剣士列伝 仮面ライダーシャムシール   作:雪見柚餅子

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気が付いたら評価バーが赤くなっていてびっくりしました。
拙作を読んでいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。


第7章 一族の罪、断ち切るために。

「ボンヌ・レクチュ~ル! 僕はタッセル」

 

「……って呑気に挨拶をしている場合じゃないんだ!!」

 

「何と世界を滅ぼそうとした不死身の剣士の一人、バハトが復活してしまったんだよ!」

 

「しかも彼は、禁断の破滅の本を開いて、世界を滅ぼそうとしている真っ最中! このままでは世界が全て無に消えてしまう!」

 

「急ぐんだ剣士達! 世界の命運は君達の手に……うわあああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:エドナ】

 

 私の眼前に広がるのは、現実世界とワンダーワールド全てを飲み込み消し去る虚無の穴。破滅の書によって作られたそれは、本が閉じられるまで消えることは無い。

 

「さて、どうなるかな?」

 

 この状況に気付いた剣士達は、バハトを止めるべく駆けるものの、それを阻むように怪人シミーが溢れ出た。一人また一人と、他の剣士を前に進めるべくシミーの足止めを請け負うことで、バハトへの道を作りあげていく。

 そして残ったのはたった一人。あのキングオブアーサーに選ばれた炎の剣士だ。

 私は彼のことをそれなりに気に入っている。だからこのまま見逃してあげても良いとは思うけど、一応バハトと約束をしたのだ。残念だけど、彼にはここで止まっていてもらおう。

 そして私は一歩足を踏み出そうとした……。

 

「見つけましたよ、強欲の剣士!」

 

 だけどそんな私に水を差す無粋な連中が現れた。

 

「お前をここで倒して、俺達ゴート一族の汚名を雪ぐ!」

 

 振り向いた先に居たのは、まだ若い二人の青年。言葉からして、どうやらあの家の末裔……私の兄弟の子孫なのだろう。

 その手に握られているのは、二振りの剣。その内一本には見覚えがある。

 

魂魄剣深魂(こんぱくけんみたま)……」

 

 それは私の父が所持していた剣。死者の魂を操り、自らの力に変える聖剣だ。

 もう一本には見覚えが無いため、この600年の間に打たれた剣だと予想できる。

 

「行きますよレボス!」

「ああ!」

 

 二人はそれぞれワンダーライドブックを取り出して、その表紙を開く。

 

百夜怪談!

とある亡霊達が集う、恐ろしき夜の出来事……

 

猛獣王列伝!

この荒ぶる獣を止められる者は誰も居ない!

 

 起動させたワンダーライドブックを、一人はベルトのバックルに、もう一人は剣の鍔に装填するのを、私は冷めた目で見ていた。

 

「ふぅん、仕方ないか」

 

 こいつらの目的は私。あんまり気乗りはしないけど、やるしかなさそうだ。

 

ムゲンウロボロス

かつて全てを貪り喰らった蛇の王が今、蘇る!

 

 私もワンダーライドブックを起動させて、ベルトに装填する。

 そして一人は剣の柄でバックルを押し、一人は剣のトリガーを引き、私は餓欲をベルトから引き抜く。

 

「「「変身!」」」

 

 その瞬間、私を含めた三人の声が重なった。

 

Don't fear! The one hundred souls turn into the your force.

百夜怪談!

 

 魂魄剣深魂を手にした青年は、その剣を脇構えから振り抜くと、ライドブックから溢れ出た霊魂によってその身が包み込まれる。

 

黒鉄(くろがね)皆伝!

鉄鋼王! 激昂王! 猛獣王列伝!

 

 見知らぬ剣を手にした青年は、細身の剣を大きく振り回し、ライドブックから現れた虎の影と一体となる。

 

抜刀!

ムゲンウロボロス

 

 私もまた、聖剣を地面突き刺し、ライドブックから姿を現した大蛇をその身に宿す。

 

深魂解読! 冥府の剣が彷徨う魂を支配する!

獰猛な刃が己の道を切り開く!

餓欲! 飢え渇く剣が喰らい尽くす!

 

 三者三様の変身によって、その身は鎧を纏った剣士へと変化した。

 目の前に居るのは二人の剣士。一人は懐かしい、あの父と同じ鎧姿。薄紫色のスーツに黒みがかった銀色の装甲を纏ったそれは、正しく亡霊剣士と言って良いだろう。

 もう一人はそれとは打って変わり、どこか生物感を漂わせる。顔の装甲は獣の爪痕のようになっており、全身にはまるで虎や豹を思わせる紋様が走っていた。

 

「はあっ!」

 

 そんな感想を抱いている間に、魂の剣士―エストックが私に挑みかかる。

 その鋭い突きを躱しながら、餓欲を振るうけど、それはもう一人の剣士によって防がれ火花が散る。

 

「喰らいやがれ!」

 

 もう一人の剣士が餓欲を弾き、その勢いのまま斬りかかる。だけど動きは読みやすい。私はバックステップで避ける。

 

「でやっ!」

 

 だけどその剣士をブラインドにして跳躍したエストックが、頭上から剣を振り下ろしてきた。それを私は餓欲で防ぐ。

 

「っ!」

 

 しかしすぐにそれも囮だと気付いた。

 今度はエストックの背後からもう一人の剣士が、姿勢を低くしながら剣の切っ先をこちらに向けて突進してきた。

 

「ふっ!」

 

 すぐさま私はエストックを蹴り飛ばし、その勢いで回避しようとしたが、一歩遅かった。僅かにその一撃が装甲を切り裂いた。

 ダメージはそれほどではないけど、それでも予想以上にこいつらの動きが良い。

 

「はぁ……」

 

 思わず溜息が零れる。

 ()()()()()のくせに、ここまでやるなんて……。

 やるせない気持ちは消えないけれど、私は再び襲い掛かって来た二人の剣士を迎え撃つべく再び剣を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:タルス】

 

 私達が強欲の剣士との戦闘を開始してから早数時間。戦況はこちらが有利と言えました。

 確かに不死身の体に幾ら傷を付けても、すぐに回復します。ですがそれは全く無駄というわけではありません。奴の体は高速で回復してはいますが、ダメージや疲労が消えるわけじゃない。

 奴の回復する速度は僅かではあるが少しずつ遅くなっています。それが奴のダメージを如実に表していました。

 

「はっ!」

「その程度っ!」

 

 私が放った渾身の突きは剣で弾かれましたが、それを囮として今度はレボス―虎徹が背後を狙って剣を振るう。

 

「喰らえっ!」

 

 鋭い一撃。だが奴はそれを横に転がりながら回避して見せました。

 

「……面倒としか言いようが無いね」

 

 奴は何でもないように言っていますがが、その息が荒いのが分かります。

 これが我ら一族が何百年もの時を掛けて築いた成果。この世界を混乱に陥れようとする者を倒すべく、先祖代々積み上げた戦技。その力が確実に奴を追い詰めていました。

 

「破滅の本も止めなくてはいけませんからね。さっさと倒させてもらいますよ!」

 

 今はノーザンベースの剣士達が不死身の剣士を相手をしていますが、彼らの力ではどれだけ保つかは分かりません。さっさとこちらを片付けて、助成に向かわなくては……。

 

「……ん?」

 

 しかし、まるで私達のことが眼中に無いかのように、奴の視線は全く別の方向へと向けられています。その先に有るのは、あの虚無の剣士が居る方向。

 

「中々やるね……やっぱりあっちの方が面白そうだ」

「余所見している暇なんてあるのかよ!」

 

 レボスが斬りかかるものの、それは容易く防がれる。

 やはりただの攻撃では無く、向こうのバランスを崩す一撃を与えなくてはいけません。そのためには……

 

「レボス、あれで行きましょう」

「オーケー」

 

 私の指示にレボスは応えると、手にした聖剣「鉄鋼剣黒鉄(てっこうけんくろがね)」を脇に構えると、鍔についたスイッチを押します。

 

必殺鋼読(こうどく)!

 

 聖剣に力が宿り、エネルギーを迸らせる。

 

「行くぜ!」

 

 そして勢いよく走り出したレボスは再度スイッチを起動。

 

黒鉄斬鉄閃!

 

 溜め込んだエネルギーを直接力に変えて放たれる斬撃。

 

「くっ!」

 

 奴もまた聖剣で防ぐものの、勢いを殺し切れず押し込まれていく。それもそのはず、鉄鋼剣黒鉄は奴の餓欲の天敵とも言うべき性能を持っているのですから。

 欲望剣餓欲。それはあらゆる聖剣やワンダーライドブックが持つエレメントを吸収するというもの。剣士にとっては存在そのものが厄介な相手です。

 しかし、対抗策が無いわけではありません。その一つが、吸収できるのは放出された力しか吸収できないという点。体内に巡る力までは吸収出来るわけでは無いため、変身を直接解除させるような真似は出来ませんし、そもそもエレメントを纏わない攻撃に対してはその力を十二分に発揮させられません。

 鉄鋼剣黒鉄は鉄の属性を持つ聖剣。その力は外側へ放出するのではなく、内部で蓄積することで斬撃の強化、刀身の強度上昇に特化しています。そのためエレメントを放出することで真価を発揮する他の聖剣と異なり、餓欲によってその力を吸収されづらいという大きな特徴を持っているのです。

 その鉄鋼剣黒鉄の力を発揮した一撃。ですが奴を追い詰めてはいるものの、それだけでは決め手にはなりません。だからこそ、この瞬間を逃すわけにはいかない。

 私はバックルからライドブックを取り、深魂の切っ先へと翳した。

 

必殺リード! 百夜怪談!

 

 欲望剣餓欲のもう一つの弱点。それはエネルギーを吸収できるのは刀身部分のみであるということ。刀身に触れなければ、防がれることは無い。

 

深魂必殺撃!

 

 ライドブックから力を取り込んだ剣が銀色の光を放つ。そして私はそれをレボスが抑え込んでいた強欲の剣士に向かって振るう。

 

「妖魔百閃!!」

 

 聖剣から幾重もの光弾がミサイルのように放たれる。

 

「おらぁっ!!」

 

 そしてレボスが勢いよく腕を振るい、奴を吹き飛ばします。その勢いに抗うことが出来ず、奴は体勢を崩したまま光弾に直撃。大きな爆発が巻き起こり、土煙が辺りを覆いました。

 

「へっ、どうだ!」

「レボス、油断をしてはいけませんよ」

 

 まだ奴を倒せたわけでは無いはずです。私は深魂を握り直して、もうもうと土煙が舞うその場所を睨みつけました。

 

「……」

「っやはり!」

 

 土煙の中からゆっくりとした足取りで現れたのは、五体満足の強欲の剣士。予想通り、そのダメージは完全に回復していますが、少し動きがぎこちなく感じる。それを疲労によるものと判断した私は、奴へ会心の一撃を叩きこむためにとあるライドブックを取り出そうとして、ふと気づきました。

 奴の注意がこちらに全く向いていないという事実に……。

 

「ふぅん、またあの力がね……」

「何?」

 

 ふと気になって奴の視線の先を見ると、そこには驚くべき光景が有りました。

 地面から空へと昇る紅の龍。そして全てを飲み込もうとする破滅の書から現れた白と黒の龍。この三体の龍が重なり、眩い光を放ったのでした。

 

「な、何だこれ!?」

 

 その輝きにレボスは呆然とします。

 ですが私にはこの光景に覚えが有りました。それは昔、私が強欲の剣士にまつわる記録を読んだ時のこと。強欲の剣士とその仲間である二人の破滅の剣士。彼らを封印するために生み出されたワンダーライドブック。その誕生の瞬間を記した文章にはこのように書かれていました。

 

 

 

―破滅の書より解き放たれる二つの希望―

 

―災いを恐れぬ勇気と交わるとき―

 

―滅びを退ける輝きの中で、未来を切り開く力が生まれん―

 

 

 

 この光景はまさにその記録とそっくりでした。

 

「……今のバハトじゃ、これは難しいかな」

 

 ふと我に返ると、奴はいつの間にか桃色のライドブックを取り出してこちらを見つめていました。

 

「生憎だけど、もう戦う意味が無くなったから、帰らせてもらうよ」

「そんなこと……っ!」

 

 奴を止めようと動き出しましたが、それよりも奴がライドブックを剣に翳す方が早かった。

 

夜桜奇譚

強欲な夜桜!

欲求一突!

 

「くっ!?」

「じゃあね……」

 

 奴の聖剣から大量の花びらが舞い散り、私達の視界を封じます。その量はまさに花びらの嵐と言って良いでしょう。

 そして旋風が止んだ時、そこには既に強欲の剣士の姿は有りませんでした。

 

「ちっ、逃げやがった!!」

 

 まんまと奴に逃げられたことにレボスは怒りを露にしますが、この戦いにも意味は有りました。

 私達の力は強欲の剣士に十分通じるということ。きっと()()()()()()()()()()()()を使えば、倒すことも可能なはず。

 

「今は悔しがっている場合じゃありませんよレボス。今は破滅の書を……」

「……そうだな。よし、行くぞ!」

 

 そしてレボスを追いかけるように私も走り出します。懐に金色のワンダーライドブックを潜ませながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:エドナ】

 

「……面倒だったな」

 

 私はワンダーワールドの僻地で大木にもたれ掛かりながら呟いていた。

 まさか、あの一族の連中とまた会うなんて。未だに私を目の敵にするとは、随分と恨みがましい。しかも餓欲の弱点を理解した戦い方をしてきたのが厄介だ。

 あの連中はまた私を狙って来るだろう。そう考えると憂鬱で仕方ない。

 

「……まあ、どうでも良いか」

 

 あんな連中のことを考えるよりも、他のことの方が大事だ。

 あの炎の剣士が、キングオブアーサーに続いて、破滅の書に隠された力すら引き出すとは思ってもみなかった。厄介な相手が増えたことに変わりは無いが、面白いと思う感情も有る。

 しかし、あの力を手にしたということは、きっとバハトも破滅の書も封印されることだろう。そうなれば破滅の書はソードブロゴスの手に渡り、禁書庫へと封じられるはずだ。

 つまり私も目的のためには、禁書庫があるサウザンベースへと侵入する必要があるということ。しかし、今の私はサウザンベースへと繋がるブックゲートを持っていない。さてどうしたものか……。

 

「……ちょっと待てよ?」

 

 むしろ今の状況はチャンスなのでは無いだろうか。静かに今の私が置かれている状況を思い起こし、整理する。

 うん。これなら私の目的へ大きく近づくことが出来る。問題は、向こうが行動するのをただ待つしか無いわけだが。

 

「……仕方ないか」

 

 今はとりあえず腹ごしらえでもしようか。そう考えて、私は聖剣の力で現実世界への扉を開いたのだった。




【キャラ設定】
タルス・ゴート/仮面ライダーエストック
●エドナの兄弟の末裔。サウザンベースの剣士であり、その中でも高い立場に有る。
●基本的には温和な性格だが、組織の使命に忠実であり、それに反する者には容赦がない。
●かつてゴート家は神代家と同格の立場に有ったが、600年前のエドナの離反によって立場が下がった。
●名前の由来はギリシャ神話の神「タルタロス」から。

仮面ライダーエストック
●「深魂解読! 冥府の剣が彷徨う魂を支配する!」
●タルス・ゴートが霊剣エストックドライバーと百夜怪談ワンダーライドブックを用いて変身した姿。メインカラーは銀と紺色。
●用いる聖剣の名は『魂魄剣深魂』。『魂』の属性を宿す。歴代の剣士の記憶を保存しており、戦闘時にはその記憶に基づいた動きを再現することが出来る。ゴート家が代々受け継いできた聖剣でもある。

百夜怪談
●「とある亡霊達が集う、恐ろしき夜の出来事……」
●物語のジャンルに属するワンダーライドブック。エストックの変身に用いられ、霊魂を支配する力を与える。カラーは銀色。1ページ目には積み重なった髑髏の絵が描かれており、2ページ目には「数多の亡霊が聖剣と宿り身に宿る」と記載されている。
●元ネタは「百鬼夜行」と「四谷怪談」。



レボス・ゴート/仮面ライダー虎徹
●タルスと同じ一族の青年。サウザンベースの剣士の一人でもある。
●立場としては、タルスが本家に当たり、レボスは分家。
●性格は粗野。しかしタルスのことは信頼しており、彼の言葉には真面目に従う。

仮面ライダー虎徹
●「獰猛な刃が己の道を切り開く!」
●レボスが鉄鋼剣黒鉄と猛獣王列伝ワンダーライドブックを用いて変身した姿。メインカラーは黒とグレー。
●『鉄鋼剣黒鉄』は『鉄』の属性を宿す日本刀型の聖剣。鍔にライドブックを装填し、トリガーを引くことで変身する。またスイッチを押すことで必殺技を起動する。他の聖剣と比べると特殊な性能を持たない代わりに、単純な強度は大きく勝る。

猛獣王列伝
●「この荒ぶる獣を止められる者は誰も居ない……」
●生物のジャンルに属する灰色のライドブック。虎徹の変身に用いられる。1ページ目には牙を剥いたトラの絵が、2ページ目には「獰猛な野獣が聖剣と交わり身に宿る」と記載されている。
●元ネタはシートン動物記の「動物英雄伝」。



【ワンダーライドブック設定】
夜桜奇譚
●「この美しく散る花に誰もが目を奪われる……」
●生物のジャンルに属するワンダーライドブック。カラーは桃色。
●エドナが持ち出したワンダーライドブックの一つ。主に餓欲にリードして目くらましに使う。
●元ネタは能の「西行桜」。
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