地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第24話

「カナメ、今週の日本ダービーは見に行かなくていいのか?」

 

 5月最終週、天気は晴れ。

 この日は、全てのウマ娘の憧れの舞台である日本ダービーが開催される。

 当然、私も一ウマ娘として憧れていることには変わりない。

 ただ、今の私にはそれよりももっと大事なことがあった。

 

「はい、今の私が見る必要はありませんから。それに府中の2400mは私が秋に走るまでにとっておきたいんです」

 

 言うまでもない、その条件で行われる大レースは一つだけ。今の私にははっきり言って荷が重いのは否めないが、それは現時点での話。とにかく、そこで走るためにも次走の好走は欠かせない。

 

「そうか・・・。まぁ、お前がいうならそれでいい。ところで次走のJDDまでは1か月以上間が空くが、その間にレースを挟んで置くか?」

 

「いいえ、正直金沢の他のウマ娘と走っても余り意味は無いと思いますから。それよりもトレーニングに集中したいです」

 

 前走の石川ダービーではっきりと分かった。今の私にとって金沢のウマ娘は、はっきり言って敵ではない。レースに出てもレベルの違いから得られるものは多くないのは明らかだ。

 

「そうか、確かにその通りだ」

 

 ふぅ、どうやらトレーナーさんも理解してくれたようだ。トレーナーさんはどちらかというと、レースで体を作らせるタイプだから受け入れてくれるかどうかは怪しかったけど。

 

 それじゃあ早速、今日の練習メニューを聞こう。そう口を開こうとしたとき、バンっと大きな音が部屋に響き渡る。

 

 

「おいおいおい、金沢の他のウマ娘と走っても意味がないだと? 随分、生意気なこと言うようになったな」

 

 その音の元凶はサウスヴィレッジさんが部屋のドアを力強く開閉した音だった。この前のことから、何となくサウスヴィレッジさんと会うのが気まずいんだよね。

 

「サウス!? お前なぁ、もう少し静かに入ってこいよ」

 

 トレーナーさんは慣れているのか、呆れたようにサウスヴィレッジさんに声を掛ける。前から思っていたけど、この2人ってどういう関係なんだろう?

 

「おっと、そいつは悪かった。ところで話を戻すが、えらく自信家になったじゃないか」

 

 が、サウスヴィレッジさんは何も気にしていない様子で私に指を突き付けて言い放つ。

 

「えと、あの、さっき言ってた金沢の他のウマ娘っていうのは同期の娘たちのことでサウスヴィレッジさんやシロヤマさんのことじゃないっていうか・・・」

 

「はぁ、シロヤマ? なんで、その名前が出てくるんだ」

 

 あれ藪蛇だったかな? まずい、とりあえず何か言わないと。

 

「でも、前走のスプリングカップはシロヤマさんが勝ったじゃないですか?」

 

「・・・まぁ、それに関しては言い訳はしねぇよ。仮にも一度は地方最強の名誉を手にしたウマ娘だ、やっぱり強かったさ」

 

 ほっ、とりあえず納得してくれたみたいだ。それにスプリングカップは見ている私も手に汗を握る激戦だった、ただシロヤマさんの勝ちはその中でも揺るぎないものだったようにも思えたけど。

 

「が、勝負は時の運。次の白山大賞典では私が勝つ! 本番で勝てばファンも関係者も前走の負けのことなんてすっかり忘れちまうからな」

 

 この切り替えの早さがサウスヴィレッジさんの凄いところだと思う。というより、割り切りができているのかな?

 いずれにしても、それも一つの才能ではあると思う。

 

「で、サウス。結局、用件はなんだ? 言っておくがこいつとレースさせろなんてあほなことは言うなよ?」

 

「そんなの当たり前だ、今のこいつが私に勝てる訳ないだろ?」

 

 逆に当然といった様子で口をひらくサウスヴィレッジさん。

 正直、あまり気分のいいものではない。が、ここは抑える。今の私ではサウスヴィレッジさんに通用しないというのは紛れもない事実だから。

 

「じゃあ、何しに来たんだよ?」

 

「いや、シロヤマに呼び出されて廊下を歩いていたら、面白そうな会話が聞こえたんでとりあえず首を突っ込んでみただけだ」

 

 シロヤマさんに呼び出されるってことは、また何かやったんだろうなぁ。サウスヴィレッジさんは備品壊しの常連らしいし。

 

「だったら早くシロヤマの所に行って来い」

 

「おぉ、それじゃ邪魔して悪かったな。それと、カナメ」

 

「はひ?」

 

 急に話しかけられたから焦って声が裏返っちゃった。

 

「なに素っ頓狂な声出してんだよ。まぁいい次のJDD頑張れよ、私もそれなりに期待しているからな」

 

「え」

 

「なんだ? 私が応援しちゃおかしいか?」

 

 別におかしくはないけれど、前回顔を合わせた時もほとんど話してくれなかったし、てっきり嫌われているのかと。

 

「いえ、そんなことは。 じゃあ私からもサウスヴィレッジさんに一ついいですか?」

 

 ただ、せっかくエールを貰ったんだ。一つ、私からもサウスヴィレッジさんに一言言っておかないとね。

 

「なんだ?」

 

「秋が楽しみですね」

 

 これはさっきの意趣返し。舐められっぱなしは嫌だからね。

 

「ハハ、あぁ全くだ」

 

 何故か機嫌を良くした様子のサウスヴィレッジさん。

 ちなみに、シロヤマさんにはかなり怒られたらしい、一体何をしたんだろう?

 

 

名前を伏せているウマ娘の扱い(中央ウマ娘のみ)

  • 実名にした方がいい
  • 今のままでいい(オリジナル名)
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