ではお楽しみください。
「…姫様…
シェイミ姫様…」
…声が…聞こえる…
…そうだ…確かあれは…。
「…姫様!!
まだ授業の途中でござましょう!」
「うぅ…。
うるさいデス…ミーは眠いデス…」
目をこすりながら
小さくあくびをするシェイミ
「姫様…だからと言って
授業中に寝るのは…。」
ガーディが首を振り
あたふたとしながら言う。
「姫様!
そんな事では、いつまで経っても…!」
コンコンッ…
シェイミを叱りつける
教育者…フーディンの声の合間に
ドアを叩く小さな音が割り込む
「はい…どうぞ。」
「…一体何の騒ぎですか…?」
部屋の温度が、少しだけ下がった気がした。
「…これはこれは…
キュウコン将軍…」
フーディンが、礼儀正しく頭を下げる。
そこにいたのは純白の毛を持ち
背中に剣を背負った四つ足の騎士
キュウコンだった。
彼女はその剣の才を認められ
20の時より女王バンギラスに仕えていた。
バンギラスの下には彼女の他に
もう一人、騎士がいたのだが…
今は行方不明となっている。
「あっ…キュウコン将軍!
丁度良かった…!
ミーにも剣術を教えてほしいのデス!!
歴史や地形学…帝王学は
つまらなくて、
面白くないデス…!!」
「シェイミ姫様…!
つまらないとは…!」
また、フーディンの怒りに火が付きかける…。
「…フーディン。」
「…すみません…。」
それを、キュウコン将軍は一言で諫めた。
「シェイミ姫様…
確かに、わたくしめが貴女様に
剣術をお教えするのは光栄にございます…」
「…っ!
…なら、早速…!!」
「…ですが。」
「貴女様はバンギラス女王様の後を継がれ
後の世でこの国を率いられる存在…
わたくしめはその手足に過ぎませぬ…。
それは剣術とて同じ事。
シェイミ姫様…
そのお身体、知性は
この国の宝にございます…
そしてそのお身体を傷つける事は、
わたくしめにとっては
主に剣を向け、国に反旗を翻す程
あってはならない事…!!」
そっと、キュウコン将軍は
シェイミに頭を下げる。
「わたくしめに
この国を守る使命があるように…
貴女様は…貴女様の使命がございます。
ペンは剣よりも強しという
ことわざにもある通り
どうか剣術ではなく、
学問を磨いては頂けないでしょうか…?」
…わたくしめよりも…強くなるために。
「…ミーが強くなったら…
いつか戦ってくれるんデスか…?」
「えぇ…勿論!
その時は全力でお相手いたします!」
優しい微笑を浮かべながら、
頷くキュウコン将軍。
「分かりました…!
しょうがないから…
今は勉強するんデス!!」
…その代わり、絶対約束は守りなさい!!
「…ははっ…肝に銘じておきます。」
…では、失礼いたします。
そっと、部屋を出るキュウコン将軍
「では、姫様…
この本のここまで、お読みください…」
そう言って、
フーディンもまた部屋を出る。
扉の向こうで、
何度もお礼を言う声が、聞こえた気がした…
ふぁああああ~…
「…でも…やっぱり…
眠いデスね…。」
はやく…強く…なりたい…デス…。
パタッ…
…
……
………。
森の中で。
はっきりとは分からないが、
確かに今も感じる事がある…。
…なにか…肌寒いような…
恐いくらいの大きな力を感じる…
気のせいだろうか…?
この森に入ってきて…
色々な不安要素が一気に広がった事で
私の心が乱され始めているのだろうか…?
…。
でも…やっぱり…感じる…。
森の下…
私たちの足元のさらに下の方で…
何かがうごめいているような…
そんな気配が。
…こわい…。
身体が、小さく震える。
…
……
…王子様…。
「ねぇねぇ…どうしたの?
顔色があんまりよくないみたいだけど?」
「…っ!?」
ぴょこぴょこと耳を動かしながら
私の顔を覗き込む、プクリンさん
「…だいじょうぶです」
今、私たちはプクリンさんに案内され
森の開けた場所にテントを設け、
シェイミ姫が目覚めるまで、
休憩を取っていた。
…シャッ…。
木の枝の間を飛ぶように移動し、
広場にゾロア君が戻ってくる。
「ダメだった…
この森、変な植物ばっかりで
食べられそうなものが
一つもなかったぞ…。」
「んん~、だろうね…
この森の近くには
“ダンジョン” があるし、
その影響を受けているのかなぁ…?」
「あの…」
私はプクリンさんに
ずっと聞きたかった事があった。
「ん…?
なんだい…?」
真っすぐで、
綺麗すぎる程の青色の瞳が私を見る。
「どうしてプクリンさんは
この森に居るんですか…?」
「あぁ…それはね…」
それから私たちは
プクリンさんから色々な事を聞いた。
誘拐犯、スカタンク一味の事
この森の事…
そして、トレジャーズキャンプの事。
「でね…この森の奥にある洞窟が
奴らのアジトみたいなんだけど…
ちょっといきなりそこに突入するのは
避けたくてね…」
「どうしてですか…?」
色々な事を聞いてなお、
プクリンさんの話は終わらなかった。
「奴らのアジトは、特殊でさ。
この森自体も
そうと言えばそうなんだけど…」
あ、そういえば…
「ねぇ、君たち…
ダンジョン、って知ってる…?」
「ダンジョン…ですか…?」
イーブイはゾロアを見る。
ゾロアはイーブイの顔を
見返して静かに首を振った。
「そっか…
あのね…まぁ、僕にも
よく分かってない事が多いし…
種類も結構あるみたいだから
何とも言えないけど
ダンジョンっていうのは
そうだね…
不思議なことが起こる洞窟…
っていう感じかな?」
「不思議なことが起こる洞窟…。」
「そうそう。
世界には
そういう洞窟がいっぱいあるんだ!
その洞窟の中では
同じはずの場所が違っていたり
洞窟内に長く居続けると
体が巨大化したり…
僕たちが知っている姿
ではない姿になったり…
僕たち探検隊が狙ってるような…
すんごいお宝もあったりするんだよ!」
えへへと楽しそうに笑いながら
そんな事を話すプクリンさん。
あぁ、本当にこの人は
楽しんで探検隊をしているんだ、と
そう思った。
「…まぁ、だから今
スカタンクを捕まえるために
手を焼いてるんだけどね…」
ペラップともはぐれちゃったし…。
今度はがっくりと
残念そうにしながら肩を落とす。
「でも、君たちを巻き込むつもりはないよ。
誘拐犯のスカタンクも
まだ見つかってないし…
ここまできたら、森の出口…
トレジャーズキャンプに続く道に
つくまでは一緒に居てあげるよ!」
「あっ…ありがとうございますっ!!」
とても、心強い。
プクリンさんは森を歩いている中で
何度か戦いになる事もあったのだが
その中で、私たちとの力の差を見せられた。
だからこそ、
その提案はとてもありがたかった。
「でも、君たち…特に君は、
この森を抜けるには
僕が居なくてもいいくらい
充分に強いと思うけどね!」
「…オイラをそんなに褒めても、
何も出ないぞ!」
ゾロア君に微笑みかけるプクリンさんと
それを少し照れながら受け取るゾロア君。
「んっ…んん…?」
シェイミ姫が、目を覚ました。
「おはよう、気分はどうだい?」
「…っ!?
なっ…だっ…誰ですか…あなたは!!
ミーに名を名乗るのデス!!」
「え?
あぁ、ボクはプクリンだよ!!」
「プク…リン…?」
「えっとですね、姫様…」
それから…
これまでのいきさつは、私が説明した。
「なるほど。
つまりこの森を抜けるまで、
ミーの4人目の家来という事デスね!!」
「ははっ…。
そうですね…」
「おいっ…!
オイラは家来なんて
なった覚えはないぞ!!」
「家来かぁ~、面白いし
ま、それでいいかな!」
シェイミ姫の言葉に対し、
反応は様々だった。
「さて、それじゃあ
充分休憩も取れたと思うし、
行こうか!」
号令とともに。
森を進む四人。
…また暗闇の中で
何かの笑い声が聞こえた気がした…
ドンッ…!!
ドドンッ…!!
「オラオラァっ…!!
逃げてばっかりか…!?」
「ひっ…!」
<<ヘドロばくだん>>
轟音とともに
地面を溶かし崩す程の毒が走る。
ドガースがペラップを
着実に追い詰めていた。
「うぅっ…
おやかたさまぁああああ…!!」
ペラップは叫びながら逃げる。
「はぁ…つまんねぇなぁ…。」
よっしゃ…
もう決めるか…。
「ふんっ…!!」
<<ヘドロばくだん>>
「…っ!?」
今までのヘドロばくだんの精度とは
比べ物にならないほど的確に。
その爆弾の破片は爆発した後
ペラップの羽を射抜いた。
「がふっ…!」
そのまま地面に
叩きつけられるペラップ
「…っ!!」
戦慄した表情を浮かべ、
迫りくるドガースから
それでも逃げようとする。
…が、腰が抜けていて
思うようには、逃げられない。
地面を這うように移動し、
遂にその背は木の幹についた。
…完璧に、追い詰められた。
「いっ…いいのかっ…!!?
わっ…私を殺せば、
おっ…親方様が
黙っていないぞ…!!」
「へっへっへ…そうかいそうかい…」
シュゥウウウウウ…
「ほっ…本当に良いんだな!!!?
ぜ、絶対に後悔するぞ…!!
やめるなら、いまのうちだぞ!!」
ひぐっ…うぅっ…!!
涙ながらに。
それでも、虚勢を上げるペラップ
「分かってる、分かってるって…」
ドガースが身体に力を込めると
身体に開いている無数の穴から
黄色のガスが
空気中に放出され漂い始める。
それは、風下にいるペラップを
包み込むように移動し
周囲の森の木々を枯らしていく。
…間違いなく。
ドガースの放っている霧は毒ガスだった。
「それじゃあ…死んでもらおうか…。」
ドガースが動いたと同時に。
ペラップを毒ガスが包み込んだ
毒ガスから外に出るドガース。
「うっ…
うわぁああああああああ…!!!」
大粒の涙を流しながら
もがくように
羽をはばたかせるペラップ。
ドガースの笑み
…次の瞬間。
ペラップの羽ばたきに合わせて、
周囲に追い風が吹き荒れた。
「なっ…なにっ…!?」
驚くドガースだが
ペラップの追い風は止まらない。
ドガースの放った毒ガスを
ペラップの周囲からはねのけ
逆に、それでドガースを包み込んだ。
「やべぇ…!!」
思わぬペラップの反撃に
焦りながら
毒ガスの中を抜けようとするドガース。
だが、毒ガスは追い風に乗って
追いかけてくるので
逃げても逃げても
抜けられる気配がなかった。
…やべっ…意識が…
…くそっ…なんで俺が…
…こんな…こんな奴に……っ!!
「…っ!」
ドガースは意識を失い、
その場に倒れこむ。
ゴトンッ…と重い音が鳴った。
「うわぁああああああああ…!
しっ…死にたくないっ…
死にたくないぃいいい…!!」
…?
「…って…あれ…?」
ペラップが
ドガースが倒れていることに気付いたのは
それから数分経っての事だった。
「わっ…私だって…
やっ…やれば出来るんだ…!!」
ハーハッハッハッハッ…!!
…はぁ…。
「ん…?」
森を歩きながら
ふと、立ち止まるプクリン
「どうかしたんですか?
プクリンさん」
「いや…何か…
ずっと視線を感じるんだよ。
悪意のこもった視線をね…。」
目を凝らして自分たちが来た道…
森の奥の暗闇を見つめるプクリン。
…居た!
「やいっ!!
そこに居るんだろ!
…出てこい!!」
プクリンが叫ぶ。
視線の先で。
薄暗い炎がゆらゆらと燃え始める。
「ひっ…人魂ぁっ…!!?」
「…っ!!」
イーブイが怯え、小さく震える。
そしてシェイミが驚き、叫んだが
その中でもプクリンとゾロアは
睨みをきかせ臨戦態勢を崩さなかった。
ぐるり…と四人を取り囲む人魂
「プクリン…これって…!」
「あぁ…。
間違いないよ…これは…
人魂なんかじゃない…」
「<<おにび>>だ!!!!」
刹那
強風がその場に吹き荒れ
鬼火がかき消える。
[やれやれ…バレちゃあしょうがない…]
[フフフッ…]
暗闇の中で、声が響く。
「どこだっ…!!」
[俺様がどこにいるか、だって…?]
[クスクス…]
[決まってるだろ…]
…声が、一気に近づいた。
…プクリンたちの背後。
…四人の真ん中に。
「 こ こ だ よ 」
「…っ!?」
バッ…!!
背筋に悪寒を感じ、
急いで振り返るプクリン達
その四人の視線が交わる先に…
…堂々と立っていた。
「俺様がこの森の、元支配者…!
恐怖を支配する地獄の帝王
ゲンガーだ!!」
紫色のずんぐりとした身体
相手を見つめる怪しい瞳
ヘラヘラと笑う、そのポケモンが。
今回は間話はありません。
では、次回 帝国の脅威 その11を
お楽しみに!!