エタったわけじゃありませんよ?
今回は若干短めです。
【SIDE:エドナ】
剣士達が争い合う戦場の真っただ中へと飛び降りる。
ロレラの行動を観察していれば、それを止めようと剣士達が集まってくるという予想は当たっていた。おかげで、目当ての剣士3人を見つけることが出来たのだから。
しかし、それにしてもまさかの剣士同士が争い合うという状況。結局、幾らお題目を掲げようとも、所詮は人間ってことなのだろう。
まあ、そんなことはどうでも良い。
「強欲の剣士ですか……」
「っ!!」
私の姿を視界に入れた煙の剣士が、忌々しそうに呟く。その隣にいる懐かしい剣を携えた剣士も、敵意を隠すことなく、私を睨んでいた。他の剣士も、私の出現に警戒を露にする。
ただ一人、炎の剣士だけは変身もせず私の姿を呆然と見ているだけなのが、少し気になるけど。
「さてと……」
まあ、それは別にどうでも良い。今の私の狙いはそこじゃない。
「ねえ、そこの光の剣士」
剣先で指すと、光の剣士は敢えて構えを取らず、返答する。
「何だ?」
「私は別に戦いに来たわけじゃ無いんだよね。ただ、その力を私にくれない?」
私が欲しいのは、光の聖剣の力。それだけ手に入れられれば、ここにいる意味は無い。
しかし予想通り、その問いかけに光の剣士が応じることは無かった。
「無理だな。お前がこの力を手に入れて何をしようとしているのかは分からないが、少なくとも世界を守るためというわけじゃ無いんだろう?」
「そうだけど?」
「なら、渡すわけにはいかない。この力は世界を守るためのものだからな」
相変わらず、決まり切った答えに呆れながら、私は改めて剣を構える。
「なら、あまり好みじゃないけど、力づくでも貰っていくよ」
振り下ろした餓欲。それは光の聖剣によって防がれる。だけどそれで止まらない。さっきまでの戦闘を見て、私の方がスピードが上なのは分かった。だから連続攻撃で体勢を崩す!
「くっ!」
「……」
私と光の剣士の戦闘を見て、いち早く駆け付けようとした音の剣士。しかしその前にロレラが立ちはだかる。
「目を覚ませ、賢人!」
「……これは世界を守るためなんです」
そして土の剣士も闇の剣士と相対しているのが見える。
残された炎の剣士は未だに動かず。そして煙の剣士と毒の剣士は……
「ここは一度引きますよ」
「ちっ!」
『狼煙霧中!』
放出した煙の中へと姿を消していく煙の剣士。
「何だ、逃げるんだ」
舌打ちをしながらも、彼女に付き従う毒の剣士の背に向け、私はポツリと呟く。
「っ!」
その言葉に怒りを態度で表しながらも、言葉を返すことなくそのまま毒の剣士もまた煙の向こう側へと消えていった。
まあ、これで戦況は変わらない。邪魔な他の剣士達は、それぞれ戦っている。私は光の剣士に集中できる。
「その聖剣の力、中々使ってくれないんだね」
「ああ、お前の聖剣の能力は聞いたからな」
欲望剣餓欲の力、ありとあらゆる聖剣の力を吸収し、己のものとする能力。それを警戒して、思ったように光の聖剣の力を発揮してくれない。
だけど……
「これならどうかな?」
『餓欲居合……』
『黙読一閃!』
「くっ!」
横一閃に放つ斬撃。しかしそれを光の剣士は跳躍して回避する。だけどそれは予測していた。
『ムゲンウロボロス!』
ワンダーライドブックの力によって生まれる蛇状のエネルギー。それが不規則な軌道を描きながら、空中の光の剣士へと向かう。
空中なら上手く動くことは出来ない。さあ、光の聖剣の力を!
光の剣士はじっと自らに向かってくる蛇を見つめると……
「はっ!」
光の剣士は体を捻りながら、右手の聖剣と左腕の顔のようなものであらゆる方向から迫る蛇を斬り伏せた。
一分の無駄も無いその動きはまるで蝶の様。かつて剣士として鍛えていた身として、思わず惚れ惚れとしてしまいそうな動きだった。
『移動最光! 脚最高! Full color goes to leg!』
しかしそれに見惚れている暇は無い。
光の剣士がワンダーライドブックを操作すると同時に、左腕の装甲が右足へと移動したかと思うと、着地と同時に、こちらへと飛び掛かる。
「はあっ!」
「んっ!」
強化されたであろう脚力による突進の勢いを止めきれず、押し込まれるが、壁にぶつかる直前に耐えきる。しかし互いの動きが止まった瞬間に、今度は腹部に衝撃を受け、私の体が浮かび上がる。
「ぐっ!?」
突き刺さったのは右足の蹴り。思わずたじろぎ、防御が解けた隙を狙って、光の剣士は私に向かって幾度と剣を振るう。
一撃、二撃、三撃と、重ねるたびに身に纏った鎧から火花が散り、私の体が切り裂かれていく。
ああ、痛い。だけど……
「その程度?」
「っ!」
私の体に光の聖剣の刀身が食い込むのを感じながら、私は前に出て餓欲を振るう。その一撃は僅かに光の剣士に掠るに留まったが、距離を取ることには成功した。
何度も切り裂かれた私の体。しかしすぐにワンダーライドブックと聖剣の力で修復されていく。
「その程度のダメージじゃ、私は止められないよ」
痛みは癒えずとも、体は万全だ。すぐに剣を構え、光の剣士を睨む。
「何故だ?」
そんな私に、光の剣士は口を開いた。
「お前の目的がただ自分が楽しむためだけなら、何故そこまでして戦おうとする?」
……何かめんどくさいこと言って来た。
「前にも言ったけど、答える気なんて無い!」
面倒な問答は無駄だ。早々に切り上げ、私は再び光の剣士へと斬りかかろうとした、その時、
『必殺リード! ジャオウドラゴン!』
『月闇必殺撃! 習得一閃!』
「「「「!!」」」」
闇の剣士が放った一撃。四体の金色の竜を刃に纏い放たれた漆黒の一撃が、周囲を薙ぎ払う。
寸前に気付いた私と光の剣士は回避し、ロレラと音の剣士も防御してやり過ごす。
しかし、
「ぐあああああっ!!」
闇の剣士の間近にいた土の剣士は、その攻撃を受けきることが出来ず、まともに受けたその身は宙に舞う。
「かはっ!?」
そして地面に強く叩きつけられた衝撃で、手から聖剣が零れ落ちる。
その土の聖剣に、闇の剣士はゆっくりと近づくと、ベルトを操作する。
『ジャオウ必殺読破!』
『ジャオウ必殺撃! You are over!』
ワンダーライドブックから鳴り響く不気味な音。それと同時に振り下ろされる聖剣の切っ先。
―カチィン―
土の聖剣に闇の聖剣が触れた音が響く。
しかしそれと同時に、切っ先から放たれた闇の鎖が土の聖剣を絡め捕る。
「これで一つ……」
突然の事象にその場に居た全ての目が釘付けとなる。
ただ、私はその現象が何なのか理解していた。
聖剣の封印。十一本の聖剣の中で、闇の聖剣だけが持つ力。ありとあらゆる聖剣の力を封じ込め、その機能を閉ざす能力。
もしあれが私の餓欲に使われれば、私も変身する力を失い、目的の達成は難しくなるだろう。
……厄介だな。まあ、対策出来ないことも無いけれど。
「ん?」
先程までずっと呆然としていただけの炎の剣士の気配がおかしいことに気付く。
「また一緒に戦えると思ったのに……」
陰鬱な気配が彼を覆う。発せられる感情は強い悲しみ。
「何でなんだ、賢人っ!!」
そう叫ぶと同時に突如として飛来した、見たことも無いワンダーライドブックが、彼のドライバーに装填され、ひとりでに開く。
『プリミティブドラゴン!』
「アアアアアアアァァァァっ!!」
そうして変身した姿は、私が未だかつて見たことの無いもの。慟哭するかのように開いた口から放たれる叫びが、鼓膜を震わせる。それだけで、あれがどれほど大きな力を持つかが分かった。
だが、そんな叫び声も長くは続かず、すぐにその変身が解け、炎の剣士はその場に倒れ込みながら大きく呼吸する。
「……ふふっ」
その姿を見た思わず口角が緩んだ。
あのワンダーライドブック、欲しいなぁ。あの力が有れば、私の目的に近づけるかもしれない。
いつの間にか、闇の剣士も都合よく姿を消していた。これなら、
「あはっ!」
「っさせるか!」
しかし真っ先に私の動きに気付いた光の剣士が、私の前に立ちふさがる。
「あのワンダーライドブック、私にくれない?」
「それを認めるとでも思っているのか!」
「ま、そう言うと思ったよ」
ギィンと激しい音を立て剣がぶつかり、その衝撃で互いに数歩後退る。
そして出来てしまった間合い。攻撃を仕掛けるにも僅かに時間が足りなかった。
「はっ!」
光の聖剣から発せられる強い光が視界を覆う。
「ここは退くぞ!」
聞こえるのは光の剣士の声だけ。
光が止み、目のくらみから回復すると、その場に居たのは私とロレラの二人だけだった。
「ああ、逃げられたか」
折角、光の剣士に見たことも無いワンダーライドブックという獲物を見つけられたというのに、それを逃したことに少々苛立ちを覚える。
まあ良いや。どうせすぐに手に入れられるはず。
そんなことを考えていると、ロレラは変身を解いて、どこかへと歩き出す。
「また行く気?」
「ええ、苦難に喘ぐ声が止むことはありませんから」
本当にロレラは変わっている。
どこまでもあんな人間を救おうとするなんて、奇特としか言いようが無いだろう。まあ、別に否定する気は無いけど。
そのロレラは振り向いて、口を開く。
「あなたの心も、きっと救いましょう。永久の安寧によって」
「……ふぅん、相変わらずだね」
600年前から変わらない。ずっと私とバハトのことも救うと言って、世界の破滅を目指す。
その在り方は、ただのエゴイストだ。ただ、それをロレラは自覚しているだけ、他の
ロレラの姿が小さくなっていくのを見届けた後、私もまた背を向けてゆっくりとその場から離れる。
そして地下へと続く階段を見つけ、それを半ばまで降りた後、足を止めた。
「それで、いつまで付いてくる気?」
「おや、気付いていたのですか」
振り向いた先に居たのは、暗い緑色の衣裳を纏った男。
この顔には見覚えがある。剣士の長年の宿敵であり、私も幾度か顔を合わせ、剣をぶつけたことがある。その男の名は、
「何の用、ストリウス」
メギドの幹部の一人であるストリウスは、どこか暗い笑みを浮かべ、私に近づいてきた。
「あなたにちょっとした提案をしようと思いまして」
「提案?」
こいつは油断ならない相手だ。他のメギドの幹部であるレジエルやズオスは、単純な力で捻じ伏せることを得意とするのに対し、このストリウスは昔から何を考えているのか分からない。
もしもの時の為にいつでも変身できる準備をする。
そんな私に、彼はこう語った。
「私と手を組みませんか?」