ヨハン・サトウとジーク・ワーグナーは日本の冬木市に移住した。
そこでヨハンとジークは一般人として暮らしていた。
ヨハンとジークが移住した頃には第四次聖杯戦争が終結し、大火災の爪痕が濃く残っていた。
ヨハンは深山町の隣町に一軒家を建てた後は、金は執行者のアルバイト時代に荒稼ぎしたのでしばらく静かに過ごすつもりでいた。
趣味の家庭菜園と冬木市で起こった大火災の復興の手伝いをしながら過ごす事がヨハンの日課だった。
ジークは少年の姿をしている為、冬木市の新都の小学校に入学させた。
原作では冬木市には外国人が多いという設定がありながらもstay night本編では外国人が冬木市では殆ど登場しなかった。
そこに疑問を感じたヨハンは冬木市に存在する学校を調べ回った。
調べていく内に、stay night本編で出ていた穂村原学園以外にも色々な学校も存在している事が分かった。
ヨハンはその中で外国人が多く通う学校に通わせる事にした。
原作や設定資料集にも存在していない学校だったが問題は無いだろう。
その学校の名は『戦場ヶ原学園』。
穂村原学園のライバル校らしい。
ヨハンからすれば別に穂村原学園以外ならどれでも良かった。
原作のキャラクター達が通う学校など危険でしかないので、穂村原学園にジークを通わせるという選択肢は存在していないのだ。
全てはジークを案じての事だ。
ヨハンのジークに対する愛情はもはや過保護と呼べるだろう。
そして紆余曲折を得てジークは初めての学校に通う。
最初はその容姿とホムンクルス特有の知識量故に浮いた存在になっていたが、周りの生徒には外国人が多い事と様々な言語を知識として所有していた為、主に冬木市に住む外国人と交流する事で何とか馴染む様になった。
当然、ジークの事を気に食わない人間も存在する。
ジークの整った顔立ちと敬語をあまり使わない偉そうな口調が気に食わなかったのか、それを理由にして入学して数ヶ月でイジメが始まった。
ヨハンはイジメについて気づいていた。
本来なら真っ先にイジメの主犯達を八つ裂きにしてやりたかったが、ジークが、ヨハンにも言わずにイジメに耐えていた。
持ち物を隠され、弁当を捨てられ、殴られ蹴られ、一挙一動を笑われた。
触るだけで気持ち悪いと振る舞い、見ているだけで、不快に思われもした。
教師もそのイジメの現場を見ているが見て見ぬふりをしていた。
例え誰かがジークのイジメを訴える者がいたとしても、「戯れているだけ」「大した事ない」と訴える者を煙に撒いて追い払う。
ジークを助けようとした者もいる。
だが、ジークは賢くも自分を助けた者が次の標的になる事は目に見えていた。
だから、その
だがそれでもジークは堂々と生活していた。
「何故そこまで耐えるんだ?」とヨハンが質問するが、ジークは対して何事もない事の様に答えた。
「向こうで見た『イジメ』と同じ体験をしているんだ。これはこれで貴重な体験だ」
「それに何も悪い事をしていないなら堂々としていればいい。それでもまだイジメがあるなら、それは俺に原因があるのが悪いんだろう」
「それに俺がイジメられる事で、みんなが安心しているみたいだし、
「俺が耐えるだけでみんなが安心できるなら、それで良い」
何事も無い様に、自分を蔑ろにしながら、何処までも他人を案じるジークにヨハンは絶句し感動する。
ジークのその何処までも純粋で清廉で無垢な在り方は、一体どこから来るのかが不思議でしょうがない。
そして同時に彼をイジメる心無い恥知らず共に怒りが湧き上がる。
ヨハンが怒りに任せて主犯達を虐殺しに行こうとするが、それをジークが強化魔術を使ってでもヨハンを静止する。
「駄目…ですよ、先生。彼らのおかげでまだ未熟だが敬語を少し使える様になったんだ。まだ俺の社会勉強は始まったばかりだ」
自分を止めるジークにヨハンは初めて声を荒げる。
「君は自分が耐えれば良いと言ったな。それは間違いだ。この私の様にそれを見ている者が耐えられないんだ!」
「いつか君の有様に耐えられない者が現れる。いくら君が耐えられても、その周りが耐えきれずに君に関わってしまうだろう」
「その関わった者が巻き込まれ、危害を受けた時、君はどうする?」
ヨハンの質問にジークは決意を込めた言葉で答える。
「勿論、
「俺と関わって不幸になるなら関わらなければいいだろう」
「俺がみんなに嫌われて侮蔑されて無視されるのを耐えるだけで、みんな安心できるなら、俺はそれで良い」
そのジークの言い分にヨハンは声を過去最大に荒げてジークに問う。
「だから!一体、どうしてその考えになる⁉︎どういった考えの上でその結論に辿り着くんだ⁉︎」
ジークはヨハンを真っ直ぐに見つめて宣誓する。
「俺が
「ヨハン先生は言っていただろう。俺の生まれや経歴は特殊だと…奇跡とも言っていた」
「特別な存在なら、特別な存在らしく振る舞うべきだ」
「ヨハン先生と一緒に見た『人間』達には笑顔の人達や可哀想な人達が沢山いた。だったら俺は、人より特別な存在として、あんな人達が安心できる存在になりたい」
「俺をいじめている人間も、色んな事が満足出来なくて可哀想な人の1人に過ぎないんだ」
「俺はそんな人達を少しでも減らしたいし、安心もさせたい」
「それが俺の初めて目標なんだ」
それを聞いたヨハンはジークに対して抱いた感動が限界突破する。
なんて素晴らしい存在なんだ彼は。
ヨハンの想像以上にジークは人間を通して成長していた。
(素晴らしい…嗚呼…素晴らし過ぎる)
(だが、故に許せん)
ヨハンは精神的に強くない自覚はある。
ジークの様にイジメの主犯格すらも許せるわけがない。
この場はジークを尊重し引こう。だが、いつかジークの気づかない様にイジメの主犯達を始末しようと心に決めて。
「分かった、君を尊重しよう」
それを聞いたジークは、安心した様だ。
ヨハンはそのジークの在り方に初めて不安を覚えた。
そして、しばらくして、ジークをイジメていた主犯達は、遠足の時に
いつしか、ジークのイジメは無くなり、ジークの学校生活に平和が訪れた。
そして、ジークは学校に通いながら、その中でヨハンから彼の知る限りの知識を与えられながら共に暮らす。そんな平和な日常を送っていた。
だが、その平和は突然崩れさった。
ヨハンが自宅で栽培している野菜の世話をしている時に吐血し、意識が朦朧として倒れてしまった。幸い学校から帰って来たジークに見つけもらったので、ヨハンはジークによって介抱された。
介抱されたヨハンが目を覚ますと、ジークは安堵するが、ヨハンがしばらく黙った後にジークに告げた。
「どうやら私は後1年程度しか生きられないらしい」
ヨハンはジークに自分の残り時間を打ち明けた。
それを聞いたジークは初めて動揺した表情でヨハンに詰め寄る。
「どうしてだ⁉︎」
「魔血の魔術師の影響さ。初めて術式を施して注入した時に代償をモロに払った上でも大分寿命が縮んでいたのだが、君の魔血の魔術師の術式を施した際の代償が私の唯でさえ少ない寿命を更に減らしていたらしい」
「…そんな……」
落ち込んでるジークを見てヨハンは微笑む。
ジークが自分の事の様に悲しむ姿を見て心から嬉しく思ってつい笑ってしまう。
ヨハンは嬉しかった。
絶望するジークを見て愉悦している訳ではない。
ただ自分がジークにとって悲しんで貰える存在になった事が純粋に嬉しかったのだ。
そして同時にジークを残して逝ってしまう事を悔やんでしまう。
そして、ヨハンは兼ねてから用意していた策をジークに伝える事を決めた。
「ジーク、良く聞きなさい」
「.....?」
不思議そうに首を傾げるジークに微笑みかけながらヨハンはジークに兼ねてからの策を伝える。
「君にはサーヴァントを召喚してもらう」
「そのサーヴァントが君を守る術であり、君が自分の脚で立つ手助けをしてくれるだろう」
そして2人は柳洞寺の地下に向かった。
冬木市の地下には大空洞があり、そこには大聖杯と呼ばれる『
そう、本物の魔法使いが立ち合って刻まれた本物の『
それほどの物が時計塔などの魔術機関に知られていないのはゼルレッチを含む多くの魔術業界の大物達による情報操作によるものだとヨハンは推測している。
だがそんなことはどうでもいい。
今ヨハンにとって重要なのはジークがサーヴァントを召喚する為に大聖杯が必要という事と、マスターの資格である令呪がジークに宿るのかどうかという事だ。
Apocryphaでは『竜告令呪』という特殊な令呪を宿しており、同じ『ジーク』という個体だがこのジークに令呪が宿るかどうかは賭けに近い。
その為の保険としてジークにはその感知能力を用いて大聖杯に接続してもらった。
神代の神秘を宿すジークに大聖杯の魔法陣に接続すればマスターになれる可能性は跳ね上がる。
しかも時系列的には第四次聖杯戦争の直後という事もあり、溢れ出た聖杯の泥のお陰でマナは充分すぎるほど満ちている。
サーヴァント召喚の環境は整っている。
「ジーク、始めなさい」
「分かりました」
そしてジークが魔術回路を起動させて、ジークの魔力を解放させる。
そしてジークはヨハンに教えられていたサーヴァント召喚の詠唱を紡ぎ出す。
『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ』
魔法陣が起動して輝き始める。
『閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する』
魔法陣から光の触手の様な物がジークを包み込む。
『――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』
ジークの魔術回路と接続したのか魔法陣が輝き始める。
『誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者』
ジークの前に魔法陣が現れて、ジークの左手の甲に令呪が刻まれる。
『汝、三大の言霊を纏う七天
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』
詠唱が終わり、そして魔法陣から眩い光を放ちながら『サーヴァント』が召喚される。
そのサーヴァントは、大きな旗と剣を携えた金髪の女性だった。
ストック無くなっちゃった。
これからは更新が遅くなりそうですが、頑張って書いて投稿しますので、申し訳ありませんがそれまでどうか気長にお待ちください。