地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

47 / 92
第47話

「あいつ、前との間隔を広げていないか?」

 

「どうやらそのようだ。恐らく前は差し切れると見て、後ろを警戒しているんだろう」

 

 概ねその通りだろう。ペース読みが苦手なあいつでも、流石にこのペースが早いことは気づいたか。

 ただ、それを加味してもその選択は褒められたものじゃない。

 

「カナメ、そいつは愚策だぞ」

 

「そうか? このペースなら前は持たないと思うが。警戒するなら後ろの連中だろ」

 

「そうだね。私も後ろのスペシャルウィークの末脚の方が気になる。現にセイウンスカイは肩で息をしている」

 

 なるほど、まぁそう思うのは無理はない、というより当たり前だ。この2人は金沢のトップウマ娘。レース状況も読み解くのにも長けている。だがその目の良さが仇になる。

 

「そう思った時点で、お前らの負けだ。いいか、確かに前半の1000mはハイペースだった。だがそこからは明らかにペースが落ちてる。全員セイウンスカイの術中にハマってるんだよ。特にカナメのやつはな」

 

 事前に余計なことを伝えすぎたか。以前のあいつなら前を離すようなことはしなかった。が、今更悔やんでもどうにもならない。

 それに今のあいつなら差し切れる可能性もないわけじゃない。というより、それができなきゃあいつの負けだ。

 坂上までには詰めてくれよカナメ。

 

◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 大外はよかった。

 今の私にはスタートから位置をとる脚はない。それならむしろ割り切って走れる大外の方がいい。  

 

 春の若葉ステークス、あのレースで私は全てやりきったと思った。最後の輝きをトップロードに見せつけたんだと。 

 でも違ったみたい。あの怪我で走れなくなった春、テレビで見た皐月賞、日本ダービーは輝いていた。

 

「なんで私はあそこで走っていないの。たとえどれだけ恥をかいてもどれだけ叶わない夢だとしても、あの場所で戦いたかった」

 

 きっとそれが私の本音。そこからの私は全てをリハビリに費やした。お陰でレースにこの菊花賞に出走することができた。そういえばレースの出走が決まってから、数日が経った時トップロードが何か言ってたっけ。

 

「この前カナメちゃんに会いましたよ」

「へ、なんで?」

「何か、トレセン学園にいたので」

「いやあの娘、地方の娘じゃん。まぁいいや、でどうしたの?」

「お話ししました!」

「いや、それは分かるよ。何を話したの?」

「うーん、菊花賞頑張ってくださいって応援しました。そうしたらカナメちゃん何て言ったと思います? あなたのお姉さんが1番強かったってみんなに伝えるって言ったんですよ! カッコいいです! 私の姉も喜びますって伝えました」

「いや、それって」

 

 我が妹ながら、ちょっとポンコツすぎない? 最後のセリフ的に私引退したみたいな扱いになってるじゃん。まぁそこが可愛いんだけど。

 

 カナメ。あの若葉ステークスで一緒に走った地方の娘。あの時は私が残して辛勝した。まぁ、怪我が無ければ普通に勝ってたけどね。

 

 それでも私にとってライバルと言えるのは彼女なのかもしれない。なんと言っても私の最高のパフォーマンスを見せたレースの相手なんだ。彼女は何も思っていなくても私は色々と思うところがある。

 

「あなたのお姉さんが1番強かった・・・か。悪くないね」

 

 今の位置は最後方。はっきり言ってこの位置じゃ何があっても勝てない。自慢の瞬発力を見せるまでもなく試合終了だ。

 ハイペースだったレースも1000mを過ぎて落ち着いてきた、というよりスローになっている。けど、私のライバルさんはそれに気づいていないみたい。

 

 このレース、1番強いのはスペシャルウィークに違いない。でも1番レースが上手いのはセイウンスカイだ。

 最後方はレースがよく見える。セイウンスカイの苦しそうな走り、あれは演技だ。実際肩で息はしているように見せてるけどフォーム自体は崩れていない。

 

『セイウンスカイが後ろとの差を広げたか? 5バ身から6バ身のリード。カナメが二番手、その後ろにリオコウウ。さらに開いてボールドエンペラー、フソウタイカ、キングヘイローと続いています』

 

 って、前との間隔開けちゃってるよ。なおさら今の位置だと勝つのは無理だ。というより後ろの娘たちがかなり苦しい。先行集団のキングヘイローあたりも動きたくても動けない状況か。

 まったく、私のライバルはすごいことをしてくれるね。

 

 さて、どうする? 今のままじゃ私の見せ場はゼロ。

 ・

 ・・

 ・・・

 ・・・・腹を括るとするか、

 

 ちゃんとトップロードに伝えてよね。

 

◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

「見てオペラオーちゃん。姉さんが走ってる」

 

「あぁそうだね、トップロードさん。覇王たる僕にもその輝きが伝わってくるよ」

 

「何が輝きよ。あなた誰にでも同じようなこと言うじゃない」

 

「おっと嫉妬かな、アヤベさん。ハーハッハ、心配しなくでも僕の度量は大きい、アヤベさんも受け止めてあげるとも」

 

「流石です、オペラオーさん」

 

「全く下らないわ」

 

 

 何かがおかしい、何か違和感が・・・。

 これは確かめるしかないようだね。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。