ポケットファンタジア   作:肥えたチヌ

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前回までのあらすじ…

マサラ大国の王子である
主人公のルカリオは

豊穣祭と呼ばれる祭りで
精霊役を務めることになった
イーブイと出会い、
彼女の護衛を務めることになる。

そして、精霊の泉にたどり着き、
精霊の祝福を受けた後…世界は崩壊。
ダークライの支配を受けた
時の神…ディアルガの攻撃を受け、
光の中に飲み込まれたのだった…。



第一章 因縁の竜の牙 編
第一章 因縁の竜の牙 前編


~Time of aft 5~

 

「うっ…。」

ぼやけた視界がはっきりとしてくると、

そこは先程までいた森とは

全く違った景色が広がっていた…。

 

「ここは…」

ルカリオは起き上がり、

周囲の様子を見ながら少し歩く

 

丘のような…殺風景な場所

樹木が切り開かれ、

中途半端に開拓されたようなその場所に

ルカリオは見覚えがない。

 

「イーブイ!!

 ゼルネアス様!!

 誰かいないのかー!!」

…呼びかけるものの…返事はない…

 

冷たい風がルカリオの頬を撫でていく…。

 

「…一体ここは…。」

フワリ…

 

ルカリオの鼻をつく匂い

それは、ポケモンや物が焼ける匂い…

そう…黒煙の臭いだ。

 

 

「あれは…マサラの城か…!?」

…っ!!

 

ルカリオの視線の先で佇んでいる城…

しかし、城下町と思われる場所から、

火の手が上がっていた。

 

そして…ようやくルカリオは

今いる場所がどこなのか分かった。

「それではここは…北の森なのか…!?」

 

そう…ルカリオがいる場所…

それは土地開発に伴い、伐採され

開拓された北の森跡地だった。

 

「まさか…一体どういう事だ…?

 何故…いったい何が…?」

 

…城に行けば何かわかるかもしれない。

ルカリオは一人、

マサラの城に向け歩き始めた。

 

 

「反乱軍だ!!

 今日こそ奴らを殲滅せよ!!」

「殲滅されるのはお前たちだ!!

 奪われたマサラの栄光を

 王の名のもとに再び取り戻せ!!」

 

全軍 突撃!!

 

城下町は…戦場と化していた。

あちらこちらで火の手が上がり、

国民の悲鳴や剣戟の音が聞こえる…

 

「一体何なんだ…これは…

 どうしてこうなった…?」

 

城下町にたどり着き、

茫然とそれを見ているルカリオ

 

「きゃぁあああああ!!」

悲鳴

 

見るとマリルリとルリリの親子が

城の兵士と思われるポケモン…

ザングースに襲われていた。

 

「おかあさぁん!!」

「止めてください!!

 爪を…武器をこっちに向けないで!!」

泣いて懇願する親子

 

「黙れ!!

 今城下町にいる時点で

 反乱軍と見なせとの命令だ!!

 例外はない!!」

これは…正義だ!!

 

<<きりさく>>

 

キィン…!!

 

「勝手なことを言うな!!」

マリルリの親子と兵士の間に

ルカリオは割って入る。

 

「何が正義だ!!

 弱き身分の者を踏みにじって…

 語ることの出来る正義などあるものか!!!」

ここは私に任せて早くここから…!!

 

「あっ…ありがとうございます!!」

マリルリ親子が走ってこの場を離れる

 

「お前は…ルカリオ…!?

 …王だ!!

 ルカリオ王が居たぞ!!」

「王…だと…?

 私がか…?」

驚くのも束の間…

 

…っ!?

急いで避ける。

 

<<ミサイルばり>>が、

ルカリオが居た場所に突き刺さる…

ナットレイが

建物の屋根の上から攻撃してきていた。

 

「王…!!

 今すぐ俺たちに倒されてください…!!

 あなたが消えれば…

 この戦争は終わるんです!!」

ザングースが吠えるように言う

「おいっ…一体何の話をしているんだ…!!」

 

「問答無用ぉ!!」

ルカリオの問いに答えず、

兵士達が叫ぶと同時。

 

 

 

「騙されてはなりません…ルカリオ王!!」

<<バレットパンチ>>!!

 

一筋の閃光がルカリオの前に躍り出た

 

「城門の前での爆発以来

 はぐれてしまっていましたが…

 ご無事で何よりです…。」

「お前は…ハッサム兵士長…か…?」

その赤い身体には確かに見覚えがある…

ハッサムはハッサムなのだが…何かが違う…。

 

ハッサム兵士長には…

片目に傷などなかったはずなのだ。

それに…こんなに目で追えるほど、

スピードも遅くなかったはず…

 

「ルカリオ王…?

 …いえ、話は後です!!

 まずはこの戦場から脱出を!!」

…撤退しましょう!!

 

ルカリオの様子に首を傾げたものの、

すぐに戦闘態勢に入るハッサム。

「あぁ…分かった!!」

 

 

「逃がすものか!!

 ここで必ず捕らえてやる!!」

ザングースたちは懐から何やら

手のひらサイズの赤と白のボールを取り出した

 

「…っ!!

 “ボール”が来ます!!

 必ず全て避けてください!!」

「…分かった!!」

 

何かは分からないが…ルカリオにも

それを見た瞬間、嫌な予感がしていた。

 

 

ナットレイの<<ラスターカノン>>

城下町の地面を抉りながら大爆発を起こす。

 

「くっ…」

「ゴホッゴホッ…!!」

煙の中から出てくる二人

 

「はぁっ!!」

ザングースがルカリオに迫る

 

<<きりさく>>

 

「…っ!!

 させるか!!」

<<きあいだま>>

 

 

ルカリオの<<きあいだま>>が

ザングースに直撃した

「よしっ…!!」

「王!!危ないっ…!!」

 

パシンッ…!!

 

ルカリオの足元に、ツタが絡みつく。

ナットレイの<<パワーウィップ>>だ

「なっ…!?」

 

ぐるりと身体が回転し、宙に浮かせられる

「王っ、今お助けします!!」

 

<<エアスラッシュ>>

 

ハッサムはエアスラッシュを放ち、

ルカリオの足に絡みついたツタを切り裂いた

 

 

「うっ…!!」

ろくに受け身も取れず、

地面に叩きつけられるルカリオ

 

そこに、またザングースが迫る

その手に握られているのは“ボール”だった

 

「これで終わりだ!!」

ルカリオに向かってボールを投げつける

 

「ぐっ…くそっ…!!」

まだルカリオは立ち上がることが出来ない!!

 

 

 

…っ!!

万事休す。

 

 

 

 

 

…気が付けば。

ハッサムがルカリオを庇い、

ボールに自分が身代わりとして当たっていた。

 

「王…

 お逃げくだ…さ…!!」

ハッサムが赤い光に包まれ、

ボールに吸収された。

 

「ちっ…せっかくのボールだったのに…

 捕まえたのは付き人の方かよ…。」

ザングースがボールを拾い上げる。

 

「今のが最後のボールか…?」

ナットレイがザングースに聞く。

 

「あぁ…俺たちがもらった最後のボールだ…

 あ~あ、折角の昇進の

 チャンスだったんだけどなぁ~。」

「まぁ、いいだろう…

 ボールではなく、

 “こっち”は素で捕らえるぞ。」

「りょうかい♪」

 

 

「あっ…あぁ…。」

何も出来ないまま。

 

二人が近づいてくる…

 

もう、自分には味方はいない…

 

 

誰か…だれか…!!

 

恐怖に身体が強張る。

…震える、戦意が奪われていく…

 

「うわぁああああ…!!」

本当に何も出来ないまま。

 

どうしようもない恐怖に心を奪われ

ルカリオはその場から逃げ出していた。

 

走って走って…

決して二人に追いつかれないように

戦場を走り続ける。

 

 

…。

 

 

 

…そして、どれぐらい走っただろうか…

もう、二人は追ってきていなかった。

 

「…。」

トボトボと歩くルカリオ

 

雨が降り始める…

 

歩き続けるルカリオの胸の中は、

敗北感で一杯だった。

 

どうしようもない無力感が胸を襲う…

雨に紛れて…

ルカリオの目から水が零れていく…

 

このまま雨に打たれて…

消えてしまえないだろうか…?

そんな風に思ってしまう。

 

「ルカリオ…王…?」

そんな時、ルカリオはまた声をかけられた…

 

見ると数人のポケモンとともに

行動しているポケモン…

 

青色の身体…ひれ…四足歩行…

シャワーズだった。

 

 

「無事だったんですね…!!

 良かった…。」

「…無事な…ものか…。」

 

笑顔になるシャワーズとは対照的に、

…暗い表情のままのルカリオ。

 

「私のせいで…わたしのせいで…!!

 ハッサムが…ハッサムがっ…!!!」

強く握られる拳

 

 

…それ以上、ルカリオが何か言うよりも早く。

 

そっと…

ルカリオは柔らかな鱗のある体毛に包まれた。

ひんやりとしたその身体に手が触れる…

 

シャワーズがルカリオを抱きしめていた。

「ルカリオ王…

 お気持ちはお察しします…

 ですが…あなたは決して折れてはいけません…

 あなたが今折れてしまえば…

 あなたの下であなたを支える者達が

 路頭に迷ってしまうからです…」

…どうか…どうか、今は耐えてください…。

 

…?

シャワーズは小さく首を傾げる…

 

 

「ぐっ…うぅ…。」

ルカリオはその言葉を受け…

零れていた涙をなんとか止める…。

 

 

「…行きましょう、ルカリオ王…。

 まずは拠点に戻り…体制を立て直すべきです」

そのままルカリオはシャワーズに連れられ…

反乱軍の拠点へと向かった。

 

 

その間に。

ルカリオは今この時代に起こっている

現状を知ることが出来た…

 

今、この世界はダークライに完全に支配され、

そしてマサラ大国も

また支配されてしまったのだという。

 

マサラ大国の崩壊を手引きした者…ガブリアス。

 

今、実質城を治めているのは彼で

王座を奪われたルカリオ王が反乱軍として、

何とか失われた王位を奪い返そうと

躍起になっているのだとか…。

 

「…。」

話を聞きながら、ルカリオは

 自分は今、未来の世界に

 来てしまったのだと理解していた。

 そして同時に未来の自分が

 そんなことになるのか…と

 軽く絶望もしていた。

 

…とりあえず、

 今はこのまま彼らの“王”になりすまして

 詳しく情報を調べよう…。

 

「…ですが、油断は出来ません…。

 ガブリアスの裏には

 今は不在とはいえダークライが付いています…

 彼は用意周到な人物です…。

 私たちが城を奪い返しても、

 何かしらの事はしてくるはず…」

歩きながらの報告は続く…

 

「実際、密偵からの連絡によれば

 “あの後”も、

 定期的に城にダークライ四天王の一人

 ネンドールが出入りしているとの事です…。」

…恐らく、いや確実に…

 仮にガブリアスを潰しても、

 奴との戦闘になるのではないかと…。

 

兵士の一人、カメックスが、ルカリオに話す。

「そうか…。」

その報告を受け、ルカリオは俯きながら答えた。

 

…。

「そういえば…“ボール”については

 どこまで分かっている…?」

「えっ…あぁ…

 それが…まだよく分かっていない部分も多く…

 一度捕らえられると

 何らかの方法で

 “ナイトメア”化 するとしか…」

「ナイトメア化…?」

ルカリオは更に深く尋ねる。

 

「えぇ…ナイトメア化…つまり

 闇に囚われ…

 同じ身体、同じ技を使う敵に

 なってしまうということです」

…が…。

 

「この報告は

 つい先日したばかりのはずですが…

 何故今お聞きになるのでしょうか…?」

 

「うっ…いっ…いや…それは…。」

…まずい…早くも

 自分が“王”ではないことがバレてしまう…

ダメだ…何か上手い言い訳を…。

 

「口を慎みなさい…

 兵士が王を疑うとは何事ですか!」

シャワーズが慌てているルカリオを置いて

兵士を叱責する。

「はっ…!

 申し訳ございません、陛下…」

 

「いっ…いや…良いんだ。

 こちらこそ、申し訳なかった…。」

…助かった…。

…下手に情報を探りすぎて

 墓穴を掘らないように、注意しよう…。

 

脂汗を拭いながら、

ルカリオはそう心に決めたのだった。

 

「…。」

そんなルカリオを、

シャワーズは静かに見守っていた。

 

 

「陛下…ご無事でしたか!!」

反乱軍の拠点は…山の洞窟の中だった。

入り口は木の葉で隠され、

更に見張りが付いている。

 

入り口で検問を受け、中に入った。

 

冷たい空気が漂っているが…

中はそれなりに広いようで、

ポケモン達でごった返していた。

 

傷を受けたポケモン…

行き場をなくしたポケモン…

 

平和とはかけ離れた空間が、そこにはあった。

 

「…。」

目を見開き、その現状を見つめるルカリオ。

その手は、再び強く握られている。

 

「陛下…次なる作戦のため…

 ご報告したいことが…」

兵士の一人、サンドパンがルカリオに近づく。

 

「お待ちなさい…

 王は今帰ってきたばかりです…

 少し休息の時間を。」

「はっ…そうですね…

 では、報告は

 またのちほどということで…。」

シャワーズの言葉に、引き下がるサンドパン。

 

「では王…こちらに…

 部屋にご案内いたします…。」

「あっ…あぁ…分かった。」

 

シャワーズに連れられて、

ルカリオは洞窟の奥へと進んだ。

 

…なぁ…さっきの王…

 随分と若くなかったか…?

…どうだろうな…気のせいじゃないか…?

…ほんとにそうかな…?

 

「えっ…?」

その時、見張りが驚いていた…。

「おいっ…一体どうしたんだ…」

 

…。

…はぁ?

 なっ…なんで…?

 

 

 

「…。」

ルカリオは絶句していた。

 

シャワーズに案内され連れてこられた部屋…

 

そこにいたのは、ベッドに寝かされ

植物状態になった母、

ルカリオ王妃だったからだ…

 

「…っ!

 母様…!!」

ルカリオは部屋に入るや否や駆け寄る。

 

「へっ…陛下…!?」

世話役のラッキー達が困惑する。

 

「大丈夫です…

 ここは私に任せて。」

シャワーズが

ラッキー達を鎮め、部屋から出す。

 

「なぜ…なんで母様が…こんな…

 こんなことに!!」

「ガブリアスです…。

 彼は王の寝込みを野盗に襲わせ、

 王妃の食事に毒を…。」

「くそっ…くそっ…!!」

 

ベッドのシーツを握るルカリオ

その目から、涙が零れる…

いくら止めようとしても…止まらなかった。

 

「だいぶ、状況が呑み込めましたか…?

 “王子”様…?」

「…っ!!

 えっ…?」

 

「あなたは何らかの方法で

 過去から来た…違いますか?」

 

「…どうして…それを…。」

シャワーズの発言に困惑するルカリオ。

 

「最初こそ私も分かりませんでした…

 でも、あなたを抱きしめた時…

 身体から強烈に

  精霊の泉 の匂いがして…確信しました。

 この人は私たちの知っている王ではない…と。

 そして…なら、五年前の過去から

 何らかの方法で来たのではないか、と

 そう思ったのです。」

 

「でも…そんな…どうして五年前だと…」

…っ!?

…いや…まさか…そんな…!!

 

「まさか…あの時のイー…ブイ…?」

「はい…“王子様”。」

 

優しい微笑みを浮かべるシャワーズ。

 

「王子様が泉に行かれたのは

 後にも先にもあの一回だけ…

 そして泉は開拓によって消滅しているため、

 現在は匂いの付きようがない…

 最後に私は当時同行していた…。

 だからこそ、分かったのです。」

 

「わ…私は…。」

全てが分かった時、

ルカリオの中のダムが…決壊した。

 

いきなりこんな時代に連れてこられて。

いきなり戦場に身を置いて…

いきなり自分のせいで犠牲者を出してしまって…

 

まだ十六歳の戦争を知らぬ青年の心には、

あまりにも酷な状況だった。

 

「うわぁああああ…!!」

 

ルカリオはシャワーズに

抱きしめられながら声を上げて泣いた。

床にへたれ込み、

己の無力を心の底から呪った。

 

 

「王子…。」

 

シャワーズは…

そんなルカリオを黙って受け止めていた。

 

 

…しばらくして。

…ようやくルカリオは涙を止めた。

 

「母様…私は…

 決してあなたを今のようにはしません…

 必ず…救って見せます…。」

 

植物状態の母親の顔を見て…声に出して、

もう一度心の中で口に出して心に…魂に刻む。

 

「私は…私の時代に帰らなければ…!!」

「えぇ…全力で、

 サポートいたします、王子様。」

 

コンコンッ…

…ガチャリ。

 

「王…少し…来ていただけますかな…?」

その時、部屋に入ってきた兵士の顔は…

何故か暗かった。

 

「…?

 あっ…あぁ…。」

ルカリオはついていく。

シャワーズもまた後ろからついてきていた。

 

 

「…っ!!」

そして…めぐり会う。

 

「えっ…?

 おっ…王子…様っ!?」

「イッ…イーブイ…。」

「…。」

 

「…なるほど…

 さて…これは一体どういう事なのか…

 説明してもらおうか…

 “王”様…シャワーズ?」

おっ…王が…二人…!?

 

運命が…交錯していた。




~次回予告~
ルカリオ達はめぐり会った。
そして…物語は大きく動き始める…

ダークライの謎…
ガブリアスがなぜ裏切ったのか…

そして…涙を流すルカリオ…

運命の歯車が動き出す中、
はたして、ルカリオは
元の時代へと戻れるのか?

次回 因縁の竜の牙 中編 お楽しみに!
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