地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第38話

「よくやった! 遂に中央初勝利、それもG2の舞台で決めるとは、俺も誇らしいぞ」

 

 トレーナーさんがご機嫌、というか有り体に言って浮かれていた!

 まぁそれもそうだ、私も思わずにやけてしまうし。

 

「いやー、やっちゃいましたね私! 自分で言うのもなんですけど、最高の走りができました。それにライブの盛り上がりったらなかったですよね。やっぱりセンターは違いますよ」

 

 初めての中央のセンターは最高だった。金沢は金沢で味があるしいいんだけど、中央の場合は演出がド派手でとにかく盛り上がりがすごかった。ファンの人たちのカナメコール、気持ちよかったなぁ。ちなみに例のお姉さんもしっかり最前列にいたので、気持ち多めに視線を送ったんだけど、気づいてくれたかな?

 

「全くだ! 特に好位の位置を取り切ったのはよかった。以前のお前のように捲りに構えていたら、今日の馬場だと届かなかったはずだ。それから直線手前のイン突き、よくあそこに進路をとったな」

 

「先行できたのはグリンさんの教えのおかげです。それに、私も勝ちに拘りたいと思いました。確かに強引だったかもしれないけど、あの時、あの場面で最善の策をとったつもりです」

 

 実際、今日のイン突きはあれしかないという乾坤一擲の策だった。もし、少しでも躊躇っていたら私がライブのセンターに立っていることはなかったはず。

 

「そうか。まぁ、お前なら大丈夫だとは思うが、怪我だけはするなよ」

 

「大丈夫ですよ。私、そこら辺の感覚については優れている自信がありますから」

 

 自慢じゃないけど、私は怪我をしたことがほとんどない。トレーナーに言わせると、頑張りと無茶の境界を認識できているってことみたいけど、私本人はよく分かっていないんだよね。まぁ、とにかく気をつけておけばいいか。

 

「確かに、俺もデビュー当初から怪我の心配だけはしたことない。そこに関しては全幅の信頼を寄せているくらいだ」

 

「ハハ、ありがとうございます。で、次走のことですが」

 

「あぁ、予定通り菊花賞にいく。そこからジャパンCだ。正直、ローテーション的には厳しいがこれでいかせてもらう」

 

「えぇ、問題ありません。それにジャパンCを走らないわけにはいかないですから」

 

「エルコンドルパサーか?」

 

「はい。エルちゃんと走るならもうここしかありません。最後の最後でエルちゃんの首を取りにいきます」

 

 エルちゃんは、毎日王冠をステップにジャパンCに出走することを早くから表明している。同時に秋は二走しかしないことも。

 来年以降のことは分からないけど、エルちゃんと戦えるのはこのジャパンCが最後かもしれない。それなら、出走しないわけにはいかないでしょ。

 

「まぁ、落ち着け。まずは菊花賞からだ。知っての通りこのレースは京都3,000m、今までとは距離がかなり違う」

 

「えぇ分かっています。でも、私もスタミナには自信があります。むしろ距離が伸びるのは相対的に有利になるはず」

 

 普段、パサパサの砂を走っているんだ、足腰は相応に鍛えられてるはず。それに距離が伸びれば追走も楽になるだろうし。

 

「とは言っても、お前は2,200mまでのレースしか走ったことがない。もちろん俺も、お前は長距離向きだとは思うがな」

 

「ここも先行策でしょうか」

 

「あぁ。というより、このレースで先行できるようにするための、先行練習だった。京都レース場は3〜4コーナのアップダウンがある。特に直線入口に入るまでが下り坂になっていて、スピードが乗りすぎるとコーナで上手く回れない。つまり、捲るのには不向きな舞台だ」

 

「なるほど。でしたら先行一択ですね。とはいえ、3,000mのスタミナも考えないといけませんけど」

 

 あまり、最初に脚を使ってしまうと、肝心な時に馬群から抜け出せなくなってしまうかもしれない。だったら気をつけないといけないのはスタートかな?

 

「そうだな。まぁ、そこら辺はおいおい考えるさ。とりあえず、今からのお前は大変だぞー?」

 

「分かってます。厳しいトレーニングにも耐えて見せます!」

 

 やっぱり、スタート練習は必須だよね。後はスタミナ強化。それに上り下りのアップダウンにも慣れないと。

 

「違う、違う。お前、中央の重賞を勝ったんだぞ? しかもクラシックトライアルだ。間違いなくメディア陣が駆けつけてくる。皐月賞前の時よりも数倍の人数でな。それの対応もしなきゃいけない。もちろん、あまりにひどいようなら、俺やシロヤマで対処するがある程度は答えてやらないとな」

 

 完全に忘れていた。そっかぁ、インタビュー対応か。

 確かに若葉ステークスの後には、結構インタビューされたもんね。でももしかしたら、今回は全国的にインタビューされちゃうかも。いやどうしよう、カナメフィーバーとか起きたらするのかな?

 

「よし、今度は噛まないようにしなくちゃ」

 

 今のところ、私のインタビューはほとんど噛んだものしか残っていない。というより、噛んだとこばかりが流されているような気がする。まだ、石川ローカルだからいいけど、全国ネットでそれが流れることは何としてもさけたい。

 

「むしろ、多少噛んだ方が愛嬌あって人気になるかもしれないぞ? あと、これは俺個人のお願いにはなるんだが」

 

 そんな理由で人気になってたまるか!

 と、それよりもトレーナーのお願い? 一体なんだろう。

 

「どうしたんですか? トレーナーさんが珍しいですね」

 

「そのインタビューの時に金沢のアピールでもしてくれ。それで少しでも入学者が増えれば万々歳だ」

 

入学者が増えれば万々歳だ」

 

 あぁ、そういうこと。こう見えてもトレーナーさん、金沢生え抜きの娘しか担当しなかったり、意外と地元意識高いんだよね。もちろん、私も金沢生まれ、同じように地元は大好き。

 だから返事は当然こうなる。

 

「もちろんです、ばっちりアピールします。そしてこう言ってやるんです!」

 

 そう、それはずっと思っていたけど中央で勝ててなかった私には言えなかった一言。でも今なら言える!

 

「何をだ?」

 

 それはきっと地方の関係者みんなが思っていること。

 

「地方は中央の2軍じゃない!」

 

 私はキメ顔でそう言った!

 

 

 

 




当初はここで終わりにしようと思っていましたが、まだまだ書きたくなったので書きます。
引き続きよろしくお願いします!

6〜8話冒頭に取り上げた金沢の名ウマ娘の元馬わかりましたか?

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