地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第48話

『セイウンスカイがマイペースで逃げている。これはしめしめと言ったところでしょうか。後ろの間隔が大きく開いて7.8バ身。ここにカナメがいます。後ろにリオコウウ。更に2バ身開いて先行集団が続きます』

 

 まだだ、まだ溜める。あのペースだ、セイウンスカイの脚も持たないはず。坂上までこの間隔を維持できれば、下りの加速で前は差し切れる。それだけの脚は残っている。

 

 焦るな。焦るな。焦るな。

 焦ったら負ける。JDDを思い出せ。

 

『おっとここで最後方からベアエキジスタンスが上がってくる。釣られてロイヤルキングも前に進出する』

 

 後ろが動いた? 

 でもこんなに早く動いても脚はもたないはず。

 

『ベアエキジスタンス、一気にペースアップ登り坂を前にして4番手集団に取り付いた。その動きに呼応して後ろの集団も上がってきた』

 

 だけど、これはチャンス。

 この展開は私が最も得意な形。

 そう、"残り1000mのもがきあい"

 

 この展開ならもう前を庇う必要はない。

 一気に差を詰める。

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 後ろが仕掛けた?

 この位置から、一体誰が。

 

 その正体はすぐに分かった。だって私の横にまでそのおバカさんは来ているんだから。

 

「お膳立てはしたよ、さぁ私が1番強かったって証明してこーい!」

 

 きっとその声は聞こえていないはず。

 それでも確かにレースは動き始めた。

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 坂前の時点で集団のペースが上がった。

 スローペースで動くに動けない展開でしたが、これは好機。

 今から問われるのはスピードではなくスタミナ。瞬発力ではなく持久力。そしてここは京都レース場。すなわち、メジロの庭。

 

 私、メジロランバートに勝ちの目が見えて来ました。

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 ペースが上がった?

 でも菊花賞のセオリーはゆっくり登ること。下りの加速さえ気をつければ大丈夫ってトレーナーさんも言っていたし。

 末脚なら私が1番。決して焦っちゃいけない。

 そうすれば2冠目も取れるはず。

 

 私、スペシャルウィークはこのスパートには乗っちゃいけない。

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 ヤバイなーこれ。脚もたないかもー。

 いつも後ろからレースしてるけど、何となくこっちの方がいいかと思って先行してみたら、これがキツイ。流石に4番手は無理ありすぎたかも。

 私って差しウマ娘なんだね。うん、よーく分かった。次からはそういうレースしようっと。

 

 で、このレースだけど、どうしようかな。後ろからのロングスパートでペースは上がっているけど、今の私の脚的にここからのスパートは無理。絶対に脚が上がっちゃう。

 

 それなら一縷の望みを託して最後の直線勝負。これしかない。坂を下るまでとにかく最内で我慢する。

 

 勝率は低いと分かってても、私、ブレイブカイザーにはそれしか残っていなかった。

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

『さぁ、坂の頂上で逃げたセイウンスカイのリードが3バ身まで詰まってきた。後続が殺到している。3番手リオコウウは厳しいか。代わって4番手集団が上がってくる』

 

 ここまでの作戦は完璧だった。最初の1000mをハイペースにして、次の1000mはスローに落としたことを勘付かれないようにした。

 実際に私の演技もあってか、カナメちゃんは確実に騙されていた。2周目2コーナーの時点では正直勝ったとも思った。

 

 一体誰が動いた?

 スペちゃんはない。キングもない。他に自力で動きそうな娘もいなくはないけど、ピンとこない。だって動いたら不利になるペースだったし、そのためにペースを作った。

 

 そんなことを考えている間にゴールまでは残り500m。坂の下りで私のリードは無くなってきているのが分かる。

 

「約束はどうなったのかなぁ? まぁ、お互い様だけど」

 

 でも、まだ私の方が有利。後はゴールまでもがき続けるだけ。

 

 精々足掻いて見せるとしますかー!

 

◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

「グラス、どう見ますか?」

 

「途中までは完全にセイちゃんの逃げがレースをコントロールしていました。でも・・・」

 

「あのロングスパートで全てが変わったデス」

 

「えぇ、キングちゃん辺りはセイちゃんの企みに気づいてはいたでしょうけどあのペースでは動くに動かなかった」

 

「カナメちゃんがレース下手くそなせいデスね。でも、こういう展開になったらカナメちゃんは強いデスよ。逆にスペちゃんは厳しいデス、後ろで悠長に構え過ぎてマス」

 

「えぇ。ですけどスペちゃんには絶対的な末脚があります。前が潰れれば飛び込んでくるでしょう。それにキングちゃんもいつもの末脚が出せればチャンスはゼロではありません」

 

「グラス、素直に認めましょう。このレース、勝つのはセイちゃんかカナメちゃんのどちらかデス。後ろは間に合いません」

 

「・・・えぇ、そうですねエル。ちなみにあなたはどちらか勝つと思っていますか?」

 

「ここまで来ると分かりませんね。まぁ、若干、マイペースで逃げたセイちゃんが有利だとは思います。少なからずカナメちゃんは脚を使っていますからね。それとグラス気づきました?」

 

「何にですか?」

 

「あの2人、約束全然守ってないデスよ」

 

 

 

 

 

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