地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第25話

 それは突然の閃きだった。いや、天啓と言ってもいいかもしれない。

 

「トレーナーさん、私考えたんですけど、レースにおいて差し追い込みのメリットってあるんですかね?」

 

「なんだ、急に」

 

 トレーナーさんは相変わらず、なんだこいつみたいな顔で私を見てくる。いやいや、今回はちゃんと考えがあるんだよ。

 

「たまたまヒトの陸上競技をみていたんですけど、最後方からの追い込みなんて戦法をとる選手なんていなかったので。基本的には先頭集団の人たちがそのままゴールするって形でしたし」

 

 ヒトの陸上競技の方が競技人口も多いのは間違いない、基本的に競技人口が多い=競技レベルが高いと言うことだろうし。それで採用されていないということはそういうことじゃないだろうか?

 

「確かに目の付け所は悪くない。というか実際にレースにおいては逃げ先行が圧倒的に有利だ。それはどのコースでも基本的に変わらない」

 

「じゃあ、後方脚質のメリットは無いんですか?」

 

 その話だけ聞けば、全く利点は無さそうだけど。

 

「そうだな。強いて言えば、後ろからレースをすれば周りの妨害なんかは少なくなる。ポジション争いが無いからな。それとレースを俯瞰で見ることができる。この2つくらいだろうな。後は空気抵抗が少ないっていうのはある」

 

「なるほど。後はペースが早ければ有利になるくらいですね」

 

「それもあるが、基本的にペースっていうのは先行集団が作るものだからな、それをレースプランに組み込むのはリスクが高い。もちろん、場合によっては決めうちで走る必要もあるがな。それこそ皐月賞の時みたいにな」

 

 実際、番狂わせっていうのは得てして逃げや追い込みといった極端な脚質から生まれやすい。そういった極端な脚質の方が嵌まった時には大きなリターンがあるからね。最も、嵌まる場面というのがほとんどないんだけど。

 

「だったら私も前の位置をとるようにした方がいいですか?」

 

「お前が?」

 

「はい」

 

 信じられないと言った表情を浮かべるトレーナーさん。まぁ、なんとなく理由はわかるけど。ちょっと失礼じゃない?

 

「それができれば苦労しないが。ただお前、スタート悪い上に二の足も遅いからなあ」

 

「うぐっ、それを言われると厳しいですけど。例えば、そこからでも強引に脚を使ってポジションを取るとか」

 

「外枠ならできなくもないが、内枠だとまず無理だな。あっという間に被されて終わりだ」

 

 確かにそれはその通り。前にウマが並んでしまえば、それより前には出れないからね。ただ、私には考えがあった。

 

「そこはまぁ、強引に体をぶつけるなりなんなりで」

 

 実際、海外のレースだど激しいポジション争いはつきものだと聞いたことがある。私も別にそれはやぶさかではないんだけど。

 

「お前、意外とでもないが脳筋だよな」

 

「な、、」

 

 失礼な。普通、年ごろのウマ娘にそういうこと言わないと思うんだけど。ただ、あながち否定できないのも辛いところだけど。

 

「とにかく言いたいことは分かった。が、結論から言うとおすすめはしないな」

 

「それはスタートが悪いからですか?」

 

 正直、これが私の一番の弱点だということは分かっている。もちろん、脚が遅いとかそういう能力の話は置いておいてだけど。

 

「まあ、簡単に言えばそうだな。少なくとも今のお前には後ろからの方が合っているのは間違いない。が、いずれは試してみるのもいいかもな。ウマ娘のなかにはスタートが改善した例も少なくはないことだし」

 

「一朝一夕で、身につけるのは難しいってことですね」

 

 まぁ、所詮はただの思いつき。私も、次のレースで前目のポジションにつけるとか、そういう考えを持っていたわけではない。

 

「それは別に脚質に限らずだがな。たださっきの体をぶつけるって発想は悪くない。もちろんやりすぎはだめだが、時にはそういう強引な走りも必要になるのは間違いないからな」

 

「それは私も分かります。大外を捲るだけならともかく、内を突こうと思えば狭い進路に飛び込むことも必要ですからね」

 

「あぁそうだ。お前は体幹がしっかりしているから、多少強引に行くくらいなら問題ない。何度も言うがやりすぎない限りでな」

 

 やりすぎてしまえば、降着やケガのリスクもあるので当然だ。ただ、それでもやるなとは言わないのがトレーナーさんの良いところだと個人的には思うんだけど。

 

「さて、雑談はこの辺でいいだろう?」

 

「ははは、やっぱり分かっていました?」

 

 おっと、トレーナーさんには私の薄い考えは見透かされちゃったみたいだ。大体、私からこういう話を振ること自体がおかしいと言えばおかしいのかもしれないけど。

 

「まぁな。さぁ、去年の川崎とは違うところを見せて見せてこい! このメンバーならお前にも勝機は十分ある」

 

 去年の川崎は、まさに言葉通りの大惨敗。もっとも、そのおかげで中央挑戦を決めたんだから、悪い経験ではなかったのかもしれないけどね。

 あの時とは違って、今の私ならもう少し勝負になるはず。それに今回のコースは私にも合っている。それに対戦相手もうん、それについてはトレーナーさんに聞こうかな。

 

「このメンバーならって言うのは余計じゃないですか?」

 

「お、いつもの調子が出てきたな」

 

 欲しい答えはもらえなかったけれど、その答えも悪くはない。さぁ、準備は整った。

 

「お陰様で。じゃあ行ってきますね」

 

 今日の舞台は大井D2000m。待ちに待ったjpn1ジャパンダートダービーだ。

名前を伏せているウマ娘の扱い(中央ウマ娘のみ)

  • 実名にした方がいい
  • 今のままでいい(オリジナル名)
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