地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第27話

 

 大井の2000mはスタートから最初のコーナーまでの直線が500mもある。だから枠順の有利不利も少なくて力通りの決着になることが多い。

 過信しているわけじゃないけれど、このメンバーなら私の実力は決して低くはない。十分に勝ちを意識できるはず。

 

 

『さぁ、各ウマ娘スタートしました。おっと、これはバラバラなスタート。金沢から参戦のカナメは少し後ろからのレースになりました』

 

 結局、今回もいつも通り出遅れてしまった。

 でも、逆に言えば揉まれずにレースを進められるということでもあるわけで。

 

『さぁ、どのウマ娘が先手を主張していくのか』

 

 だから、出遅れは大きな問題じゃない。

 今、一番大事なことはラチ沿いのポジションをとることだけど。

 

『押し出されるように1枠1番、地元のラフモデレイションが逃げる形。徐々にバ群が縦長になっていきます』

 

 よし、トレーナーさんの指示通りに、ラチ沿いは確保できた。

 長い直線のお掛けで7.8番手くらいにはつけられてもいる。

 悪くない展開だ。

 

 今回のレースは16人のウマ娘が走っている。でも実際のところ、勝負に参加してると言えるのは10人もいないはず。残りは追走で精一杯で、勝ち負けには加われないだろうし。

 

『縦長の展開で1コーナーから2コーナーへ。落ち着いたスローペースでレースが進んでいきます』

 

 明らかに緩い流れでレースが進んでいっている。このペースなら間違いなく最後の決めて勝負になるはず。

 トレーナーさん曰く、大井のコースは3~4コーナーで極端にペースが落ちることが多いらしい。だから、ギアチェンジとコーナリングが上手いウマ娘が有利になるコースだ。つまり、私には不利。

 でも、それが活きないレース展開にさせればいいだけ。そう、要はいつもの捲りだ。もがき合いなら、私にも分があるはず。

 

 さぁ、あとはどこで仕掛けるか、それだけだね!

 

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

「メテオ、お前は相変わらずエンジンの掛かりが遅いな」

 

 教えてもらったのは自分の弱点。私は不器用だ、だからレースでも追込か捲る形でしか走れない。

 

「お前、名前は? …メテオか。いい名前だな。よし、次のレースを勝ったらいいものをやろう」

 

 プレゼントでもらったのは、お世辞にもセンスがいいとは言えない星の形の大きな髪飾り。今では私の宝物。

 

「キレる脚がない? 心配するな、そもそもダートで重要なのはパワーとスピードの持続力だ。まぁ、瞬発力もあった方がいいのは間違いないがな!」

 

 気づかせてもらったのは自分の強み。ちなみに、私は最初芝を走りたかったんだけど、気づいたらダートに登録させられていた。

 

「次のレース? そうだな、道中は溜めて溜めて溜めるんだ。極限まで弓を絞るようにな。ただ、直線まで我慢したなら遅すぎる。分かるだろ? 仕掛けどころはお前に任せる。そうすればこのレースの勝者はお前だ」

 

 期待してもらっているのは自分の勝利。だったら、勝って見せつけよう、あなたの愛バの晴れ姿を。

 

 

 さぁ、回想は終わり。レースは、うん概ね事前の予想通りの展開。怖かったのは同じ中央の娘のハイペース逃げだったけど、結局は誰も逃げたくなかったみたいだ。

 勝負に参加してるウマ娘自体のバ群はかなり短く密集している。こうなれば、決めての差で前のグループのウマ娘に後れをとることはない。むしろ注意を向けるべきなのは。

 

『縦長の展開で1コーナーから2コーナーへ。落ち着いたスローペースでレースが進んでいきます』

 

 このペース、仕掛けどころが重要になってくる。私から仕掛けてもいいんだけど…、いやここは我慢だ弓を絞るんだ。

 今回のレース、後ろからのウマ娘で警戒するのはカナメ、あの地方の娘だ。彼女は確実に捲りを打ってくるはず。ちょうどいい具合に、私のポジションは彼女の後ろ。だったら、私はそれに乗せてもらおう。

 

 放たれた矢は勝利の星に向かって飛んでくだけだ。

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

「今年のメンバーは低調だな」

 

「いやいやそんなことないって、1番人気のメテオディレクターちゃんだっけ? あの娘なんて強いウマ娘だと思うよ。それに他にも」

 

「それは認めるが、それ以外のメンバーはどうだ。私たちと戦えるレベルのウマ娘はいると思うか?」

 

「うーん、あの金沢の娘なんか個人的には好きだけどねぇ」

 

「なるほど。英雄様に気に入られるということはそれなりに力のあるウマ娘であるのは間違いないか」

 

「いやー、ほとんどフィーリングだけどね。ちなみに南関東の哲学者様はどう思うの?」

 

「私か? そうだな、メテオディレクターの力は認めている。ただ、それ以外のウマ娘には正直、目を引かれることはないな」

 

「だったら、あの金沢の娘が勝ったら私の方が見る目があったってことだね。まぁ、なんて言っても私ってば英雄様だしね」

 

「フッ、それでその英雄様はいつになったら地元の魔王の討伐をしてくれるんだい?」

 

「ちょっとー、変なこと言わないでよ。それとも何、ケンカでも打ってるの?」

 

「そういうセリフは私に一回でも勝ってから言うんだね。川崎記念も帝王賞も私の完勝だろう?」

 

「マ、マイルなら私が勝つし。秋の南部杯、絶対に参加してよ。私の力を見せつけてあげるから」

 

「そうだな。まぁ、前向きに善処するよ」

 

「絶対に、絶対だからね」

 

 

 

 

 

6〜8話冒頭に取り上げた金沢の名ウマ娘の元馬わかりましたか?

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