ポケットファンタジア   作:肥えたチヌ

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~前回までのあらすじ~
マサラ大国の王子ルカリオは
精霊の儀を受けるイーブイの護衛の途中
時空転移に巻き込まれ
未来の世界に飛ばされる。

何とか未来から自分たちの時代へと
帰ってくることが出来たルカリオ達。

崩壊の未来を回避するため
手段を探すことになるのだが…。

いまだ、それは見えてこない…。


第二章 帝国の脅威 その2

…。

 

…あの時…。

…王子様と私…

いいや…“王様”と“私ではない私”が

 目の前で“動かなくなった”時…

私は過去の事を思い出していた…。

 

いつの頃かも分からない…小さな記憶…

切れ切れで飛び飛びの…そんな記憶。

 

水の中にいるような…そんな感覚。

そして…水面に出る…

 

温かな日の光…

それとともに、記憶が途切れる。

 

 

…生き延びて…

そして…探しに…。

 

 

そんな小さな声が、

暗闇の…冷たい水の波の音に紛れて

聞こえた…気がした。

 

…。

私には昔の記憶がほとんどない…

気が付けばこの施設に入っていて、

温かな暮らしをしていた…。

 

ふと、聞いたことがある…。

 

私は一体、どこから来たのか…

どこから来て、

いつからここに居るのか…と。

 

 

それに対する答えは…。

私はマサラの国の東…

大海の中に浮かぶ三つの島を望む

海岸に流れ着いていたらしい。

 

最初の私は

普通の生活が出来る範囲以外の事を

何もかも忘れていて、

自分がどこから来たのか、

どうやってここにいるのかさえも

覚えていなかったのだとか…

 

ただ…今私が持っている小さな青色の石…。

しんぴのしずくに似たこの石は

絶対に何が何でも手放さなかったそうだ。

 

未来世界の私…

シャワーズさんに聞いてみても

戦争中に無くしてしまったのだといい…

結局何も分からなかった。

 

 

「…それは、あなたのものだから、

 絶対私みたいに、なくしちゃだめだよ?」

それが、シャワーズさんの言葉だった。

 

 

…最初の私はこれを

“うみのたみのあかし”

 と言っていたらしい。

…どういう事なのかは…

全く思い出せないのだけれど…。

 

でも…今でもずっとこれは

手放さずに持っている。

…私の思い出につながる…

唯一の手掛かりだから…。

 

 

…私にも…

いつか帰るべき所が…ある気がして…。

 

 

そうこうしているうちに、

ゾロア君への施設の案内が終わった。

 

「色んな小さな子たちと

 遊べて面白かったぞ!!

 久しぶりに楽しかった!!」

 

ゾロア君は施設の子達と

すぐに打ち解けてしまい、

気が付けば、一緒に笑顔で遊んでいた。

 

…この時、私は

彼もまた一人のポケモンであると

 自覚させられた。

 

彼の歩んできた道を私は知らない…

けど、彼の今の表情は…。

母親を失って、

一人泣いていたあの時とは違う…

 

…明るい…眩しいぐらいの笑顔だった。

 

 

 

「ばいばい…また来てね!」

施設に預けられた子ども…サンドが

ゾロアに手を振る。

 

 

「おうっ!!

 絶対また来るぞ!!」

ニシシッ…といたずらっぽく笑うと

そのまま私に話しかけてくるゾロア君

 

「今日はありがとう!!

 オイラ、城には自分で帰るぞ!

 …でも、ちょっと寄り道して帰るから

 今日はここでお別れだぞ」

「分かったわ

 楽しんでくれたなら、よかった。」

「すっごく楽しかったぞ!!

 それじゃ!!」

そう言って、歩いていってしまった…

 

「…私も、頑張らなきゃ。」

城下町に一人消えていく

彼の後姿を見て…私はそう思った。

 

 

 

…数十分後…。

 

「どうしよう…

 かっ…かっ…完全に迷ったぞ!!!」

ゾロアは城下町であたふたとしていた。

 

イーブイと別れ、

カッコつけて出てきたはいいものの。

…時代が違えば、

町の様子もガラリと変わるもので。

 

「なんで五年しか違わないはずなのに

 こんなに街の様子が違うんだよ!!

 普通は大した違いなんてないはずだろ…!?」

WHY!?…マサラの人々!!?

 

けれども、残念無念かな…

ゾロアの必死の叫びは

誰にも届かず…。

 

「もし…そこの方、大丈夫でござるか…?」

…いいえ、届いたようです。

 

「えっ…?」

ゾロアは急に声をかけられ、振り返る。

 

そこには屈強なポケモンが立っていた。

「突然声をかけて申し訳ない…。

 拙者はウーラオスと申す者

 どうやら少しばかり

 お困りのようだったので…

 声をかけさせていただいた次第で…。」

「…ちょっと、怪しいぞ。」

 

「なっ…!?」

ゾロアの発言に固まるウーラオス

「あと、かな~り、おじさん臭いぞ!!

 さっきからずっとプンプンしてる」

ゾロアのいたずらスイッチが

どうやら入ってしまったようで。

 

 

「…そうでござるか…

 それはかたじけない…。」

それを受けたウーラオスは

少し肩を落とし、落ち込んでいた。

 

「ごめんごめんっ!!

 冗談だぞ!!

 落ち込ませてしまってごめんなさい。

 怪しい人に

 話しかけられてもついていくなって

 オイラ、マァから…教わって…

 …!!

 教わって…。

 …。」

ニシシッ…と

笑っていたゾロアの表情が固まり、

フッ…とその顔から笑顔が消える。

 

「いや…冗談ならば良い…

 いきなり話しかけた

 こちらも悪かったというもの…

 …?

 …どうかされたか?」

急に押し黙ってしまったゾロアの様子を見て

心配するウーラオス。

 

「…いや…何でもないんだぞ…。

 …ちょっと嫌な事思い出しただけ…。」

目からほんの少し溢れた涙を拭うゾロア

 

「…そうでござるか…。」

ウーラオスはそれを見ながら

続く言葉を無くし、少しオロオロしていた。

 

「…あ、丁度良かったぞ!

 おじさん、

 城への行き方知らないかな!?」

「…それは丁度良かった。

 拙者もこれから城の近くに

 行こうとしていた所…

 送っていくでござるよ。」

 

「そっか…ありがとう!!

 オイラはゾロアっていうんだ!!

 さっきは茶化したりしてごめんなさい。」

ペコリ、と向き直り

ウーラオスに頭を下げるゾロア

 

「大丈夫でござるよ。

 拙者はまったく気になどしていない…

 では改めて、

 拙者の名はウーラオスでござるよ。」

厳格な、それでいて温かな笑みを

ウーラオスは浮かべていた。

 

こうして、二人は歩き出した…

 

 

「…ミーは事実を言っただけなんデス…。」

シェイミは、別室でソファに座り、

不貞腐れていた。

ガーディが傍で待機している。

 

「…それは…いきなり貴女が

 あんな事を言い出すからでは…?」

そして何故か、この場にはルカリオもいた。

 

ルカリオ王の命令(というよりはお願い。)で

とりあえず一番、年の近い自分が

話を聞くだけ聞いてくれ、との事だった。

 

…なぜ、自分が…。

と心の中で頭を抱えているルカリオ。

 

 

「でも、事実なんデス…。」

ぶすぅ…と頬を膨らませるシェイミ

 

「でも、貴女の母君を止めるにしても

 慎重に動かなければ

 戦争につながりかねないので…」

「そんな事、ミーだって分かってるんデス!!」

 

ルカリオの言葉に反発し、

勢いよく立ち上がるシェイミ

 

「でもその前にあれが…

 あれが、起動したらおしまいなんデス!!」

「落ち着いてください、シェイミ様…

 まずは深呼吸を。」

ガーディがシェイミにそっと優しく語り掛ける。

 

ふぅ…とシェイミは乱れた心を整え、

もう一度話し始めた。

「ミーの国…ブラッシーでは、

 ポケモンを使って、秘密裏に

 新型大量殺戮兵器を開発していたんデス…。」

シェイミが語るは、恐ろしい歴史…

 

「鉱山で発掘された化石から

 ポケモンを呼び起こす実験…。

 失敗作として、ポケモンとして

 扱われていないような者達も居たのデス…」

 

 

…茶色の胴体…両腕に鋭い鎌を持つ者。

 同じく、固い甲羅を背負う赤き瞳…。

 

…翼が生え、灰色の胴体を持つ者…

そして…頭が魚のような姿で身体が赤緑の者…

 

 

シェイミは淡々とルカリオに語っていく…

「そしてその中でも…

 ミーが見た中で特に恐ろしかったのが…

 空を飛ぶ飛行能力を有し…

 高い破壊能力、

 そして大量に生み出せるもの…。」

脳裏に移るは、

実験室の様子…

 

何か液体で満たされた透明なカプセル。

その中をプカプカと浮いているポケモン達…

どこからか響いてくる悲鳴のような声…

重厚な機械音

 

「飛行型試作大量殺戮兵器…

 G、とそれは呼ばれていたんデス…。」

「G…。」

 

 

「ミーが見た時はまだ確かに、

 空も飛べない試作段階だったんデス

 でもあれが…あれが完成してしまったら…

 本当に取り返しのつかない事に

 なるんデス!!」

だから、ミーは急いでるんデスよ!!

 

 

…そんな事があって。

ルカリオは一人、城の中庭に出ていた。

 

「…私は…こんな事で

 本当に未来を守れるのだろうか…?」

…そんなルカリオの問いに答えはない。

 手がかりも無論ない。

 

あるのはただ、

それでも進まなければならないという

絶対的な事実のみ。

 

 

…城の中庭の泉の水が絶えず流れている…

…その中で。

 

 

パタッ…。

 

「…ん?」

 

パタッ…パタ…

 

小さく、誰かが

歩いてくるような足音が聞こえてきた…

 

…風が広場を通り抜ける…

マントで全身を覆った人物が、そこに居た。

「お前…何者だ?

 城の者では…ないようだが…。」

ルカリオは警戒しながら話しかけた。

 

 

「そういうあんたこそ…何者なんだい?」

…なんだろう…。

…どこかで…聞いたことのある様な声だ…

 

「…?」

ルカリオの頭の中に、疑問が浮かんでいる。

 

「…未来を託されて、何も出来ずに

 無力感にさいなまれてや…しないかい?」

「…!

 …なぜ、それを…!?」

 

フワリ…と

また風が通り抜け、

その人物が視界から居なくなる

 

「…っ!?」

背後から気配がした。

 

…急いで振り返る…

 

「…待ちな。

 …あたしは別に

 ここに戦いに来たんじゃないんだ…」

ペタリ、と背中に冷たい感覚が走った。

 

…どうやら手を当てられているようだ…

 

「…この国は本当にいい国だね…

 …平和が続いている…。

 さて…あんたがもし…

 この平和を守りたいっていうのなら…。」

耳元に、声が近づいた…。

 

「…まずはガブリアス、彼を守りな…

 この国の崩壊は…

 そこから始まったんだからね…。」

声が…離れていく…

 

「…っ!

 まっ…待てっ…!!」

ルカリオが振り返ったとしても…

 

…その人物は…もう、影も形もなかった…。

 

 

「…だ~か~らぁ~!

 オイラがおじさんについていくのは

 ダメなのかって聞いてるんだよ!!」

「…それは駄目でござる。」

「なんでなのさ!?

 別にオイラ足手まといにはならないよ!?」

…賑やかな話し声が聞こえてくる…。

 

城門が開かれ、

ゾロアとウーラオスがルカリオの前に現れた。

 

「…ゾロア…それに…。」

「あぁ~もう、城についちゃったじゃん~。

 …ん…?

 …!!」

ゾロアはルカリオを見て、

殺気を出しながらそっぽを向く。

 

「…。」

悲しげな表情をして、ルカリオは少し俯いた。

 

「…あなた様は…

 ルカリオ王子…でございます…よね…?」

「…っ!

 …あっ…あぁ…

 …久しぶりだな、ウーラオス。」

首を少し振り、調子を戻すルカリオ

 

「…お久しぶりです、ルカリオ王子

 二年ぶり、でしょうか?」

 

 

「…ここに居られましたかルカリオ王子、

 先程会議が終わりまして…

 王がお呼びでございます…。」

ハッサム兵士長がルカリオを呼びに来る

 

「…ん…

 そなたは…ハッサム兵士長殿…!」

「…!!

 ウーラオス殿!?

 …これはまた随分と…。」

ハッサムもまたウーラオスに驚く

 

 

「…最悪。」

ゾロアは彼らを見ながら、

一人、イライラとしていた。

 




~次回予告~

ウーラオスと会うことになったルカリオ
彼は一体何者なのか。

そして王は何故ルカリオ達を呼び出したのか…

豊穣祭の行方は…
ルカリオの進言したマントの人物は…?

次回 第二章 帝国の脅威 その3
   お楽しみに!!
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