剣士列伝 仮面ライダーシャムシール   作:雪見柚餅子

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明けましておめでとうございます。

何故か筆が進み、書いてしまいました。
しかし、戦闘シーンを書くのはやはり苦手です……。


第1章 剣士は、強欲と邂逅する。

「皆さん、ボンヌ・レクチュ~ル! 僕はタッセル」

 

「この間、封印された剣士について話したのは覚えているかな?」

 

「強欲の剣士シャムシール。彼女は今日も自由気ままに動いているみたいだけど、どうやら彼女の許に一人の剣士が近づいているようなんだ」

 

「彼もまた素晴らしい剣士だけど、彼女と出会って無事で済むのか……」

 

「心配だから、少し彼の様子を見てみようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:尾上亮】

 

 尾上亮。それがオレの名だ。

 世界を陰から守る組織ソードオブロゴスの剣士の一人であり、今は一児の父でもあるオレは、聖剣を肩に担ぎながらワンダーワールドの中を走っていた。

 ここ最近、メギド達の行動が活発化している。出現頻度に現れる魔神の力。どれも少し前とは比べ物にならない。

 また15年前のような出来事が起きるのかもしれない。そう考えると、オレは居ても立っても居られなかった。

 オレは「最強の子育て王」だ。そらが生きる未来を守るために、必ず奴らを滅ぼす。そう決意して、聖剣の柄を握る力を強めた。

 

「待て、待ってくれ!!」

 

 だがワンダーワールドの奥へと踏み込んだオレが見たのは、予想外の光景だった。

 そこに居たのは、地を這いつくばりながら怯えた様子を見せるメギド。

 

「何言ってるの? あんたが先に手を出してきたんでしょ」

 

 そしてそいつに剣の切っ先を向けた見知らぬ紫色の剣士の姿だった。声色や体型から女であることが分かる。

 

「私の邪魔をしたんだから、少しは楽しませてほしかったけど、つまらなかったや。それじゃ、さっさと消えてね」

「待っ!?」

 

強欲な大蛇! 欲求一突!

 

 メギドが何かを言う前にその剣士は、ワンダーライドブックを読み込んだ聖剣でメギドの胸を一突きする。刀身に込められた膨大なエネルギーは、メギドを体内から荒らし、内側からその体を破裂させた。

 

「ふぅ……」

 

 溜息を吐く剣士は、手にした聖剣を軽く振るう。その鍔であるエンブレムを見たとき、オレはあることを思い出した。

 紫色のエンブレムを持つ聖剣。それはかつて世界を滅ぼそうとし、封印された三人の剣士。その一人が所持していたとされる剣だ。

 

「あれ、その剣は……」

 

 剣士はこちらの存在に気付いたようで、オレが持つ聖剣に指を差す。

 

「あー、まさかこんなところで会うなんて……」

 

 どこか面倒くさそうに呟く。もしこいつがあの剣士と同一人物なら……。

 そんな不安を感じていると、そいつは頭を掻きながらこちらに視線を向けて口を開いた。

 

「ねえ、悪いけど私のことは黙っててくれる? 今はまだ、そっちとは関わる気は無いんだよね」

 

 そう言って奴はオレに背後を向けて、歩き去ろうとする。

 だがあの聖剣を持っている奴を黙って見逃すわけにはいかない。

 

「待ちな!」

「……何?」

 

 オレの言葉に不機嫌な様子で振り向く。そんな奴に向け、オレは「土豪剣激土」を下ろして睨む。

 

「お前のその剣。それはどこで手に入れた」

「……これは最初から私のものだよ」

「そうか……やっぱりな」

 

 言葉通りに受け取るなら、こいつは若い頃に先生から聞いた伝承に出てくる、「強欲の剣士」本人だ。

 何故、封印されているはずのこいつがこんなところに居るのか、何をしようとしているのか。分からないことは多いが、やるべきことはただ一つ。

 

「お前はここでオレが倒してやるよ!」

 

 こいつを野放しにするわけにはいかない。オレはワンダーライドブックを取り出し、表紙を開いた。

 

玄武神話

かつて、四聖獣の一角を担う強靭な鎧の神獣が居た

 

 起動したブックを土豪剣激土へと装填しトリガーを引く。

 

玄武神話

 

 それと同時にオレの前に現れた岩塊。俺はそれを振り上げた激土で叩き斬った。

 

「変身!」

 

一刀両断! ブッた斬れ!ドゴ・ドゴ・土豪剣激土!!

激土重版! 絶対装甲の大剣が、北方より大いなる一撃を叩きこむ!

 

 砕かれた岩塊はオレの体に纏わりつき、灰色の鎧を形成する。これによりオレは剣士「バスター」へと変身を遂げた。

 

「……全く、こっちは戦いたくないっていうのに」

 

 溜息を吐きながら、奴は剣を下段に構える。

 先手必勝。オレは激土を持ち上げ、上段から振り下ろす。数ある聖剣の中でも、激土は最も重量がある。それを最大限利用した振り下ろしは、オレが最も得意とする戦術の一つだ。

 奴は背後へと跳躍しその攻撃を躱すが、オレはさらに刀身を左手で掴み、突進する。さすがにこれは避け切れず、奴は自身の聖剣を真一文字に構え対抗する。

 

「甘いんだよっ!!」

 

 だがブックと聖剣によって強化されたオレの力は、他の剣士を遥かに上回る。剣同士がぶつかり合う衝撃で奴は大きく跳ね飛ばされ、壁際まで後退した。その反動で体勢を崩した奴に向かって、オレは再び激土を振り下ろす。

 

「くっ!」

 

 さすがに不安定な体勢では避け切ることは出来ず、奴は聖剣で受ける。だが腰が付いている状態なら十分な力は入れられない。

 このままこいつの体を……そう考えていると、不意に奴が口を開いた。

 

「ふぅん。少しは面白くなりそう」

 

 嫌な気配を感じた次の瞬間には、胴に蹴りを受け思わず後ろへ下がる。その隙に奴はゆっくりと立ち上がると、自らの聖剣の刀身を撫でた。

 

「ちょっとだけ本気を出してあげるよ」

「何だと?」

 

 今まで手を抜いていたとでも言いたげな言葉に怒りを感じるが、頭は冷静にするように努めていた。

 まだ若かったころ、師匠から聞いた話では、こいつを含めた三人の剣士を封印するために、ソードオブロゴスのほぼ全ての剣士が協力して立ち向かったらしい。時代が変わったとはいえ、油断できる相手ではない。

 じっとりと汗が出るのを感じながら、いつ仕掛けられても良いように激土を構え直す。

 

「それじゃ、行くね」

 

 だが奴のスピードはオレの予想を遥かに超えていた。

 

「なっ!?」

 

 まるで瞬間移動したかのように、奴はオレの目の前へと近づくと、左に構えた剣を振るう。それを瞬時に激土で防ぐが、不完全な防御では防ぎきることは出来ず、僅かに鎧に傷を付けられた。

 さらに奴は、まるで蛇のように緩急を付けながら剣を振るう。それを何とか防御するが、素早い連撃を完全に防御することは出来ない。恐らく「風双剣翠風」の速度とほぼ同等かもしれない。

 だがその分、威力はそこまで高くはない。小さなダメージは無視し、奴の動きが止まる一瞬を狙う。

 

「……ふっ」

 

 そしてその時は訪れた。奴が息を吐く、一秒にも満たない時間。だが確かに奴の攻撃が緩んだその瞬間に、オレは激土を力強く振るう。

 

―バキィンッ―

 

 刀身と鎧がぶつかり合い、弾けるような音が発せられる。オレが放った一撃は見事に奴の胴を薙ぎ、その体を10メートル以上吹き飛ばした。

 そして距離が開いたこの間に、玄武神話を取り出して激土に読み込ませる。

 

玄武神話!

激土乱読撃!

 

 周囲の石が激土に集まり、巨大な刀身へと変化する。それによって構成された大剣を、オレは勢いよく振り回した。

 

「大断断っ!!」

 

 数多くのメギドを葬ってきた一撃が放たれる。いくら奴が強くても、これを受けてただで済むわけが無い。そう考えていた。

 

必殺黙読!

抜刀! 大蛇欲心斬り!

 

 だが奴も必殺の一撃の準備をしていたようで、ベルトから抜き放たれた剣から巨大な蛇のオーラが現れる。

 そしてそれはオレの大剣に噛みつき、押し返そうとする。

 文字通り、真っ向からの勝負。上等だ。それでオレが負けるわけにはいかない。力をより一層込め、大蛇を真っ二つにしようとする。

 

「おおおおおっ!!」

 

 だがいくら力を込めようと蛇を押し込むことは出来ず、拮抗し合い中々勝負に決着がつかない。

 だがその中で違和感を感じる。今もオレは全力を込めているが、その力が徐々に抜けていくような感覚……。

 

―バリッ―

 

 嫌な音がして、視線を上げる。そこには頑強な石で構築されたはずの刀身が、蛇の牙によって砕かれていたのだ。

 

「なっ!?」

 

 今までこの技で多くの敵を倒してきた。それだけに、一撃必殺の自負がある。だからこそ、この光景を前に、自分の目を疑う。

 

「アッハハハっ!!」

 

 思わず呆然とするオレの前で、奴は愉快そうな笑い声を上げた。

 

「良いよ! あなたの力、とても良い! だからそれ、全部貰うね?」

 

 そう言い放つと、蛇はその口を大きく開き、膨大なエネルギーが込められているオレの大剣を噛み砕いた。

 

「ぐああああっ!!」

 

 その余波でオレは大きく後ろに吹き飛ばされる。そして手元には玄武神話と元の大きさへと戻った激土が落ち、オレの変身が解ける。

 

「ふふっ、少しは満足出来たよ」

 

 立ち上がることにすら痛みを感じるほどのダメージを受けたオレを前に、奴はケラケラと笑いながら近づく。

 そして奴は玄武神話へと手を伸ばす。

 

「待て! 何をするつもりだ!」

「何って……貰うんだけど?」

 

 当たり前のようにそう返答する奴の顔は、仮面に隠れてはいたが歪んだ笑みを浮かべていると分かる。

 

「もう見つかっちゃったんだし、それなら我慢する必要が無いかなって。私は私のやりたいようにやるだけだよ」

 

 そう言って奴はブックを拾おうとする。

 こんな奴にブックを渡してはならない。だが動こうにも、ダメージが大きく、満足に立ち上がることすら出来ない。

 こんな時に何も出来ない自分自身に腹が立つ。一体どうすれば……。

 

雷鳴剣黄雷!(いかずち)

 

 だがそこへ、黄色の閃光が駆け抜け、奴に一撃を放つ。しかし奴も寸前で気配を感じ取ったようで、手にした剣で防御していた。

 

「尾上さん、大丈夫ですか?」

 

 現れたのは、黄色の装甲を纏った雷の剣士「エスパーダ」。まだ若いながらも、卓越した実力を持った剣士であり、オレも信用している大事な仲間だった。

 

「はあっ!」

「ふふっ」

 

 エスパーダは持ち前のスピードで連撃を放つが、奴はそれすらも余裕で対処していく。やはり、奴の実力はこちらの予想以上。このままではまずい……。

 

「おい、ここは一旦退くんだ!」

 

 オレは苦渋の決断をし、エスパーダ―富加宮賢人に声を掛けた。

 

「今のオレ達じゃあ、奴には勝てない! 今はノーザンベースに奴の情報を持ち帰るんだ!」

「くっ、分かりました!」

 

 勝てないという言葉に悔しさを滲ませながらも、賢人はオレの言葉に頷くと、腰から一冊のブックを取り出して、自らの剣に翳す。

 

ニードルヘッジホッグ! ふむふむ!

習得一閃!

 

 雷鳴剣黄雷から無数の針が発射される。強欲の剣士は防御するが、少しでも時間を稼げればそれでいい。

 オレは何とか激土を拾い、賢人は落ちていた玄武神話を回収する。そして聖剣を力を利用し、ワンダーワールドから脱出した。

 

「……こんな所、そらには見せらんねえな」

 

 冗談を溢すが、内心では焦っていた。奴はかなり強力だ。もし他の封印された剣士達も復活したらどうなるか分からない。

 この危機的状況をいち早く知らせるべく、オレは賢人に肩を貸してもらいながら足を進めた。




【必殺技設定】
「欲求一突」
●欲望剣餓欲にワンダーライドブックをリードさせて放つ技。
●各種ワンダーライドブックをリードした際の性能は以下の通り。
・ムゲンウロボロス:剣で相手を貫いた後、内部から相手のエネルギーをを喰らい尽くす。
・銀河エクスプレス:剣先から放たれる光の線路で相手を拘束する。

「大蛇欲心斬り」
●欲望剣餓欲を覇剣ブレードライバーに収めた後、トリガーを一回押して抜刀することで放つ技。ウロボロス状のエネルギー体を生み出し、対象を捕食する。
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