描写はありませんが、本話では飛羽真はブレイブドラゴン、ユーリは最光シャドー、大秦寺はヘンゼルナッツとグレーテルの姿です。
「皆さん、ボンヌ・レクチュ~ル! 僕はタッセル。前回はまさかの出来事が起きたね!」
「須藤芽依が街に現れたカブトガニメギドに襲われそうになった時、彼女を助けたのは、なんと破滅の剣士の一人であるエドナだったんだ!」
「彼女は駆け付けた飛羽真達の前で変身し、仮面ライダーシャムシールとなってメギドと戦い始める」
「思わず僕も唖然としちゃったよ。彼女が人間を助けようとするなんて。だって、あんなことがあったんだから……おっと、この話はまた後でね」
「さて、彼女は何を考えているんだろうか?」
【SIDE:飛羽真】
「強欲の剣士……」
メギド出現の知らせを受けて、俺達が芽依ちゃんの許に駆けつけたとき、その場に居た少女。その彼女が変身した姿に思わず絶句した。
それは以前、圧倒的な力を見せて姿を消した、強欲の剣士そのもの。突然現れなくなったから、サウザンベースの剣士によって倒されたものだと思っていた。
彼女は世界を滅ぼそうとした剣士の一人らしいが、その行動は謎に包まれている。時折姿を現しては、メギドや剣士と戦って、姿を消す。彼女が何をしたいのか、全く分からない。
「さて、さっさと終わらせようか」
そんな彼女は、手にした聖剣を構え、メギドに向かってゆっくりと歩く。そんな彼女へ周りに居たシミーたちが群がった。
だけど、それに一切動じず、強欲の剣士―シャムシールは腰から一冊のワンダーライドブックを取り出す。
『強欲な列車!』
『欲求一突!』
本から力を得た聖剣、その切っ先から光の線路が現れると、まるで鞭のように撓りながら、周囲のシミーたちを一瞬で掃討してみせた。
「あれは覇剣の一つ……600年前に感じた気配は、あいつのものか……」
ぽつりとユーリが呟く。その口ぶりから何か知っているのかもしれない。
「くそっ、イライラするっ! オマエなんか、細切レにシテヤルっ!!」
メギドは鋭い爪を振り回しながら、シャムシールへと躍りかかる。左右の腕を交互に振るいながら、反撃は許さないといわんばかりの連撃を繰り出す。仮に反撃できたとしても、見るからに頑丈そうな甲殻を破るのは難しいだろう。
しかし彼女は、軽やかな足取りでその攻撃を躱すと、僅かにメギドの体勢が崩れた瞬間を狙い、そのメギドの体を足場にして跳躍。
「ふっ!」
そのままメギドの背後に回ると、放ったのは鋭い突き。それは正確無比に、メギドの装甲が薄い関節部分を貫いた。
「グアっ!?」
そのダメージによってメギドが怯んだ隙に、攻守交替と言わんばかりに、シャムシールはメギドに斬撃を繰り出し続ける。ほとんどがメギドの甲殻に当たり、音を響かせながら火花を散らすものの、軽そうな見た目に反してその攻撃の威力は高い。少しずつメギドの装甲に罅が入っていくのが分かる。
「あんた、つまらないね。はっ!」
そして大振りの一撃。それがメギドの胴体に見事に入り、その甲殻を大きく砕いた。
あまりにも苛烈な攻撃を受け、メギドは最早瀕死の状態。そんなメギドに、彼女はゆっくりと歩みを進める。
「さて、止めだね……ん?」
しかし、その足が止まる。彼女の視線の先、そこには甲殻が崩れ、輪郭が朧気となっていくメギド。やっぱり、あのメギドも……!
「うぅ……何、だ……一体、俺は?」
崩れ落ちたメギドの中から姿を現したのは、右腕が異形と変貌した青年。予想通り、あのメギドも人間が変えられたものだった。
少し前から現れた、人間を体を乗っ取ったメギド。他のメギドと違って、下手に倒そうとすれば、取り込まれた人の命に危険が及ぶ、厄介な相手。
そんなメギドから人々を解放するには、ユーリの光剛剣最光か、俺の火炎剣烈火で倒すしか無い。
「ふぅん、何かおかしなことになってるみたいだけど、まあ良いや」
そう言って、シャムシールは聖剣を倒れた青年へと向ける。まさか、あの人を!? そんなことはさせない!!
「止めろっ!!」
振り下ろされる一撃。それが彼に届く前に、俺は二人の間に割って入り、その一撃を受け止めた。
「あれ、今の剣士はメギドを助けるのが趣味なの?」
「この人はメギドに乗っ取られた人間だ! 助ける方法だってある! 命を奪う必要なんて無いんだ!」
「いや、そんなの私の知ったことじゃないし」
俺の言葉も意に介さず、彼女は力を込める。じりじりと刃が押し込まれ、呻き声が漏れそうになった。
「飛羽真!」
「はあっ!」
そんな俺を助けるため、ユーリと大道寺さんがそれぞれの聖剣で、シャムシールへと斬りかかる。しかし、その攻撃が届く前に、彼女は大きく後ろへと跳躍して躱した。
「その聖剣……ああ、なるほど」
メギドとなった青年を殺そうとするシャムシール。それを止めようとする俺達。緊迫した雰囲気が流れる。
「何でっ!?」
そんな空気を破ったのは、思いがけない声だった。
「何でうちを助けてくれたのに、その人を殺そうとするの!?」
【SIDE:エドナ】
「何でうちを助けてくれたのに、その人を殺そうとするの?」
炎の剣士と音の剣士……それにこんなところで会うとは思っても居なかった光の剣士と相対する私に、この間、菓子をくれた彼女が、幼い少女を抱きかかえながら、声を荒げて問い掛けてきた。
何で、か……。
「別に私はそいつの命はどうでも良いんだよ。この間、あんたから菓子を貰った借りを返すために、そいつを倒そうとしただけだよ」
「っそれなら、うちに借りがあるって言うなら、その人を傷つけるのは止めて!」
……はぁ。面倒な。全く、わざわざ助けてあげたのに、自分の命を狙って来た奴を助けようだなんて……。
「まあ、良いよ。あんたがそれを望むっていうなら、それで貸し借り無しってことで……」
まあ、別にこの男がどうなろうと、何をしようと私には関係ない。私に関わらなければ、それで充分。
「だけど……」
私は男と一瞥した後、視線を光の剣士へと向ける。遥か昔に姿を消した伝説の剣士。あのバハトと互角以上に渡り合い、封印したという彼がこの場に居るとは……。
予想外の登場人物に驚きを覚えたけど、それ以上に
「光の剣士、あんたには用が有るからさ、少しばかり付き合ってもらうよ」
「何?」
答えを聞く義理なんて無い。私は光の剣士に向かって餓欲を突き出す。だけど光の剣士の体はまるで溶けるかのようにその場から消える。
「?」
「はあっ!!」
何が起きたのか分からないでいると、残った光剛剣最光が浮遊しながら、私の許へ飛来する。それを捌くと、いつの間にか光の剣士が背後に立ち、聖剣を掴み取る。いや、さっきの声から察するに……
「ふぅん、そっちの聖剣が本体ってことなんだ」
「ああ、俺は世界を守る剣だからな」
どうやら剣士としての意識は、あの聖剣の方に宿っているらしい。光の聖剣についての情報は、600年前に読んだ文献にも多くのことは書かれていなかった。ある程度は想像していたものの、それを斜め上に超える能力だ。これは少々厄介……
「ひっ、何なんだよ……こんなの嘘だろ!? うわあああああああああっ!!」
「あっ!!」
そんなことを考えていると、あのメギドに変貌していた男が絶叫を上げながら逃げ出した。自分がメギドになっていたことへの恐怖か、はたまた目の前で繰り広げられる剣戟に対する困惑か。どちらにせよ、あの男にとっては、信じられない出来事の連続だったのだろう。
剣士達も彼の後を追いかけようとする。しかし、
「待った。私の用事は終わってないよ」
ここで逃すわけが無い。彼らの行く手に立ちふさがるように立つ。
「ちょっと、あの人を助けてくれるって」
「何言ってるの?」
非難するように後ろに居たあの女性が声を上げる。彼女には恩は有った。だけど、もう私には関係ない。
「あんたから受けた借りは返した。だから私は私のやりたいようにやるだけだよ」
「そんな……」
「じゃあ、そう言うことで……っ!!」
そして私は斬りかかる。再び光の剣士は人型を溶かして、回避しようとする。だけど、それはもう見た!
『ムゲンウロボロス!』
「何っ!?」
指先から放たれた蛇のオーラが本体である光の聖剣に向かって放たれる。光の剣士は素早い動きで躱そうとするけど、そうそう逃すわけが無い。徐々に追い詰めていく。
そして蛇の牙が光の聖剣に迫ったその時だった。
「させんっ!!」
『錫音音読撃! イェーイ!』
横から放たれた斬撃が蛇達を切り裂いた。
その発射方向に居たのは、剣を構えた音の剣士。彼は炎の剣士に背を向け、口を開いた。
「飛羽真。ここは俺達が引き受ける。お前はメギドを追え!」
「大秦寺さん……分かりました!」
「芽依。君もその子を連れて、ここから離れるんだ」
「う、うん。分かった」
『ディアゴスピーディー』
『発車爆走!』
『タイヤを開け、真紅のボディが目を覚ます! 剣がシンボル! 走る文字! 毎号特別加速! ディアゴスピーディー!』
炎の剣士はドライバーに一冊のワンダーライドブックを、聖剣によって解放する。するとそのライドブックは、一瞬のうちに一台の乗り物へと変貌した。それは復活してから見た、バイクと呼ばれる乗り物によく似ている。あんなワンダーライドブックもあるなんて……。
そのまま炎の剣士はそのバイクに跨って、メギドを追って走り出す。
幼い少女を連れたあの女性も、光の剣士の言葉に従って、退避した。
これでこの場に居るのは私達だけ。
「お前はここで倒す」
「その覇剣……封印させてもらおうか」
「へえ、出来るものならね」
そして互いに一拍置き、聖剣を構えて走り出した。
【SIDE:飛羽真】
「見つけた!」
逃げ出した青年を追って街を駆け抜けた俺が辿り着いたのは、海が一望できる公園。その中心で、彼は胸を押さえながら呻き声を上げていた。
「ううぅ……何でだよ。俺が何をしたっていうんだ。どいつもこいつも……俺はただ、認めて欲しかっただけなのに……」
明らかのその姿は、耐えがたい苦しみを抑え込もうとしているのが分かる。早く彼とメギドを分離させないと!
だけど、そこに一つの影が近づいていた。
「ふむ、あなたもこの世界に苦しみを感じているのですね」
そこに居たのは、明らかにこの場には似つかわしくない、古めかしい修道服を着た女性。彼女は慈愛に満ちた表情で近づく。
「あぁ……何だよ、お前……駄目だ、俺は……俺はああああああっ!!」
そんな彼女の前で青年はメギドへと変貌すると、暴れ出そうとする。不味い!
だけど、次の瞬間、俺は思わず動きを止めてしまった。
『覇剣ブレードライバー』
彼女が腰に装着したのは、色こそ違えど、あの強欲の剣士やバハトが使っていたものと同じドライバー。それに加え、一冊のワンダーライドブックを取り出して起動する。
『エンドレスマーメイド』
『かつて封じられし人魚の歌が今、解き放たれる……』
そして彼女はメギドの攻撃をゆったりとした動きで躱すと、ドライバーにライドブックを装填した。その瞬間に、辺りをまるで教会の鐘のような音が包み込む。
「さあ、あなたにも安らぎを与えましょう」
『抜刀!』
彼女はドライバーから抜き放った聖剣を両手で手にすると、一度メギドを斬り上げる。その衝撃でメギドが倒れ伏す中、彼女は静かに呟いた。
「変身」
『エンドレスマーメイド』
『夢幻! 魅惑の剣が揺らめく!』
ワンダーライドブックから現れた人魚。それが周囲を跳ねまわりながら、彼女と一体化すると、そこに現れたのは桃色のスーツに、灰色の装甲を纏った剣士。
彼女は静かにメギドを見つめ、その名を宣言した。
「剣士ブロード、参ります」
細かいキャラ設定等は次回に持ち越しです。