剣士列伝 仮面ライダーシャムシール   作:雪見柚餅子

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原作仮面ライダーセイバー完結。一年間ありがとう。
しかし、この作品はまだまだ続きます。


第9章 迫る暗雲、立ち上がる剣士。

「皆さん、ボンヌレクチュ~ル! 僕はタッセル。今、世界では大変なことが起きているんだよ!」

 

「何と突然、街に6体のメギドが現れて、暴れだしたんだ!」

 

「そのメギドを倒すために街に出た剣士の一人、緋道蓮。だけど彼が入り込んだワンダーワールドには、あの強欲の剣士も居たんだ!」

 

「強欲の剣士シャムシールの力に追い詰められる蓮。だけどそこに現れたのは、サウザンベースから来た二人の剣士、タルスとレボス」

 

「彼らはメギドを蓮に任せ、シャムシールと再び対決することになる。彼らは強欲の剣士を倒すことが出来るんだろうか?」

 

「メギド達もなにやら企んでいるようだし……もうそろそろ僕も動かないと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:レボス】

 

「おらあっ!!」

 

 やっと見つけた強欲の剣士を倒すために、俺は鉄鋼剣黒鉄で斬りかかる。他の聖剣と比べて特殊な能力こそ持ってないが、だからこそ俺の剣の腕前が十二分に発揮できる。

 

「ふっ!」

 

 そしてタルスもまた同じように魂魄剣深魂を振るう。俺達の一族が代々継承している聖剣。それを受け継ぎ当主となったタルスもまた、ソードオブロゴスではトップクラスの腕前を持つ剣士だ。

 俺とタルス。二人が力を合わせれば、たとえどんな敵だろうと敵うはずがない。それは強欲の剣士シャムシールに対してもそう言える。事実、この間の戦いでは終始俺達が圧倒していた。

 

「……相変わらずだね」

 

 だけど、今日は様子が違った。俺達の剣戟。それが全て奴の技に受け流されている。俺が放った渾身の斬撃も、タルスが放った素早い突きも、全てが奴の聖剣に弾かれ、空を切る。

 この間とはまるで違う。あの時は本気じゃなかったとでも言うのか?

 焦りを覚え始めた俺達に、強欲の剣士がぽつりと呟く。

 

「あんた達の技はこの間覚えた。その程度じゃ、私は倒せない」

「何だと!」

 

 あからさまな挑発に怒りを感じるが、内心は冷静さを保っていた。まさかこの間の一回の戦闘で俺達の技を全て見切ったとでも言うのか。

 思わず冷や汗が流れるほどの学習能力。そもそも、俺達の剣技と奴の剣技は共通点が多いのも理由だろう。元々は奴もゴート家の一員。基本の技術は共通している。まさかそれが仇となるとは……。

 だが、それで勝てないようでは、マスターに顔向けできない!

 

「これでも食らえ!」

 

必殺鋼読!

黒鉄斬鉄閃!

 

 俺達と奴の剣術が似ているということは、逆を言えば俺達も奴の動きが分かるということだ。タルスが奴の剣を捌きながら俺に一瞬アイコンタクトをした。その意図を理解し、俺は黒鉄のスイッチを押す。

 いくら奴が動きを見切っていようと、それが出来ない状況にすればいい!

 

「はああああっ!!」

 

 狙うのは奴の剣。俺が奴の剣を封じている間に、タルスが―――を使う。これが奴を倒すために考えた作戦だ。

 奴の視線が俺の剣を捉える。この間と同じ戦術。だがこれは逃れられない。防ごうとすれば剣が封じられ、躱そうにも体勢が悪い。もらった!

 

「……で?」

「な!?」

 

 だが、すぐに俺は驚愕で目を見開いた。奴は俺の技を防ぐでも、躱すでもなく、それどころか自らの聖剣を腰に収めると、、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 鋭く放たれた俺の剣は奴の体を突き刺し、強固な鎧と柔らかい肉、二つを引き裂く感触が俺の手に伝わる。

 

「レボス!」

「っ!!」

 

 タルスの声ですぐに正気に戻り、剣を抜こうと力を入れる。だが奴は左手で鉄鋼剣黒鉄の刃を掴んで離さない。

 

「っ放せ!!」

 

 幾ら力を込めようと、奴が放す気配は無い。それどころか、奴が持つ再生能力によって、切り裂かれた体と鎧が元に戻り、どんどんと抜けにくくなっていく。

 

餓欲居合……

 

「っ!?」

 

 そして奴が腰に収めた聖剣が膨大なエネルギーを迸らせる。すぐに危険に気付いた俺は、黒鉄から手を離して下がるが、僅かに遅かった。

 

黙読一閃!

 

「ぐああああっ!?」

 

 抜刀された聖剣から放たれた暗紫の斬撃。それは俺の体を捉え、衝撃と共に切り裂いた。

 

「レボス!?」

 

 タルスが駆け寄ってくるのが見える。くそ、下手を打った。

 強欲の剣士は身体に刺さった鉄鋼剣黒鉄をずるりと引き抜くと、地面に投げ捨てる。

 

「はぁ。私は別に痛いのは好きじゃないんだけどね」

 

 この間はずっと防御に専念していたから、気に留めていなかった。そうだ、奴の再生能力を考えれば、防御しないという選択肢が取れるということだって分かったはずなのに……悔しさで歯を食いしばる。

 そんな中、奴はゆっくりと俺達に近づいて来る。

 

「それじゃ……」

 

 そして奴が剣をゆっくりと掲げた……その瞬間、異変が起きた。

 

-ドォンッ!!-

 

「ん?」

「あれはっ!?」

「何だよあれ……」

 

 三者三様の反応を示す俺達。その視線の先には、天に上る緑色の光の柱。あれが有る方向はたしか、風の剣士が向かっていった方向のはず……。

 

「っ!!」

 

 強欲の剣士もこの状況が呑み込めていないのか、呆然と光の柱を見つめる。その隙を突いて、俺は落ちた鉄鋼剣黒鉄を拾い上げ、そのまま強欲の剣士に向かって振るう。だがそれも難なく躱され、剣は空を切った。

 

「「「……」」」

 

 そして再び睨み会う。

 だがそのすぐ後、突如として猛烈な突風、いや衝撃波が俺達を襲った。

 

「くっ!?」

「うわっ!?」

「なっ!?」

 

 目も開けられないほどの衝撃に飲み込まれ、俺達は抗うことも出来ずに吹き飛ばされていく。

 

「ぐあっ!?」

「っここは……?」

 

 そして気が付くと俺とタルスは地面へと投げ出されていた。全身の僅かな痛みを無視して辺りを見回すと、どうやらワンダーワールドの外へと弾き出されてしまったようだ。

 強欲の剣士の姿はどこにも見当たらないため、別の場所に飛んでいったのか。

 

「あ、お前ら!!」

 

 癇に障る声が聞こえ、顔を動かすと、そこには変身を解除した風の剣士が走り寄ってくる姿。

 

「お前、何でここに……いやその前に何をした?」

 

 あの光の柱が有ったのは、この風の剣士が向かった方向。何か知っているはずだと問い詰める。だが風の剣士も怪訝な表情を浮かべるだけだ。

 

「俺だって分かんないよ。なんか、メギドを倒したら突然あの柱が……」

「なるほど……」

 

 風の剣士の言葉にタルスが顎に手を当てて思案する。

 

「……一度、ノーザンベースに戻りましょう。もしかすると、何か大きな異変が起きているのかもしれません」

 

 タルスの言葉に俺は頷いた。今は強欲の剣士は後回しだ。それよりも目の前の異変に対処した方が良いんだろう。

 風の剣士も渋々と言った様子で「分かった」と一言。不愛想だが、そんなことは気にしてられない。

 そして俺達はブックゲートを使ってノーザンベースへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:エドナ】

 

 謎の衝撃波によってワンダーワールドから弾き飛ばされた私は、空高くそびえる光の柱をぼうっと見つめていた。

 私が居たワンダーワールドから伸びた緑色のものと、別の場所から伸びた赤色のもの。今はその二つの柱が伸びている。

 あの柱からは聖剣に似た力を感じる。それぞれ風と火。私が居たワンダーワールドでは風の剣士がメギドを追っていた。つまり、何らかのきっかけによって聖剣の力が増幅されて、あのような形で顕現しているのだろうか……。

 ……恐らく、いや確実にメギドの手によるものだろう。わざわざ複数箇所同時に侵食を行ったのも、これが理由のはずだ。

 だけど、これは一体何のためなのだろうか。狙っているのは、ワンダーワールドの浸食の数から、六本の聖剣の力を増幅させることで間違いないだろう。だけどメギドが聖剣の力を手に入れたとして一体何を……。

 そこで私は一つの可能性に思い至る。

 

「目次録……」

 

 かつて全知全能の書と呼ばれる、あらゆる知識が記された本が有った。それはソードオブロゴスとメギドの争いによってバラバラとなり、その紙片一つ一つがライドブックに変化したという。

 そのバラバラになった全知全能の書に残された一部、そして知識の源とされているのが目次録であり、それに至るための鍵こそが聖剣というわけだ。

 

 目次録へと至るためには、十一本の聖剣、そして全知全能の書の力を強く引き継いだライドブックが必要とされている。私も昔、目次録を手に入れようかと興味を持ったけれども、その中で必要な聖剣の一本が失われているため諦めたことがある。

 それはともかく、つまりは六本の聖剣の力だけでは、目次録への道が作られることは無い。けれども、それはあくまで本来ならばだ。メギドはそもそも、全知全能の書から生まれた怪物とされている。即ち、あいつらもまた全知全能の書の力の一部を持っているということだ。

 そしてこの間戦った闇の剣士。あれもまたメギドに力を貸しているはず。聖剣、ライドブック、そしてメギド。全知全能の書の力を宿す、この三つの存在が噛み合っているとするなら、もしかすると目次録への道も開かれるかもしれない。

 

「……()()()()()

 

 だからどうしたという話なのだが。

 私としては、メギドによって世界を変えられるのは、それはそれで気に食わない。

 けれども仮に私の考えが当たっていたとして、それで手に入るのはせいぜい目次録が持つ知識だけ。世界を書き換えるほどの力が手に入るわけでも無いはず。それなら私がわざわざ手を出す必要は無い。

 そんなことよりも破滅の書を手に入れた方が手っ取り早いだろう。ちょうどよく、メギド達がワンダーワールドの浸食をしてくれたのだ。これは良いエサになる。

 

「さて……」

 

 残るワンダーワールドは四つ。どれに行こうかと迷いながら、私は歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:タルス】

 

 

 

 ノーザンベースに戻った私達を待っていたのは炎の剣士達、そして重傷を負った水の剣士でした。話を聞くと、組織を裏切った闇の剣士カリバーによるもの……。

 彼らにどのような因縁があるかは知りませんが、今はそれを聞いている暇は有りません。どうやら炎の剣士もまたメギドを1体倒したようですが、我々が居た場所同様に光の柱が生まれ、ワンダーワールドから弾き飛ばされたとのことでした。

 メギドが何かを企んでいるのは明らか。これは確実に罠です。しかし、だからと言ってメギドを野放しにするわけにはいきません。街を守りながら、奴らの目的が達成されないようにしなければ……。

 私にはその時、一つの案が思い浮かびました。

 

「今この場に居る剣士。それぞれが残り四つのワンダーワールドへ乗り込み、手分けしてメギドを倒す。時間的にもそれがベストです。私とレボスはこちらを、あなた方はそれぞれ別のワンダーワールドの対処をお願いします」

「確かに、それが一番だろう。それなら私は西側、飛羽馬は東側の一つ、蓮と尾上は最後の一つ。これで……」

 

 私の案。それは分担してメギドを倒す。ただそれだけのことのように思えたでしょう。ですが、その真意に気付いたであろう者、聖剣の刀鍛冶でもある音の剣士が作戦を詰めていきます。私だけの言葉では納得しなかったでしょうが、彼の言葉であれば他の剣士も従うでしょう。

 

「それじゃあ、行くぞ!!」

 

 土の剣士の号令の下、私達はブックゲートを開いて、それぞれの担当する場所へと跳びました。

 

「……」

 

 ワンダーワールドへ向かう中、私には一つの懸念事項が……。

 それは強欲の剣士。奴は「必要な物が有る」と言っていました。恐らく、奴も何かを企んで行動をしている。

 奴が何を狙っているのか……真っ先に思い浮かぶのはワンダーライドブック。600年前、奴は多くの剣士達を倒し、そのライドブックを奪っていったという話です。ライドブックを集めて何をしようとしたのかまでは分かっていませんが、世界を混乱に陥れることになるのは間違いないでしょう。

 もしくは聖剣も考えられます。聖剣自体が強力な武器であり、全知全能の書の鍵でもある以上、絶対に奪われてはいけないものです。奴が聖剣を手に入れていけば、我々の戦力は下がり、奴の力は増す。そのような状況は考えたくもありません。

 後は破滅の書でしょうか。先日封印が解かれ、蘇った不死身の剣士によって世界が崩壊の危機に瀕しました。今は再度封印され、サウザンベースの禁書庫で保管されているはず。あれは奴にとっては世界を滅ぼすための都合の良い道具であり、同時に仲間が封じられている本でもある。これもまた、狙っていてもおかしくはありません。

 何はともあれ、奴が何かを狙っている以上、それは絶対に阻止しなくては……。

 今、やるべきはメギドを倒すこと。しかし近くに奴が居ることが分かっています。きっと奴は、今の状況を利用して、ワンダーワールドに潜んでいるでしょう。

 メギドと奴を同時に相手をすれば、間違いなく苦戦することになる。そうだとしても私達が逃げることは許されません。

 すぐそこまで迫っているであろう奴の存在に気を張りながら、携えた聖剣の柄をぎゅっと握り、私はワンダーワールドへ駆け出したのでした。

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