地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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中央挑戦 秋クラシック
第34話


『秋を迎えた中山に、クラシック最後の冠を狙うべく今年は13人のウマ娘が集まりました』

 

 中山2,200mセントライト記念。私の目標はこのレースで3着以内に入ること。逆に言えば勝たなくてもいい、そんなレースなわけだ。だけど、勝つために走らないっていうのは気分が良くない。走るからには勝たないと。

 

『天候は雨、馬場は重。生憎のコンディションではありますが、ダービー3着ウマ娘や夏の上がりウマ娘。今やお馴染みとなった、地方から参戦のウマ娘など、好メンバーが揃いました』

 

 思えば重馬場の芝を走るのは初めてだ。トレーナーさんは、重い芝は私向きだとは言っていたし、走っている私からしてもそう思う。少なくとも超高速馬場になるよりは遥かにマシだ。

 こうして返しウマでゲートに向かっている今も、脚の感触は悪くない。ただ、滑りやすくはなっているだろうから、そこだけは気をつけないと。

 

『注目の一番人気はこの娘、前走シニア混合の二勝クラスで2着ロイヤルキング、ファンの期待がとても高いウマ娘の一人です。二番人気はダービー3着の実力者フソウタイカ、実績から見てもここでも好走が期待されます。続く三番人気は金沢から参戦、G12着の実績を引っさげてやって来たカナメ。その他4人まで、全く差がなく続きます。かなりの混戦ムードです』

 

 私が中央の芝重賞で三番人気。なんだか感慨深いものがあるのは否定できない。でも所詮人気は人気、勝たないと意味がない。そういう意味では今回のレースの強敵は一番人気の娘よりも二番人気の娘だ。彼女だけは、同世代の最高峰のレベルで好走した実績がある。

 

 

 そんなことを考えながらゲートに向かっていると、ふと観客席のある物に目が向いた。それは私のグッズと私の投票券(流石に私のグッズを持っているんだから私の投票券だと思う)を持った若い女性だ。金沢ならともかく中央で地元民意外のファンを見るのは珍しい。よし、少しサービスでもしようかな。馬場を確認するフリをしてスタンドに近づく、そうしてお互いの顔が分かる位置になったところで、軽く手を振る。が、その女の子の人は手元のスマートフォンに夢中のようだ。まぁ、本当に私のファンなら、普通はバ場入場も見るか。大方、私のパカプチが人気無くて売れ残って値下げでもされてたんだろうね。

 

 なんとなく恥ずかしいので、直ぐにゲートに向かい直す。その後に背中から聞こえるのはカシャカシャというシャッター音。どうやらお姉さん、今更気づいたのかな?

 そうして振り返ると、彼氏らしき男の人と自撮りをしているお姉さん。

 その後、私は後ろを振り返ることはなかった。

 

 

 

 さぁ、いよいよゲートインだ。

 今回の私は一枠一番。普通なら絶好枠だけど。スタートが遅い私にとっては鬼門の枠だ。それに雨の影響で内のバ場は荒れている。

 とはいえ、大外枠よりは遥かにましだけど。

 

『さぁ、各ウマ娘ゲートイン完了。今、発走です。大きな出遅れはありません。さて誰が前に行くでしょうか』

 

 多少、スタートは遅れたけど許容範囲内かな。それにこのバ場で他の娘たちの二の足も鈍い。これなら十分に上がっていける。

 

『先ずは外枠から押し出されるように、リオコウウが前に上がって行きます。続いてオリンピック、その後ろ3番フソウタイカ内から押し上げて3番手。そして、おおっとカナメがこの位置、4番手まで上がっています』

 

 多少滑るような感覚はあるけど、バ場もそんなに走りにくいわけじゃない。むしろ金沢のコースに比べれば、走りやすいくらいだ。

 お陰で多少脚は使ったけれど前に取り付くことができた。このままインに張り付いて、抜け出すタイミングを測る。3番の娘の出方が気になるところだけど、お互い今は様子見だね。

 だけど、おそらく最後の敵は彼女になるはず、できる限り脚を使わせたい。よし、ちょっと仕掛けようか。

 

『1コーナーに入って、ここで先頭に立っていたリオコウウを一気に叩いて、3連勝中のグランドサクセスがハナを奪います。リオコウウは2番手キープ。その後ろに変わらずオリンピック。4番手になったフソウタイカのインにカナメが潜り込んで並走状態。人気のロイヤルキングは後方からとなりました』

 

 荒れたバ場を気にして内を開いていたのがラッキーだった。少し強引だけど、体をねじ込む。

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 このレース、私フソウタイカには大きな不満があった。

 どうしてこの私が一番人気じゃないのかだ。今回のメンバーは、ほとんどの娘が春のクラシックで走ることすらできていない、その中で私はダービー3着だっていうのに。

 もちろん人気でレースをするわけじゃないのは分かっている。それでも不満は不満だ。

 

 いや、落ち着こう今はレースに集中だ。

 スタートは悪くない。ダービーの時は末脚比べで負けてしまったが、今回のメンバーなら私の力は一枚上な筈。重馬場ならなおさらだ。

 落ち着いてレースを運べば必ず勝てる。

 

『先ずは外枠から押し出されるように、リオコウウが前に上がって行きます。続いてオリンピック、その後ろ3番フソウタイカ内から押し上げて3番手。そして、おおっとカナメがこの位置、4番手まで上がっています』

 

 悪くない位置だ。ダービーの時とはメンバーが落ちたせいか、楽に前の位置をとれた。後はこのまま、ポジションをキープできれば前の娘は差し切れるはず。できればペースを落として欲しいところだけど。

 

 っと、外の方で動きがあったみたいだ。できればこのまま進んで欲しかったんだけど。

 しょうがない、私も少し外に振って包まれるのを避けるか。

 

 この判断は間違っていないはずた。少なくともセオリー的には正しい。ただ1人、ここには中央のセオリーが通用しないウマ娘がいただけだ。

 

 ドンッ!

 鈍い衝撃が私の右側に伝わる。

 

『1コーナーに入って、ここで先頭に立っていたリオコウウを一気に叩いて、3連勝中のグランドサクセスがハナを奪います。リオコウウは2番手キープ。その後ろに変わらずオリンピック。4番手になったフソウタイカのインにカナメが潜り込んで並走状態。人気のロイヤルキングは後方からとなりました』

 

 その衝撃の正体が身体をぶつけた時の衝撃と知った時には完全に内を取られていた。

 

 

 一般的に中央では内側からの追い抜きは敬遠される。もちろんスペースが有れば別だけど。けど今回のような1人分のスペースが辛うじて有るか無いかくらいの時は突っ込まないのが暗黙の了解だ。その理由は何より危ないからだ。ウマ娘の時速は60キロを超える、その中での接触は重大な事故を招きかねない。

 だけど、今私に並んできたのは地方の娘。当たり前だけど、このルールは明文化されたものじゃない。だから、審議の対象にはならないし、私の文句もお門違いではある。

 

 それでもだ、文句の1つくらいは言いたくなる。

 

「っ、ルールを知らないの、強引すぎるじゃない!」

 

「なら内を空けなきゃいいだけでしょ?」

 

 返ってきたのは冷徹な一言。

 

 よし決めた、この娘だけには絶対に勝つ!!!

 

 

 

 

 

 

6〜8話冒頭に取り上げた金沢の名ウマ娘の元馬わかりましたか?

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