「皆さん、ボンヌ・レクチュ~ル! 僕はタッセル」
「前回、ワンダーワールドでメギドに苦戦する神山飛羽真達の前に、遂に姿を現した強欲の剣士エドナ」
「彼女の口から放たれた世界を滅ぼす理由。ただ「面白そうだから」という言葉に、水の剣士である新堂倫太郎が怒りを露にするんだ」
「そして彼に引っ張られるように、飛羽真と賢人もエドナに立ち向かう。だけど彼女は尾上亮ですら打ち破った強敵だ!」
「彼らはエドナに勝つことは出来るのか!? もう、気になって仕方が無いよ!!」
【SIDE:飛羽真】
倫太郎を先頭にして、俺達は強欲の剣士シャムシールへと剣を振りかぶって飛び掛かる。こっちは三人。対して相手は一人。相手がどれほどの実力者だとしても、俺達なら勝てない訳が無い。そう思っていた。
「……ねえ、その程度なの?」
だけど、その考えはあっさり打ち破られた。
俺の烈火による激しい斬撃も、倫太郎の流水による変幻自在な動きも、賢人の黄雷による鋭い一撃も、その全てを彼女は完璧に対応し、防いで見せている。その動きはまるで美しいダンスの様にも見える。
「くっ、それなら!」
『ライオン戦記!』
「ライオンワンダー!」
倫太郎が放った水の斬撃、そして実体化した青いライオンがシャムシールへと向かう。この二連撃を防ぐのは至難の業だ。
「……つまらない」
シャムシールはただ手にした剣を横に構え、斬撃とライオンの両方を受け止める態勢を取る。多くの敵を倒してきた倫太郎の技があんな構えで防げるはずがない。
しかし倫太郎が放った攻撃は、シャムシールの剣に触れると同時に、まるで乾いた土に水が染み渡るかのように吸収されていく。
「なっ!?」
「これ、返すよ」
そしてシャムシールは吸収したエネルギーを用いた斬撃を放つ。自らの攻撃を吸収された倫太郎は驚きのあまり動く事が出来ず、その攻撃をまともに受けて大きく吹き飛ばされてしまう。
「ぐあっ!!」
「何だ、今の!?」
倒れた倫太郎に駆け寄りながらも、今まで見てきた聖剣とは全く違う力を有する剣の力に驚いていると、賢人が焦燥した様子で答える。
「あれが奴の聖剣の力……他の聖剣やワンダーライドブックの力を吸収し、自分の力にしてしまうんだ……」
その言葉に絶句する。それじゃあ、聖剣を使う俺達の攻撃は全く効かないということじゃないのか?
いや、だが希望が無いわけじゃない。
「……なあ、彼女は昔の剣士によって封印されていたんだよな?」
「はい……残念ながらその方法はノーザンベースの資料を見ても分かりませんでしたが」
ダメージから回復した倫太郎は、立ち上がりながらも残念そうに顔を俯かせる。だけどその言葉が聞けただけで良い。
「だったら、きっと何か弱点はあるはずだ。他の剣士に出来て、俺達に出来ない訳が無いだろ!」
そうだ、目の前の剣士は絶対に勝てない相手じゃない。何か突破口があるはず。
俺の言葉を聞いて倫太郎と賢人も顔を上げた。
「そうですね、ここで折れては剣士の名に泥を塗ってしまいます!」
「ああ、俺達はここで止まるわけにはいかないな!」
そして俺達は懐からそれぞれブックを取り出す。
『ストームイーグル』
『ピーターファンタジスタ』
『ニードルヘッジホッグ』
そしてベルトに装填すると、聖剣を収めて再度抜刀する。
それと同時に全身に力が漲った。
『烈火抜刀!』
『流水抜刀!』
『黄雷抜刀!』
ワンダーライドブックから解放された力が、新たな装甲となって俺達の身に宿る。
『竜巻! ドラゴンイーグル!』
『輝く! ライオンファンタジスタ!』
『トゲ・トゲ! ランプドヘッジホッグ!』
俺達の聖剣は他の聖剣と違って、複数のワンダーライドブックを同時使用できる。この力ならきっと……。
「行くぞ!」
「ああ!」
俺達は強化された聖剣を構えて走り出す。まずは俺が突風を纏った剣を振り上げ、シャムシールに向かって振り下ろした。
「効かないよ」
しかしそれは難なく躱され、俺の背後に回った彼女の刃が迫る。
「させません!」
そこに倫太郎の左腕から放たれた鎖が彼女の聖剣を絡め捕る。
「今です!」
そして倫太郎の合図と共に賢人が素早い動きで、雷を纏った突きを放つ。これなら……
「……遅いよ」
だがシャムシールは迫りくる切っ先に恐怖を抱くことも無く、ただ無感情に呟くと、まるでブリッジでもするかのように上体を仰け反らせることで賢人の一撃を躱す。
「なっ!?」
驚く暇もなく、彼女は反動を利用して振り上げた右足で賢人の顎を打ち据えて吹き飛ばす。そのまま身軽に一回転して着地すると、今度は絡まった鎖ごと勢いよく剣を振るう。
「うわっ!!」
聖剣とブックの力で強化されている倫太郎が、その力に抗うことが出来ず、体勢を崩しながら彼女の許へと引き寄せられる。そして一瞬で距離を詰めると、シャムシールの放った斬撃が倫太郎の胴体を捉えた。
「ぐぅっ!?」
そのまま追撃を放とうとするシャムシール。倫太郎を庇うために俺は一歩踏み出すが、それも彼女は予測していたのだろう。彼女は背後から近づく俺に視線を向けることも無く、鋭く後ろに向けて剣を突き出す。その一撃に気付くのが遅れ、切っ先とぶつかった鎧が火花を散らす。
そして俺が倒れる間にシャムシールは返す刀で倫太郎を袈裟斬りする。
たった一瞬の出来事。しかし俺達の連携がこうも簡単に打ち破られてしまったことに衝撃を受ける。
倒れ伏しながらこの状況に歯噛みするしかない。そんな俺達を見下ろしながら、シャムシールは呟く。
「別に私は戦う気なんて無いんだけど……どうしてこうも争おうとするかな」
それはまるで自分は悪くないと言いたげな口調で紡がれた。そんな彼女の態度に倫太郎は語気を荒げる。
「自分のためだけに世界を滅ぼそうとしている貴女が……そんな言葉を言うな!!」
「……別に理解してもらおうなんて思わないよ」
だが返答する彼女の言葉はどこか寂し気だった。
「でもさ、あんた達と私の考え方に大した差なんて無いんだよ」
「私達と貴女が同じ? そんな訳がっ!!」
「同じだよ。自分の価値観でこの世界の在り方を決めようとしているって点がね……」
倫太郎を遮りながら、シャムシールは言葉を続ける。
「あんた達は自分の為にこの世界を守り、私は自分の為にこの世界を滅ぼす。どっちも、自分がそうしたいって思って、世界の在り方を決めようとしている。それの何が違うの?」
「……」
「別に私はあんた達の価値観は否定しない。好きなようにすれば良い。でも、私がどうしたいかを邪魔される筋合いも無いんだよ」
……やっと彼女のことが少し分かった。彼女の根本はただ純粋なんだ。
彼女がその答えに行きついた理由を俺は知らない。だけど一つだけ分かっていることがある。
「例え、俺達がお前と同じだとしても……この世界を終わらせるわけにはいかない!」
きっと彼女といくら言葉を交わしても、きっと平行線に終わるだろう。それだけ世界の見方が違うのだと実感した。
だけど、この世界には多くの人々が暮らしている。彼女の独り善がりな考えで、滅ぼされる訳にはいかないのだ。
「物語の結末は俺達が決める!!」
俺は自分自身を鼓舞し、一冊のワンダーライドブックを取り出す。試したことは無いけど、彼女は強敵だ。出し惜しみして勝てる相手じゃない。そう考えて、俺は躊躇うことなくそれを起動させる。
『キングオブアーサー』
他のワンダーライドブックと比べ、強大な力を持つこの本。これを含めた三冊のライドブックによる変身。どれだけの力が発揮できるのかは分からない。負担も大きいだろう。それでも、今の俺が出来ることはこれしか無かった。
そして俺はドライバーにライドブックを装填し、烈火を抜く。
『烈火抜刀!』
『増冊! アーサー王! 烈火二冊! 荒ぶる空の翼竜が獄炎を纏い、あらゆるものを焼き尽くす!!』
俺の左腕に水色の装甲が装着される。伝説の騎士王の力が込められた鎧から流れる力が、全身に滾る。
「その本……なるほど、少し面白そうになってきたかな」
俺の姿を見たシャムシールは、先程の気だるげな態度とは打って変わって、楽し気な口調で剣を構えた。
「その力、私に見せてみなよ!」
そう言って素早い動きで放たれる剣。それを俺は烈火とキングオブアーサーの力で生み出された大剣キングエクスカリバーで迎え撃つ。彼女の変幻自在な動きは厄介だけど、こっちの手数は二倍。強化された力もあって、対応することは出来ている。
「どうしたの? まさかその程度ってことは無いよね?」
だけどこっちが防ぐことに精いっぱいなのに対して、奴はまだ余裕がある。このままでは間違いなく崩されるのはこちらだ。
『ライオン戦記! ふむふむ!』
『アランジーナ! ふむふむ!』
『習得一閃!』
だがそこへ倫太郎と賢人が放った斬撃がシャムシールに襲い掛かる。シャムシールはそれを難なく防ぐものの、不意の一撃に気を取られ動きが止まった。
この隙を逃さないように、俺は素早くキングエクスカリバーのトリガーを押す。すると俺の背後に水色の巨人が姿を現す。
『必殺読破! キングスラッシュ!』
「はっ!!」
俺の動きに合わせ、巨人も手にした大剣を振りかぶる。その剣に炎が纏い、膨大な熱量を発する。
「へえ、中々やるね」
目の前に迫る大剣。しかしそれすらも
『必殺黙読!』
そして俺の技に正面から受けて立つべく、その再び聖剣を抜き放った。
『抜刀! 大蛇欲心斬り!』
彼女の剣から呼び出されたのは、紫色の大蛇。それは爆炎を宿した剣に噛みつき、その胴体で巨人を締め上げる。ここで負けるわけにはいかないと、俺は力を込める。さすがの奴の聖剣も、膨大な力は吸収しきれないのか、炎が大蛇の体を少しずつ焦がしていく。
互いの技のぶつかり合い。一歩も引かずに衝突する。
その果てに、強大な力に互いに耐え切れず、巨人と大蛇はその体を爆発させ、周囲に衝撃波が放たれる。弾けたエネルギーを受け、俺達は大きく吹き飛ばされ、地面を転がっていった。全身を強く打ち、変身すらも保たせる事が出来ず、鎧がまるで氷のように消えた。
だがそんな中、一人だけ何事も無いかのように立つ影が有った。
「ふふふっ、良いねえ。さすが、その本に選ばれただけのことはあるよ」
俺と同じように間近で衝撃を受けたはずなのに、一切のダメージが通っていない。その事実に俺は震えそうになる。
そして彼女はゆっくりと折れに近づこうとした……が
―くきゅるる~―
戦場には似つかわしくない、あまりにも間抜けな音。そして彼女はお腹を収めて一言。
「ああ、お腹空いた」
そう言うと、倒れこむ俺達に目もくれずに振り向いて、その場から立ち去ろうとする。
「待て!!」
そんな彼女に倫太郎が叫ぶと、彼女は振り向いて口を開いた。
「今、あんた達を倒すよりは、成長を待った方が面白そうだから見逃してあげる」
そして俺に人差し指を向けた。
「炎の剣士……あんたがいずれどんな答えを出すのか、楽しみにしているよ」
そう言うと、彼女はそのまま歩き出す。
遠く消えていく彼女の後ろ姿を見て、俺達は悔しさに拳を握った。
これが俺と彼女の初めての邂逅。それは間違いなく完敗と言うべきものだった。
【SIDE:???】
私と相棒である青年はサウザンベースの中央にある書斎で、一人の女性の前に立っていた。
彼女の名は神代玲花。ソードオブロゴスの最高責任者であるマスターロゴスの腹心であり、その言葉を伝える存在。
私達は彼女に呼び出され、この場に集まっていた。
「さて、突然ですが貴方達を呼び出した理由についてですが……」
「強欲の剣士の復活……ですね」
私の言葉に彼女は静かに「ええ」と肯定する。理由は不明だが、何者かによって強欲の剣士が封印されていた本が盗まれ、奴が復活を果たしたという報告が上がっていた。
「貴方達には、彼女を打倒してもらいます。勿論、失敗は許されませんが」
「問題ないよ。俺達が必ず奴を倒して見せるさ!」
敬意の無い軽い口調だが、相棒である青年の目には絶対的な自信が見える。勿論、私も失敗する気は無い。
「必ずや、この聖剣に誓って彼女を倒して御覧に入れましょう」
先祖代々伝わる聖剣を握り、宣誓する。必ずや強欲の剣士を倒す。それが我が一族の使命の一つだ。
その私の言葉に満足したように、神代玲花は頷く。
「では頼みましたよ。魂の剣士『エストック』、鉄の剣士『虎徹』……」
「ハっ!」
彼女の命令、いやマスターロゴスからの命令に私達は跪いて応える。
絶対に強欲の剣士は倒して見せる。我が一族の汚点。それを雪ぐという強い意志を持って……。
【キャラ紹介】
仮面ライダーエストック
●サウザンベースの剣士の一人である青年が変身するライダー。
●エドナの兄弟の子孫に当たる人物。
●所有する聖剣の属性は『魂』。
仮面ライダー虎徹
●サウザンベースの剣士の一人である青年が変身するライダー。
●エドナの兄弟の子孫に当たる人物であり、現代のエストックとは親戚関係にある。
●所有する聖剣の属性は『鉄』。