剣士列伝 仮面ライダーシャムシール   作:雪見柚餅子

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前回から時間が飛び、今回は原作の8章と9章の間の話となります。


第3章 頁は捲れ、蛇を起こす。

「皆さん、ボンヌ・レクチュ~ル! 僕はタッセル。僕は今、神山飛羽真という青年に注目しているんだ!」

 

「小説家である彼はある日、聖剣に選ばれて炎の剣士セイバーとして戦うことになったんだ」

 

「それからソードオブロゴスの剣士達と共に、本の魔物であるメギドと戦っているんだよ」

 

「だけどそんな彼の許に、あの剣士が近づいているみたいだ」

 

「あの剣士が誰かって? 勿論彼女のことだよ。強欲の剣士シャムシールことエドナさ!」

 

「ちょっと嫌な予感がして、とても不安を感じちゃうよ。何も無ければ良いけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:エドナ】

 

 その日、私は小さな公園のベンチでゆっくりと昼寝に勤しんでいたはずだった。

 もう風は肌寒く感じる季節だけど、不死身である私にはこの程度の気温は大したことは無い。むしろ公園に生えている木々から色づいた葉が落ち、どこかゆったりとした雰囲気が感じられるこの場所は、昼寝に最適と言えた。

 だから私は鞄を枕にしながら仰向けになり、瞳を閉じて眠りに就こうとしたのだ。

 

「メェ~っ!!」

 

 だけどそんな私の眠りを妨げる雑音が聞こえた。

 突如として人のざわめきとヤギの鳴き声のようなものが街中に響き渡る。それに加えて、何かが倒れ、壊れ、砕ける音が混じり合い、不協和音を奏でる。私はあまりの騒々しさに苛立ちを感じながら、小さく瞼を開く。

 視界の先に有ったのは、予想通りの光景。メギドによるワンダーワールドの浸食だった。ヤギの頭を持ったメギド達が暴れ、人々は逃げ惑う。この世界ではよくある事。

 だが、こう騒がしくては眠るに眠れない。煩わしいからまとめて斬り払おうか。そう考えていると、目の前に巨大な一冊の本が姿を現した。それはソードオブロゴスの剣士達が、自分達の拠点からワンダーワールドなどへ転移するための門を開く「ブックゲート」だ。あれが現れたということは、意味するものは一つ。

 

「止めろっ!!」

 

 ブックゲートから三人の青年が飛び出し、メギドに向かって叫ぶ。そして彼らは腰に手にしたアイテムを装着すると、収められていた聖剣を引き抜いた。

 

烈火抜刀!

流水(ながれ)抜刀!

黄雷(いかずち)抜刀!

 

「「「変身っ!!」」」

 

 掛け声を揃え聖剣を振るうと、彼らの全身は装甲を纏い、剣士としての姿を現す。うち一人は以前も見たことが有る。確かあれは雷の剣士。残りの二人は炎と水だ。

 彼らもメギドの存在を察知して現れたのだろう。それなら話は早い。

 

「……さっさとここから離れようか」

 

 後は勝手に彼らがメギドと戦ってくれる。その隙にこの場から離れ、もっと静かな場所に移動して、ゆっくり眠ろう。今は気分じゃないし、無駄に首を突っ込みたくは無い。そう考えて、彼らに背を向けこの場から離れようとする。だけど……

 

「お、逃げ遅れた人間発見だメェ~!」

「お前も水の中に沈めてやるメぇ~!」

 

 私の前に現れる新たなメギド。しかも二体。こいつら、一体どれだけいるのか……。

 相変わらず私の邪魔をしてくるメギドに苛立ちを覚えながら、ブレードライバーを取り出す。さっさと片付けよう。そして私はワンダーライドブックを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:神山飛羽真】

 

「はあっ!!」

 

 今日もまた、この世界を支配しようとする奴等を倒すため、俺は聖剣「火炎剣烈火」の力で変身し、仲間と共にワンダーワールドの中で戦っていた。

 

「この、邪魔をするなメェッ!!」

 

 俺達の前に現れたのは、色とりどりのマフラーを付けたヤギの姿のメギド。今、この場に居るだけでも五体居る。対してこちらは三人。数だけならこちらが不利。だけどそれで怖気づいては居られない。この世界を守るために、怯むことなく剣を振るう。

 

「ふっ、こいつら一体一体は大して強くは無いな!」

「ええ、でも油断してはいけませんよ!」

 

 俺の横で二人の剣士も声を上げながらメギドに攻撃を加えていく。

 一人は雷の剣士エスパーダであり、俺の幼馴染でもある青年「富加宮賢人」。もう一人は真面目な性格の水の剣士ブレイズとして戦っている「新堂倫太郎」。二人とも大事な俺の仲間だ。

 

「ぐああだメェ~っ!!」

 

 それぞれが手にした聖剣でメギド達を切り伏せていく。賢人の言葉通り、このメギドはそれほど力は強くなく、いとも容易く一体また一体と倒されていく。これまでのメギドと比べ明らかに弱い。それが逆に不気味に感じられた。

 

「これで終わりだ!!」

 

ブレイブドラゴン!

 

「ドラゴンワンダーっ!!」

 

 俺の右腕から竜の姿を模した火炎が放たれ、最後に残った二体のメギドを包み込む。その炎は悪しき者を焼き払う聖なる力。簡単にメギドの全身を焼き払い、塵一つ残さず爆散させた。

 

「とりあえず、これで終わりか……?」

 

 賢人の言う通り、この場に居たメギドは全て倒したはず。しかし一向に世界が元に戻る気配は無い。

 

「恐らく、まだ他の場所にメギドが居るはずです。手分けして探しましょう」

「ああ……っ!?」

「メェ~っ!!」

 

 倫太郎の言葉に頷いて一歩踏み出した瞬間、突如として何かが俺達の背後に降ってきた。

 最早聞き飽きた鳴き声にハッとし、振り向いた先に居たのは、あのヤギのメギド。しかしその大きさは、倒した奴等より一回り大きく、さらには両手に双剣を握っていた。

 

「やはりまだ居ましたか。ですがっ!!」

 

 突然の事態に対し、すぐに冷静さを取り戻した倫太郎が「水勢剣流水」で斬りかかる。まるで流れる水のような華麗な斬撃を躱すのは至難の業だ。

 

「ふんっ!!」

 

 だがその素早い剣技を、メギドは両手の双剣でいとも容易く防ぐ。

 

「この程度で粋がるなメェっ!!」

「ぐあっ!?」

 

 そのままメギドがまるでハサミのように剣を振るうと、倫太郎の体がまるで風に吹かれたボールのようにいとも容易く吹き飛んだ。

 

「倫太郎っ!?」

「くっ、それなら!」

 

 今度は賢人が素早い動きで「雷鳴剣黄雷」による突きを繰り出す。目にも止まらぬそのスピードはまさに雷。普通のメギドなら、斬られたことにすら気付かせずに一瞬で片づけてしまう。

 

「その程度、お見通しだメェ~!!」

 

 だがそれすらもヤギのメギドは見切り、捌かれてしまう。

 

「お前はこれでも食らっていろメェ~っ!!」

 

 さらにメギドが双剣を頭上に翳すと、巨大な岩塊が出現した。

 

「なっ!?」

 

 突然のことに賢人の動きが止まったその瞬間、メギドが勢いよく双剣を振り下ろし、岩塊は賢人の許へと投げつけられた。

 

「賢人!!」

 

 俺は賢人を庇う様に前に出ると、聖剣にワンダーライドブックを読み込ませる。

 

ストームイーグル!

ふむふむ……

 

「ハっ!!」

 

習得一閃!

 

 俺が振るった剣から巻き起こる炎の竜巻が岩塊を飲み込み、どうにかそれを粉々に砕くことに成功した。

 そして攻撃が止んだこの僅かな間を利用し、メギドと距離を取って体勢を立て直す。

 

「大丈夫か賢人?」

「ああ、助かった」

「あのメギド、かなり手ごわいですね……」

 

 先程まで倒したメギドと比べると、明らかにパワーが違う。恐らくこいつがワンダーワールドの浸食を行っている本体だ。こいつを倒さない限り、この場所は元には戻らない。

 

「お前達に倒された子供たちの仇は討たせてもらうメェ~!」

 

 そう言ってこちらに向かって走り出して来るメギドを迎え撃つべく、俺達が剣を構えた、まさにその瞬間だった。

 

ドォンッ!!

 

「「メェ~っ!?」」

 

 いきなり爆発音と共に、新たに二体のメギド達が俺達の前に吹き飛んできた。

 何事かと俺達は思わずそのメギドが吹き飛ばされてきた方向へと視線を向ける。

 

「あれはっ……」

 

 それを見た賢人の声が強張る。

 

欲望剣餓欲!

 

 俺達の視界に入ったもの。それは紫色の装甲を身に纏った一人の剣士の姿だった。

 

「はあ……」

 

 気だるげな溜息を吐く剣士。その声と体型から女性であることが分かる。彼女もまたソードオブロゴスの剣士なのだろうか。

 

「強欲の剣士、何でこんな時にっ……」

「あれが強欲の剣士ですって!?」

 

 だがそんな俺の疑問とは裏腹に、賢人は苦々し気に呟く。その言葉を聞いた倫太郎は驚いた様子を見せたが、俺には何が何なのかさっぱり分からない。

 

「なあ、その……強欲の剣士って何なんだ? あの人も俺達と同じ剣士じゃないのか?」

 

 俺の問い掛けに対し、どこか焦りを感じさせる口調で倫太郎が答える。

 

「あれはかつて、世界を滅ぼそうとして封印された危険な剣士の一人、「シャムシール」です。まさかこんな時に会うなんて……」

 

 つまり彼女は闇の剣士「カリバー」と似たような存在であるということだ。

 

「……ねえ、それで終わりなの?」

 

 俺達が話している間、その強欲の剣士は自らの聖剣を肩に担ぎ、面倒くさそうな態度でメギドを挑発する。

 

「この、調子に乗るなメェ~っ!!」

「待つんだメェっ!?」

 

 親ヤギのメギドの制止の言葉も聞かず、吹き飛ばされてきた二体の子ヤギメギドは勢いよく飛び掛かる。しかしそれすらも鬱陶しいと言わんばかりの様子でシャムシールは腰に巻いたベルトに装填されているワンダーライドブックのページを押し込んだ。

 

ムゲンウロボロス!

 

「これで終わり」

 

 端的な言葉と共に彼女がゆっくり右手を伸ばすと、指先から蛇を模ったオーラが現れ、向かって来たメギドの体を覆う。

 

「メっ、メェ~っ!?」

 

 オーラに飲み込まれたメギドが苦しみながらのたうち回る。まさかあれは毒!?

 そしてシャムシールはオーラに包まれ動きが止まったメギド達へ向かって走ると、その聖剣で擦れ違いざまに斬り裂いた。

 

「わ、我が子よ~っ!?」

 

 悲痛な声を上げて親ヤギメギドが手を伸ばすけど、それが届くことは無く、子ヤギのメギドは倒れ爆散していった。

 

「はあ、つまらなかった」

 

 何事も無かったかのようにシャムシールはぼそりと呟く。それが癇に障ったのだろう。仲間を倒された親ヤギメギドはこちらには目もくれず、双剣を彼女へと向けた。

 

「貴様……ただで済むとは思うなメェ~っ!!」

「ああ、まだ一匹いたの。面倒くさい……」

「メェ~っ!!」

 

 怒りに任せ突っ込むメギド。鋭く双剣を振るい、シャムシールを倒そうと連撃を放つ。だが倫太郎や賢人を上回るその剣戟を、シャムシールは一本の聖剣を見事に扱い、一撃も食らうことなく完全に防ぎきって見せていた。

 

「相変わらずつまらないね……もっと楽しませてほしいんだけど?」

「メっ……それならこれでも食らうメェ~っ!!」

 

 挑発に乗ったメギドは、再び剣を掲げ岩塊を生み出す。しかし単発だった先程とは異なり、その数は計五個。あれをまともに受ければ、無事では済まない。

 しかし、それを前にしてもなおシャムシールは何事も無いかのような態度を崩さない。彼女はゆっくりと腰から紺色のワンダーライドブックを取り出すと、剣に翳した。

 

強欲な列車!

欲求一突!

 

 ワンダーライドブックの力を取り込んだ聖剣の先端から紫色の線路が伸び、撓りながら岩塊へと巻き付く。そしてまるで大蛇が獲物を捕らえるかのように線路が岩塊を締め付け、それを砕いて見せた。

 渾身の一撃を呆気なく防がれ呆然とするメギドに向かってシャムシールは剣先を向けた。

 

「もう飽きたや。終わりにしよう」

 

 そう言うとシャムシールは聖剣をベルトの脇に収めると、そのままメギドへ背中を見せる

 まさかメギドを見逃そうとしているのかと思っていると、これを好機と見たのかメギドは静かに双剣を手にし、シャムシールに忍び寄る。

 

「……舐めるなメェ~っ!!」

 

 そしてその無防備な背中に刃を突き立てようと剣を振りかぶった。数秒後にはその一撃が彼女の背中を斬り裂くだろう。だが俺はあることに気付いた。

 

餓欲居合……

 

 シャムシールの右手が聖剣の柄をまだ握られ続けていたことに……。

 

黙読一閃!

 

「邪魔」

 

 振り向きざまに放たれた鋭い突きが、メギドの胴を貫く。

 

「メッ……!?」

 

 何が起きたかも分からないと言った様子の声を上げ、メギドは倒れ伏しその身を爆散させた。

 

「ふぅ……だるい」

 

 先頭とも言えない、ただの蹂躙とも言えるその力に思わず見とれていた俺達だが、彼女の視線がこちらに移ったのをきっかけに我を取り戻すと、それぞれ聖剣を手に取り構える。

 倫太郎の言う通り、この剣士が世界を滅ぼそうとしているのなら俺達にも攻撃を仕掛けてくるだろう。そう考えてのことだった。

 しかし俺の予想とは裏腹にシャムシールは剣を構えるどころか腕から力を抜くと、こちらただ一言、

 

「それじゃ、そういうことで……」

 

 そう言うと背を向けてこの場から離れようとする。また油断を誘おうとしているのかと思ったが、そういうわけでも無さそうで、完全に敵意は無いようだった。

 だけどそんな彼女を黙って見逃すことが出来なかったのか、倫太郎が声を上げた。

 

「待ってください! あなたは何を企んでいるのですか?」

 

 その問いに対してシャムシールは首だけこちらに向けると、呆れたような声でこう返した。

 

「別に何も? 私は私の好きなように生きてるだけだよ」

 

 あまりにも単純な答え。その言葉からは俺達を騙そうとする意思も、馬鹿にしようとする雰囲気も感じられない。ただ何でもないように、それが当然であると答えたように思えた。

 しかし、その答えに疑問を感じる。

 

「……あんたは世界を滅ぼそうとしているんじゃないのか?」

 

 さっき倫太郎は、彼女が世界を滅ぼそうとしたと言っていた。好きなように生きることと世界を滅ぼすことがどうして繋がるのか。それが俺には理解出来なかった。

 

「確かに世界を滅ぼそうとはしたね」

「っ、何でそんなことを……」

「だって、この世界を守るより、そっちの方が()()()()()()()?」

 

 その答えに俺は絶句した。

 

「世界が滅び、新たな世界が生まれる瞬間なんてそう簡単に見れるものじゃない。きっとすごく心が躍る光景になると思うのよね」

「そんなことで……」

 

 面白そうなんて理由だけでこの世界を滅ぼそうとする。その考えが理解できない。ただ戸惑いを感じていた。

 

「っやはりあなたはこの世界に居てはいけない!」

 

 そして誰よりもこの世界を守る使命に燃える倫太郎が剣を構える。その言葉からは強い怒りが感じられた。

 俺と賢人もまた倫太郎に続くように剣を握る。そして賢人が苦々しい口調で警告する。

 

「気を付けろ。こいつは尾上さんも倒してる。油断は禁物だ」

 

 俺はその言葉に黙って頷く。

 そんな俺達の姿に、シャムシールは明らかに面倒くさそうな態度を見せる。

 

「全く、これだから自分が正しいと思ってる連中は嫌なんだよね」

 

 そう言いながら彼女が振り向いて剣を構えたのを引き金に、俺達は走り出す。

 

 これが俺と強欲の剣士シャムシールとの出会い。そして彼女との因縁の始まりでもあった。




【キャラ紹介】
コヤギメギド
●『七色の子ヤギ』のアルターライドブックから生み出されたメギド魔人。属性は物語。
●赤、青、黄、オレンジ、緑、紫、藍色のマフラーを個体ごとに付けている。戦闘力は低く、ステータスで言うならアリメギドとほぼ同等。

オヤヤギメギド
●『七色の子ヤギ』のアルターライドブックから生み出されたメギド魔人。
●組み合わせることでハサミに変形する双剣を武器としており、戦闘力はコヤギメギドと比べ物にならない程強い。コヤギメギドが倒されていれば、それだけオヤヤギメギドは強化されるという性質を持つ。



【必殺技設定】
「黙読一閃」
●餓欲を必冊ホルダーに納刀して放つ技。エネルギーを込めた剣による素早い突きを放つ。
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