ポケットファンタジア   作:肥えたチヌ

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この作品は
ポケモンでRPGをしたいと思い
書いたものです。

軽い気持ちでサクッと読んで、
お楽しみいただければ幸いです。


序章 勇者の因果の始まり

繰り返される運命の中で…

無理やり泳がせられる…。

様々な思惑が絡み合い、

そして消えていく…。

 

だが、それでも私は…諦めない。

 

…私は…

…私が…

 

…運命など、切り裂いてやる。

 

 

 

ここは、マサラ大国。

 

ポケットモンスター、縮めてポケモン。

この世界のあちこちにいる

不思議な生き物

 

彼らはそれぞれ

特徴のある姿かたちをしており

電気を発したり、炎を吐くことが出来たり

水を自由に使う事が出来たり…

他にも様々な能力を持っている。

 

そして…ポケモン達は修練を積み重ねると

その時を迎える。

 

身体が光り輝き、

その力が何倍にも増すのだ

 

これをポケモン達は 進化 と呼ぶ。

進化の回数はポケモンごとに決まっており

その回数を増やすことは出来ない。

 

「…でもねぇ、

 実はその進化の先に

 もう一つあるんだよ。」

 

絵本をパタン、と閉じ、

ゆっくりと語り始める

高齢のポケモン ガルーラ

彼女は広場の椅子に座り、

子どもたちに読み聞かせをしていた。

 

「えっ…?

 なになに、教えてください!!」

その言葉を聞いて

無邪気な笑顔で

目を輝かせる ミズゴロウ

 

「僕も聞きたいです」

ミズゴロウの言葉を

横目に控えめに催促する アチャモ

 

 

「へっ…まぁた、

 ろくでもないホラ話に決まってるよ」

 

広場の少し離れた水場に

ちゃぱちゃぱと手を入れながら

ガルーラの言葉を茶化す キモリ

 

「んじゃあキモリは聞かなくてもいいね。

 ねぇおばあちゃん、私たちに教えて?」

 

「教えてください、ガルーラさん」

そんなキモリを二人は軽く流し、

ガルーラに顔を向ける

 

「んなっ!?

 べっ…別に聞かないなんて

 言ってないだろ!?

 ごっ…ごめんって…

 お、俺も聞きたい!!

 いっ…いや、教えてください!!」

わちゃわちゃ…

 

 

「あなた…、我が国は

 今日も平和ですね…。」

 

広場を含め、

国中を一望できる場所に位置する城では

ルカリオの夫婦が

そっと身を寄せ合っていた。

 

「あぁ…、そのようだ…私は誇らしいよ。」

二人はこの国の王と王妃である。

 

二人は部屋に移動し、

椅子に座る。

しかし、王は

窓の外を見ながら顔をしかめていた

 

「ただ…最近おかしな夢を見るのだ…

 この国の平和が脅かされ、そして…

 この国の…いや…

 この世界が支配される夢を…。」

「あなた…。」

 

王妃は王の手を握る。

「大丈夫だ…誰にもそんなことはさせないさ…

 絶対にだ。」

 

コンコン…と何者かが扉を叩く。

「…入れ。」

王と王妃は離れ、その人物を招き入れる

 

「…お父様、お母様。」

まだあどけなさが残るものの、

凛々しい顔つきの若者

この国の王子 ルカリオだった。

今、彼は十六歳である

そして…彼はあと数日のうちに十七になる。

 

「来ましたね、ルカリオ…

 この国には年に一度…

 豊穣祭、というものをすることは

 もう知っていますね?」

「はい…知っています。」

 

豊穣祭…それはマサラ大国で

行われる大規模な祭り。

国中、そして国の外から

様々なポケモンが集い、

その全員で平和と繁栄を祝う行事だ。

 

 

「そして豊穣祭の式事…

 我らが全能の神、

 アルセウスに祈りを捧げる精霊たち…

 そのために

  精霊の儀 を

 受けねばならない者がいます…。」

コンコンッ…と扉が再び叩かれる。

 

「入りなさい…」

重々しく扉が開き、

中に入ってきたのは一匹のポケモン…

 

茶色い毛並み…

ルカリオよりも小柄で四足歩行…

ピンッ…と立った耳を

せわしなく動かしているその様子は

誰がどう見ても緊張しているように見える…

 

 

イーブイだった。

 

 

「国王陛下…

 ならびに王妃様…そして王子様…

 この度、精霊役に任命されました

 イーブイ と申します。」

姿勢を正し、ペコリと三人にお辞儀をする

 

「あぁ…話は聞いているぞ…

 今回の重役…

 緊張はすると思うが…

 あまり張り詰めすぎることのないよう

 務めてくれ。」

 

「かっ…かしこまりましたっ!!」

 

やれやれ…とイーブイの様子を見て

小さくため息をつく王と、

クスクスと小さく優しい笑みを浮かべる王妃

 

「…。」

ルカリオは真顔でイーブイを見ている。

 

「さて…挨拶はこれくらいにして

 本題に入ろう…。

 イーブイよ、そなたには

 精霊役を務める為

 精霊の儀 を受けてもらう必要がある。」

 

 

精霊の儀とは…

このマサラ大国で行われる儀式のことで

マサラ大国の北には深い森があるのだが

その森の一角にある妖精の泉…

そこにいる妖精の王 ゼルネアスから

祝福を受けることである。

 

 

この儀を受けることで

はれて精霊役と認められるのだ。

 

「ただ…森に娘一人を

 向かわせるというのは危険すぎる…。

 なのでな…

 例年、護衛をつけ

 森に向かってもらうのが決まりだ。

 今年もその予定で行く。」

…そこでだ。

 

「…ルカリオ、

 お前にその護衛をさせよう…

 と思ったわけだ。」

「…っ!?

 …わたしが…ですか…?」

突然の王の発言に戸惑うルカリオ

 

「あぁ…この国の大事な後継ぎとはいえ、

 お前ももう17になる。

 そろそろ世界を見て、

 力をつけても良い頃だ…

 そのための準備の一環として

 今回の護衛を務めてもらいたい。」

「…父様がそうおっしゃられるなら…

 かしこまりました。

 必ずや 精霊の儀 を

 成功させて見せます。」

「うむ…頼んだぞ。」

ルカリオの答えに頷く王を尻目に

ルカリオ達は一礼し、部屋を後にした。

 

…。

…とはいえ

…とはいえである。

 

「…果たして…私でいいものか…。」

ルカリオは迷っていた。

 

ただ北の森の妖精の泉に向かうだけの

簡単な道のり。

 

野生の、無所属のポケモンも

ほとんど存在していない。

けれども、何事も油断は禁物である。

 

「では王子様…

 精霊の儀では護衛を

 よろしくお願いいたします。」

「あぁ…勿論だ。

 必ず、守り通して見せよう。」

 

…口ではそういうものの。

 

「…本当にわたしでいいのだろうか…?」

本音がつい口をついて出てしまう。

 

イーブイと別れ、迷うルカリオの足は

城のとある場所に向かっていた。

 

「…百九十八!…百九十九!!

 …二百!! そこまで!!

 これよりしばし休憩とする!!」

訓練場の方から

威勢のいい声が聞こえてきた。

 

訓練場ではハッサム兵士長が

直々に兵士たちを

訓練しているところだった。

 

そして、今は休憩中のようである

 

「昼間から精が出るな、ハッサム兵士長」

「これはこれは、ルカリオ王子殿…

 貴殿のようなお方が

 このようなむさくるしい場所に

 何をしにおいでに?」

ハッサムはルカリオに一礼した。

 

彼が兵士長ハッサム。

昔、西の国境で国防を務めた経験があり、

その時から“赤き閃光”と

うたわれた実力者である。

 

「いや…精霊の儀については

 よく知っているだろう?

 今回、私が

 精霊役の護衛をすることになってな…

 本当に私でいいのか見極めるため

 訓練をしようかと、

 そう思っただけだよ。」

「そうですか…」

ルカリオは訓練場を見渡す。

 

ダグトリオにドゴーム、カメックス…

ビッパにエビワラー、

ストライク

新たか…おっと失礼…カポエラー…。

兵士たちは様々である。

 

…相手に誰を選ぶか、と

 言われると決めかねる。

「まぁ、ですが…

 王子の実力からして

 森のポケモンにおののくほど

 弱くはないとは思いますが…」

 

 

「…なるほど、な。」

「…?

 …どうかなさいましたか…

 ルカリオ王子?」

ハッサムはこちらを見ながら

首をかしげている。

 

「あっ…あぁ、いや

 何でもないよ…」

ルカリオは口をつぐんだ。

「…?

 そうですか…」

一瞬顔をしかめるものの、

すぐに表情を戻した。

 

 

「では…他の兵士達はみなつい先程

 過酷な訓練を終えたばかりで

 疲れ切っております…。

 なのでぶしつけながら、

 私と手合わせをいたしませんか?」

ハッサムは頭を下げながらそう言った

 

「あっ…あぁ…。」

一瞬、断ろうかと

思ったルカリオだったが、

ハッサムの誘いに乗ることにした。

 

相手にとって不足なし…

 

というよりは十分すぎる程の

相手だったからだ。

 

 

ハッサムとルカリオは向かい合う。

一応、万一の怪我の防止のため

ハッサムは手に手袋を。

ルカリオもまた同じように

安全対策をしている。

 

「では…行きますよ、王子。」

「…。」

こくり、と頷くルカリオ

 

 

「はじめっ!!」

 

 

ダッ…!!

開始の合図の直後、

ルカリオが飛び出す。

 

両手に波動を溜め、ハッサムに近づく。

<<はっけい>>

 

ハッサムは両腕をクロスさせ、

それを防ぎながら後ろに下がる。

 

「…なるほど。」

ハッサムは小さく頷く

 

「はぁっ…!!」

ルカリオは気合を溜め、

一気に撃ち放つ。

 

 

<<きあいだま>>

 

 

「…ふんっ!!」

 

ハッサムが高速で空を切ると

その高速の衝撃が波となり

相手を切り裂くため動き出した。

 

 

<<エアスラッシュ>>

 

 

きあいだまと

エアスラッシュがぶつかり

お互いを打ち消しあう。

 

「…次だ!!」

ルカリオは拳を引き、

力を溜めながら走り、近づく

 

<<インファイト>>

 

「…ふぅ…パワー勝負、ですか。」

ハッサムは小さく漏らすと

ルカリオと同様に構えた。

 

<<バレットパンチ>>

 

二つがぶつかり、

お互いを打ち消していく…

 

「…っ!!」

ある程度ぶつけたところで、

ルカリオはインファイトをやめ、

スピードを高める。

 

<<でんこうせっか>>

 

 

「…。」

だが、流石は“赤き閃光”

ハッサムというべきか。

ルカリオの<<でんこうせっか>>は

まだ目で追われていた。

 

 

ヒュンッ…

ルカリオはハッサムに

目の前から飛びかかる…と

見せかけて移動する。

 

「…」

音もたてず、ルカリオは

ハッサムの後ろに迫っていた。

 

きあいだまを右手に溜め、

今度こそハッサムに飛び掛かる

 

 

しかし…

「…。」

ハッサムはそれを軽々と避けた。

 

その上でルカリオより

更に速いスピードで

ルカリオの上を取り、攻撃を繰り出す。

 

 

<<ダブルアタック>>

 

 

一撃目でルカリオを地面に叩きつけ、

二撃目で横に大きくルカリオを吹き飛ばす。

 

「ぐっ…!!」

ルカリオは

地面を転がりながらすぐに立ち上がる。

 

そして次に見たものは…

 

<<かげぶんしん>>

 

 

 

六体に分かれたハッサムの姿だった。

 

「なっ…!?」

 

…いや…落ち着け…。

心を落ち着ければ見えるはずだ

 

分身を見つめ、

精神を研ぎ澄ましていくルカリオ

 

ハッサムの無数の影が一つに重なり…

本体の居場所を映し出す。

 

「…っ!!

 そこだ!!」

一人のハッサムに向かうルカリオ。

渾身の<<はっけい>>を決める。

 

ブンッ…

 

「なっ…!?」

はっ…外した…!?

 

「甘いですね、王子…」

すぐ後ろから声がする

 

「ぐっ…!?」

 

コツンッ…。

 

次なる攻撃を

放とうとするルカリオの手よりも先に。

 

勢いよく振り返ったルカリオの額に

ハッサムの手が優しく当たった。

 

 

「そこまでっ!!」

 

 

「…どうしても、

 勝てないな…わたしは。」

戦いが終わった後、ルカリオは

小さくため息をつくように言葉を漏らす。

 

その手は悔しそうに

フルフルと震えながら握られていた。

 

「いえいえ…実践ではなく訓練とはいえ

 私とここまで戦えるということは

 あなたの実力は確かなものですよ、王子

 どうか、自信を無くされませぬよう…」

 

落ち込んでいるルカリオに

まるで諭すように微笑みかけるハッサム

 

「そうか…ありがとう。

 感謝するよ、ハッサム兵士長」

「ただの兵士長であるわたくしには

 それはもったいないお言葉です、王子。」

 

その時、握られた手は温かく…

 

「ただですね…ルカリオ王子?

 兵たちを品定めするような真似は

 今度からお控えになりますよう、

 お願いいたします」

「はははっ…

 次から気を付けるよ…すまなかった。」

 

…(別の意味で)

 力強かったような…気がした。

 

 

…翌日。

「…それではルカリオ王子、

 よろしくお願いします。」

「あぁ、任せておけ。」

…それじゃあ、行こう。

 

この旅立ちが全ての運命の引き金となる。

その事をまだこの時の二人は知らなかった…

 

 

 

…同時刻

「さぁ、もう逃げ場はありませんよ…

 私に、大人しく協力を。」

影が三つの小さな光に迫っていた。

 

「私たちは決して

 捕まるわけにはいきません!!」

 

「…絶対に!!」

 

「お前になど、協力するものか!!」

 

 

「そうですか…では、交渉決裂ですな…

 者ども、こいつらを捕らえろ!!」

影の後ろから無数の闇が忍び寄る…

 

 

「そうはさせるか…!!」

 

「…っ!?」

…お前たちは…

 

 

「…」

城にて。

城の宰相であるガブリアスが一人、

城の廊下を歩いていた。

 

「ふぅ…ようやく訓練もひと段落か…。

 それにしても…

 昨日の兵士長と王子との戦いは

 素晴らしかったな…。」

惚れ惚れするほどだった…

 

兵士の一人、ストライクが

そこに通りかかる。

 

彼は兵士長ハッサムと同様、

西の国境の戦いで生き残った兵士の一人で

片目を切り裂かれ、傷が残り、隻眼だった。

 

「…?」

あれは…宰相殿…?

 

 

「…。」

コンコンッ…

 

ガブリアスは

一度キョロキョロと周りを見渡し、

一つの扉の前で立ち止まり、ノックをする。

 

…音を立てて、扉が開いた。

 

 

ストライクからは、

その部屋の中は見ることが出来ない。

 

ガブリアスは中に入っていく…

「…いったい、何を…?」

ストライクはそっと、

気づかれないように

扉に近づき聞き耳を立てる。

 

…そうだ…いや…あぁ…。

 

中から声が聞こえる…

 

「…?」

まだ、何をしているか分からない…

 

…王子は…今、森に…

 

…危険が迫っている…

 

…西の国が…それは確かか…?

 

 

「王子…西の国…危険…?

 一体どういう…?」

 

ガブリアス達の声が遠ざかっていく…

ストライクはより集中して声を聞く。

 

…私が…この国を…

 

…あぁ…

 

…手に入れる。

 

 

「…っ!?」

ゾクリ、と背筋に悪寒が走った。

 

「どうした、ストライク…

 こんな所で何をしているのだ?」

「ふぁっ…!?」

ストライクは驚き、

身体を震わせる

 

 

後ろを振り向くと、

兵士長ハッサムがいた

 

「へっ…兵士長殿、

 お…お疲れ様です!!」

 

急いで姿勢を正し、敬礼をする。

 

「…何事だ…騒がしいな…。」

ストライクの後ろの扉から

声を聞きつけ、ガブリアスが出てくる

 

「んっ…ガブリアスか…

 いや、ストライクがいたのでな…

 私は気になって

 声をかけてみただけだ…。」

「ほぅ…なるほど。」

 

ちらりと後ろを見た

ストライクからしか見えていなかったが、

ギラリ、とガブリアスの目が光っていた。

 

それに身体を震わせるストライク

ハッサムはガブリアスの顔を見て、

話をしている

 

…どうやら気が付いていないようだ…

 

「…私がストライクに言いたかったのは

 あまり聞き耳を立てるな、

 ということだ…

 ガブリアス、うちの部下が

 本当に申し訳のないことをしたな…」

 

「いやいや…別に、

 気にはしてませんよ。」

 

謝罪をするハッサムに、

怒ってはいない、と

笑顔で答えるガブリアス

 

「では、私は用事があるので行く…

 ストライク、お前からも

 彼にしっかりと謝っておけよ。」

そう言って、ハッサムは

二人の横を通って行ってしまった。

 

ポンッ…とストライクの肩に

ガブリアスの爪が置かれる。

 

「んで…どこから聞いていた…?」

「えっ…えっと…そっ…それは…。」

 

ガブリアスの威圧感に

気圧されるストライク

 

冷や汗が流れ落ちる。

 

「…いや…だめだ。」

ガブリアスは

何かを思い出したかのように

天井を見上げ、首を振る。

 

 

「…?」

ストライクは終始、

訳が分からず首を捻っていた。

 

「…こっちとしても疑いたくはない…

 今回は警告だけにしておく。

 次からは無駄なことに

 首は突っ込まないことだ…。」

…じゃないと…命の保証がなくなるぞ…。

 

一息ついて、ガブリアスは

そういい、殺気を解いた。

 

 

「…分かりました。

 以後、気を付けます。」

小さく頷くストライク

「よし…ならいい。

 今日は寒い…

 冷え込む前にもういけ。」

 

パチパチと燃える

廊下の明かりの火を見ながら

ガブリアスは言った。

 

「はい、申し訳ありませんでした…」

ストライクがその場を去る

 

「さてと…これで少しは…。」

ガブリアスは小さくそう呟くと

また部屋に入っていった…

 

バタンッ…

 

 

 

 ルカリオとイーブイの二人は

 北の森へと足を運んでいた。

 森の中を歩いて進んでいく

 

「きゃっ…」

「おっと…大丈夫ですか…?」

木の根に足を取られた

イーブイを助けるルカリオ

 

「すっ…すみません…」

イーブイを支え、

ゆっくりと地面に降ろす。

イーブイは

すぐさまルカリオから離れ、一礼する。

 

 

…城を出てからずっとこんな調子だ…

…確かに自分は王族であるが、

 ここまでするのは…

 あまり必要性を感じない…。

 

 

「ふぅ…。」

思わず、ため息が出てしまった

 

…自分の価値観が

 鈍っているのだろうか…?

…それとも自分には

 王子としての自覚が足りないのか…?

そんな風に思った。

 

 

「止めて…!!

 来ないでぇーーー!!」

森の中で突然響く謎の声

「…っ!?」

その声はどんどんこちらに近づいてくる

 

「うわぁあああああーー!!」

 

ガサッガサガサッ…!!!

 

近くの草むらが揺れた

 

「…離れて!!」

何か嫌な予感がしたルカリオは

イーブイをその場から少し離れさせた

 

ガサァッ…!!

 

…次の瞬間。

 飛び出してきたのは小さな影。

 小さな体に

 振り落ちないようにバックを巻き付け、

 毛でふわふわとした首に

 きらりと光る首輪をつけたポケモン…

 

ガーディだった。

そして

その背に乗せられているのは、シェイミ。

 

その後ろから出てくるヘルガー達の群れ

ヘルガー達は見たところ、

無所属…野生のようだ。

 

「うわぁあああーー!!

 助けてください!!

 あの人(?)達が

 僕たちを襲ってくるんです!!」

イーブイの後ろに急いで隠れ、

ルカリオに助けを求めるガーディ

 

「なんだぁ…てめえら…?

 痛い目にあいたくなかったら

 大人しく

 そいつをこっちに引き渡すんだな…」

へっへっへ…と

大人数のためか、

余裕のある笑みを

浮かべているヘルガー達

 

 

「一応聞くが…

 この子をどうするつもりだ…?」

どう見ても悪者だが、

最終確認のつもりで

ルカリオはヘルガー達に問う。

 

「どうって…そんなの決まってんだろ…?

 金目の物を奪い取って売りさばいた後、

 色々教えこんで

 “可愛がって”やるんだよ…」

「そうか…。」

…決まりだな…。

 

「…っ!」

ルカリオは<<でんこうせっか>>を使う。

先程から話をしていた

リーダーらしき

ヘルガーの首根っこを掴み、

持ち上げて宙に浮かせた。

 

「…では、お前たちがあの子たちに

 色々“なにか”を教えこむ前に…

 私が“常識”というものを

 教えてやろうか…!」

 

 

「…っ!!」

…そこからの王子様は

 まるで鬼神のような強さでした。

 日頃から鍛えていらっしゃったのでしょう。

 ヘルガーさん達をまとめて相手にしても

 全く動じることもなく倒していました。

 

 最初の一人を地面に勢いよく叩きつけ、

 気絶させたかと思えば、

 一瞬で奥にいた二人の間に立ち、

 両手から技を繰り出して吹き飛ばす。

 

 その後、一斉に襲い掛かった三人を

 目にも止まらぬ早業で気絶させ、

 バックから取り出した縄で

 全員まとめて

 近くの木に縛りあげていました。

 

 最後に城に伝わるように

 のろしを上げて、出来上がり。

 

 …と、鮮やかな手さばきでした。

 

 

「ふんっ…他愛ない…。」

全ての処理を終え、ルカリオは一息つく。

 

「…王子様っ!!」

「…っ!?」

イーブイの声

ルカリオはすぐに振り返り、三人に近づく

 

「どうしたっ…!

 一体何があった…?」

「王子様…この子が…。」

 

見ると、

先程ガーディの背に乗せられていた

シェイミが地面に寝かされていた。

 

…顔が赤く、息が荒い…

 

「…まさか…」

「えぇ…すごい熱で…

 流行り病かも…。」

心配そうにシェイミを看病するイーブイ

 

「西の国から出た後…すぐに倒れられて…

 僕には…

 どうしたらいいか分からなくて…。」

 

先程までの緊張の糸がほぐれたのか、

ガーディは言いながらすでに泣きそうだ…

 

「…ここに留まっていても、

 症状を悪化させるだけだ…

 すぐにここにも城の兵士が来るはず…

 城に行って、治療を受けるといい…」

…まずは、とりあえず…。

 

そう言って準備を始めるルカリオ。

テキパキと持ってきていた布で

簡易ベッドを作り、

シェイミをそこに寝かせるように言う。

 

「まさか…兵士長の言っていた知識が

 こんな形で

 役に立つとは思わなかったな…」

…人の話は聞いておくものだな…。

と、一人頷いているルカリオ。

 

 

「シェイミさまぁ…」

ポロポロと涙を流すガーディ。

「大丈夫だ…必ず治せる。」

 

ガーディのそばに寄り、

肩を優しく叩くルカリオ

 

「やはりのろしを焚かれたのは

 王子でしたか…何事ですか…!?」

城の兵士であるカメックス達が来た。

 

「病人とお尋ね者だ!!

 病人を早く城へ…

 そして、お尋ね者を連れていけ」

「はっ…!!」

 

こうして…ヘルガー達、

そしてガーディ達は

城に連れられて行った。

 

「本当にありがとうございました!!」

ペコリ、と頭を下げてガーディは

カメックス達についていった。

 

「さて…私たちも行きましょう…

 ここから泉までは…

 遠くはないはずです。」

「はい…最後までよろしくお願いします…。」

 

少々道草を食ってしまった感があるが…

ようやく泉に向け、再出発することが出来た。

 

 

薄暗い森を抜け…

長い獣道の先にあったのは、

木々の裂け目から

日光の差す小さな泉だった。

 

「これが…妖精の泉…。」

イーブイは目を輝かせている。

 

「私もうわさに聞くだけで…

 来るのは初めてだ…

 まさか…ここまで美しいとは…。」

目の前の絶景に、心を奪われている二人

 

泉には絶えず水が流れ込み、

どことなく甘い匂いが

周囲に漂っている…

水は底が透けて見える程の透明度で

降り注ぐ日光を反射し、

虹色の光をたたえていた。

 

 

次の瞬間…

湖から眩しい光が照り付け、辺りを照らす。

 

「ルカリオ王子…

 そして今年の精霊役の方…

 ここまで大変だったでしょう…

 よくぞおいでになられましたね…。」

ルカリオ達が目を開くと、

泉の前に流麗なその姿があった。

 

…精霊王 ゼルネアス

 

その身に神秘的なオーラを纏い、

深い愛情の籠った瞳で二人を見ている。

 

「初めまして…ゼルネアス様…

 私が今年の精霊役に選ばれた…

 イーブイ、と申します…」

 

「マサラ大国の王子であり…

 今回精霊役の護衛を務めている…

 ルカリオです…以後お見知りおきを。」

 

二人はそれぞれでゼルネアスに対し、

挨拶をする。

 

ニッコリと、その挨拶を受け、

ゼルネアスは微笑む。

 

「えぇ…既に城の者より

 連絡を受けています…

 本当によくぞおいでになられましたね…。

 では早速…精霊の祝福を授けましょう…

 イーブイさん…前へ…。」

「はい…」

 

イーブイは頷き、一歩前に出る。

ルカリオは後ろに下がり、

それを見守っている。

 

「…。」

ゼルネアスが目を閉じると、

爽やかな風が泉から吹いてきた

それと同時、

いくつもの小さな光が森と泉から現れる

 

 

「今年の精霊役に我らが神の祝福を…!

 我が精霊の愛を授けましょう。」

小さな光たちがイーブイの周囲を囲む。

 

 

光はイーブイの前に集まり、形を形成する…

 

イーブイはハートのうろこを手に入れた。

 

「さて…それを

 あなた方の国の全能の神の像に

 捧げるのです…

 そうすることによって、

 精霊の儀は終了します。」

「はいっ…!

 ありがとうございます!!」

またペコリと頭を下げるイーブイ

 

「それと…ルカリオ王子…?」

「はい…何でしょうか…」

 

「あなたにも贈り物があります…

 国王から、あなたがここに来た時

 これを渡すようにと…。」

 

ルカリオはかいがらのすずを手に入れた。

「これは…」

 

 

「あなたはもう一人前です…

 自分の道を選び…進み…

 この国のため全力を尽くすように…

 との事です。」

「…分かりました。

 全力を尽くす所存です。」

ルカリオはそういいながら、

バックにすずを付ける。

 

チリンッ…と鈴が小さく音を鳴らした。

 

 

 

刹那。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ…!!

立っていられないほどの凄まじい地震

「ぐっ…!?」

 

「そっ…空が…。」

一瞬で黒い雲が世界の空を覆った

 

雲の間から漏れる光の中で

何かが弾けるように稲光が鳴り響く

その雷鳴は世界全体を駆け巡っていた。

 

そして…

 

雲が引き裂かれたように割れ、

三つの小さな光が

そこから飛び出してくる。

 

そしてそれを追うように

巨大な物体が現れた…

 

――――――!!

 

その日…世界に衝撃が走った。

人々の視線の先…

そこにあったのは巨大な一つの島…。

 

空に浮かび…上空に

堂々と鎮座しているその姿は

まさに絶望を体現している…

 

空のそれは邪悪な気配に満ちており、

希望などないのだ、と

世界中に示していた。

 

 

「なんだ…なんなんだあれは…!?」

地震が収まる…

 

[…聞こえるかね、世界のポケモン諸君。]

「…っ!?」

立ち上がるルカリオ達の頭の中に声が響く

 

[私の名前はダークライ…

世界のすべてを支配するものだ…]

頭の中に映る、その邪悪な姿…

 

[…とはいえ…“今の”君たちには

理解は出来ないだろう…

…だが…それは別に構わない…

すぐに“この時代”も

支配されるのだからな…。]

フッフッフ…。

 

…さて…。

 

 

[なぜ私がここに来たかと言えば…

私たちのいた時代から

時の精霊の力を借りて

三匹の愚かな反逆者が

この時代に逃げこんだのだ…

私はその三匹に用がある…

これがその反逆者たちだ…。]

「…っ!?」

軽い頭痛とともにルカリオ達の頭の中に

画像のように人物の影が流れ込んでくる。

 

 

青い精霊…アグノム…。

黄色い精霊…ユクシー…。

赤い精霊…エムリット…。

 

 

[この三匹が我が手に収まれば…

次はお前たちの番だ…世界のポケモン諸君…

おっと…反逆など

企むことはしない方がいいぞ…

私はすでに未来で

全てを手に入れているのだからな…!!]

声の奥の方からたくさんの笑い声が聞こえる。

 

[そう…時の神 ディアルガは

我が手に落ちたのだ!

私に歯向かおうという

愚かな者が現れぬよう…

手始めに…時の神の力を

見せておいてやろう!!]

何かが軋むような音…

 

 

[私に降伏せよ…こうべを垂れよ!!

反乱などという愚かな企みは捨て、

この世界に逃げ込んだ反逆者共々…

我が夢の中に落ちるがいい!!]

 

――――――!!!

 

何かの巨大な鳴き声が聞こえてきた

 

 

ゴッ…!!

 

 

「えっ…?」

空に浮かぶ島から世界に向け降り注ぐ光。

 

その一端が、運が悪いことに

ルカリオのいる森一帯へと向かってきた。

 

「王子様!!」

「ルカリオ王子!!」

 

視界の中で、

精霊王ゼルネアス…

そしてイーブイが消える…

手を伸ばすものの、

その手さえも形が崩れ

崩壊していく…。

 

「うわぁあああああああ!!」

 

 

光の中に吸い込まれる感覚…

 

まるで悪夢に

無理やり落とされたような…

そんな感覚だった。

 




~次回予告~
ルカリオが次に目を覚ました時…
目に映ったのは見知らぬ土地だった…

全てが変り果て…絶望に染まった世界…

そこでルカリオは己の運命と対峙する。

次回…ポケットファンタジア
   第一章 
   因縁の竜の牙 前編 お楽しみに!!
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