地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

3 / 92
第3話

「芝・・・ですか?」

 

 ダッシュとウォーキングを交互に繰り返すインターバルトレーニングを行っていると、唐突にトレーナーさんに呼び止められた。

 

 ちなみに、この練習はトレーナーさんの指示でやっているんだけど、めちゃくちゃキツイ!! なんでも、心肺機能を鍛えるためみたいなんだけどね。

 

「そうだ。カナメ、次のレースでは芝を走ってもらう。お前はテンも遅いし、コーナーリングも下手、おまけにパワーもないからな」

 

 確かに、トレーナーさんの言う事も分かる。

 

 私はここまで8戦して、5勝2着2回それと着外が1回。前回のレースを除いて、基本的に負けたレースは逃げた子を捕まえ切れなかったからだ。

 

 けど、流石にトレーナーさんの言い方は、

 

「ちょっと、言い過ぎじゃないですか?」

 

「まぁ、落ち着け。要はお前は今まで自分の適正からかけ離れたステージで戦っていたっていうことさ。地方のダートじゃ、お前の良さはでない、それこそ雨が降って、バ場が軽くなってもだ」

 

トレーナーさんは私を宥めるように、両手をかざす。

 

まぁ、どっちにしてももう少し言葉を選んでもらいたかったけど。けど、地方の深い砂は向いていないというのは、今までの私にはなかった考えだ。だって私の走るコースは基本的にそういうところしかなかったからね。

 

 

「じゃあ、盛岡に遠征でもするんですか?」

 

 

 金沢もそうだけど、基本的に地方には芝のコースはないんだ。けど、唯一の例外が盛岡。私は、そもそも盛岡に行ったこともないんだけどね。

 

 

 

「違う。お前が走るのは、1月の京都。そこの1勝クラスの特別戦に出走してもらう。距離は1600Mの内回りだ。この時期のレースには余り人数も集まらないからな、気軽に走ってこい」

 

 き、京都! 金沢から距離も近く、昔私もレースを見に行ったことがある。そんな舞台で走るんだ。

 

 でも、思ったよりも数倍早いタイミングだなぁ。

 

「いきなり、中央挑戦ですか・・・。流石に緊張するなぁ。私が通用するかな?」

 

「カナメ、甘い考えは捨てておけよ。いいか、今のお前じゃ99.9%勝てない」

 

 99.9%・・・。それってつまり、勝てないっていうことだよね。それじゃあ、何のために私は走りに行くんだろう。もう少し、トレーニングをしてからでもいいと思うけど。

 

「カナメ、お前の今回の出走の目的は芝の適正を試すのと同時に、中央の雰囲気に慣れてもらいたいからだ。まぁ、お前一人だと心細いだろうから頼りになる助っ人を連れてきたぞ。おーい、来てくれ!」

 

「ハイハーイ。来ましたよ! カナメちゃん、一緒に頑張ろうね」

 

 やって来たのは、シャインスワンプちゃん。さっき言った、私の2敗は逃げたシャインちゃんを捕まえ切れなかったからなんだ。

 

「シャインちゃんも、一緒に走るの?」

 

「そだよー! カナメちゃん一人じゃ寂しいでしょ? それに私も中央で走ってみたいもん」

 

 にこりと笑顔を浮かべてシャインちゃんは言う。シャインちゃんの笑顔はずるいよね、可愛い過ぎるもん。ちなみに私の中でシャインちゃんは、金沢で一番可愛いウマ娘だ。

 

「まぁ、そういうことだ。基本的に京都の内回りっていうのは逃げが圧倒的に有利だ。けど、この時期のクラシッククラスのレースっていうのは基本的にスローになりがちだ。そこで、シャインには逃げを打ってもらおうと思ってな。スローになればシャインに有利だし、流れればカナメに流れが向くだろうからな」

 

 トレーナーさんはキメ顔でそう言った。いつも思うけど、トレーナーさんのキメ顔って全然決まってないんだよね。

 

 けど、そんなことよりもトレーナーさんの発言には引っ掛かるものがあった。

 

「トレーナーさん、それってズルくないですか? なんだか、2人がかりでレースをするなんて・・・」

 

「なーに言ってるの、カナメちゃん? 別に協力している訳じゃないでしょ? カナメちゃんはカナメちゃんの、私は私のベストを尽くすだけ」

 

「あぁ、シャインの言う通りだ。カナメが負い目を感じる必要なんてない。シャインが逃げるなんて、新聞を読めば誰でも分かることだからな。あと言っておくが、こんなこと程度でレースに勝てる程甘くはないからな? 地方と中央の格差っていうのはそれほどのものなんだ」

 

 この日は、トレーナーさんの最後の一言が胸に残ったままだった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「また、えらく早いタイミングで挑戦させるんだな?」

 

「なんだサウス、もう情報を聞きつけたのか? まぁ、あいつがここで折れるようなら所詮、中央に挑戦するなんて無理だってことだ。けど、あいつはそうはならないだろうな」 

 

「あぁ、私もそう思う。あいつは強いよ、結果は知らんが何かしらは学んでくるだろう」 

 

「あいつのこと気に入っているんだな」

 

「あぁ、個人的に期待させてもらっているよ。けど、どっちかというともう一人の方が気になるかな・・・」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「私が逃げる・・・かぁ。別に金沢だと逃げが有利だから逃げてただけで、そんなに拘りはないんだけどなぁ。それに、私がカナメちゃんの添え物になっているのも気に食わないし・・・。ねぇ、どう思うグリンさん?」

 

「うーんそうね、シャインちゃんのしたいようにすればいいと思うわ。結局それが一番後悔しないもの」

 

「そっかぁ、うんそうする。なんて言ったって尊敬する先輩のお言葉だもん」 

 

「あらあら、でも頑張ってね。私も中央では2戦して入着もできなかったから、シャインちゃんには私の分も頑張ってもらわないとね」

 

「でも、グリンさんはJBCクラシックでも4着になっているし、私にとっては偉大な先輩だよ」

 

「うふふ、ありがとう」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。