では、お楽しみください
「…。」
…あいつは、どこから来るんだ…?
ズバットとプクリンがにらみ合う緊張に包まれる戦場で、
ゾロアは警戒心を緩めない
ズバットをプクリンに任せ、周りを常に見渡しながら
他の敵の出現を見逃さず、接近を許さないように徹底していた。
現状、戦力は圧倒的にこちらが上。
たとえ目の前の敵以外に援軍が他に何匹この場に現れようとも
ある程度は戦況は変わらないだろう。
隣にいるプクリンこそが、要であり
この場を支配している絶対の強者である。
であるならば、
自分の役割はこの戦いで、少しでも成長することだ。
先の戦いで失態ばかりである自分の観察眼や
戦闘経験を信じる事はもうしない
「…少しでも、強くなりたい。
成長するんだ、この戦いで」
その言葉は、無意識のうちにゾロアの口からこぼれていた
「…?」
プクリンはズバットを見ながらピクリと片眉と耳を動かす
…。
何かを考えるような顔
そして、プクリンは一人納得する
…よし、決めた!
キッ!と目つきを鋭くし、拳を高々と掲げるプクリン
「さぁ、ゾロア君いくよ!!
衝撃に注意してね!!」
「…?」
たぁあああああああああ!!
そのまま勢いよく床に向かって叩きつけた
ドンッ!!という鈍い音とともに床が凹む
ここは洞窟だが、それでも下層には到達していないようだ。
「なっ…!!?」
…ど、どんな馬鹿力だよ…!!?
「…!!?」
いきなりのプクリンの奇行にズバットも衝撃を受けている
一瞬驚くゾロア、が
すぐにプクリンの意図を察する。
プクリンはパンチを打ったのち
まばたきする間もないほどの一瞬で身体を丸めていた。
そのままひび割れた床に着地したと同時に高速回転
その場で保持し高めた回転力を解放すると同時に
床の凹みをスロープのようにして空中に跳ね上がった
高速回転を続けるプクリンはズバットの目の前に迫る
「なっ…なにぃ!!?」
驚愕するズバット
しかし、プクリンの攻撃をなんとか空中で旋回しかわす
「ちぃ…!!」
…やっぱり、こいつはオレの手におえねぇ…!!
なにをしでかすか、分かったもんじゃねぇ!!
プクリンはそのまま床を転がり、壁に激突した
衝突とともに煙が上がりプクリンは見えなくなる。
「やっぱ、オレの狙いは…!!」
ズバットは飛行しながらスピードをつける
「てめぇだ、小僧!!」
<<アクロバット>>
「…っ!!!」
ズバットの直線的な動きに対応し
ゾロアは素早くかわす
ズバットは旋回し、またこちらに突撃してくる
ゾロアはその飛行を見切りろうとする
…が。
<<かげぶんしん>>
瞬間、空中のズバットの数が増える。
「一瞬で勝負をつけてやるぜ!!」
「…っ!」
そのまま高速で迫るズバット
…しかし、ゾロアはそのズバットの攻撃を
正確に見切り攻撃をかわした
ズバットの上をとるゾロア
「オイラは暗部だ
そんなもん、効くか!!」
言いながらゾロアは目を閉じ、
イリュージョンで姿を変える
強くなりたい。
子狐が胸に宿したその思いで変化した姿は
行動を共にしている[カイブツ]の姿だった
そして、ズバットの動きに合わせて
刹那に体をひねり力を溜める。
頭にイメージするのは先ほど見た技
全ての思いを拳に込める
筋肉の動きを正確に物真似する
全ては強くなり、勝つために。
「うぉおりゃぁあああ!!」
そのまま逃げようとするズバットの背中めがけ
拳を叩き込む
ボンッ…!!!
突然の横からの攻撃
ゾロアのイリュージョンが解ける
「がっ…!!?」
ゾロアはそのまま横に吹き飛ばされ
ズバットは攻撃を受けることなくその場を脱した
攻撃を仕掛けたのはミミッキュだった
シャドーボールで正確にゾロアを迎撃したのだ
「ちっ…あぶねぇあぶねぇ…
なんだよ…聞いてた話と全然ちげえじゃねえか…
ただの雑魚じゃなかったのかよ」
ズバットは誰にも届かない
天井ぎりぎりの高度まで浮上しゾロアを見る
地面に倒れ、ボロボロとなっているゾロア
イリュージョンによって的がずれたため致命傷は避けているようだが
着実にダメージは与えられた事を確認する。
…もう舐めねぇぞ、このクソガキ…。
起き上がろうとするゾロアを見て
復讐心に燃えるズバット
こいつは今この場で、確実に始末してやると心に誓った。
次に、自身を助けたミミッキュを見る
そして、異変に気付く
「…避けろ、後ろに奴がいるぞ!!」
ミミッキュの背後から
プクリンが迫っていた
「…ようやく、出てきてくれたね?
君を待ってたよ」
ミミッキュが影に逃れようとするももう遅い
プクリンの横なぎの攻撃は
それよりも早くミミッキュに突き刺さる。
それは先ほど床を凹ませた攻撃以上の
想像をはるかに超えた、
とてつもないほどの”重さ”をもった一撃だった。
先ほどのゾロアと同様、横に大きく吹き飛ぶミミッキュ
「君、常にみがわりを持ってるんだよね?
確かに感覚が軽かったよ…
でも、同時に分かった…
君を守るそれは 一枚だけ だ。」
ぎろり、とプクリンがミミッキュを睨み
そして、不敵に笑った
「これでもう…君を守るものはないね?
タイプ相性なんて関係ないよ…
今度こそ…君を仕留められる。」
ぐっ…と握った拳には殺意が宿っている。
「森でのお礼を、たっぷり返してあげるよ。」
そうして、ゆっくりと
すっかりおびえ切ったミミッキュに向かって歩き出す。
「…ゾロア君!!」
「…っ!?」
ようやく起き上がったゾロアに
プクリンはミミッキュを見たまま声をかける。
「このままじゃ、悪いけど君は足手まといだ!!
強くなりたいんでしょ!!
なら…目の前の敵くらい、
軽くやっつけなよ!!」
その声は、普段かけられる優しさはなかった
だが、決して怒り任せの残酷な宣告でもない
成長しろと言われているのだ、今この場で
倒せと言われているのだ、自分の力だけで。
…ズバット(こいつ)を。
プクリンの言葉を受け、
ゾロアの全身に温かな何かが巡る。
もう時間がないというのに…
自分なら、一瞬で制圧できるというのに…
…
ほんとうに…
「…ありがとう、プクリン!!!」
ゾロアはズバットに向かいながらプクリンに声をかけた
「安い感動話だなぁ…随分と!!
そういうの大っ嫌いなんだ!!
容赦はしねえ…やれるもんならやってみろ!!」
ズバットはゾロアに怒号を上げ向かい合う
「よし…、これでいい。
えへへ~下手なお芝居みたいになっちゃったけど
なんとかボクの思い通りになったよ」
プクリンはゾロア達を見て、にっこりと笑う
そして、またミミッキュに向かい合った。
「さて…おしまいにしようか。」
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今の自分に足りないもの…
ゾロアは戦いの最中に冷静に考える。
「おらぁああ!」
ズバットの<<スピードスター>>
ズバットは先ほどから直接攻撃をしてこない。
常に一定の距離を保ちながら遠距離戦を仕掛けてきている。
先ほどの戦いの失敗を反省し、
直接ダメージを受けないようにしているわけだ…
あまりの手数の多さに避けられずダメージを受けるゾロア
自分も遠距離攻撃の手段がほしい…。
あのゲンガーのように、あのミミッキュのように
自分も、あの黒いウズウズ…<<シャドーボール>>を…。
しかし、同時に脳裏に青色の毛がちらつく
あの、この世界で一番嫌いなくそったれ野郎の姿が。
思考を邪魔するように、何度も何度も現れるため
ゾロアはその度に怒りを抱きながら頭を振る
「くっそぉおお!なんで…なんであいつなんかが!!」
…邪魔すんなよ!!!
腹が立ち、怒号を上げるゾロア
「おらおら、どうしたどうした!!
さっきから避けてばっかりか!!」
また、ズバットからスピードスターが繰り出される
ズバットの攻撃が地面に何度もあたり砂煙を巻き起こした。
ゾロアの視界が煙に覆われる
ゾロアは一度冷静になり
イリュージョンで姿を変え、煙に紛れる
「何をしようが無駄だ!!
オレは煙の中でも、お前の位置が正確に分かるからなぁ!!」
「…っ!!」
<<どくどくのキバ>>
アクロバットと組み合わされたズバットの煙に紛れた一撃
せっかくの直接攻撃の機会は
反撃のチャンスとはならず
逆にゾロアをピンチに陥らせた。
煙の中で、ズバットのキバが胴に命中する。
ぐらり…と視界が歪む
「ちくしょう…毒、か」
「さて…はまっちまったなぁ…ガキ
てめえはオレの毒を受けた…もう助からねぇ
…が、このまま毒でぶち殺してもオレの気が収まらねぇ!
じわじわとなぶり殺しにして
毒が完全に回りきる前にぶっ殺してやるぜ!」
スピードスターが煙の中から現れる
「くっそ…!!」
避けようとするものの、正確にこちらを追尾してくるズバットの攻撃
「無駄だっつってんだろ!!」
このままだと、本当に殺される…。
…死んだら、マァのところに行けるかな…
…。
…それなら、いいや…
目の前から来るスピードスターを、ゾロアは避けられなかった。
身体は毒に侵され、精神的にも弱ってしまった
最後の抵抗もできず
真正面から攻撃を受け、その場に仰向けに倒れる。
…。
ピクリともゾロアは動かない。
動けない。
薄れゆく意識の中でただ、母を思う子狐。
また、こんな時にもルカリオの顔が思い浮かんだ
最後の最後まで、憎たらしい
最悪の気分だ。
…
…そう。
…最悪の、ぶん殴りたくなる気分だ。
「がぁあああああああああああああ!!!!」
…マァ、もう少しだけ待ってて。
…あいつを、ぶん殴るまで。
…必ず、ぶん殴るから。
叫びながら無理やり起き上がる。
先ほど動けなかったのが噓のようだった
「さっさと死んでろ、クソガキ!!」
ズバットの声がしたとともに
煙の中、全方位からスピードスターが向かってくる。
…よけきれない。
…いや、もう避ける必要はない!!
ゾロアは目を閉じ、集中する。
刹那、全身に走る鋭い痛み
引き裂かれるような激しい鈍痛の中
それでもゾロアの意識は途切れなかった。
「オイラはこんなところで死んでられないんだ!!!」
…おい、クソ野郎。
…今は、こんな最悪な気分はどうでもいいから
…力を貸せよ、オイラに。
…お前の技、真似させてもらうぞ…
ゾロアは身体中に力を溜め、口先に集める。
それはルカリオのはどうだんのように
ゾロアの口先に集まっていく。
やり方は分かっているから…
脳裏にこびりついて、離れなかったから
全てが、ルカリオのはどうだんと同じ。
ただし、一つ違うのは。
…オイラのは、悪の波動だけどなぁああ!!!
ゾロアが今作っているものはどす黒い…
憎しみと殺意にまみれたものだった。
<<シャドーボール>>
力がたまりきった事を感じる。
あとはこれをズバットに打ち放つだけだ
ゾロアはさらに集中する。
「ちぃっ…!!
不死身か、こいつ…!!」
ズバットは先ほどの全方位からの攻撃でゾロアを完全に仕留めるつもりだった。
が、それは失敗し
さらに目の前のこいつは自分に攻撃を与えようとしている。
もう遠距離を打つだけの体力もない。
遠距離ではこいつを殺せない
こいつを殺すには、自分の全力以上の技を出さなければならない。
そう、ズバットは確信した。
故に、ズバットの選択は
<<かげぶんしん>>
<<アクロバット>>
<<どくどくのキバ>>
己の全てをかけた特攻だった
「さっさとくたばれ、ガキがぁ!!」
暗部で鍛え、そして決意を持ち確かに成長したゾロアの眼は
煙の中から、こちらに勝負を決めようと接近してくる
ズバットの影を含めた本体を捉えた
…今だ!!
「がぁあああ!!!!」
ゾロアはシャドーボールを打ち放つ
…動きが直線的過ぎて、バレバレなんだよ!!
ゾロアのシャドーボールは、煙の中で蠢いていた
複数のズバットのうちの一体に直撃する。
それは影だった
「…はぁ!!!
残念だったなぁ!!
こっちだボケが!」
ゾロアの背後から超高速でズバットが現れる
シャドーボールが爆発する
爆風で煙が吹き飛んだ
その刹那、ズバットのキバがゾロアを捉える…
事はなかった。
「あぁ…、分かってたさ
お前がそうすることくらい。」
…オイラだって、そうするもん。
「…っ!」
ゾロアはズバットのキバをかわし、またズバットの上をとる。
ズバットは音を感じる。
ミミッキュは…!
「ふぅ~、これだけ懲らしめればもう大丈夫だね。」
プクリンによってのされてしまっていた。
…もう、助けはない。
「「終わりだ」」
<<だましうち>>
ゾロアの攻撃によって
ズバットは地面に叩きつけられた。
戦いは終わった。
ゾロアは気絶したズバットの横で
息を荒げながら
震える足で立っている。
「…お疲れ様、ゾロア君
よく頑張ったね」
プクリンが寄ってくる
「オイラ…強くなったかな?」
ふらふらになりながらのゾロアの弱弱しい問い
その問いの後
ゾロアが見たのは
全てを包み込むような
優しい笑顔だった。
「もっちろんだよ!!!!」
次回もお楽しみに!!