剣士列伝 仮面ライダーシャムシール   作:雪見柚餅子

16 / 23
第14章 慈悲が齎す、永久の眠り。

「ボンヌ・レクチュ~ル! 僕はタッセル。前回から物語は続いているよ」

 

「メギドに変えられた人を無視して攻撃を行うエドナ」

 

「須藤芽依の呼びかけによって何とか彼女を止めることは出来たけど、今度は代わりに剣士達に牙を剥いたんだ」

 

「さらに逃げ出したメギドを追いかける飛羽真の前にも、別の剣士が姿を現す」

 

「彼女の名はロレラ。またの名を慈悲の剣士ブロード!」

 

「彼女もまたメギドを倒そうとしているみたいだけど、あれ……ちょっと様子が?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:飛羽真】

 

幻世剣夢幻!

 

 メギドの前に現れたブロードを名乗る桃色の剣士。彼女は手にした剣を力強く振るい、メギドに攻撃を仕掛けていく。

 メギドも抗うけれども、その力の差は圧倒的でただ一方的に切り裂かれている。それはまるで、さっきの強欲の剣士との戦闘のリプレイのようにも見える。

 だけど駄目だ。彼女も取り込まれた人ごとメギドを倒そうとしてる。そんなことはさせない!

 

「待てっ!!」

 

 再び俺はメギドを庇う様に、剣士の前に立ちふさがる。

 

「あなたは……今代の炎の剣士ですか。一体何を?」

 

 首を傾げながら、装甲によって覆われた瞳で俺を見つめる。そんな彼女に、俺はシャムシールにも投げかけた言葉を口に出す。

 

「このまま倒せば、取り込まれている人まで死んでしまう!」

「ですが、そのまま放っておいても、メギドとなって苦しむだけ。それならここで安らかに終わらせてあげるべきでは?」

「っこの人を助ける方法があるんだ! だからそれまで手を出すな!」

 

 多分、俺の言葉は届かないだろう。この剣士のベルトは、バハト達と同じもの。それにさっきの台詞から、彼女は今の俺とソードオブロゴスの関係を知らない。

 この二つの点から、多分彼女もバハトやシャムシールと似たような剣士なのだろうと思う。その予想が正しければ、彼女の目的は世界を滅ぼすこと。きっと俺の言葉も意に介さず、メギドを倒そうとするだろう。

 

 この状況、一体どうすれば……そんなことを考えていたからだろう。一瞬とはいえ、俺は背後のメギドから注意を逸らしてしまった。

 

「ジャマだアアアっ!!」

「っ!!」

 

 その叫び声と共に、背後からメギドが爪を真っすぐ突き出して来る。

 すぐに振り向いたものの、それを避けるには距離が近すぎる。体勢を整える暇もなく、その爪が迫りくるのをじっと見るしかない。

 まずい、このままじゃ……!

 せめて少しでもダメージを減らそうと、体を捩じる。それでもその一撃は間違いなく、俺の胴体を捉えていた。

 痛みに備え、俺は歯を食いしばる。だけど、その前に、目を疑うような光景が流れた。

 

「ふっ!」

「ギギィっ!?」

 

 俺に迫っていた攻撃を、誰かが防いだ。

 

「それは本当でしょうか?」

 

 そう疑問を投げかけたのは、紛れもなく桃色の剣士。俺が止めようと思っていた剣士ブロードだった。

 

「あのメギドを人に戻せるというのであれば、手伝いますが、どうなんですか?」

 

 振り向いて俺をじっと見つめる剣士。そんな彼女に俺は一瞬呆気にとられながらも頷く。

 

「ああ。必ずあの人を助ける」

「分かりました。それでは……」

 

 再び桃色の剣士はメギドに向き直り、そして口を開く。

 

「私の名はロレラ。あなたの名は?」

「俺は神山飛羽真。一緒に戦ってくれ」

「ええ」

 

 互いに名乗りながら、俺は彼女―ロレラと共に、起き上がったメギドへと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:エドナ】

 

「はあっ!」

「ふんっ!」

「せやっ!」

 

 幾度となくぶつかり合う剣。その度に火花が散り、腕に衝撃が伝わる。

 私が光の剣士へと斬りかかると、その攻撃は巧みに裁かれ、その隙に音の剣士が変形した聖剣で銃撃しようとする。その動きが見えた瞬間、私は地面を強く蹴って跳び上がり、光の剣士の背後へと回ることで、ちょうど音の剣士の射線が通らないようにする。

 しかし構わずに放たれる銃弾。その瞬間、再び光の剣士の影が消え、本体である剣が目にも止まらぬ速度でその場から離脱し、私の周囲で飛び回る。

 迫る銃弾。銃弾を回避しようにも、周囲で光の剣が飛び回っているため、下手に動くことも出来ない。かといって剣で防御すれば、その隙を狙って光の剣の方から攻撃を仕掛けてくるだろう。

 だけどこの程度なら、どうとでもなる。

 

ムゲンウロボロス!

 

「何っ!?」

 

 ワンダーライドブックから解放された蛇のオーラが、私を包み込むようにとぐろを巻く。これなら全方位、全てに対応できる。

 そして全ての銃弾を防いだことを確認すると、そのまま蛇を操作し、その巨体で周囲を薙ぎ払う。

 

「ぐっ!」

「っ、やはり強力だな……」

 

 光の剣士は剣の姿という小さな体躯を活かして避けたものの、音の剣士は防ぐことも躱すことも出来ずに大きく吹き飛ばされていた。

 その大きな隙を狙って、音の剣士に向かって剣を振り下ろす。

 

「させるか!」

 

―ギィンッ!!―

 

 だがその攻撃も、カバーに回った光の剣士によって妨げられる。

 

「光あれ!」

 

最光発光!

 

 視界を覆い尽くすほどの眩い光。突然のことに思わず目を逸らすものの、構えは解かずに後退る。光の剣士も追撃は行うことなく、光が収まると音の剣士の許へと移動していた。

 

「一つ聞きたいことがある」

 

 そんな光の剣士は浮遊しながら私を見つめ、最早聞きなれた質問を投げかけてきた。

 

「お前は何故戦う? 何のためにその聖剣を振るう?」

「……またその質問?」

 

 600年前から、私と出会った剣士はどいつもこいつも似たようなことを問い掛けてくることに辟易する。

 

「聖剣は世界を守るためのもの。身勝手な理由でそれを使うことは許されない」

「世界を守る、ね……」

 

きっとこの光の剣士も、他の剣士と同様に、いやそれ以上にこの世界を守る使命を崇高なものと思っているんだろう。

 なんか、かつての自分を見ているようで心がざわつく。

 

「……あんたたちにとってこの世界がどうかは知らないけど、私にとってこの世界はつまらないんだよ」

 

 かつて父から教えられたのは、この世界に生きる遍く命に価値が有り、それを守るのが自分達の使命だということ。

 だけど、そんな綺麗事が通じる世界なんて、存在しなかった。

 

「醜い人間、意味の無い世界。そんなものを守るより、いっそのことこの世界を滅ぼしちゃった方が、面白そうでしょ?」

 

 そんな私の返答に光の剣士は小さく震える。怒りでも感じているのだろうか、なんて思っていると、彼は予想外の言葉を口に出した。

 

「それは何故だ?」

「は?」

 

 思わず首を傾げるが、光の剣士は構わずに続ける。

 

「お前はどうしてその答えに至ったんだ? お前は何を見た?」

 

 突然の言葉に私は空を仰ぐ。脳裏を走るのは、今でも忘れられないあの光景。

 燃え盛る村。人々の悲鳴や怒号。そこらかしろに倒れ伏す死体。それを踏みつける兵士。その一人の顔は……。

 

「……それをわざわざ教える必要なんてある? ただ私にとって、この世界は守る価値の無いものだってだけだよ」

 

 溜息を吐いて、私は二人に背を向ける。

 

「白けた。今度会ったときは、容赦しないから」

「っ逃がさん!」

 

 音の剣士が再び銃撃しようとする。だけどそれより、餓欲にライドブックを読み込ませる速度の方が速かった。

 

強欲な夜桜!

欲求一突!

 

 全身が桜の花びらに包まれ、その場から瞬時に退避する。

 ……折角光の剣士に出会ったのだから、その力を奪いたかったところだけど、思わず撤退してしまった。まだ心がざわつく。とりあえず、何か食べて落ち着かせよう。

 そう言えば、ロレラはどうしているんだろう?

 私はその時、彼女が炎の剣士と共に戦っていることは、知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:飛羽真】

 

ドメタリックアーマー! ドハデニックブースター! ドハクリョクライダー!

ドラゴニックナイト!

すなわちド強い!

 

 俺はドラゴニックナイトの力を使って、メギドを装甲の上から焼き切る。メギドがダメージを受ける度に、その身体が揺らぎを見せた。

 

「ジャマするナあああっ!!」

 

 だがメギドもただでやられるわけでは無い。反撃といわんばかりに、その爪から水圧の刃を放つ。

 

「させませんよ」

 

 その攻撃を防ぐのは、ロレラ。彼女は俺の動きを邪魔しないように巧みに位置取りしながら、メギドの攻撃が俺に当たらないようにサポートしてくれている。おかげで俺も攻撃に集中出来た。

 

「グガアっ!?」

 

 そしてロレラが反撃の一刀を叩きこんだ瞬間、メギドの体勢が大きく崩れる。今だ!

 

「はあっ!!」

 

 俺の意思に同調するように、火炎剣烈火が赤く光り輝いた。そして動きが一瞬止まったメギドに向かって勢いよく剣を振り下ろす。

 

「ナっ!?」

 

 先程までと異なり、火炎剣烈火は甲殻に弾かれることなる、まるで豆腐を斬るかのように、すんなりとメギドの体を真っ二つにした。それと同時に、メギドの右半身が変化し、取り込まれていた男性の姿を現す。

 

「っ!!」

 

 俺はすぐに彼の腕を掴み、メギドの体から引き剥がす。すると反発するかのようにメギドの体が弾かれ、解放された男性はその場に倒れ込んだ。

 

「大丈夫ですか?」

 

 俺が問い掛けると、男性は自分の体のあちこちに視線を巡らせ、混乱しながらも「え、あ……はい」と答える。どうやら無事に助け出すことが出来たようだ。

 ロレラもその姿を見て安心したように溜息を吐いている。

 これで後は、メギドを倒すだけだ。

 

「ググっ、マダだっ!! もっと全てヲ壊すんダっ!!」

 

 メギドは怒りのままに水圧の斬撃を放つが、その全てを俺とロレラは防いでいく。こんな奴らに、この世界の……人々の結末を決めさせはしない!

 

「物語の結末は俺達が決める!!」

 

ドラゴニック必殺読破!

必殺黙読!

 

 俺に合わせ、ロレラもドライバーに聖剣を収める。そして同時に聖剣を抜刀し、暴れるメギドに向かって走り出した。

 

烈火抜刀! ドラゴニック必殺斬り!

抜刀! 人魚幻影斬り!

 

「神火龍破斬!」

 

 灼熱の炎を纏った斬撃と、妖しい泡沫を纏った斬撃、その二つがメギドの体を甲殻を打ち破り、十字に分断する。

 

「ギギっ、俺ハまだ……グアぁ~っ!?」

 

 断末魔の叫びと共に、メギドはその全身をひび割れさせながら、内部から弾け飛び、爆散した。その姿を見届け、俺は一息吐く。

 人間を取り込んだメギド……きっとまだ多く居るはずだ。ただでさえ、今の俺の状況は苦しい。ユーリと大秦寺さんは協力してくれているけれど、それでも手が足らない。

 だからこそ、俺は共に戦ってくれたロレラの存在を嬉しく感じた。もし彼女が俺達と一緒に戦ってくれるのなら、その分多くのことが出来るようになるはずだ。

 俺は彼女に「ありがとう」と「一緒に戦って欲しい」と声を掛けようとした。

 

「……」

 

 しかし彼女は俺に一瞥することなく、メギドに取り込まれていた男性の許へと歩き出す。

 まだ状況を飲み込めていなかったのか、男性は腰を抜かしたまま、ロレラのことを見上げていた。

 

「ご無事でしょうか?」

 

 安否を確かめる言葉。それに男性は緊張した面持ちで頷く。どうやら特に怪我は無いようで、動けないのもまだ心が落ち着いていないからだろう。

 そんな彼女の行動は、普通なら事件に巻き込まれた人を労わる姿に見える。だけど何故か俺は、どこか不穏な雰囲気を感じていた。

 

「良かった。それなら……」

 

 そう言うと、ロレラは一冊のワンダーライドブックを取り出して、聖剣に翳す。

 

スリーピングプリンセス

 

「なっ!?」

 

 何をしてる。そう言う前に、彼女は剣を男性に向かって突きだしていた。

 

慈悲深き眠り姫!

幻惑一突!

 

 剣先から伸びた茨。それが体に絡みつくと同時に、男性の瞼が落ち、まるで眠るかのようにその場に倒れ伏す。

 

「あなたに永久の安らぎがあらんことを……」

「何をしたんだ!?」

 

 思わず声を荒げる俺とは対照的に、ロレラの声色は全く変わらない。どこまでも優し気な雰囲気のまま、彼女は答える。

 

「眠らせただけですよ。二度と苦しみを味わうことのないように、彼は永久(とわ)に幸福な夢を見続けます」

「っ、どうしてそんなことを!?」

「人々を救うためですよ」

 

 その彼女の言葉は、どこか強い悲しみを感じさせる。

 

「例え今、幸福であったとしても、それは永遠には続きません。必ずその幸福が奪われ、悲しみと苦しみに心が埋まる時が来ます。であるならば、永遠に続く幸せな夢に浸らせ、苦痛なく終わらせてあげた方が、人々にとって幸せでしょう」

 

 そう言ってこちらを見つめ返す。

 

「だから私は、人々を救うためにこの世界を滅ぼします」

 

 それは強い決意の言葉。彼女は他の破滅の剣士と違って、人々のために剣を振るう。だけど求めるものは彼らと同じ世界の破滅。そのアンバランスな姿に、言葉が続かずたじろいでしまう。

 そう言えば、朝やっていたニュース……その音声が唐突に頭に過る。

 

『今日の深夜1時半ごろ、市内の公園にて26名の民間人が昏睡状態となっているのが発見されました』

 

 突然、人々が昏睡状態となって発見されるという事件…眠っているかのような状態の被害者。その姿が目の前で倒れ伏した男性と重なる。

 まさかその事件も彼女が!?

 

「どうやら分かってはもらえないようですね。私もあなたと同じ、ただ人々を守りたい一心だというのに……」

 

 絶句する俺に、彼女は残念そうに溜息を吐く。

 だけどすぐに気を持ち直して、俺は彼女を睨んだ。

 

「その人を元に戻せ!」

「それは出来ません。これは救いなので」

 

 語気を荒げる俺に相反し、彼女は剣を下す。

 

「申し訳ありませんが、今はあなたと戦う気はありません。まだこの体も万全とは言い難いので」

 

エンドレスマーメイド!

 

 そう言ってロレラは俺に背を向ける。それがここから退こうとしているのだと察知し、すぐに俺は走り出す。ここで逃がすわけにはいかない!

 

「それではまたいずれ……あなたにも永久の安息があらんことを」

 

 しかし烈火の剣先が彼女に到達するよりも早く、彼女の全身は桃色の泡となって溶けていく。そして吹き抜ける風と共に、泡は揺らめきながら飛ばされていった。

 

「っ!」

 

 残されたのは俺と、彼女によって眠らされた男性だけ。

 また助けられなかった。自分の不甲斐なさに歯噛みすると同時に、また新しい脅威が現れたことに、冷や汗が流れたのを感じたのだった。




【キャラ設定】
ロレラ/仮面ライダーブロード
●バハト同様に封印されていた、不死身の剣士の一人である女性。長い黒髪と修道服が特徴。封印された時期はエドナと同時期。
●慈悲の剣士の異名通り、全ての人間に対し、強い慈しみの感情を抱いている。これが他の破滅の剣士とは異なる部分ではあるが、同時に今の世界では全ての人類が救われることはないと考えており、それならば世界を滅ぼすことでこれ以上人々が苦しまないようにするという思考を持っている。
●名前はギリシャ神話に登場するセイレーンの一種である「ローレライ」から。
●「Åkir∀/裏想郷を掲げる者」様から頂いたアイデアを参考にしました。ありがとうございます。

仮面ライダーブロード
●「夢幻! 魅惑の剣が揺らめく!」
●ロレラが覇剣ブレードライバーとエンドレスマーメイドワンダーライドブックを使って変身した姿。灰色のボディスーツに桃色の装甲を身に纏っている。覇剣ブレードライバーの色は桃色。
●用いる聖剣の名は『幻世剣夢幻』。『幻』の属性を宿しており、敵を惑わす戦いを得意とするが、その本質はあらゆる幻想を司ること。つまり全てのワンダーライドブックの力を完全に引き出すという性質を持つ。

エンドレスマーメイド
●「かつて封じられし人魚の歌が今、解き放たれる……」
●ブロードへの変身に用いられるワンダーライドブック。ジャンルは神獣。音と水を操る力を有している。カラーはピンク。1ページ目には海で歌う人魚のシルエットが描かれており、2ページ目には「無垢なる愛を持つ人魚が聖剣と交わり身に宿る」と記載されている。

スリーピングプリンセス

●「とある茨に覆われた国に、眠れる一人の姫が居た……」
●ロレラが所持するワンダーライドブックの一つ。ジャンルは物語。
●幻世剣夢幻にリードすることで、茨を生み出して相手を拘束する。また人間を永遠の眠りに就かせることも可能。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。