが、ムジーク家のホムンクルスには感情に乏しく、意思と個性こそあるがその起伏が乏しく激しい感情をあまり持ち合わせていない。比べてみると確かに技術力に差がある。
男はムジーク家のホムンクルスを観察しながらゴルドの魔術工房に侵入した。
そこには多くのホムンクルス達が鋳造されていた。
男はホムンクルス達を一瞥してゴルドの魔術工房にある資料を漁ろうとするが、鋳造されているホムンクルスの中に、前世の記憶の中にあるホムンクルスと酷似している個体を見つけてしまった。
「間違いない、彼だ!見つけたぞ!偶然だが遂に会えたぞ!」
「フハハハハハハ!やったぞ、見つけたぞぉ!」
男は興奮するあまり大声で高笑いを上げてしまっていた。
それが原因で魔術工房の周りを警備している戦闘用ホムンクルスに見つかってしまう。
ホムンクルス達は魔術回路を起動させて槍やハルバードなどの其々の武器を持って男に挑みかかるが、男は瞬間移動の如き速さでホムンクルス達の攻撃を避ける。
男の速さに驚きつつも魔術を使用しようとするホムンクルス達の意識を男が素早くホムンクルスの背後に回り込み、ホムンクルスの頭部を掴み、支配魔術を使ってホムンクルスの体内の水分を操り、殺さない様に気絶だけで済ませる。
同朋が呆気なくやられて男を本能で恐れながらも果敢に挑み続ける戦闘用ホムンクルス達は男に襲いかかる。
「フハハハハハハハハハハハハハ!」
高笑いしながらホムンクルス達を魔血の魔術師の能力を活かした身体能力で男は動き出す。
男は魔術で空気の水分を掻き集め、そこから透明な水の剣を出現させる。
武器を持ち出した男にホムンクルス達は血気盛んに男に武器と魔術を一斉にぶつける。
男の剣から一閃が放たれる。
男の剣術は、冴えも無く練度も無い。
剣術の才能が感じられない素人の剣だったが、男の身体には無数の術式細胞が男を補助する。
ありえないほどの強化魔術の重複は、男を音速を軽く超えさせる。
剣で斬り刻まれると思ったホムンクルスだが、一向にその気配は無い。
だが、1人また1人とどんどん気絶していく。
その絡繰は簡単だ。
男の水の剣は敵を斬る為の剣ではない。
対象に自らの支配魔術で支配した水を侵入させる為の剣だ。
人体には医学的・生物学的に考えて穴がいくつもある。
その穴に支配した僅かな水分を侵入させて、侵入させた人体の水分と同化させる事で、相手の水分を操り、その意識を奪っているのだ。
水魔術と支配魔術のコラボレーションはホムンクルス達を蹂躙するが、それでもホムンクルス達は気絶こそするが怪我は無く、戦闘用ホムンクルス達の武器がぶつかっても周りの機材に何も影響は無かった。
理由は男が部屋の空間一帯の水分を支配魔術で掌握していたからだ。
それによって、ホムンクルスと機材の周りに透明な水のバリアが張られていたのだ。水のバリアの影響で極端に衝撃を緩和させていたのだ。
水のバリアによって助けられたホムンクルス達は困惑する。笑いながら暴力を振るう目の前の男が自分達を守りながら戦うなどという奇天烈な行動がホムンクルス達には理解できなかった。
男はただ単純に
(ジークの身内のホムンクルスを傷付けば彼が傷つくだろう)
という理由だったが、そんな理由が存在するなど思いつく筈もなくホムンクルス達は困惑と男に対する不気味な不快感を味わう事となる。
尚も高笑いを続ける男をホムンクルス達は不気味に思いながらも挑み続けるが男の圧倒的な実力がそれを捻じ伏せる。
小一時間ほどその状態が続いて、ようやくムジーク家の当主であるゴルド・ムジークが工房に姿を現した。
「なんなんだお前は!どうして我が屋敷に忍び込み、あまつさえ魔術工房に入り込んでいる⁉︎」
ゴルドには目の前の男に問いただす。
突然屋敷に侵入した挙句、魔術工房で高笑いする男を心底不気味に思いながらも忌々しく男に怒鳴りかけた。
「申し訳ないムジーク氏。あまりの感動に感情を抑えきれなかった」
笑いを抑えた男はゴルドに向き合い礼をする。
「お久しぶりですゴルド・ムジーク氏。私の名はヨハン・サトウ。覚えておいでですか?」
男・・・ヨハン・サトウはゴルドに顔を向けて名を名乗った。
「この転生者気持ち悪い」と思った人、貴方の感覚は間違っていないので安心して下さい。書いていて私もそう思いました。
ちなみにこの転生者のイメージは某光の亡者の糞眼鏡です。