剣士列伝 仮面ライダーシャムシール   作:雪見柚餅子

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原作では不明な点が多いため、更新は月イチ程度になりそうです。


第2章 追憶する、夢と共に。

「皆さん、ボンヌ・レクチュ~ル! 僕はタッセル。今、僕の胸は不安で張り裂けそうなんだ!」

 

「ソードオブロゴス最強の剣士である尾上亮。でも彼の力を以てしても、強欲の剣士エドナに勝つことは出来なかったんだよ!」

 

「幸いにも雷の剣士エスパーダが救援に来たから助かったけど、もし彼が来なかったら、ワンダーライドブックを奪われていたのは間違いない」

 

「彼女の存在を知ったソードオブロゴスの面々。彼らも不安を感じているみたいだね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:大秦寺哲雄】

 

 ソードオブロゴスの拠点の一つであるノーザンベース。

 そこに有る自室で私は、目の前に置かれた激土に視線を巡らせていた。

 

「どうだ、すぐに直りそうか?」

 

 私の背後で、激土の所有者である尾上が声を掛けてくる。先程から何度も同じような言葉しか発さないのは鬱陶しいと思いながらも、私は視線を合わせないように振り向くと、鑑定の結果を呟いた。

 

「……幸いだが大きなダメージにはなっていない。ただ修復には三日は必要だ」

「マジか……もう少し早くならないか?」

 

 強引に私の肩に腕を回して来る。尾上とはそれなりに長い付き合いだが、この馴れ馴れしい態度は昔から好きではない。

 そもそも、早く修復してほしいのなら、黙ってこの場から離れてほしい。無暗に話しかけられては、気が散って仕方がない……しかし、例えそう言ったとしても、この男は聞きもしないだろうが。

 そして再び視線を激土へと向けながら、私は先程の話を思い出していた。

 

 

 

 尾上と賢人から発せられた報告。それは大昔に封印されたはずの剣士シャムシールが復活したというものだった。

 世界を滅ぼそうとした三人の剣士の一人であるそいつは、長きに渡る戦いの果てに一冊の本に封印され、今はサウザンベースで厳重に管理されていたはずだった。それが何故、復活しているのか……そして、何を為そうとしているのか……。

 もし自然に復活したというのなら、他の封印されている剣士達も目覚める可能性が有る。ただでさえ今はメギドが活発化しているのだ。15年前よりも遥かに大きな争いが起きる可能性が有る。その事実に僅かに冷や汗を掻きつつも、自分に出来ること、やるべきことは変わらないと、再び剣に視線を戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:エドナ】

 

(良いか。我らはこの世界を守る崇高な剣士として生まれたのだ。己を捨て、正義を為せ!)

 

(恐れるな! 迷うな! 人々の幸せを守るため、悪しき者を倒す。それが代々続く我ら一族の役目だ!)

 

(我らに与えられた使命を果たす。そのためだけに剣を振るえ! 例え自分の命が散ろうともだ!)

 

 

 

 頭の中で鳴り響く男の声。

 自らを否定するその声の主を、私は手にした剣で切り裂いた。

 

 

 

「……ん」

 

 その瞬間、私は目を覚ます。どうやら先程の声は夢だったようだ。しかし、今もまだあの声が耳に残り続けている感覚がして、気持ち悪い。

 

「……まさか今更あんな夢を見るなんてね」

 

 そして私は思い出す。まだ私がソードオブロゴスに居た時のことを……世界を守る剣士として育てられていた時のことを。

 

 

 

 私の出身は、代々とある聖剣を操る剣士を排出してきた一族だった。

 長年に渡り世界を守り続けた一族。それ故に周りの家族は皆、世界を守る使命を第一として疑わず、数多くのメギドを屠ってきた。私も兄弟と共に、当時の聖剣の所有者だった父から直々に剣士としての修行を受けた。

 全ては世界を守るため。幼い私にとってそれが全てだった。

 

 しかしある日、私はこう思った。

 

―どうして我慢しなければならないんだろう―

 

 与えられたのは剣士となるための技術と知識、それだけだった。それ以外の事は全て不要であると、疑問に持つことすら許されず、だけどそれを当然と思う家族達。

 

 その異様さに気付いたのは、ちょっとした偶然だった。当時、拠点で見た私と同年代と思われる一人の男の子。彼が無邪気にはしゃぎながら、父と思われる剣士に甘える光景。

 最初は何とも思わなかった。だけど何日、何週間、何か月とその光景を見続ける中で私の心の中に揺らぎが生まれた。

 きっと彼らはこの瞬間を本当に幸せと感じているのだろう。それは満面の笑みを見ればすぐ分かる。しかし、私はあんな笑顔を浮かべたことがあるだろうか。どれだけ記憶を辿っても、思い当たることは無く、それがとても空虚に感じた。

 

 私はこの世界を、生きる人々の幸せのために剣士になるのだと父から言われた。

 だけど、それなら……()()()()()()()()()()()()()?

 きっと父や他の者なら、使命を自分の幸せと答えるのだろう。だけれども、それは他人に与えられたものに過ぎない。私自身が心からそうと思える幸せとは何なのだろう……。

 

 そして私は一振りの剣を手にして、誰にも言わずに家を出た。

 理由は世界を見るため。きっとこの世界には、自分が命を賭けて守るための理由があるはず。そう信じたいがための行動だった。

 

 だけど私がその旅で見た光景は失望だった。

 確かに世界には、多くの人々が居て、助け合い分かち合い、幸せを享受する者も居る。その姿は美しく、正しく私の家族が信じる守るべき世界の姿だった。

 だけどそれと同じくらい醜い者達が居た。彼らは私達が守った場所で、自分の好き勝手に争い、憎み合い、世界を汚していた。

 

 私はそれらを見て迷った。確かにこの世界には守るべきものが有るが、守る必要のないものだって多いじゃ無いか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?

 あんなものの為に闘い、その果てに命を落としたとして、それで私は満足なのだろうか?

 

 自問自答の果てに、私は結論に辿り着く。

 彼らに共通していること。それは全て、自分の生きたいように生きているということだ。他人のためと言いつつ、それは全て自分が信じる生き方による選択でしかない。

 家族が言っていた「世界を守るため」なんて言うのも、所詮は自分がそう信じたいがための詭弁に過ぎないのだ。

 

 それに気付いたとき、私は初めて声を上げて笑った。何だ、簡単なことじゃないか。全部、自分のためでしか無かったんだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!

 

 気付くと、目の前に一振りの剣が地面に突き刺さっていた。紫色の毒々しい鞘に納められた聖剣。父から教えられた知識の中にそれは有った。

 未熟な者が使おうとすれば、たちまちエネルギーを奪われ命すら危ういとされるほど強大な力を秘めていたがために、刀匠達の手によって誰も知らない場所へ封じ込められた剣。

 だけど何故か私には、それがしっくり来た感じがした。それまで空虚だった私には、ある意味この剣はぴったりだったのかもしれない。きっとこの剣も私を選んだのだろう。

 そして私はそれを手にし、不死身の体へと変貌したのだった。

 

 

 

 それから私は剣を携えてあちこちを旅した。ある時は美味しい物を食べるため、ある時は綺麗な景色を見るため、ある時は面白い見世物に惹かれて。

 それまで抑え込まれていた自分の欲のままに生きるのは、とても楽しかった。やっと生きている実感を持つことが出来た。

 

 そんなある日、私はメギドを討伐していた父と再会した。

 

「エドナか……」

 

 私の記憶に有るよりもしわがれた声をしたその時の父は、仮面の奥ではきっと冷たい瞳をしていたのだろう。

 

「全く、お前のような不出来な娘を持って、私は恥ずかしい。修行から逃げ出すなど、聖剣に選ばれた剣士にあるまじきことだ!」

 

 勝手に私の心中を妄想し語る父の姿に、私は強い嫌悪感を覚えた。何故、それまで父を尊敬していたのだろうか。よく見れば分かる。これはただの盲目的な正義を語る愚か者でしかないと。

 

「まあ良い。落伍者のお前にも僅かだが価値が有る。大人しく帰ってきて……」

「黙れ」

 

 最早、こいつの言葉に耳を貸す気は無かった。

 

「私はあんたのものじゃない。付いて行く気なんて無いよ」

 

 そう言って私は背を向け去ろうとするが、その前に父は手にした聖剣をこちらへ向ける。

 

「……父に対してそのような言葉を使うとはな。どうやら何か勘違いをしているようだが、私は力づくでもお前を連れて帰る。これ以上、身内の恥にうろうろされるのは目障りだ」

 

 ……折角、穏便に済ませようと思っていたのだが、この男はそのつもりは全くないらしい。これだから自分が絶対的な正義だと勘違いしている連中は厄介だ。

 私は父を睨みつけると懐に手を伸ばす。

 

「お前如きが私に勝てるわけが無いだろう……っ!?」

 

 父は私の懐から出て来た聖剣を見て驚いたような声を上げる。まあ、父ならこれが何か一目で分かるだろう。

 私はそれを腰に装着した。

 

覇剣ブレードライバー

 

「もう面倒だからさっさと片付けさせてもらうよ」

 

抜刀!

 

 そして私はワンダーライドブックをドライバーに装填し、剣を抜き放つ。

 

ムゲンウロボロス

餓欲! 飢え渇く剣が喰らい尽くす!

 

「貴様……その剣を一体どこで!!」

「あなたには関係無いでしょ。それじゃ行くよ」

 

 そして私は父―剣士エストックに対し、餓欲を振りかぶった。

 

 

 

 結論として私は父に勝利し、素早くその場から去った。わざわざその場に留まって、他の剣士達が来るのを待つ必要などない。だけどこれによって私はソードオブロゴスからお尋ね者扱いされ、剣士達からも狙われることとなったわけだけど。

 

 だけどその旅の果てに、私はあることを思いついた。それはかつて聞いた昔話。数百年前に封印された不死身の剣士と破滅の本の存在。あれが解き放たれれば、きっとこの世界は滅びる。そして新しい世界も作られるだろう。()()()()()()

 そして私はソードオブロゴスから破滅の本を奪取し、彼と出会ったのだった。

 

 

 

 

 

「……世界は今日も変わらないね」

 

 とりあえず封印から解き放たれた私は思うがままにあちこちを巡ってみたが、技術や景観は様変わりしても、人間の内面は大して変わらない。

 結局は私の結論は正しかったのだ。だからこそ私は別にソードオブロゴスを否定するつもりは無い。彼らも彼らの幸福の為に戦っているのだろう。だけどそれは私には関係の無い話だ。

 

「さてと、次はどこに行こうかな」

 

 折角だから、もう少し今の世界を満喫しよう。まずはあのゲームセンターにでも足を運ぼうか……。

 この世界の娯楽は中々に興味深い。少しは私の退屈を満たしてくれることを祈った。




【キャラ設定】
仮面ライダーエストック
●エドナの父が変身した仮面ライダー。とある聖剣を所有している。
●聖剣及びドライバーのデザインイメージは、邪剣カリバードライバーのリデコ。



名も無き父と子供
●エドナが自らの在り方に疑問を持った要因となった剣士の親子。所有していた聖剣は「土豪剣激土」。
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