「よし、よくやったな。まぁ今のお前なら、ここで負けるわけがないとは思っていたが」
「はい。とりあえずこれで、JDDに出走はできますね」
あくまで私の目標は次走のJDD。紛うことなきG1レースだ。
JDDは実質的にクラシック期ウマ娘のダート日本一決定戦だ。もちろん、中央からも選りすぐりの精鋭がやってくる。
とはいえ、ダート戦は地方と中央ではまるで求められる能力が違う。中央はスピード、地方はパワーといった感じだ。
まぁ、私はどっちも中途半端なんだけどね。
「大井の2000mはお前にとっても悪くない舞台だ。できれば一雨欲しい所ではあるがな」
「作戦はどうしましょうか。捲っていきますか?」
大井の外回り2000mは地方のレース場では直線が一番長い。流石にそれくらいは私でも知っている。中央はともかく地方に関しては私もそれなりに知っている自負があるからね。
とはいえ、以前走った東京程は長くはない。それに私の能力的にも捲っていくのが一番だと思う。
けど、トレーナーさんはそんな私に呆れたような顔を向ける。
なんか、小ばかにされてるみたいでちょっとムカつく・・・。
「まぁまぁ落ち着け。お前にとっては勝って当たり前のレースではあるかもしれないがこのレースは石川ダービー、金沢でも有数のビッグレースなんだ。メディア関係者だって控えているし、お前を祝福したい人たちだっている。先ずは顔を出してこい」
・・・確かにトレーナーさんの言うことは正しい。正直、今回のレースはただのステップレースとしか考えていなかったから。
でも純粋な金沢のファンの人にとってこのレースはステップでもなんでもない、メインイベントなんだ。そう考えれば、確かに私の態度は褒められたものではないと思う。
そうして、トレーナーさんに押し出されて今回設けられて記者会見の場に向かう私に一人のウマ娘が話しかけてくる。
なんてことはない、それは今回出走の叶わなかった私の友達だった。
「カナメちゃん、おめでとう! 圧勝だったね。いやー金沢でカナメちゃんに勝てる娘ってもういないんじゃない?」
「ははは、今日はシャインちゃんが出走していなかったからだよ。それにサウスヴィレッジさんやシロヤマさんもいるからなぁー、私なんてまだまだだよ」
これはお世辞でもなんでもない。実際、シャインちゃんが万全で出走していたらこんなに簡単には勝てなかったかもしれないから。
それでも友達が褒めてくれるのは気分がいい。まぁ、サウスヴィレッジさんやシロヤマさんは地方全体でみても上位の実力者だから、今の私では敵わないのは分かっているけどね。
ただその二人でも、南関東の哲学者や水沢の英雄なんかには厳しい戦いを強いられるんだよね。
「ふーん、なるほどね。結局、あの娘の想いは届かずか・・・」
「ん? ごめんシャインちゃん最後の方、聞こえなかった」
「あぁ、気にしないで。それよりも記者の人たちも待ってるから行って行って!」
薄く笑顔を浮かべたシャインちゃんは、私の後ろに回って背中を押し出す。
私はなすすべもなく会見場まで押し出されてしまったのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「カナメさん、おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございまひゅ」
相変わらず、記者会見って緊張しちゃうなぁ。
少し噛んじゃったし。
「まさに圧勝でしたね、今のお気持ちは?」
「えと、トレーナーさんと事前に打ち合わせたようなレースができたと思います」
これはポイント高い筈。前回の時はトレーナーさんのことすっかり忘れちゃってたからなぁ。少しはトレーナーさんも立ててあげないとね。
「次走はまた中央に挑戦するんでしょうか?」
「つ、次はJDDに出走する予定でしゅ」
「おぉ! 大井の2000mを走るのは初めてだと思いますが、なにか秘策はありますか?」
「そ、そうですね。トレーナーさんと一緒に考えたいと思います」
「未だ金沢のウマ娘がJDDに勝利したことはありませんが、かつてシロヤマさんがダービーグランプリを制したように、カナメさんにも期待しているファンも多いと思います。ファンの人たちに一言お願いします」
「次走も頑張って、ファンの人たちの期待に応えられよう走ります! 応援よろしくお願いします!」
か、完璧だ! 嚙まずに言えた。きっとお茶の間に流れるのは最後の部分だけだから、今回はからかわれずにすむはずだ。
なお、残念ながらノーカットで全編が公開されたことで、今回のインタビューも周りに相当いじられることになりました。
名前を伏せているウマ娘の扱い(中央ウマ娘のみ)
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実名にした方がいい
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今のままでいい(オリジナル名)