地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第16話

「頑張れ」 

 

 そんな声が聞こえたような気がした。もちろん気のせいだとは思う。私は時速60㎞の世界にいる。そこで一つ一つの声を聞き分けるなんて不可能だ。

 ただどうしてもその声が頭から離れることはなかった。

 

 

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 今だ!

 

 直線入り口、ここで私はギアを上げる。

 前の娘はもう限界。言っては悪いが道中は良い風除けになってくれた。絶対に口には出さないけれど、せめて心の中だけでも言わせてもらうよ、ありがとうってね。

 さぁ先頭に並ぶ、そして交わす。もう何も考える必要はない。

 だって、セイちゃんの作戦はここまでですから。あとは内埒に沿って全力で走るだけ。

 さぁ、全力は出した。勝利の女神は私を選んでくれますかね。

 

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 前でスカイさんが仕掛けた。なら、キングも行くしかないわね。

 私の勘が、ここで仕掛けろと言っている。だったら、仕掛けない理由がない。

 前との差は1バ身。後ろは・・・、見えないから知らないわ。今の私に出来るのは前のスカイさんを交わすこと。さぁ、キングの走りを見せてあげるわ。

 

 おーっほっほっほ!! 勝利の女神は私にほほ笑むのよ。

 

 ・・・いや、違うわね。女神なんて関係ない。私は私の力で勝つんだから。

 

 

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 

『直線に向いてセイウンスカイが先頭。キングヘイローが2番手から並んでくる』

 

  3コーナからのスパートで、私は直線を向いた時にはかなり位置を上げていた。やっぱり最後はこの2人を倒さないとだめだよね。

 ロングスパート対決は私が勝った。後はあの二人を捕まえるだけ! 

 

『おーっとここで、早々とスペシャルウィーク3番手。前の2人に迫ってきた。エモーションが4番手』

 

 そもそも彼女、スペシャルウィークは余りにも特別だった。

 トレーニングを苦とも思わない性格。

 決して掛かることのない精神性。

 そして、デビューの時点でダービーを獲れると言わしめた脚力。鋭くキレるその末脚はこのクラシックのメンバーでも光輝く。

 

『スペシャルウィーク、あっという間に前の2人を飲み込むのか』

 

 ・・・おかしい、絶対におかしい!

 前の2人との差が全く縮まってこない。

 セイちゃんもキングちゃんも強いウマ娘だ。でも、末脚なら絶対に私の方が上の筈。

 なら、どうして?

 

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 坂を登る。中山の坂は逃げウマ娘には鬼門だ。ここまでリードを保ってもこの坂で捕まるウマ娘は多い。スタミナが尽きたウマ娘にこの坂は余りにもおおきな壁だ。

 でも、私には関係ない。

 確かに私には爆発的な末脚はない。圧倒的なスピードもない。他者をねじ伏せるような走りができるわけでもない。それにスタートも上手くない。期待もまぁ少ないだろう。

 じゃあ、私には何がある? どうすれば勝てる?

 そう考えた時、私には何もなかった・・・。

 だから鍛えた。正確にラップを刻む体内時計を、緩急を付けてレースを支配する術を、利用できるものは利用する強かさを。

 速いウマ娘に私はなれない、だけど強いウマ娘になることはできる。

 そしてその集大成が今日だ。グリーンベルトを最大限に利用して、ペースも味方につけた。バ場の利を展開の利を得た。

 私の最大の武器をぶつけたんだ。だったら負ける理由がない。

 

 

 

『さぁ、先頭はセイウンスカイ、2バ身のリード。キングヘイローがグングン差を詰める。スペシャルウィークは3番手』

 

 逃げるセイウンスカイに待ったをかけるべく飛び込んできたのはキングヘイロー。思えば彼女は一貫してこのレース、セイウンスカイをマークしていた。

 だが、届かない。

 

『セイウンスカイ、粘って粘ってゴールイン!』

 

 勝者の名はセイウンスカイ。

 レースを操り支配した葦毛のウマ娘。

 

 ただし、それだけではない。

 セイウンスカイ、彼女は自分の武器を見誤っていた。彼女のレースセンスは確かに優れている、ただそれだけでは勝てない。一流の走りには屈してしまう。

 では、そこを埋めるのはなんだろう? 答えはただ一つ根性だ。

 そしてセイウンスカイはそれを埋めあわせるに足る勝利への執念を持っていた。

 普段の飄々とした態度の裏には、勝ちへの渇望が蠢いていた。

 それこそが彼女の一番の武器。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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