剣士列伝 仮面ライダーシャムシール   作:雪見柚餅子

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久しぶりの本編更新です。


第5章 来訪する、二つの剣。

「ボンヌ・レクチュ~ル! 僕はタッセル!」

 

「前回、神山飛羽真達の前に突如として現れた強欲の剣士シャムシール」

 

「世界を滅ぼそうとする彼女を倒すべく、剣士達は戦いを挑むんだけど、伝説のアーサー王の力ですら彼女には通用しなかったんだ」

 

「幸いにも、彼女が空腹でその場から去ったことで助かったんだけど、自分達の無力さを実感して落ち込む飛羽真達……」

 

「なんだか嫌な予感もするし、一体どうなってしまうんだろう!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:神山飛羽真】

 

「そうか……お前達も奴に会ったのか」

 

 尾上さんの言葉に黙ったまま頷く。

 時間が経っても残り続ける感覚。いくら攻撃しても、全く通用する気がしない、そんな圧倒的な実力差を見せつけられた。

 

「くっそ~! 俺が居たら、ちゃっちゃと倒してやったのに!」

 

 不貞腐れたような口調で呟くのは、風の剣士である「緋道 蓮」。普段から自分の実力に自信を持った物言いが特徴で鼻につく奴だけど、今の俺にはそれに反応することも出来なかった。

 

「俺のスピードなら、そいつの攻撃なんて全部躱せるしな!」

「蓮。お前の実力は知ってるが、奴のスピードはお前と同等以上だ。そう簡単に勝てる相手じゃない」

「賢人君は心配しすぎなんだよ~」

 

 戒める賢人の言葉にも蓮は半分程度しか聞いていない。それはあの剣士と直接会っていないからこその言葉だ。

 勿論、負けるつもりで戦う気は無いけど、それでもどうすれば勝てるのか、その糸口が見つからない。

 アーサーを使ってやっと相打ち。しかもあれはまだ本気を出してないように見えた。もし本気の彼女と戦うとなったら、今の俺では敵わないだろう。

 それに敵は彼女だけでは無い。メギドにカリバーもまた、どんどんと強くなっている。

 

「もっと強くならないと……」

 

 俺と同じことを倫太郎も考えていたようだ。賛同するように頷いて立ち上がる。

 

「俺は絶対に諦めない。この世界を滅ばされる前に、絶対にあいつを倒す!」

「残念ですが、その必要は有りませんよ」

 

 急に俺の言葉を誰かが遮った。聞き覚えの無い声。その主が誰なのかと辺りを見回す。

 

「あれを倒すのは我々の役目です。あなた方は関わる必要は有りません」

「っ、誰だ!!」

 

 いつの間にか、本棚に背を預けこちらに視線を向ける長身の若い男の姿がそこに有った。突然の侵入者に尾上さんが激土を握りしめて睨みつける。

 

「ああ、名乗るのが遅れましたね。私の名はタルス。サウザンベースの剣士です」

「サウザンベース……?」

 

 聞き覚えの無い単語に俺は首を傾げるけど、他の皆は驚いて目を見開いた。

 

「何でサウザンベースの剣士がここにっ!?」

「だーかーらー、強欲の剣士を倒すためだっての。少し考えれば分かるだろ?」

 

 頭上からまた別の声。視線を上に向けると、二階からもう一人の若い男が飛び降りてきた。その眼光は獲物を狙う獣さながらの獰猛さを隠していない。

 

「レボス、もう少し言葉は丁寧にするべきです。ここにはソフィア様も居るのですから」

「別に良いだろ。どうせここに居る剣士なんて、(なまく)らばかりだろうしな」

「何だと!!」

 

 明らかな挑発に蓮が怒りの表情を浮かべて掴みかかろうとする。だけどそれを尾上さんが制した。

 

「落ち着け蓮。ここで争うのは止めろ」

「でもっ!!」

「お、何だよ。やらないのか?」

 

 変わらずにやにやとした表情を見せつける、レボスと呼ばれた青年。そしてこの状況に呆れたような溜息を吐くタルスと名乗った青年。剣士を名乗った彼らは一体何なのかと思い、近くに居た賢人に小声で話しかけた。

 

「なあ賢人……サウザンベースってなんなんだ?」

「……サウザンベースというのは、こことは違う場所にある、ソードオブロゴスの本拠地だ。普段なら向こうの剣士がこっちに来ることはそうそう無いんだが……」

「聞こえてますよ、そこのお二方」

 

 突然声を掛けられて思わず体が固まる。

 視線を動かすと、タルスと名乗った青年が、和やかな表情を浮かべながらも、その瞳は鋭くこちらを見つめ、口を開いた。

 

「先ほども言った通り、私達がここに派遣された理由は、あなた方も出会った、あの強欲の剣士を打倒するためです」

「あいつを倒す……?」

 

 静かに、しかし自信に満ちた声で宣言したその内容に思わず聞き返す。実際に剣を交えて、強欲の剣士がどれだけ強力な存在か俺は知っている。それを難なく倒して見せると豪語したのだ。

 さすがにその言葉に、その場に居た全員が訝し気な表情を浮かべる。

 

「おい、あいつの強さを知っているのか? あいつは簡単に倒せるような相手じゃ「ちょっと煩いんだよねえ。少し黙っててくれない?」

 

 警告する尾上さんの言葉を、邪魔だと言わんばかりに青年が遮る。

 

「あれを倒すのは、我々に与えられた使命であると同時に、我が一族の悲願でもあります。あなた方はメギドの方に注力していてください」

「そう言うこと。それじゃ、せいぜい頑張りなよ~!」

 

 タルスの言葉にレボスが頷くと、そのまま二人は振り返ることなくノーザンベースから足早に出ていく。

 そんな傲岸不遜ともいえる態度に、遂に蓮が我慢の限界に達した。

 

「っ何なんだよあいつら!! 突然来たかと思ったら、勝手なことを言って!!」

「落ち着け蓮。ここで何を言っても仕方ないだろ」

 

 賢人が落ち着かせようとするけど、それでも蓮の怒りは収まらない。

 

「あーもう、ムカつくーっ!!」

 

 苛立ちを露にした叫び声がノーザンベースに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:エドナ】

 

「はっ!」

「ふんっ!」

 

 振るわれた刃がぶつかり合い、火花を散らす。

 私が相対しているのは、紫色の装甲を纏った剣士。それは深き闇を支配する剣士であり、私が一番会いたくなかった相手でも有った。

 

「全く、面倒この上ないっ!」

 

強欲な列車!

欲求一突!

 

 ワンダーライドブックを読み込んだ剣の切っ先から実体化した光の線路が、闇の剣士を捕縛しようとうねる。しかし、それを闇の剣士は自らの聖剣で、的確に防ぐと、お返しと言わんばかりに一冊のワンダーライドブックを聖剣で読み込んだ。

 

必殺リード!

ジャアク西遊ジャー

 

 すると刀身が朱いオーラに包まれ、一本の巨大な棍となる。

 

月闇(くらやみ)必殺撃!

習得一閃!

 

 それを振り回し、私を殴りつけようとする。だけどそれはワンダーライドブックの力によるもの。つまりは、欲望剣餓欲のエサ同然だ。

 オーラの棍が振り下ろされる度に、私はそれを剣で受け流す。その都度、零れ落ちたエネルギーは餓欲に吸収されていった。そうなれば、徐々に棍の方が実体化を保てなくなるのは当然と言えた。

 そして均衡は崩れる。

 

「そろそろ返すよ」

 

 そう言って私が剣を振るうと、溜め込まれたエネルギーが放出され棍を砕き、そのまま闇の剣士へ襲い掛かる。

 

「この程度っ!」

 

 だけどその斬撃は闇の剣の一振りで簡単に斬り払われた。やはりこいつは、他の剣士より幾分か実力は上のようだ。

 だけど一つ気になることがある。

 

「ねえ、あんた剣士なのに、どうしてメギドを守ってるの?」

 

 そもそもこの剣士と戦うことになった発端は、ニ十分ほど前に遡る。

 いつもにように、私に一方的に絡んできたメギドを倒そうとしたところに、突然こいつが現れてメギドを逃がしたのだ。

 本来、剣士とメギドは対立する存在。世界を自分達のものに塗り替えようとするメギドと、この世界の均衡を守るという名分を掲げる剣士。それが手を組むなど有り得ないはずなのだが……。

 私が問い掛けると、闇の剣士は静かに言葉を紡ぐ。

 

「……私が求めるのは、ただ一つの真理のためだ」

「真理?」

「そのためであれば、どのような道であろうと、決して止まることは無い!」

 

 そう叫ぶと、腰のホルダーに聖剣を納刀した。

 

月闇居合……

 

「ハアっ!!」

 

読後一閃!

 

 抜き放った刀身から放たれる闇の斬撃。その一撃に膨大なエネルギーが込められていることが分かる。

 ()()()()()()()()

 ベルトに剣を納め、トリガーを引く。

 

必殺黙読!

 

 迫りくる闇の斬撃。それに対し、私は真正面に向かって走り出す。

 

「なっ!?」

 

 斬撃を迎え撃つわけでも、躱すわけでも無く、ただ走り出した私に、闇の剣士は驚いた様子だったが、そんなことは関係無い。

 目前に迫る闇。それを私は正面から自らの体で受け止めた。

 

―ドォンッ!!―

 

 爆発音と共に全身に激痛が走る。衝撃で骨は砕け、熱で肉が焼ける。そんな痛み。

 ああ、こんな痛みは久しぶりだ。

 別に私は死にたいわけでも、傷つきたいわけでも無い。しかし、不老不死の身であるため、時にはこうして痛みを感じなければ生きているという実感が持てなくなる。

 そして私の痛みは餓欲の力で瞬時に、余韻を残すことも無く消えていく。それが少し名残惜しいと思いながらも、私はベルトに納めた餓欲のトリガーを再度引いた。

 

大蛇欲心撃!

 

 私は全身を包む爆炎を振りほどきながら、大きく跳んだ。

 

「ちっ、やはり!!」

 

 私が何者なのか理解していたのだろう闇の剣士に対し、私は軽く体を捻りながら右足を闇の剣士に向ける。

 

「はあっ!!」

 

 右足を紫色のエネルギーで包み込んだ私は、まるで一本の槍になったかのように、闇の剣士の頭上から蹴りを放つ。

 

必殺リード!

ジャアクドラゴン 月闇必殺撃!

 

 闇の剣士も対抗するように、闇の力が込められた剣を私に向けて振るった。

 空中でぶつかる私の蹴りと闇の斬撃。その衝撃で近くに生えていた大木も根元から折れる。

 だけどいくら闇の剣士の力が強かろうと、私の前では等しく無意味だ。

 

「はあっ!!」

 

 もう一度力を込める。ただそれだけで天秤はあっけなく傾いた。闇の斬撃は霧消し、私の蹴りが見事に闇の剣士の胸元へと吸い込まれていった。

 

「ぐあっ!!」

 

 必殺の一撃を受け、吹き飛ばされる闇の剣士。その衝撃で変身が解け、壮年の男性の姿が露となる。

 

「さて……どうしようかな」

 

 私の目的の為に、こいつのワンダーライドブックを奪うのが一番いいんだろうけど、今はあまり気が乗らない。それに、こいつの欲は少し面白そうだ。どうせ結末は変わらないのだから、見逃してあげよう。

 

「ああ、そうだ」

 

 一つ言い忘れていたことを思い出して、倒れた闇の剣士に視線を向けた。彼は悔し気な表情を浮かべこちらを睨みつける。

 そんな彼に、私はメギド達へ向けた伝言を伝えた。

 

「あんた達が何をしようが私には関係ないけど、最後にこの世界を手に入れるのは私だということを覚えておいて」

 

 そして私はその場から立ち去る。

 さて、少し本気を出したせいか眠くなってきた。しばらくどこかで休んでいよう。

 そう考えて私はワンダーワールドから抜け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:カリバー】

 

 傍らに生えていた木で痛む体を支えながら、私は立ち上がった。

 あれが強欲の剣士……予想以上の力だ。かつて、組織の剣士達が総出で立ち向かいやっと封印できたという話は本当だったらしい。

 

「……この世界を手に入れるのは、か」

 

 理由は不明だが、あれは世界を滅ぼすのが目的とされている。つまりは組織と相対する存在。ならばこっちが無暗に手を出す必要は無いだろう。剣士達と争っている間に、こちらは計画を進めればいい。

 だがいずれその時が来たならば、決着を付けなくてはならない。そのためにも、いち早くあの本を完成させなければ……。

 

「私は必ず……」

 

 戦友だった男の顔を思い出しながら、私は懐から取り出した空白の本を見つめる。

 必ずや真実を暴いて見せる。その決意を表すように、月闇の刃が鋭く光った。




【必殺技設定】
「大蛇欲心撃」
●欲望剣餓欲を覇剣ブレードライバーに納刀し、2回トリガーを引くことで発動する必殺技。紫色のオーラを纏った右足で放たれるキック。
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