ハイスクールDATE・A・LIVE~無限の剣を担う王~ 作:月見花
どうぞ。
「敵地に乗り込むですって!?」
「ああ」
公園での出来事の後、俺はグレモリーにその事を話し、そして俺が教会に乗り込むことを伝えた。本来なら伝える必要など無かっただろうが、ここがグレモリーの管轄である事と、協力者としての最低限の情報提供はしなくてはいけないと感じたのからである。
「ダメよ!幾らなんでも危険すぎるわ!」
グレモリーの言う事も尤もだろう。敵の目的も戦力も何も分かっていないこの状況で、敵地に乗り込むなんてあまりにも危険な行為だ。だがその程度の事、俺は幾度となく経験してきた。たいした問題じゃない。
「別に手を貸して欲しい訳じゃ無い。それにこれは俺の責任でもある」
「あっ、ちょっとまっ…」
俺はグレモリーの言葉を最後まで聴く事無く、部室の扉を閉めた。
「待っててくれ、アーシア」
部室を出て、そのまま教会へと向かう。時間は深夜。誰も居ない道を強化した足で全力疾走する。
元々そう遠くは無いので、直ぐに目的地の前に着く。
パッと見た限りでは門から教会の入り口までに敵の影は無い。一応解析もしてみたが罠の類も一切無かった。
それなら遠慮なく行かせてもらう。
「ちょっと待って、衛宮君!」
「私達も一緒に行きます」
「木場に塔城、それに折紙も」
俺が教会に突入しようとした矢先、それを呼び止める木場と塔城と折紙。何故此処に?
「部長に頼まれたんだよ。君を手助けするようにって」
「先輩には色々お世話になっていますから。今度は私達がお手伝いします」
「私も、貴方の力になりたい」
「……そうか、助かる」
まさか協力してくれるとは思っていなかったので驚いた。とは言え、木場と塔城は悪魔で実力はある方だし、折紙も訓練の成果が出ている。ありがたく協力してもらおう。
「よし、行くぞ」
門から聖堂まで一気に駆け抜ける。中は一見普通の教会だが、頭部の破壊された聖人の像が不気味な雰囲気を醸し出している。
パチパチパチ
「待ってましたよぉ、クソ悪魔&クソ人間君。再会だねぇ!感動的だねぇ!」
柱の陰から姿を現したのは白髪のはぐれ
「俺としては二度と合う悪魔なんていないと思ってたんだけどね~。ほら、俺様超強いじゃん?一度会ったらソッコーで首チョンパしてたんすよ。それなのにさー、クソ悪魔どころかクソ人間にまで再会するとかマジないわー。しかも、クソ人間君は俺様をボコボコニしてくれちゃってさぁ…。この抑えようの無い怒りをYOU達にぶつけるしかないじゃん!」
子供の様に癇癪を起こした後、懐から銃と剣の柄を取り出す。そして光の剣を出現させ、俺達に突き付ける。
「てめーら、どうせアーシアたんを助けに来たんだろう?なら急がなくちゃ大変な事になっちゃいますにゃあ~」
「分かってるならさっさと退け。今はお前に構ってる暇は無い」
「おお怖っ!激おこですか~?血圧上がっちゃうよ?」
「……
これ以上こいつと話ても時間の無駄だと判断し、夫婦剣を投影する。さっさと片付けよう。
木場は魔剣を創り出し、折紙も構えを取っていつでも戦える状態になっている。
「潰れて」
そんな中塔城は、置いてある長椅子を持ち上げてフリードに向かって投げつける。
「わーお!しゃらくせえ!」
フリードは小躍りしながら、投げつけられた長椅子を光の剣で両断していく。
「そこだ!」
木場がタイミングを見計らい、駆ける。中々のスピードだ。
「おわっと。危ないじゃん!」
木場の魔剣を光の剣で受け、銃口を木場に向ける。そこから音も無く放たれる弾丸を、木場は体を捻って躱し、またフリードと剣戟を重ねていく。
数度切り結び、鍔迫り合いになる二人。
「やるね、きみかなり強いよ」
「あんたもやるねぇ。無駄の無い動きにそのスピード!うんうん、テンションアゲアゲですよ!マジぶっ殺す!」
「それじゃあ、僕も少し本気を出そうかな」
そう言うと、木場の魔剣が黒く染まっていく。それして魔剣を染める黒は、光の剣を侵食し始める。
「な、なんだこりゃ!?」
「
「て、てめぇも
フリードが木場の剣に驚愕している間も、闇は光を喰らい続け、ついには剣の形を保てなくなった。
「今」
相手が動揺している事をチャンスと見て、折紙がフリードに肉薄する。
「おっと、君は初めましてでございますね~、そしてすぐさまサヨナラでございますよ!」
フリードは銃口を折紙に向け、引き金を引く。しかし、折紙は放たれた弾を紙一重で避け懐に潜り込み、フリードに拳を叩き込む。
「グハッ」
折紙の一撃によろめくフリード。さらに、体重を乗せた回し蹴りを放ち、折紙はフリードを吹き飛ばす。
吹き飛ばされたフリードは後ろの壁に激突する。その衝撃で一瞬体が硬直し、隙だらけになったフリードに止めをさそうと夫婦剣を振るう。
「これで終わりだ!」
ザシュッ
「グアッ!?」
渾身の力でフリードを切り裂く。鮮血を周囲に撒き散らし、フリードはその場に崩れ落ちる。
「クソッ…!?クソッ…!?ふざけんなよ。この俺様が…!?」
床に倒れたまま口から血を吐き、それでもなお悪態をつく。想像していたよりもダメージが浅い事を不思議に思ったが、どうやら斬られる瞬間に、使い物にならなくなった剣の柄を防御に使ったらしい。器用な奴だ。
「クソ悪魔に加えてクソ人間にまで…!っざけんなよ!!」
そう言うと、奴は懐から何か取り出した。あれは確か目眩まし!
カッ
フリードがそれを床に叩きつけた瞬間、閃光で視界が白く染まる。
光が止み、視界が戻ると、そこに居た筈のフリードはボロボロの姿のまま俺達と距離を取っていた。
「あークソ。マジでないわぁ~。俺様マジピンチじゃん。ちょーヤバいじゃん。でもでも、俺様的にこのままクソ悪魔とクソ人間に殺されるのはマジでないわけでぇ~。退散させていただきまっす!」
そう言いきった後、足元に魔法陣を出現させた。
「あーそうそう。君、士郎君って言ったっけ?俺、君にフォーリンラブ。絶対に殺すから。絶対だよ?そん時まで首でも洗った待ってな。んじゃ、ばいちゃ」
そう言うとどこかに消えてしまうフリード。
「逃がさない」
「待て折紙。今はあいつよりもアーシアの方が先だ」
フリードを追いかけようとする折紙を引き留めて、落ち着かせる。正直、逃がすのは惜しいがアーシアの命が懸っている以上、あいつを追いかけている暇など無い。
「でも、肝心のアーシアさんは何処にいるんだろう?」
「それなら任せろ」
木場の問いに、俺は床に手を当てながら答える。
「
魔術回路に撃鉄を落とし、魔力を通す。すぐさま頭の中に浮かぶのは教会の構造。
(……ここかっ!)
一見普通の教会だが祭壇の下に何か別の空間がある。おそらくはそこにアーシアが居るのだろう。
「こっちだ」
俺は皆を連れて祭壇まで行く。そこには案の定、地下へと続く階段があった。
「行くか」
その言葉に全員が頷き、俺達は階段を降りていった。
そう長くない階段を降りて行くと、そこには一本の通路。そしてその先には大きな扉があった。
「あそこか」
迷い無く進んでいき、扉の前で立ち止まる。中には複数の気配。
「中には堕天使やフリードみたいな
「勿論だ」
木場の忠告に他の二人も頷く。そしていざ扉を開けようとした時、扉は独りでに開き、祭儀場が露わになる。中には大勢の神父。全員が光の剣を構えている。そしてその奥には十字架に磔にされたアーシアの姿があった。
「アーシア!」
「…シロウさん?」
俺の呼びかけに気付き、アーシアがこちらに目を向ける。
「遅くなったな。今すぐ助ける」
「感動の再会の途中悪いんだけど、少し遅かったわね」
そう言いながら奥から現れたのは、堕天使特有の黒い翼を生やした天野だった。
「いらっしゃい、衛宮士郎。そして悪魔の皆さん」
「おい、遅かったとはどういう事だ?」
「どうもこうも、もう儀式が完了したからよ」
儀式?一体何の……?
突然、アーシアの体が光り出す。
「ああ、いやアァァァァぁっ!!」
アーシアの苦しげな絶叫が響く。
「アーシア!」
アーシアのもとに駆け寄ろうとする俺達の前に神父達が立ち塞がる。
「邪魔はさせん!」
「ここで討ち取ってくれる!」
「邪魔だ!」
襲い掛かってくる神父を切り伏せて行く。
「……触れないでください」
「悪いけど最初から最大で行かせてもらうよ。僕は神父が嫌いなんだ」
「彼の邪魔はさせない」
他の三人も襲い掛かってくる神父と交戦を始める。
「いやあぁぁぁぁ……」
神父達との戦闘のさなかにもアーシアの体は発光し続け、光の塊が飛び出してきた。それを天野は掴むと歓喜の表情を浮かべる。
「これ、これよ!これこそ私が長年欲してきた力!
アーシアから飛び出た光は、天野の体に吸い込まれていき、大きな光を発した。暫くしてその光が止むと、そこには緑色のオーラを体中に纏った天野が居た。
「アハハハハハ!ついに手に入れたわ!至高の力!これで私は至高の堕天使になれる!今まで私を馬鹿にしてきた者達を見返す事が出来る!」
高笑いする天野。俺は奴に構う事無く、アーシアのもとに向かって走り出す。途中、それを阻もうとする神父が居たが難なく蹴散らし、磔にされているアーシア今にも死んでしまいそうな程に衰弱している。
俺は手足の拘束具を解き、アーシアを優しく抱きしめる。
「シ……ロウさん……」
「アーシア、迎えに来た」
「……はい」
何とか俺の言葉を返すものの、その言葉に覇気が無い。
「無駄よ。
天野が冷笑を浮かべながらこちらを見ていた。
「……なら、その
「嫌よ。折角手に入れた力を手放す訳無いじゃない。この治癒の力さえあれば、堕天使を癒す堕天使として、私はさらに高みを目指す事が出来る!」
そう言いながら天野は手に入れた力に酔いしれている。そんな奴を見ていると心の底から怒りが込み上げてくる。
「衛宮君!ここでその子を庇いながらの戦闘は不利だ!一度上に上がろう!小猫ちゃん、鳶一さん、道を確保するのを手伝って!」
「「分かりました(了解)」」
三人が神父達を抑え退路を確保してくれる。俺はアーシアを抱え、聖堂に上がった。
「アーシア、しっかりろ!」
聖堂の長椅子にアーシアを横たわらせる。顔が青ざめている。早く何とかしなしないと……!
「シロウさん……。私、少しの間ですが……お友達が出来て、幸せ……でした」
今にも消えてしまいそうなほど弱弱しい声で俺に話しかけるアーシア。手を握ってみると、その手は冷え切っていて、死がそこまで迫っているのが分かる。
「もし……私が生まれ変わったら……また、友達になってくれますか……?」
「何言ってる!アーシアの人生はこれからだ!友達だってたくさん作って、色々な場所に行くんだろ!?買い物したり、遊んだり、お喋りしたりするんだろ!?だから諦めるな!!」
只々、必死に話しかけた。
生きて欲しい。それだけを願った。
「きっと、この国に……生まれて。同じ……学校に行けたら……」
「ああ、行こう!同じ学校に!」
アーシアが俺の頬を撫で、微笑む。
「私の事を想ってくれて……ありがとう……」
「待て!アーシアッ、アーシアッ!!」
クソ、何か、何か手は!?
「ッ!?そうか、あれなら!」
アーシアの命の灯が消える寸前、俺が思い出したのは、かつて俺と共に戦場を掛けてくれた騎士王が持っていた聖なる鞘。あれなら!
「
撃鉄を落とし魔術回路を起動させる。本来なら俺があのレベルの宝具を創り出すのは不可能だ。しかし、幸いにも本物は俺の中にある。
ならば、難しい事は何も無い。ただ取り出すだけだ!
魔術回路に意識を集中させ、俺と一体化している鞘をイメージする。
バチッ
ぼやけたイメージは次第に鮮明になっていき、黄金の輝きを放つ鞘を浮かび上がらせる。
バチバチッ
全ての魔術回路に魔力を注ぎ込み、鞘を肉体から分離させ、顕現させる。
神々しい光に包まれて現れたのは究極の一。あの
持ち主を癒し、不死の力を与えるこの宝具なら!
俺はアーシアに鞘を乗せて真名を解放する。
「
鞘は輝きながら幾百にも分裂し、アーシアを包み込むと、そのまま一体化した。
「頼む……!」
しかし、いくら待ってもアーシアは息を吹き返す事は無かった。いくら
アーシアは、死んだ。
「……ッ!!」
守れなかった。絶対に助けると誓ったのに。俺は……ッ
「あら、残念だったわね」
背後で地下から上がってきた天野が笑いながら言う。
「まあ、その子も幸せだったでしょう。この私の役に立って死ねたんだから。見て御覧なさい、これはここに来る途中にあの悪魔の
天野は傷のある部分に手をかざす。するとそこから淡い緑色の光が放たれ、たちまち傷を塞いでしまった。
「見て、素敵でしょう。どんなに傷ついても治してしまう。神の加護を失った
ふざけるな。
それはアーシアのものだ。お前が使っていい物じゃない。
「これを使えば堕天使を治癒できる堕天使として、私の地位は約束されたようなもの。これで偉大なるアザゼル様、シェムハザ様のお役に立てる!ああ、アザゼル様……。私の、私の力を貴方様に……」
「知るか」
血が滲むほど、拳を握る。
「お前がどんな目的があったのかは知らないし、興味も無い。だが、例えどんな理由が有ろうとも、この子を巻き込んでいい筈が無い」
「それは違うわ。だってその子は私が求めていた
「それはお前の勝手な都合だ。この子には平穏に生きて行く権利があった」
「無理よ。異質な
「……なら、俺が。俺がアーシアを守った」
「アハハッ!面白い事を言うのね!でも無理よ。だって死んじゃったもの!貴方は守れなかった!救えなかった!それが真実よ!」
「……分かってるさ、そんな事。だからこそ許せない。お前を、そして、俺を」
全てが許せない。
守ると誓いながら守れなかった俺を。
アーシアを殺したあいつを。
『なら、やる事は一つでしょ?』
心に直接響くような声。聞いた事が無いものだが、不思議と警戒する事は無かった。
……そうだな。
「
俺は夫婦剣を投影し、天野に切っ先を向ける。
「覚悟しろ。此処から生きて出られると思うな!」
全身を強化し天野に斬りかかる。
「くっ!?」
俺の動きに反応しきれなかったのか、傷を負う天野。天野は手に光の槍を創り出し、反撃をしながら距離を取る。
「確かに私じゃ貴方には勝てないかもね!だけど、私にはこの力がある!」
天野はそう言うと傷を治す。確かにこれじゃあキリが無い。
次々と放たれる光の槍を避けながら考える。
(あれならいけるか?)
どうなるは分からないが、試してみる価値はあるだろう。俺は夫婦剣を投擲し、天野を牽制しながら宝具を投影する。
創り出したのは、黄色の魔槍。先端にルーン文字が刻まれている。
俺は光の槍が降り続く中を掻い潜り、天野に槍を振るう。
ザシュッ
「うぐっ!でも、無駄よ!幾ら傷付こうとも私には!」
そう言って再び傷を治そうとする。しかし、今度は幾ら治癒の光を当てようとも、その傷が塞がる事は無かった。
「な、何故!?何で治らない!?」
「無駄だ。この槍で受けた傷は決して癒える事は無い」
英雄ディルムッド・オディナが使用したこの槍は、一度傷を付ければこの槍を破壊するか、使用者を倒す以外にその傷を癒す方法は無い。
「さあ、どうする?これでお前のアドバンテージは無くなった」
傷を庇うようにして、座り込む天野に告げる。すると、天野は狂ったように笑い出した。
「そうね。でももう十分だわ!もうすぐ私に協力している堕天使たちも来る!いくら貴方でも複数の相手にはどうしようも無い筈よ!」
自らの勝利を確信したであろう天野は笑顔でそう言ってきた。だがその時、聖堂に凛とした声が響く。
「残念ね。その堕天使たちは来ないわよ」
振り返ると、そこには紅い髪を優雅になびかせたグレモリーが立っていた。
「ぐ、グレモリー一族の娘……」
「堕天使カラワーナ、堕天使ドーナシーク、堕天使ミッテルト、彼等なら私が消し飛ばしてあげたわ」
「嘘よ!」
「信じられない?ならこれが証拠よ」
そう言って懐から取り出したのは色の違う三枚の羽。
「これは彼らの羽。同族の貴女なら見ただけでわかるわよね?」
グレモリーが取り出した羽を見て、彼女の話が本当だと理解すると天野の顔は絶望に染まった。
「貴女の存在を確認した時から、堕天使がこの町で何かを計画しているのは察していたわ。でもそれは堕天使全体の計画だと思って無視をした。いくら私でも堕天使全体を敵に回すなんて愚は冒さないわ。でも、あんまり突然動き出したから、お話ししに行ったの。そうしたらあっさり独自の計画だって吐いてくれたわ。貴女に協力すると、地位を約束してくれるとか言っていたかしら。フフッ、裏でこそこそして下賤な者ほど自分たちのやっている事を話したくなるものね」
天野は悔しそうに唇を噛みしめる。
「私達が女二人だけだから楽勝だと踏んだんでしょうね。自分と相手の力量差も分からないなんて、余程下級の堕天使だったのでしょう」
「その一撃は食らえばどんなものでも消し飛ばす。滅亡の力を持つグレモリー公爵家のご令嬢。部長は若手の中でも天才と呼ばれるほどの実力をお持ちなんだ」
木場が自らの主を褒め称えるように言う。
「別名、紅髪の
グレモリーの傍に控えていた姫島が、隣に来てそう教えてくれる。
「さて、堕天使レイナーレ。よくも人の領地で好き勝手してくれたわね」
グレモリーは天野の傍まで歩み寄り、手に紅と黒が混じった魔力を出した。
「ここの管理者として、貴女を消し飛ばすわ。勿論、その
「じょ、冗談じゃないわ!この力は、アザゼル様とシェムハザ様の為に―――」
「愛に生きるのも良いわね。でもその愛は歪んでいて、とても醜いわ。私、そう言うのは好きではないの」
そう言うと、グレモリーは天野に魔力を撃ちだそうとする。
「い、いや!いやよ!こんな所で死ぬなんて!お、お願い!助けて!」
最早恥も外聞もかなぐり捨て、俺を見て助けを乞う。
しかし、俺は自分でも分かるほど冷たい声音で言い放つ。
「アーシアもそう思ってたんだろうな。……グレモリー、頼む」
「ええ、任せて頂戴。……消し飛べ」
ドンッ!
放たれた魔力は、天野を飲み込み跡形も無く消し飛ばす。
後に残ったのは黒い羽根だけだった。
聖堂に浮かぶ、淡い緑色に光る物体。アーシアの
俺はその光を手に取ると、そっとアーシアの体に戻す。
そんな事をしても無駄だと分かっている。アーシアは生き返らない。
それでも元の持ち主に返す方が良いと思ったのだ。
「……悪かったな。俺の我儘で」
皆に頭を下げる。
木場や塔城、折紙まで巻き込んでおいて、目的を果たすことが、アーシアを守る事が出来なかった。
「いいのよ。ここは私の領地。堕天使に好き勝手されてはグレモリーの名が廃るわ。それに貴方にはいつも悪魔の仕事を手伝ってもらっているしね」
「それに他にも用があるの」と言って、懐から自らの髪と同じ色の紅い駒を取り出す。
「
「そう。私はこの子を『
駒をアーシアの胸に乗せ、体に真紅の魔力をたぎらせる。
「我、リアスグレモリーの名において命ず。汝、アーシア・アルジェントよ。いま再びわれの下僕となる為、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ。汝、我が『
駒が紅く発光し、アーシアの胸に沈んでいく。
俺も解析をして確かめる。
「あれ?」
そう言ったのは死んだ筈のアーシア。状況が理解できずに混乱しているのだろう。体を起こして周囲をキョロキョロと見回している。
グレモリーが優しい笑みを浮かべる。
「悪魔をも回復させるその力、これから役に立ちそうね。さて、折角の二度目の生なんですもの。シロウ、今度はしっかり守ってあげなさい」
「……ああ、ありがとう」
アーシアに近づき、そっと抱きしめる。
「シ、シロウさん?」
突然の事に驚いているアーシア。俺は構わず抱きしめたまま言う。
「帰ろう、アーシア」
「いらっしゃい、シロウ。如何やら大変だったみたいね」
「ああ、まあな」
アーシア救出の翌日。オカ研の部室に顔を出した俺を見て、グレモリーはそう言いながら笑っている。
昨日は大変だった。帰ったのは深夜だと言うのに皆起きていて、怪我は無いのかと服を脱がされかけた。何も問題は無いと何とか説得した後、いつの間にかついて来ていた折紙(何故かカメラ持参)を家まで送った。
その後も寝る暇が無く、結局一睡もすることなく朝を迎え現在に至る。
「それで、シロウ。後ろの十香達は一体何の用が?」
「うむ!私達をオカ研に入れて欲しいのだ!」
十香の言葉に全員が頷く。しかし、グレモリーは意味が分からないと言う顔でこっちを見てくる。
「どうも、昨日皆で話し合って決めた事らしくてな」
昨日、俺がアーシアの救出に向かった後、家族会議が開かれ、今後の事について話し合ったらしい。
このまま自分達だけ何も出来ないまま待つよりも、少しでも俺の助けになりたい。ならば、悪魔であるグレモリー達の部活に入った方が良いのではないか。と言う結論に至ったそうだ。
……俺としては、皆には関わって欲しくなかったのだが、あまりの押しの強さと、彼女達の意志の強さに根負けした形となった。
「そうなの。だったら構わないわ。彼女達も事情を知っている訳だし」
「そうか、ありがとう」
「そうそう、私からも伝える事があったわね」
そう言って、「入って来て頂戴」と誰かを呼ぶ。その声につられて後ろを向くと、
「シロウさん!」
「アーシア!?」
そこには駒王学園の制服に身を包むアーシアが居た。
「彼女は私の眷属ですもの。この学園に入学してもらったわ」
そうしれっと告げるグレモリー。
「こうして学園に通えるようになったのも、シロウさんと共に生きて行く事が出来るのも全て主のお導きですね!アーメン!」
いきなり祈り始めるアーシア。しかし、悪魔の為地味にダメージを受け、「あうっ!」と涙目になりながら痛みを訴えていた。
「それじゃあ、シロウ、アーシアの事よろしくね」
「はぁ?何を言って……」
「アーシアはまだ日本に来て日が浅いわ。まだ分からない事も多いでしょう。本来ならグレモリー家が管理している寮にでも入ってもらうのだけど、どうせならシロウたちの家にいた方が色々学べると思って」
グレモリーの言う事にも一理ある。だが幾らなんでもいきなり過ぎるだろう。そう言おうとしたところで、急に腕を掴まれる。何だと思って後ろを振り向くと、そこには眩しいくらいの笑顔を浮かべた美九が居た。
「ダーリン!是非家に来てもらいましょうよ!こんな可愛い子を放っておくなんて、私のプライドが許しません!て言うか、今すぐに抱き付いても良いですか!?なでなでしてペロペロしてクンカクンカしても良いです――」
「せいっ」
「あべしっ」
暴走しかけた美九に手刀を決める十香。手慣れたもんだ。
気絶した美九を放っておいてアーシアに問う。
「アーシアはそれで良いのか?」
「はい!もし御迷惑で無ければなんですけど……」
アーシアの控えめなお願いに俺は笑いながら答える。
「なら、構わないさ。家に来い、アーシア」
「は、はい!よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げるアーシアに皆が笑い出し、つられてアーシアも笑い出す。
「じゃあ話も纏まった様だし、新入部員の歓迎会でもやりましょうか。シロウには及ばないかもしれないけどケーキも作ってきたから」
そう言ってグレモリーは大きなケーキを魔力で出現させる。見た目は中々の出来栄えだな。後は味か。
突然現れたケーキに目を輝かせ、突撃していく十香達を見ながら考える。
これからもっと強くならなければ。全員だなんて言わない。ただ、俺の家族だけでも守れるように。
誰にも言わない自分だけの誓いを胸に秘め、俺も十香達の元に行く。取りあえず、人数分の紅茶を淹れるとするか。
お久しぶりです、月見花です。今回は初の10000文字越えでした。まあ、一巻分を終わりにしたかったので、かなり駆け足で、おかしいと思う場所も有るかもしれませんが、そこはご容赦ください<(_ _)>。次回は出来れば設定を投稿したいと思いますが気分次第で変わるかもしれません(;^ω^)。
それでは、次がいつになるか分かりませんが、頑張りますので応援よろしくお願いします!
では(=゚ω゚)ノシ
PS、5話をほんの少しだけ書き直しました。