ハイスクールDATE・A・LIVE~無限の剣を担う王~ 作:月見花
秘密を打ち明けて、数日。俺は珍しく一人で外出していた。
「こんなの久しぶりだな」
別に決まり事でもないのに、外に出る時には必ず誰かと一緒だった。勿論それが苦痛になるなんて事は無いが、たまにはこういうのも悪くない。
そんな事を考えながら、俺は公園まで来ていた。特に理由があった訳では無い。ただ、何の当ても無く歩いていたらここに着いただけである。休日ではあるのだがあまり人影は無く、砂場や滑り台で子供が遊んでおり、その付き添いで親も何人かいるといった感じである。
平和。まさにそのものである。
「何するかなぁ」
ベンチに座りながら一人呟く。家事は全部終わらせてしまったし、ガラクタの修理も終えてしまった。こうなると趣味の少ない俺は時間を持て余す。もっと趣味を増やすべきだろうか。
「シロウさ~ん」
「ん?」
そんな感じで悩んでいると、聞き覚えのある声が公園に響いた。入口の方を見てみるとそこには一人のシスターがこっちに向かって走ってきて、
「あうっ!?」
こけた。
「だ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です・・・」
結構な勢いで地面にダイブしたので心配だったのだが、思ったよりも傷が少なかった。暫くして、自力で立ち上がり服に着いた砂を払って身なりを整えると、こちらに向かってお辞儀をしてきた。
「お久しぶりです、シロウさん」
「久しぶり、アーシア」
それは先日教会まで送り届けたシスター、アーシア・アルジェントだった。
「あぅぅ・・・」
現在俺の目の前では、かなり不思議な事が起こっている。某ハンバーガーショップのレジの前で困惑するシスターと、どう対応したらいいのか困惑する店員。
どうやらアーシアはこの手の店は初めてらしく、如何すればいいのか分かっていない様だ。
「・・・」ウルウル
アーシアが捨てられた子犬の様な目でこっちを見ている。仕方ない。
「すみません、俺と同じものをもう一つ下さい」
「は、ハイ!かしこまりましたー!」
何とか注文を終えて、商品を受け取り近くの席に着く。
「一人では注文も出来ないなんて・・・」
そう言いながら落ち込むアーシア。
「まあ、仕方ないさ。初めてだったんだろ?それよりも冷めないうちに食べよう」
しかし、アーシアはハンバーガーをまじまじと見つめるだけで手を付けようとしない。まさか食べ方が分からないとか?
「これはこうやって食べるんだ」
包み紙を剥がしてかぶりつく。うん、美味いが体に悪そうな感じがする。いつも道理の味だ。
「そ、そんな食べ方がっ!すごいです!」
そう言って早速ハンバーガを食べる。
「すごく美味しいです!」
笑顔を輝かせて嬉しそうにするアーシア。その後も小さな口をもごもごと動かしてハンバーガーを食べる。
「こういうものは食べた事が無いのか?」
「はい。テレビで見た事はあったんですけど、食べるのは初めてです。いつもはパンやスープ、あとはお野菜やパスタ類を食べてます」
やはり教会だから、食事は質素なものが多いのか。だが俺の知ってるシスターはいつもカレーを食べていたような・・・。あれは例外か。
「そうか。まあ、ゆっくりよく噛んで食べるんだぞ」
「はい」
「そう言えば、アーシアはこの後何か予定はあるのか?」
何となく聞いてみる。
「はい。まだこの町に来たばかりなので、色々な場所を見て回りたいと思っています」
「それなら案内しようか?」
「良いんですか?」
「まあ、暇だったしな」
「なら、よろしくお願いします!」
「わぁ・・・!」
大音量のBGMに煌々と輝くディスプレイ。それとごった返す人の群れ。ゲームセンターである。何故こんな場所に来たかと言えば、偶々通りかかった所アーシアが興味を持ったからである。
しかし、久しぶりに来たな。俺一人ではあまりこういう所には来ない。いつもは耶倶矢や夕弦、たまに美九などに連れられて来る程度。なので俺もさほど詳しくは無い。しかし、折角来たのだ。何かで遊んでみるか。
「アーシア何かしてみるか」
「はいっ!」
そう言って辺りをきょろきょろと見回す。すると、アーシアは突然歩き出す。俺も後をついて行ってみると、そこにあったのはクレーンゲーム。中には有名アニメのキャラクターのぬいぐるみが入っていた。
「かわいいですねぇ・・・」
「これ、やってみるか?」
「ええっ!?わ、私には無理です!」
「ま、何事もチャレンジだ」
そう言って、投入口に百円玉を入れる。直後に流れる軽快な音楽に慌てるアーシア。
「あわわわわわ・・・!?」
「落ち着け。まずはこのボタンを押してだな」
おっかなびっくりではあるが、アーシアは俺の話を真剣に聴いて、アームを操作する。ぬいぐるみの上まで持って行ったアームはそのまま降りて行き、ぬいぐるみを持ち上げる。しかし、捕まえたはずのぬいぐるみはするりと脇から落ちてしまった。
「あう~」
「惜しかったな」
落ち込むアーシアを慰める。まあ、そこそこ大きい奴だったし一発で取るのは難しかったか。
「じゃあ、今度は俺がやってみるぞ」
さっきと同じ手順でゲームをスタートさせて、アームを動かす。
(狙うのはあそこだな)
ぬいぐるみに着いた大きめのタグ。あそこに爪が入りさえすれば取る事が出来るだろう。
タイミングを計って手元のボタンを離す。
アームは狙い通りにぬいぐるみのタグに向かって降りて行き、しっかりと掴む。そのままゆっくりぬいぐるみは持ち上がり、途中で落ちる事無く無事に取る事が出来た。
「すごいです、シロウさん!」
「ありがとな。ほら」
取ったぬいぐるみをアーシアに渡す。アーシアは目を輝かせて渡されたぬいぐるみを見ていた。
「頂いても良いんですか?」
「まあ、俺が持っててもな。その代わり大事にしてくれると嬉しい」
「はいっ!」と元気よく返事をすると大事そうに抱きしめる。
「さて、まだ時間もあるんだし、目一杯遊ぶか」
「今日は楽しかったですね」
「ああ」
始めに居た公園のベンチに腰かけながらアーシアが嬉しそうに言う。
俺達はクレーンゲームで遊んだあと、他にも色々な物で遊んだ。シューティングゲームで俺がとんでもないスコアを叩きだして、周囲の人に驚かれたり、アーシアとプリクラを撮ろうとしたら、コスプレと間違えられたアーシアが服を剥ぎ取られ、コスプレをさせられた状態でプリクラを撮ったりした。(服はその後返してもらった)
「・・・私、夢だったんです。こうやって誰かと一緒に遊んだりするのが」
「・・・アーシア?」
先程とは打って変わって、笑顔を曇らせて俯き、自身の事について語りだすアーシア。
「先日お見せしましたが、私には傷ついた方を癒す、不思議な力があるんです」
「・・・
「ご存じなんですか?」
「まあ、ちょっとな」
それから聞いた彼女の人生は壮絶だった。
赤ん坊の時に両親に捨てられ教会の孤児院で育てられた事。
偶然傷ついた子犬を
自らの信仰の為、聖女として他の多くの信者を癒すも、たった一度だけ傷ついた悪魔を癒した事により、魔女と呼ばれ追放されてしまった事。
「これも私の信仰が足りないせいなんです。これは主が私に与えた試練。だから今は我慢の時なんです」
そう言いながらも、彼女の目からは涙が零れていた。
「それでも、偶に思ってしまうんです。いつか沢山お友達が出来て、今日みたいに遊んだり、お買い物をしたり・・・お喋りしたり・・・」
アーシアは言葉を紡ぐほどに涙を溢れさせる。そんな彼女を俺は抱きしめた。
「し、シロウさん・・・?」
「俺にはアーシアの苦しみは分からないし、分かってやる事も出来ない。俺はアーシアじゃないからな」
その言葉を聞き、辛そうに顔を歪めるアーシア。俺は話を続ける。
「でも友達にはなれる。今日みたいに一緒に遊んだり、買い物したり、話をしたりな。だからもう泣くな。夢なら出来る範囲でなら叶えてやる。もっと友達が欲しいなら俺の家族も紹介してやる。ちょっと騒がしいけど皆良い奴らだから、アーシアもきっとすぐ仲良くなれるさ」
アーシアの頭を撫でながらそう告げる。
「今まで頑張ってきたんだ、そろそろ自分の幸せを望んでも良いと思うぞ」
「・・・本当に、良いんでしょうか?」
「俺が保証する」
そう言った途端、アーシアは俺の体を抱きしめて泣き始めた。今まで溜め込んでいたものを全て吐き出すように。
俺は何も言わず、ただ、アーシアが落ち着くまで頭を撫で続けた。
それから数分経った頃、ようやく落ち着いたアーシアが抱き付いたまま上目づかいで俺を見てくる。
「シロウさん。本当に私とお友達になってくれるんですか?」
「勿論だ」
そう言うと、アーシアは笑顔で「よろしくお願いします!」と言ってきた。
俺は「こちらこそ」と返す。
パチパチパチ
そんな中何処からか拍手の音が聞こえてきた。
「いや~、感動的ですなぁ~」
公園の雑木林の中出てきた男。それは先日のはぐれ