【SIDE:怜花】
「……お前達は、俺が狩る!」
そう言って真っ先に駆け出す白黒の剣士「仮面ライダータルワール」。
マスターから与えられた毒牙剣弧毒を闇の剣士カリバーへと振りかぶる。
「っ邪魔をするな!」
その一撃は闇黒剣月闇で受け止められ、ギリギリと互いの剣が軋む音が響く。
あちらは奴に任せていいでしょう。私の相手は……
「ふっ!」
慈愛の剣士があちらに気を取られている間に、私は手にした「煙叡剣狼煙」で鋭い突きを放つ。ですがその攻撃が当たる寸前で気付かれ、バックステップで回避される。
そして今度は慈愛の剣士のカウンターの斬撃が、私の胴目掛けて放たれる。だけど、それは無意味。
「ふっ!」
煙叡剣狼煙の力を解放する。それにより私の体は煙へと変化し、幻の剣士が放った攻撃はすり抜ける
「何をしようと無駄なこと。私にあなたの攻撃は通じません」
これが私が持つ煙叡剣狼煙の力。ありとあらゆる物理的な攻撃を無効化し、自由自在な動きを可能とする。まさに剣士にとっては天敵とも言える能力。この力がある限り、私は誰にも負けはしない!
そんな自負と共に、私は体を流体化させたまま、慈愛の剣士の周囲を素早く飛び回る。狙うは急所。私は再び慈愛の剣士の首を狙って、今度は背後から斬りかかる。
『エンドレスマーメイド』
今度は逃げられない。確実に命中する。その確信と共に放たれた斬撃。しかしその一撃が届いた瞬間、慈愛の剣士の体が泡となって掻き消える。
「っ!」
すぐに私は攻撃の為に実体化していた体を再び煙へと変化させる。その僅か数瞬後、私の体目掛けて幾重もの斬撃が放たれていた。
「「「ふむ、当たりませんか」」」
その声は私の周囲を囲むように聞こえていた。確かに先程まで、私が奴を包囲していたはずなのに……。
声の主である慈愛の剣士。その姿はすぐに見えた。いや、見えすぎた。
「「「ですが、やはりエドナの言っていた弱点は確かなようですね。ならば十分戦えます」」」
そう言って
いや、あれはただの幻。本物は一つだけだ。しかし、それを確かめるには実体化して直接触れる必要がある。
「厄介な……」
ですが、向こうの策略に乗ってわざわざ一つづつ確かめる気はありません。私は数多の慈愛の剣士の前に姿を現すと、煙叡剣狼煙のトリガーを引く。
『超狼煙霧中!』
『昆虫煙舞一閃!』
聖剣に装填されたワンダーライドブックの力により、私の背から鋭い節足が展開される。そして突き出されたそれは槍の如く、周囲に立ち並ぶ慈愛の剣士の姿を次々と貫いていく。
「くっ……」
一つ、また一つとその身体は泡となって掻き消えていく。しかし、私の思惑に反して、いつまで経っても、本物に命中する気配が無い。いや、それどころか分身が消える度に、新たな分身が現れる始末だ。
思わず焦りの声が出る。それ故に、僅かに反応が遅れた。
『月闇居合! 読後一閃!』
「っ!!」
幻影の背後から飛んできたのは、漆黒の斬撃。予想外のことにガードも間に合わず、その一撃をまともに受けてしまう。
「ぐうっ!?」
重い一撃により壁に叩きつけられ、思わず呼吸が止まる。しかしここで止まるわけにはいかない。
追撃と言わんばかりに、幻の剣士が頭上から私に向かって剣を突き立ててきた。
「く……」
寸前に煙叡剣狼煙の力で煙に変化させ、攻撃を躱す。もし1秒でも遅れていたら、まともにその一撃を受けていたことだろう。
まさかこんな不覚を取るとは……。慈愛の剣士に集中しすぎて、闇の剣士達の姿まで幻によって隠されていたことに気付けなかった。失態に思わず歯噛みする。
さらに間の悪いことに、こちらに向かってくる一つの足音が聞こえてきた。
「……これは予想外だな。出来れば
そう溢しながら姿を見せたのは、私のターゲットの一人である光の剣士。彼は困ったような表情を浮かべ、こちらを見つめる。
その出現によって、戦闘が一時止まる。そんな中、一番最初に口を開いたのは、富加宮賢人だった。
「やはり来たか」
「ふむ、どうやら俺がこの場に来る未来も見ていたようだな」
……マスターから話は聞いていた。闇の聖剣には、持ち主に起こり得る未来を見せる力が有ると。この状況も闇の剣士の予想の範囲内ということだろう。つまり、闇の剣士はこの状況を潜り抜ける算段が付いているということでもあります。
「その聖剣もここで封印させてもらう」
「それはさせない。俺は剣士としてこの世界を在るべき姿へ導く使命があるからな。それに……」
光の剣士は言葉を少し溜め、再び富加宮賢人へ語り掛ける。
「俺は飛羽真を信じている。あいつは最高の結末を目指していると。お前も分かっているんだろう?」
「……たとえそうであっても、俺の心は変わらない」
その言葉に富加宮賢人は僅かに俯くものの、すぐに振り払って光の剣士を睨むと、剣を構える。
光の剣士も諦めたようにワンダーライドブックを取り出し、そのページを開いた。
『エピソード1 全ての色で戦え』
「変身」
そしてバックルにワンダーライドブックへ装填し、その身を変身させる。
『最光発光!』
『Get all colors! エックスソードマン!!』
変身を見届けると、まず動いたのは富加宮賢人だった。勢いよく駆け出し、闇黒剣月闇を光の剣士へ振るう。
しかしその一撃を最小限を動きで躱すと、光の剣士は反撃に刺突を放つ。だがそれも闇黒剣月闇によって逸らされた。
ここであの二人が戦うのは構わない。むしろ消耗し合えば、聖剣の回収も円滑に進む。しかし、だからといって油断するわけにはいかない。闇の剣士の狙いが聖剣の封印である以上、私の煙叡剣狼煙も狙われる。光の剣士も私達と敵対関係にあるから、隙を見せるわけにはいかない。
そして……
「……言葉を交わせど争い合う。やはり悲しいものですね。ですが、私のやるべきことは変わりません」
そう言っていつの間にか、光の剣士の背後に立っていた慈愛の剣士が剣を振り下ろす。
「くっ!」
僅かに反応が遅れ、光の剣士はダメージを負うが、その衝撃を利用して、その場から距離を取る。そして光の剣士と言う壁が無くなったことにより、今度はカリバーが攻撃の勢いで動きが止まった慈愛の剣士へと斬りかかるが、命中すると思った瞬間、幻の剣士の姿が掻き消える。
だがカリバーは慌てることなく、闇黒剣月闇をしっかりと構えると、不意に誰も居ない空間へと剣を振るった。
―ガキィン!―
それと同時に響き渡る甲高い音。それは聖剣同士がぶつかる音だった。
「っ!」
姿を消していた慈愛の剣士が姿を現す。軋む音を立てながら鍔迫り合いを繰り広げる二人。
これは好機!
「はあっ!」
「ふんっ!」
私がカリバーへ仕掛けると同時に、意図を察したタルワールも、幻の剣士へ攻撃を放つ。
だが寸前に気付かれ、二人は互いに剣を押す力を強め、その反動によって跳躍し、私達の攻撃を躱す。
さらに攻撃が避けられたことで体勢が崩れたタルワールへ最光が剣を振るう。
「ぐっ!」
斬撃を受け止めはしたものの、追撃で放たれた蹴りをまともに受け、タルワールは転がる。私はその姿を視界に捉えつつも、目の前に居る剣士達から視線を外すことはしない。
厄介ですね。誰かに攻撃を仕掛ければ、別の者から攻められる。完全な乱戦。この状況で聖剣を回収するのは難しい。
『Open Gate』
そう考えていると、突然ブックゲートが開いた。
「ユーリ! 賢人!」
そこから姿を現したのは、あの煩わしい炎の剣士、神山飛羽真と組織を裏切った二人の剣士、尾上亮、大秦寺哲雄。
光の剣士の支援に来たのだろうか。しかしこれで、私達が持つ数の有利も消えたことになる。その事実に苛立ちと共に歯噛みする。
「あいつは……」
「行くぞ、尾上!」
私の姿を見て、戦意を露にする二人の剣士は、ワンダーライドブックを取り出すと、それぞれの聖剣に装填する。
「「変身!」」
『一刀両断! ブッた斬れ!ドゴ・ドゴ・土豪剣激土!!』
『銃剣撃弾! 銃でGO GO! 否、剣でいくぞ! 音銃剣錫音!!』
変身した二人の剣士が狙うのは、私。
「おらあっ!」
「はっ!」
土豪剣激土の力強い振り下ろし。音銃剣錫音の素早い斬撃。その二つが私を仕留めるべく放たれます。
「無駄です」
ですが、その攻撃は通用しません。私は体を煙に変えバスターの攻撃を躱すと、スラッシュの背後に周り刺突を放つ。
「ぐあっ!」
ダメージをまともに受け、膝を付くスラッシュ。この男は聖剣の鍛冶師という厄介な存在だ。今のうちに力を削いだ方が良い。
「させるかっ!」
しかし、いつの間にか接近していた光の剣士によって受け止められる。さらに光の剣士は反撃と言わんばかりに、バックルを操作する。
『移動最光! 腕最高! Full color goes to arm!』
「はあっ!」
強化された腕による斬撃。煙に変化する暇もなく、その一撃をまともに受けてしまう。
「くうっ!!」
衝撃で意識が若干揺さぶられるものの、ここで朦朧としている暇はない。
追撃を放つため、こちらに向かってくる光の剣士。その攻撃に対抗するため、私は急いで剣を構えようとした、その時、
「ふっ!」
突如として横から何者かが光の剣士に襲い掛かる。その攻撃をガードするため、光の剣士の動きが止まりました。
その攻撃を仕掛けたのは……
「あなたもまた、使命に囚われし人。故に私が救いましょう」
そう言って幻の剣士は光の剣士と相対する。
別の方向へ視線を向ければ、そちらではタルワールと富加宮賢人が激しく争っているのが分かる。神山飛羽真はどこか複雑そうな表情でそちらへ視線を向けるだけ。
これなら私は、土豪剣激土と音銃剣鈴音に集中できます。
「今のうちにさっさと決めましょう」
こちらを睨む二人の剣士に煙叡剣狼煙の切っ先を向けながら、スイッチを2度押す。
『狼煙霧中!』
「行くぞ大秦寺!」
「ああ」
『玄武神話! ドゴーン!』
『ヘンゼルナッツとグレーテル! イェーイ!』
この一撃で倒す。必殺の構えを取る私に対抗するように、バスターとスラッシュもそれぞれの聖剣にワンダーライドブックを読み込ませる。
そして互いに技を放つのは同時でした。
『煙幕幻想撃!』
『激土乱読撃! ドゴーン!』
『錫音音読激! イェーイ!』
私の放った真紅の斬撃と、二人の剣士が放った一撃。渾身の力が込められた必殺の大技がぶつかり合う。まさにその時でした。
―ドガアァンッ!!―
「なっ!?」
突如として何かが空中から飛来したかと思うと、私と二人の剣士の間に落下し、放たれた斬撃を飲み込みました。
その衝撃音に思わずその場に居た誰もが注意を奪われます。ですが私にははっきり見えました。落下したそれが、紫色の閃光を身に纏っていたことに……。
「ははっ、何か面白そうなことになってるね」
この目で見るのは初めての姿。しかしその話はよく知っていました。
世界を滅ぼそうとした破滅の剣士の一人。組織の大敵である邪悪な存在。
「折角だから、私も混ぜて貰おうかな」
乱戦、滅茶苦茶書きづらいです……。
そしてやっと主人公の出番。