地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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石川ダービー編、終了です。


第20話

『さぁ金沢レース場、本日のメインレース石川ダービー、各ウマ娘の入場です』

 

 遂に来た本番の日。バ場コンディションは重、できれば良でやりたかったのが本音だけど、こればかりはしょうがない。

 いや良い意味に捉えよう、このコンディションのおかげでスピードバ場になれば中央の砂で走っていた私には有利になるはずだ。まぁ、相手は中央の芝G1に出走した相手でもあるんだけど。

 

『流石のダービー。各ウマ娘の気合の乗り方もいつもと違って見えます。さぁ、1枠1番はこの娘。前走で見せた末脚は今日この舞台でも発揮されるのか』

 

 番号の小さいウマ娘から順に場内に入り、それと同時に実況がそれぞれのウマ娘の紹介をしていく。なんというのだろうか、この雰囲気は嫌いじゃない。

 ちなみに私は4枠4番、カナメは大外8枠12番だ。なんて、そうこうしているうちに私の番だ。

 

『さぁ、ファンはこの娘を2番人気に支持しました。前走は逃げて圧勝。今日も逃げて他の娘たちを完封するのか。足取り軽くスタート地点に向かいます』

 

 流石実況さん、よく分かっている。そうこのレースで勝つのは私、華麗な逃げ切り見せてやる。

 

『続いては5枠5・・・』

 

 その後も続々と他のウマ娘が入場していく。

 そして遂にあいつの番だ。

 

『そして満を辞してこのウマ娘の入場だ。圧倒的1番人気、前走は皐月賞、前々走は中山若葉Sで2着、その実績はここでも光り輝く。今日も自慢の末脚で他のウマ娘を置き去りにするのか? 主役は遅れてやってくる、8枠12番カナメの入場だー』

 

 

 なんだか、明らかに一人だけ力が入っているような気がするんだけど。2番人気の私と比べても、明らかに・・・ねぇ?

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「よーし、固くはなっていないようだな。これもお前のおかげかな、シャイン」

 

「なーに言ってるんですか。大体トレーナー、ほとんど私に彼女のこと投げたくせに。彼女が勝ったら少しは賞金分けてくださいよ?」

 

「ははは、彼女みたいにプライドの高いタイプは、地方の人間の言うことなんて聞き入れないからね。実際、彼女を指導していたトレーナーは僕と比べても実績があるのは間違いないし。でも、シャインのいうことは聞くだろうと思ってね。なんせあのスペシャルウィークに勝ったくらいなんだから」

 

「全く都合のいいこと言って。そのウマ娘のトレーナーが自分なんだから胸を張ればいいのに」

 

「とはいうけど、あのレ-スはシャインが自分の判断で追い込んで勝ったじゃないか。私の指示は無視でね」

 

「それもしかして、根に持ってます?」

 

「いや、そんなことはないよ。良いレースだったさ。それだけに色々惜しいなと思ってね。まぁそれはいい、とりあえず今日のレースを見届けようか」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了』

 

 ふぅ、いよいよ本番。

 調子は完璧、枠も悪くない、心も落ち着いている。なら、負ける筈がない。

 

 ガコン!

 

『さぁ、ゲートが開いて各ウマ娘一斉に飛び出します。注目の先行争い、前にいくのはどの娘か』

 

 よし、最高のスタートだ。これなら楽に前に行ける、後は徐々にペースを上げていけばいい。とにかく、隊列を縦に長く伸ばして少しでもカナメとの距離を付ける。おそらくあいつは、最後方に近い位置取りのはず、これなら逃げ切れる。

 

『隊列はすんなり決まって1コーナーへ。ペースは平均といったところ、展開に大きな影響はなさそうです』

 

 ははは、全て思った通りの理想形だ。これなら勝てる、さぁガンガン行こうか・・・!

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

『今、ゴールイン! 圧倒的な着差で今年のダービーを制したのは、やっぱりこのウマ娘。断然の1番人気に応えたカナメ。次走もますます楽しみです!』 

 

 なぜ、どうして、どこで間違えた? 

 向こう正面でペースを上げすぎた? 

 それとも序盤を抑えすぎた?

 

 考えれば考えるほど、自分の走りを見失いそうだ。でも、本当は自分でも分かっている。ただ、その現実は、余りに直視するには残酷すぎた。

 

 付けられた着差はざっと8バ身、完敗だ。少なくとも私はそう思う。きっと何回やり直しても、このレースには勝てないだろう。

 

 ・・・それからのことはあまり覚えていない。もちろん、私もプロだ。ライブはしっかりやりきったし、メディアの取材にもきちんと対応はした。ただ、どこか空虚な気持ちであったことは否めない。ちゃんと、私はライブで上手く笑えていたのかな?

 そんなことを考えて、控室の隅でうつむくことしかできないでいた。

 

「・・・聞こえてる? おーい」

 

 そんな私を、現実世界に引き戻したのは、あの人の声だった。

 なんてことない、我が愛しのお師匠様だ。

 

「あぁ、シャインさん。すいません、完敗でした。シャインさんから見て、今日のレースはどうでしたか?」

 

 私は、この質問に一縷の望みを賭けていた。ただ、シャインさんがその期待に応えてはくれないことも分かっていたけれど。

 

「そうだね。大枠でみれば理想的な展開だったと思うよ。単騎で逃げられて前半はMペースながらバ群も縦に伸びていたし。それに向こう正面でのペースアップも事前に話していたように上手くいっていた」

 

 ただ、とシャインさんは続ける。

 

「それでも負けてしまった理由は一つ、カナメちゃんがもっと強かったから。残念で残酷だけどそれが現実」

 

「そっかぁ。私の作戦は上手くいっていたんですね・・・」

 

「言っておくけど、私は慰めてあげたりはできないよ? 中央で走っていたあなたなら分かっていると思うけど」

 

「えぇ、この世界のことはきっとシャインさんより分かっていると思いますよ」

 

 今まで、未勝利戦を勝ちきることができずにトレセンを離れていったウマ娘は多々見てきた。1勝クラスを勝ち切れずに何年も同じクラスで走り続ける先輩も、地方の能力検定をパスできずにデビューできなかったウマ娘も周りにはいた。けど、そんなこと私には関係ない。

 

「でもねシャインさん。私は諦めが悪い方だと思うんですよ。そりゃ今は凹んでいます、今日の夜は良くは寝れないでしょうね。でも、後ろを見ることはありません。だって、目は後ろにはついていませんから。それになんやかんや言っても走るのは好きなんですよ。好きなことをしてお金も稼げるって最高じゃないですか」

 

「だろうね。あなたはそういうタイプだと思ったよ。少なくともメンタル面ならカナメちゃんは敵わないなぁ。カナメちゃんはメンタルよわよわだからね」

 

「ははは、なら1勝1敗ですね。それとシャインさんに言わないといけないことがあるんですよ」

 

「・・・いいよ、言わなくても。短い間だったけど楽しかったよ」

 

「そうですか。・・・こちらこそありがとうございました!」

 

 さぁ、次はどこを走ろうか。時期的に次は・・・高地ダービーかな? これまた賞金も魅力的だし、私はプロだしお金もこだわらないとね。

 ははは、またトレーナーさんに頼まないといけないなぁ。

 

 きっと私は、どこまでいっても走ることしか出来ないんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

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